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第一章 渡り人
1-43 ギルドにて
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「ほう。こいつが例の」
次長さんの指示で呼ばれてきたその人物より、そう言葉を投げられて、にっこりと笑い優雅に礼をする狂王。まるで執事みたいだな。そういや、貴族の執事って駄目な主人を躾ける役割もあるのだった!
「ギルマス、こいつは一体なんなのですか。自分にはゴブリンの賢者に似ているように思えるのですが」
「ほお、さすがだ。エマーソン。うちのエースだけの事はあるな」
なんだと、エマーソン。そこになおれ。さっさとスキルを俺に寄越すのだ。だが、ギルマスは、そんな俺をニヤニヤして見ているのだった。
そして、そのギルマスとは女性だった。美人だ。だが、大変ヤバイ匂いがする。マリアとも少し違う匂いなのだが。
俺は前世で浮気しまくって女に刺殺された屑なので、そういう気配には人一番敏感だ。ささっと領主を盾にする。なぜか一緒につきあうロイエス。まあ普通にお友達についていっちゃう幼児の行動だよね。
「はっはっは。これは嫌われたものよな」
「グランゼルよ。お前も、いい加減嫁にいけ。いや、婿を取ってギルマスを続けるなら、それでもいいぞ」
「いや、兄者は相変わらず手厳しいな」
「妹さんですか?」
思わず見上げた俺を振り返りつつ答える領主様。
「いや、別にそういうわけでないのだが」
領主様が浮かべた苦笑いを見る限りでは、この女、さては現役時代に領主様にさんざん迷惑をかけた口だな。
その狼藉の戦果で今でも頭が上がらないのに違いない。よし奴の弱点は見切ったぜ。無敵の盾『領主様』を装備した、この勇者アンソニーにもう死角はないぜ。
「エマーソン。そいつの正体はティムだ」
「え、まさか。しかし、そうなると?」
エマーソンの視線は俺に移った。ちっ、このギルマスめ。女狐か。仕事がやりにくいじゃねえかよ。さっさと、大人しく手前の子分のスキルを寄越しやがれ。
俺は彼女を睨みつけた。ミョンデ姉ときたら、さっきフレイラさんから頂いた飴を舐めながら、楽しく俺の修羅場を見学する所存のようだ。
「そっちのは?」
エマーソンは『ばあや』を指した。
「うむ、そっちのは『同期』という奴だな」
「それこそ神話の世界の話じゃないですか! 本当にあるのか、そんな事」
「お前の目の前にあるだろうが。冒険者なんだから、それは素直に認めろ。そいつが敵なら、お前もう死んでいるぞ」
よし、ここだ! 俺は素晴しいダッシュを見せて彼に向かって突進した。
「なんだあ?」
思いっきり避けられた俺は無様に転がり、仕方がないのでわざとカウンターの下に激突してやった。驚いた並んでいた冒険者達が飛びのいた。
そして必殺の死んだふり。さあ寄ってこい、エマーソンよ。全て計算づくなんだぜ。でも痛いのよー、早く治したいわ。さっさと見にこいよ、エマーソン。
「おい、坊主。大丈夫か」
「エマーソン。お前、子供相手に何をやっているんだ」
「あ、いや俺は別に」
俺に無防備に近寄ろうとしエマーソン。さあ来い! だが鋭い声が飛んだ。
「小僧、死んだ真似はやめておけ」
ちっ、この女め。俺の情報がそこまで回っていたか。俺は素早く立ち上がると開き直って叫んだ。
「グランドヒール」
輝く癒しの光と共に俺は瞬時に全快した。
「な、なんだあ?」
混乱する一同。そして俺はウソ泣きのスキルを駆使して、奴に駆け寄った。
「うわーん、酷いぞ。痛かったんだからなあ」
「え? あ、すまん。泣くな、もう。悪かった、悪かったってば」
俺を体で受け止めて謝を撫でながら謝るエマーソン。ふ、青二才めが。見事にダウンロードし終わったのでコロっと掌を返し、女ギルマスの方へ向き直った。
「よお、待たせたな。女を待たせるのは趣味じゃないんだが」
そして爆笑が渦巻いた。
「みろよ、あの餓鬼。よりにもよって、うちのギルマスを口説いていやがるぜ」
「あははは。こいつは傑作~」
え、何かまずかったのかしら。笑いを取りにいっただけなのに。ギルマスも一緒に高らかに笑っていらっしゃるし。だが、彼女は言った。
「今、笑った奴ら。向こう一ヶ月、ギルドの便所掃除な!」
「「「へーい」」」
あ、怒ってただけみたいだな。なんとなく性格も掴みかけてきたな。あんまり怒らせないようにしようっと。ミョンデ姉は、またケタケタ笑っている。一人だけ異彩を放っていやがるなあ。
「うむ。お前という奴は本当にどこまでも報告書通りの奴だな。それで成功したのか?」
「もちろん」
俺は素早くスキルのチェックをした。お、こいつはすげえな。ずっと俺が欲しかったものだ。
『物理シールド』
『対魔法シールド』
『防毒』
エースとやらのくせに何故か防御系が凄いんですが。
『念爆』
へえ、魔法を爆弾のように使えるのか。制約はあるが、いろいろ面白い真似ができるな。
工作や罠などには役に立ちそうだ。大規模爆発や細かい起爆まで時間設定も自由にできるのか。まるでテロリスト向けの能力じゃないか。
まあ頑張れば使い道はあるかな。でも、これは土壇場で機転を利かせられる凄い能力が必要だ。使いこなすのは難しい気がする。
『可愛い物好き』
決して開いてはいけない扉を開いてしまったような嫌な気持ちだ。ギルマスはおかしそうな顔をしているが。多分、こいつの日頃の言動から想像がつくのだろうな。
次長さんの指示で呼ばれてきたその人物より、そう言葉を投げられて、にっこりと笑い優雅に礼をする狂王。まるで執事みたいだな。そういや、貴族の執事って駄目な主人を躾ける役割もあるのだった!
