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第一章 渡り人
1-30 狂王の最期
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だが、そこに隙を伺っていたマリアがスライディングで飛び込んできた。何の技だか知らない。相手の力を利用する系の格闘技をかましたのだ。
ありえねえ戦いだった。自分より遥かに小さな相手を押し倒してタックルからそのまま寝技に持ち込もうとしている、手練手管のレスリングの大型選手を、脳天かち上げで上空へ吹きとばした。
奴の強烈な突進力をそのままに、ベクトルを変えて打ち上げたのだ。ゴブリン・ロケット~!
マリアに片手でかち上げられた奴は見事に宙を飛んだ。とても人族にはできない荒業だ。俺は盾技スキルをシャツの前部分で発揮して崖下へ落ちそうだったマリアを受け止めながら、次の技を準備した。
アラビムが遺してくれた、あの究極スキルを。マリアは立ち上がり、上へ跳ね飛ばされた奴を狙いやすいように俺の体を持ち上げて支えてくれた。角度はバッチリだ。さすがエルフ、いい仕事するな。
『神々の黄昏』発動。
「うわ!」
「ほお、さすがはアルティミットじゃの」
なんだか知らないが、俺の手から離れたそのスキルの効果は、薄白い希薄な光跡を靡かせて素早く奴に命中し、綺麗な綺麗な魔法の真っ白な花を咲かせた。
まるで、これを遺してくれたアラビムの魂に捧げんとせんばかりに。地球でいえば、英語ではラグナロックと発音されるその言葉。
奴の体はバラバラに崩れ、そして塵と化し、そして何かを俺のまだ魔法を射出した感触の残る手の中に落とし込んだ。その初めて受け止めた、ずっしりとした重みに俺は慌てた。ヤバイものだったらマズイ。
「わわ。なんだ、これは」
「慌てるでない。それこそは強力な魔物を倒した時に得られる魔核というものじゃ。それこそは勇者の証というものよ。それは、お前の物じゃ」
「えー、いーのかなあ」
「いいのさ」
振り向いたら、アネッサが立っていた。
「あれ、君達は結構重症だったんじゃないの?」
「こういう時のために回復役っていうものがいるんだよ。それにエルフの薬は凄いんだぞ」
「あ、ストーガも生きてた」
「悪かったな。あいたた」
「まだ無理しない方がいいんじゃないの」
それから俺達は皆で顔を見合わせて笑ってしまった。
「終わったな」
「終わったねえ」
「これでようやく俺のロバ生活も終わりだな」
ストーガの野郎、帰りは幼児に歩かせる魂胆なのかよ。そうはイカの金玉。
「ふふ、そいつはどうかな」
「なんだと?」
奴は怪訝そうな顔をしたが、俺は軽く笑い飛ばした。少しハイになっているかな。喋り方もちょっと変だわ。無理もねえんだが。
「実は結構ハードな一日だったんで、そろそろ瞼さんの出番のようなのです。皆さん、お忘れでしょうが、わたくし齢二歳の幼児でございますので。それでは、お休みなさい」
だって、すっごく眠かったんだもの。しょせんは二歳児。今日はお昼寝ができなかったからなあ。
「あー、おいおい」
ストーガの奴も、自分も一杯一杯だったというのに、帰りも運搬用のロバ役なのだ。ちょっと焦っていたようだったが、そんな事は俺の知った事ではない。もう瞼が落ちるー。
「あー、勇者さんや。おねむの前にさ。あれあれ」
アイサが片手をにやける口に当て、もう片一方で指さす方を無理やり片目開けて見てみたら、なんと叔父さんとアリエスが手を取り合ってキスしていた。おー、やるなあ。さすがは我が師匠だけの事はあるぜ。いい男なのに独身なんだよねえ。
叔父さん、グっ! 俺は【イイネ】のポーズをしながら、ベッド(ロバ)に倒れ込んでいった。
「はて、ここは」
