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第一章 渡り人
1-43 従魔
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「それで要件は『従魔』の件だったな。そいつらか」
「一応、全部で六千二百体いるんですが」
「アホか! それだけ全部に出せるはずがなかろう。まったく、なんという太々しい小僧なんだ。この目で見ていないのなら、ティムなど半信半疑なものを」
「ギルマス、一体どういう事なんですか」
周りにいた冒険者が騒いでいた。
「あー、お前ら。この前の『ゴブリン・スタンピード』の話は聞いているな。あれを退治したのが、そこの餓鬼だ。見かけに騙されるんじゃねえぞ。そいつ、まだ二歳だからな。大人びてはいるが、大人の理屈では測れんヤバイ生き物だから!」
絶句する冒険者達。
「ちょっと、なんすか、それ。俺達、聞いていませんよ」
「二歳児って何、二歳児って」
「この前の件、俺達なんか出番なかったですよね?」
「当り前だ。うちは零細ギルドだからな。いるのも地元中心の冒険者くらいだ。上級冒険者のチーム・アラビムが呼ばれ、そして壊滅した騒ぎだったのだぞ?」
「あのう」
俺はちょっと訂正させていただこうと思って口を挟んだ。
「なんだ」
口を挟まれて少し不機嫌なギルマス。話の腰を折られるのは苦手そうだな。こうやって少しずつ相手を丸裸にしていこう。いきなり地雷を踏むのは嫌だから。
「壊滅と呼ぶのはどうでしょう。ふかふか巨乳のアリエスは、寿退社ですよ。射止めたのは、そこの叔父さんですが。彼こそは愛の狩人…‥むぐ」
あ、叔父さんったら酷いな。ここはアピールしておくべきシーンなのでは。
「あ、お騒がせしました。さあ続きをどうぞ」
そう言いながら退場する叔父さんに連行されていく俺を見送った冒険者一同は話を続けていた。ついでに幾つかのスキルは、がめてきたのだが。ただじゃ転ばないんだぜ。
『悪夢』
夢見が悪い人なんだ。こんなスキルどうしろと。封印案件だな。
『ベッドマナー』
これってベッドメイクのお仕事系の奴? それとも、あっち系かしら。そっちのマナーは悪くない方だったのだが。今は寝相凄く悪いけどね。夜中によく黒猫先生が掛け布団を直してくれているらしい。
『狸寝入り』
案外と使えそうなスキルなのだが、元々得意なんだよね。
『真剣勝負』
あれかな。何か、ここぞっていう時に必殺みたいな感じになれるのか? いつか使おう。碌なものがなかった!
「まあ、とにかく厄介な小僧でなあ。要注意人物だから」
「どうしろと?」
「絶対に触るな。しかし、よく見張っておけ。何をするのかわからんからな」
「「「へーい」」」
酷いな、姉御ったら。しかし、冒険者の数も少ないな。今いるのが10人ちょいってところか。仕事は少なそうだ。それでも領主は遠くから腕利きを呼んだ。そのお蔭で、こいつらもまだ生きているんだけどな。
「ねえねえ、お姉さん。それで従魔証はあ?」
「領主様から頼まれているんだ。二枚はくれてやろう。あれはギルドの負担だからな。実績のない奴にはくれてやらん!」
「実績?」
俺は、ぷふうっと笑ってしまった。これには、相手も「しまった!」という顔に。しかし、俺はニヤリっと笑って言った。
「その通りだね。俺はここに金を落としていないんだから」
これには相手が詰まった。
俺にはわかっている。あの騒ぎで、ここの冒険者を使ってやらなかった侘びというか、街の零細ギルドを救済するというか。あの狂王の魔核はここを通して王都あたりに捌かれるのだ。
「じーっ」
「わかった。わかったよ。大負けでとりあえず、5枚はくれてやるから、それで勘弁してくれ」
ありがとう。おかげであんたのスキルもいただけた事だし。どれ拝見。
「うおう!」
「はっはっは。驚いたか、小僧」
こ、この女。なんてタマだ。まともなスキルが一つもねえ。
『女は押しの一手』
『女は度胸』
『女に笑顔は似合わねえ』
『女の力』
最後の奴は、絶対にお色気抜きの奴だな。
「こいつ、まさか」
「念のために言っておくが、私には、こそこそとスキルを隠蔽する必要も能もない!」
うわー、ただの残念女だった~。何故、こいつがギルマスなんかに。きっと喧嘩しても他の冒険者が勝てないんだな。
「それで小僧。あと三枚はどいつにくれてやるんだ?」
「狂王」
彼は黙って頷くと、次の瞬間に、十分な溜めの後に『ロバの鳴き真似』を披露した。な、何故!