「ギルマス、こいつは一体なんなのですか。自分にはゴブリンの賢者に似ているように思えるのですが」
「ほお、さすがだ。エマーソン。うちのエースだけの事はあるな」
なんだと、エマーソン。そこになおれ。さっさとスキルを俺に寄越すのだ。だが、ギルマスは、そんな俺をニヤニヤして見ているのだった。
そして、そのギルマスとは女性だった。美人だ。だが、大変ヤバイ匂いがする。マリアとも少し違う匂いなのだが。
俺は前世で浮気しまくって女に刺殺された屑なので、そういう気配には人一番敏感だ。ささっと領主を盾にする。なぜか一緒につきあうロイエス。まあ普通にお友達についていっちゃう幼児の行動だよね。
「はっはっは。これは嫌われたものよな」
「グランゼルよ。お前も、いい加減嫁にいけ。いや、婿を取ってギルマスを続けるなら、それでもいいぞ」
「いや、兄者は相変わらず手厳しいな」
「妹さんですか?」
思わず見上げた俺を振り返りつつ答える領主様。
「いや、別にそういうわけでないのだが」
領主様が浮かべた苦笑いを見る限りでは、この女、さては現役時代に領主様にさんざん迷惑をかけた口だな。
その狼藉の戦果で今でも頭が上がらないのに違いない。よし奴の弱点は見切ったぜ。無敵の盾『領主様』を装備した、この勇者アンソニーにもう死角はないぜ。
「エマーソン。そいつの正体はティムだ」
「え、まさか。しかし、そうなると?」
エマーソンの視線は俺に移った。ちっ、このギルマスめ。女狐か。仕事がやりにくいじゃねえかよ。さっさと、大人しく手前の子分のスキルを寄越しやがれ。
俺は彼女を睨みつけた。ミョンデ姉ときたら、さっきフレイラさんから頂いた飴を舐めながら、楽しく俺の修羅場を見学する所存のようだ。
「そっちのは?」
エマーソンは『ばあや』を指した。
「うむ、そっちのは『同期』という奴だな」
「それこそ神話の世界の話じゃないですか! 本当にあるのか、そんな事」
「お前の目の前にあるだろうが。冒険者なんだから、それは素直に認めろ。そいつが敵なら、お前もう死んでいるぞ」
よし、ここだ! 俺は素晴しいダッシュを見せて彼に向かって突進した。
「なんだあ?」
思いっきり避けられた俺は無様に転がり、仕方がないのでわざとカウンターの下に激突してやった。驚いた並んでいた冒険者達が飛びのいた。
そして必殺の死んだふり。さあ寄ってこい、エマーソンよ。全て計算づくなんだぜ。でも痛いのよー、早く治したいわ。さっさと見にこいよ、エマーソン。
「おい、坊主。大丈夫か」
「エマーソン。お前、子供相手に何をやっているんだ」
「あ、いや俺は別に」
俺に無防備に近寄ろうとしエマーソン。さあ来い! だが鋭い声が飛んだ。
「小僧、死んだ真似はやめておけ」
ちっ、この女め。俺の情報がそこまで回っていたか。俺は素早く立ち上がると開き直って叫んだ。
「グランドヒール」
輝く癒しの光と共に俺は瞬時に全快した。
「な、なんだあ?」
混乱する一同。そして俺はウソ泣きのスキルを駆使して、奴に駆け寄った。
「うわーん、酷いぞ。痛かったんだからなあ」
「え? あ、すまん。泣くな、もう。悪かった、悪かったってば」
俺を体で受け止めて謝を撫でながら謝るエマーソン。ふ、青二才めが。見事にダウンロードし終わったのでコロっと掌を返し、女ギルマスの方へ向き直った。
「よお、待たせたな。女を待たせるのは趣味じゃないんだが」
そして爆笑が渦巻いた。
「みろよ、あの餓鬼。よりにもよって、うちのギルマスを口説いていやがるぜ」
「あははは。こいつは傑作~」
え、何かまずかったのかしら。笑いを取りにいっただけなのに。ギルマスも一緒に高らかに笑っていらっしゃるし。だが、彼女は言った。
「今、笑った奴ら。向こう一ヶ月、ギルドの便所掃除な!」
「「「へーい」」」
あ、怒ってただけみたいだな。なんとなく性格も掴みかけてきたな。あんまり怒らせないようにしようっと。ミョンデ姉は、またケタケタ笑っている。一人だけ異彩を放っていやがるなあ。
「うむ。お前という奴は本当にどこまでも報告書通りの奴だな。それで成功したのか?」
「もちろん」
俺は素早くスキルのチェックをした。お、こいつはすげえな。ずっと俺が欲しかったものだ。
『物理シールド』
『対魔法シールド』
『防毒』
エースとやらのくせに何故か防御系が凄いんですが。
『念爆』
へえ、魔法を爆弾のように使えるのか。制約はあるが、いろいろ面白い真似ができるな。
工作や罠などには役に立ちそうだ。大規模爆発や細かい起爆まで時間設定も自由にできるのか。まるでテロリスト向けの能力じゃないか。
まあ頑張れば使い道はあるかな。でも、これは土壇場で機転を利かせられる凄い能力が必要だ。使いこなすのは難しい気がする。
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