「ようやく目が覚めたか。まあ無理もないのだが。しかし、よくやった」
「あ、黒猫先生、おはよう」
どうやら俺のベッドっぽい。いまだにベビーベッドでそのままなのですわ。さすがにもう窮屈加減だな。本年度予算にて、議会に拡張工事を要求したい。
「おはようじゃないわよ、あんた。丸三日も寝てたじゃないの。大丈夫なの?」
「あ、極楽鳥先生もいたのか。無理言わんといて。10万体のゴブリン・スタンピード殲滅なんて普通は二歳の幼児がやる事じゃないのよ?」
「呆れた。一体あんたのどこが普通の幼児なのさ」
「まあそれはそれという事で、ここからこっちに置いといてー」
そして、あとの主張は腹の虫に任せておいた。そこへ姿を現した人がいた。
「あらあら、勇者さんはお腹ペコペコね」
「わあ、アリエスだあ」
俺は登ったベッドの端からジャンプしてふかふか巨乳にダイブした。ぽっふん。うーん、あの駄ロバの堅い胸板とはえらい違いやわあ。それから俺は彼女を見上げて訊いた。
「ねえ、アリエスはこれからどうするの? その……君のパーティは」
見事に全滅したものね。さすがに言いにくいわ。
「ふふ、それはね」
そして彼女は後ろを振り返った。
「アンソニー。実はその、俺は彼女と結婚する事にしたんだ。まあいろいろあったんでな」
それは俺が寝ている間に、いろいろな男女のあれやこれやがあったのだと? いや別にいいんですけどね。幼児にはまだ関係ない事なので。
「おめでと。叔父さん、アリエス」
「ありがとう。私、あなたの叔母さんになるのよ」
綺麗で巨乳な優しい叔母上が誕生するのは嬉しいのですが、おばさん化はしなくてよくてよ。だが、またギュムっとしていただけたので遠慮なく顔を埋めさせていただいた。
そしてまた腹の虫の演説が始まったので、二人に連れられて食堂へ行った。母とアリエスが二人でご飯を作ってくれるようなので嬉しい。とにかく食って育っておかないと、また何かあっても嫌だ。なんて油断のならない世界なんだろうな。
とりあえず、強力なスキルや魔法は手に入ったんで、よしとしますか!
ありえねえ戦いだった。自分より遥かに小さな相手を押し倒してタックルからそのまま寝技に持ち込もうとしている、手練手管のレスリングの大型選手を、脳天かち上げで上空へ吹きとばした。
奴の強烈な突進力をそのままに、ベクトルを変えて打ち上げたのだ。ゴブリン・ロケット~!
マリアに片手でかち上げられた奴は見事に宙を飛んだ。とても人族にはできない荒業だ。俺は盾技スキルをシャツの前部分で発揮して崖下へ落ちそうだったマリアを受け止めながら、次の技を準備した。
アラビムが遺してくれた、あの究極スキルを。マリアは立ち上がり、上へ跳ね飛ばされた奴を狙いやすいように俺の体を持ち上げて支えてくれた。角度はバッチリだ。さすがエルフ、いい仕事するな。
『神々の黄昏』発動。
「うわ!」
「ほお、さすがはアルティミットじゃの」
なんだか知らないが、俺の手から離れたそのスキルの効果は、薄白い希薄な光跡を靡かせて素早く奴に命中し、綺麗な綺麗な魔法の真っ白な花を咲かせた。
まるで、これを遺してくれたアラビムの魂に捧げんとせんばかりに。地球でいえば、英語ではラグナロックと発音されるその言葉。
奴の体はバラバラに崩れ、そして塵と化し、そして何かを俺のまだ魔法を射出した感触の残る手の中に落とし込んだ。その初めて受け止めた、ずっしりとした重みに俺は慌てた。ヤバイものだったらマズイ。
「わわ。なんだ、これは」
「慌てるでない。それこそは強力な魔物を倒した時に得られる魔核というものじゃ。それこそは勇者の証というものよ。それは、お前の物じゃ」
「えー、いーのかなあ」
「いいのさ」
振り向いたら、アネッサが立っていた。
