DNAにセーブ&ロード 【前世は散々でしたが、他人のDNAからスキルを集めて、今度こそ女の子を幸せにしてみせます】

緋色優希

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第一章 渡り人

1-35 従者採用

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「こ、これは!」
「なんなのだ?」
 二人の貴族が理解できない事象を前にまた混乱していたが、マリアは溜息をついて言った。

「坊、こうなっては、もはや隠し事はできぬな」
「えー、そうなりますか~。なんで~⁉」
 口裏合わすって言ってくれたやん、おばはん。

「そいつは、おそらくティムだ」
「ティム?」
 俺は何の事かわからずに首を傾げたが、冒険者達の反応は違うものだった。

「え、まさか!」
「本当にあるんだな、都市伝説みたいなものだと思っていたよ」

「初めて見たわ、凄いわねー」
「確かに、本物とは違う。実体というには妙に輝いて見えるし。緑色でもない」

「まあ確かにティムの条件は揃っていた気もするな」
「条件?」
 俺はそう言ったアネッサに問い質した。

「ああ、ティムっていうのはな。普通に戦ったら絶対に勝てないような、とてつもない強敵、強い魔物を打ち倒した時にのみ、起きる現象なのだ。その他にも条件はあるとされ、簡単に起こるものではないぞ。うちのメンバーでも見たのは、これが初めてだろう。アリエス、お前はどうだ」

「いえ、私も初めてです。うちのチーム……でもなかったと思います」

 今は無き古巣のチームに久しぶりに触れた時、少し言葉に詰まったようだ。その肩をイケメンな叔父さんが、そっと抱いている。マリアも言葉を継いだ。

「そうじゃろうな。生半可な事では起きぬ現象よ。だが、そいつはそもそも二歳児じゃ。本当なら雑魚ゴブリンでさえ手に余る。それが、そやつを倒したのだ。

 本来であれば、それだけでも十分過ぎるのじゃがな。あと、そやつが誇り高かったというのもあるのだろう。そやつの魂が、命懸けであれこれ大事な物を守ろうと命懸けで戦ったお前を認めたということであろう。のう、狂王よ」

「我、マイロード仕える。マイロード、誇りある者が仕えるのに相応しい方。そして、そんな我の誇りを認め、新しい名をくださった」

 おおっ、貴様。こんなにも真っ黒な俺をそんな純真な目で見るなあ~。それを見て笑い転げんばかりのマリア。彼女にだけは俺の黒さを隠せないのだから。

「どうじゃ、坊。そやつを使ってやっては。そいつの魂が迷ってしまってもいかん。それは、そやつを倒したお前の義務でもある。

 それにの、それほどのティム、得られることなど滅多にないぞ。冒険者はチームで戦う。それではティムを得られないだろうし、一人では殺されてしまうのが落ちよ。

 それに、元の魔物ではない、肉体から解き放たれた存在だから力も凄く増している。このティムは、それ故に神様からのご褒美とも言われるものだ。勇者にだけ与えられる福音よ」

 うーむ。これを引き連れて歩くのはちょっと抵抗があるが、少し考えた事がある。

「なあ、お前。俺を乗せて走れる?」
 するとそいつは、やおら立ち上がり、俺を抱えると俊敏に走り出した。そして、あっけにとられる面々を置き去りに、あれこれと立体機動まで披露してくれて、原点復帰した。

「うおおっ、なんだ、この素晴らしい乗り心地は。それにこの速さは。採用! ストーガの奴がロバじゃなくってナメクジに思えてきた~」

 それを聞いて、片手で頭を掻きながら苦笑いするストーガ。無理もない。その速さに翻弄されて死にかかったのだからな。従者に採用されて嬉しそうに笑う狂王が対照的だ。

「あのう、さっきから状況がさっぱりわからないのだがな。その……」
「まるで、その子がその怪物、ゴブリンの賢者らしき者を倒したかのように聞こえるのだが」

「ええ、その通りですよ」
 はっきりとリーダーのアネッサが答えた。この人って、こういうところが男前なんだよなあ。

「ええっ」
「どうやって」
 俺はにっこりと笑って胡麻化した。どうせ言っても信じてくれないのだし。

「ようし、これで乗り物は確保したぜー。町まで行くのに一人じゃ行かせてもれないしさ。困っていたんだよ。ね、ね、叔父さん。こいつとなら町に行ってもいいよね」

「う、うむ。どうかな。そいつを町に入れてもらえるだろうか。ね、ねえ領主様」
「お? そ、そうだなあ。どうせなら町の冒険者ギルドで従魔証でも発行してもらえれば、あるいは」

 冒険者ギルド!
「それって冒険者にしてもらえるって事だよね!」

 二歳にして冒険者資格か! 燃えるぜ。俺のキラキラした目に押されて、領主様もしどろもどろだ。

「あ、いや。ギルドは独立組織だからな。あまり私の方から言ってしまえないのだがね。さすがに二歳の子供を冒険者にしろとまでは」

「じゃあ【実力で】勝ち取るなら問題ないんですね?」
 それを聞いて、けたたましく笑うマリア。

「坊、ギルドならわしが口を聞いてやろう。今のギルマスなど昔馴染みの子供だったから、おむつを替えてやった事もあるのじゃ。嫌とは言わさぬわ。はっはっは。まったく坊と一緒におると飽きぬのお」
 年季がいっているなあ。ではお言葉に甘えて、そちらはお任せしよう。

「ところで狂王、ここのゴブリンは片付けてもらってしまってもいいかい?」
 頷く狂王。そして伯爵はあたりにあった死体を収容して回った。かなり散らばっているから大変な有様だ。
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