だが、次の瞬間には三体、ゴブリンキング二体とメイジ一体が現れた。
「おおっ」
冒険者からは凄まじいどよめきが湧いたが、五体揃ったティム戦隊は恭しくギルマスの前に傅いた。それを見ていたギルマスが一言。
「いいな、これ。あたしにも少し分けてくれないか」
「そんなの駄目に決まっているでしょうがあ」
「ケチ。いっぱい持っているくせに」
だが、ばあやは立ち上がるとギルマスの躾を開始した。
折檻の構えだ。四つん這いの格好をさせられて、お尻叩きの刑だね。お尻をペロンっと剥かれていないだけ、まだマシか。あはははは。
「え、ちょっと! あの、あたしが調子こいて悪うございました。ねえってばさ。あうっ」
本来ならゴブリンメイジなどに後れを取るような奴ではないのだろうが、ばあやの躾力にはかなわなかったようだ。何か、冒険者達が酒場に集まって、それを肴に飲み会を始めてしまった。
「あかんな、これは。あのう、次長さん。従魔証の発行をお願いできますでしょうか」
「わかりました。少々お待ちを。アンソニー君、君も若いのに大変だね」
若い、か。そう言われてもな。あ、冒険者ギルドって入れてもらっていないのだが、従魔証って出るのか?
「一応、全部で六千二百体いるんですが」
「アホか! それだけ全部に出せるはずがなかろう。まったく、なんという太々しい小僧なんだ。この目で見ていないのなら、ティムなど半信半疑なものを」
「ギルマス、一体どういう事なんですか」
周りにいた冒険者が騒いでいた。
「あー、お前ら。この前の『ゴブリン・スタンピード』の話は聞いているな。あれを退治したのが、そこの餓鬼だ。見かけに騙されるんじゃねえぞ。そいつ、まだ二歳だからな。大人びてはいるが、大人の理屈では測れんヤバイ生き物だから!」
絶句する冒険者達。
「ちょっと、なんすか、それ。俺達、聞いていませんよ」
「二歳児って何、二歳児って」
「この前の件、俺達なんか出番なかったですよね?」
「当り前だ。うちは零細ギルドだからな。いるのも地元中心の冒険者くらいだ。上級冒険者のチーム・アラビムが呼ばれ、そして壊滅した騒ぎだったのだぞ?」
「あのう」
俺はちょっと訂正させていただこうと思って口を挟んだ。
「なんだ」
口を挟まれて少し不機嫌なギルマス。話の腰を折られるのは苦手そうだな。こうやって少しずつ相手を丸裸にしていこう。いきなり地雷を踏むのは嫌だから。
「壊滅と呼ぶのはどうでしょう。ふかふか巨乳のアリエスは、寿退社ですよ。射止めたのは、そこの叔父さんですが。彼こそは愛の狩人…‥むぐ」
あ、叔父さんったら酷いな。ここはアピールしておくべきシーンなのでは。
「あ、お騒がせしました。さあ続きをどうぞ」
そう言いながら退場する叔父さんに連行されていく俺を見送った冒険者一同は話を続けていた。ついでに幾つかのスキルは、がめてきたのだが。ただじゃ転ばないんだぜ。
『悪夢』
夢見が悪い人なんだ。こんなスキルどうしろと。封印案件だな。
『ベッドマナー』
これってベッドメイクのお仕事系の奴? それとも、あっち系かしら。そっちのマナーは悪くない方だったのだが。今は寝相凄く悪いけどね。夜中によく黒猫先生が掛け布団を直してくれているらしい。
『狸寝入り』
案外と使えそうなスキルなのだが、元々得意なんだよね。
『真剣勝負』
あれかな。何か、ここぞっていう時に必殺みたいな感じになれるのか? いつか使おう。碌なものがなかった!