「あれ、君達は結構重症だったんじゃないの?」
「こういう時のために回復役っていうものがいるんだよ。それにエルフの薬は凄いんだぞ」
「あ、ストーガも生きてた」
「悪かったな。あいたた」
「まだ無理しない方がいいんじゃないの」
それから俺達は皆で顔を見合わせて笑ってしまった。
「終わったな」
「終わったねえ」
「これでようやく俺のロバ生活も終わりだな」
ストーガの野郎、帰りは幼児に歩かせる魂胆なのかよ。そうはイカの金玉。
「ふふ、そいつはどうかな」
「なんだと?」
奴は怪訝そうな顔をしたが、俺は軽く笑い飛ばした。少しハイになっているかな。喋り方もちょっと変だわ。無理もねえんだが。
「実は結構ハードな一日だったんで、そろそろ瞼さんの出番のようなのです。皆さん、お忘れでしょうが、わたくし齢二歳の幼児でございますので。それでは、お休みなさい」
だって、すっごく眠かったんだもの。しょせんは二歳児。今日はお昼寝ができなかったからなあ。
「あー、おいおい」
ストーガの奴も、自分も一杯一杯だったというのに、帰りも運搬用のロバ役なのだ。ちょっと焦っていたようだったが、そんな事は俺の知った事ではない。もう瞼が落ちるー。
「あー、勇者さんや。おねむの前にさ。あれあれ」
アイサが片手をにやける口に当て、もう片一方で指さす方を無理やり片目開けて見てみたら、なんと叔父さんとアリエスが手を取り合ってキスしていた。おー、やるなあ。さすがは我が師匠だけの事はあるぜ。いい男なのに独身なんだよねえ。
叔父さん、グっ! 俺は【イイネ】のポーズをしながら、ベッド(ロバ)に倒れ込んでいった。
「はて、ここは」
「ようやく目が覚めたか。まあ無理もないのだが。しかし、よくやった」
「あ、黒猫先生、おはよう」
どうやら俺のベッドっぽい。いまだにベビーベッドでそのままなのですわ。さすがにもう窮屈加減だな。本年度予算にて、議会に拡張工事を要求したい。
「おはようじゃないわよ、あんた。丸三日も寝てたじゃないの。大丈夫なの?」
「あ、極楽鳥先生もいたのか。無理言わんといて。10万体のゴブリン・スタンピード殲滅なんて普通は二歳の幼児がやる事じゃないのよ?」
「呆れた。一体あんたのどこが普通の幼児なのさ」
「まあそれはそれという事で、ここからこっちに置いといてー」
そして、あとの主張は腹の虫に任せておいた。そこへ姿を現した人がいた。
「あらあら、勇者さんはお腹ペコペコね」
「わあ、アリエスだあ」
俺は登ったベッドの端からジャンプしてふかふか巨乳にダイブした。ぽっふん。うーん、あの駄ロバの堅い胸板とはえらい違いやわあ。それから俺は彼女を見上げて訊いた。
「ねえ、アリエスはこれからどうするの? その……君のパーティは」
見事に全滅したものね。さすがに言いにくいわ。
「ふふ、それはね」
そして彼女は後ろを振り返った。
「アンソニー。実はその、俺は彼女と結婚する事にしたんだ。まあいろいろあったんでな」
それは俺が寝ている間に、いろいろな男女のあれやこれやがあったのだと? いや別にいいんですけどね。幼児にはまだ関係ない事なので。
「おめでと。叔父さん、アリエス」
「ありがとう。私、あなたの叔母さんになるのよ」
綺麗で巨乳な優しい叔母上が誕生するのは嬉しいのですが、おばさん化はしなくてよくてよ。だが、またギュムっとしていただけたので遠慮なく顔を埋めさせていただいた。
そしてまた腹の虫の演説が始まったので、二人に連れられて食堂へ行った。母とアリエスが二人でご飯を作ってくれるようなので嬉しい。とにかく食って育っておかないと、また何かあっても嫌だ。なんて油断のならない世界なんだろうな。
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