「まあ、とにかく厄介な小僧でなあ。要注意人物だから」
「どうしろと?」
「絶対に触るな。しかし、よく見張っておけ。何をするのかわからんからな」
「「「へーい」」」
酷いな、姉御ったら。しかし、冒険者の数も少ないな。今いるのが10人ちょいってところか。仕事は少なそうだ。それでも領主は遠くから腕利きを呼んだ。そのお蔭で、こいつらもまだ生きているんだけどな。
「ねえねえ、お姉さん。それで従魔証はあ?」
「領主様から頼まれているんだ。二枚はくれてやろう。あれはギルドの負担だからな。実績のない奴にはくれてやらん!」
「実績?」
俺は、ぷふうっと笑ってしまった。これには、相手も「しまった!」という顔に。しかし、俺はニヤリっと笑って言った。
「その通りだね。俺はここに金を落としていないんだから」
これには相手が詰まった。
俺にはわかっている。あの騒ぎで、ここの冒険者を使ってやらなかった侘びというか、街の零細ギルドを救済するというか。あの狂王の魔核はここを通して王都あたりに捌かれるのだ。
「じーっ」
「わかった。わかったよ。大負けでとりあえず、5枚はくれてやるから、それで勘弁してくれ」
ありがとう。おかげであんたのスキルもいただけた事だし。どれ拝見。
「うおう!」
「はっはっは。驚いたか、小僧」
こ、この女。なんてタマだ。まともなスキルが一つもねえ。
『女は押しの一手』
『女は度胸』
『女に笑顔は似合わねえ』
『女の力』
最後の奴は、絶対にお色気抜きの奴だな。
「こいつ、まさか」
「念のために言っておくが、私には、こそこそとスキルを隠蔽する必要も能もない!」
うわー、ただの残念女だった~。何故、こいつがギルマスなんかに。きっと喧嘩しても他の冒険者が勝てないんだな。
「それで小僧。あと三枚はどいつにくれてやるんだ?」
「狂王」
彼は黙って頷くと、次の瞬間に、十分な溜めの後に『ロバの鳴き真似』を披露した。な、何故!
だが、次の瞬間には三体、ゴブリンキング二体とメイジ一体が現れた。
「おおっ」
冒険者からは凄まじいどよめきが湧いたが、五体揃ったティム戦隊は恭しくギルマスの前に傅いた。それを見ていたギルマスが一言。
「いいな、これ。あたしにも少し分けてくれないか」
「そんなの駄目に決まっているでしょうがあ」
「ケチ。いっぱい持っているくせに」
だが、ばあやは立ち上がるとギルマスの躾を開始した。
折檻の構えだ。四つん這いの格好をさせられて、お尻叩きの刑だね。お尻をペロンっと剥かれていないだけ、まだマシか。あはははは。
「え、ちょっと! あの、あたしが調子こいて悪うございました。ねえってばさ。あうっ」
本来ならゴブリンメイジなどに後れを取るような奴ではないのだろうが、ばあやの躾力にはかなわなかったようだ。何か、冒険者達が酒場に集まって、それを肴に飲み会を始めてしまった。
「あかんな、これは。あのう、次長さん。従魔証の発行をお願いできますでしょうか」
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