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第一章 渡り人
1-48 旅路の途中で
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結局、そこから太鼓持ちに徹した伯爵の奮戦のお蔭で、なんとか王都行きの許可が下りた。
「なんだかよくわからないけれど、まあその人が一緒なら大丈夫でしょう。約束通り、お土産は忘れないでね」
仕方がないので、俺が入れ知恵して、あれこれ土産で釣ったのだ。うちの母君の場合は、自分だけの土産では釣れない。
家族親戚は言うに及ばず、ご近所や教会やお世話になっている人、村長さんとか自衛団とか、隣村への物とか。いろいろ気を回す人なので。
「伯爵、すいませんね。うちの母って、こういう人なんで」
「いや、立派な母上だ。感服したよ……」
完敗の間違いなのでは? とにかく、こうして俺達は王都に行けるようになったらしい。
支度を整え、可愛らしい格好で町に戻った俺達。向こうでは大人たちが談笑していた。
「お、帰ってきた、帰ってきた。その格好は説得に成功したかな」
少し出来上がって、蟹股な感じで足を組んだ格闘家っぽい感じに露出度の高いギルマスが訊いた。その割にあまり色っぽくないなあ。
「苦労したよ、主に僕が」
「はは、それで王都に行けるんならよかったじゃないか。そうしていると可愛いぞ、お前」
そうかもしれないね。可愛いお手製のウサギの帽子を被り、ウサギのコートを羽織り、革の靴にもウサギのファーで装飾を。もふもふ幼児ですよー。見た目がもう少し幼ければ完璧だったのにー。
ミョンデ姉も限りなく俺に近いウサギ・コーデだ。もっぱら、うちの近所で手に入る豪華な装飾となると、主にこれに尽きるので。
それでも、他所の子だと、こんな余所行き持っている子はいないのだ。ズボンとスカートの違いがメインかな。
ミョンデ姉の靴は赤い奴だ。苦労して俺が調合した染料で作ってもらった皮だ。雨で滲まないよう、苦労に苦労を重ねた代物さ。姉の労いはシンプルだったけど。
「ご苦労」だってさ~。
ねえ、何様? あんた何様? きっと、お姉様なんだよね。俺は今からもう決意しているのさ。生まれてくる下の子のために、ミハエル兄様のように優しいお兄様になろうと。
一応出かけ前に、母上のお腹は撫でてきたぜー。まあ、すぐに帰ってくるんだけどさ。なるべく居座ってこようと思って。
別に俺はミョンデ姉ほど草むしりが嫌な訳じゃあないんだが。王都でなるべくあれこれ見たいなと。あと、魔法やスキルもたくさん欲しいなと。次回は王都にいつ行けるのか、わかったもんじゃあないのだから。
翌朝、ご領主様の館に泊まっていた俺達は、ギルドにて王都へ向かって出発した。
「いってきまーす」
俺は叔父さんに手を振った。今回は、一応は父兄のミョンデ姉がいるし。というのは真っ赤な嘘だ。一番面倒をかけそうなのがミョンデ姉なのだから。
その辺については、叔父さんは「ばあや」を当て込んでいる。伯爵が引率だしな。そもそも俺だけなら何の心配も必要ないのだから。叔父さんは仕事があるし、アリエスと離れたくないのだ。
「アリエス、お母さんを宜しくね」
「任せてちょうだい」
お腹が大きい間は、アリエスがうちの面倒を見てくれるようだ。叔父さんも一緒だから賑やかだろう。
こっちはこっちで楽しくやらせてもらいまっせ~。俺とミョンデ姉はもう、生まれて初めての真の都会を目指して浮き浮きで踊り加減だった。踊ろうがどうしようが、狂王やばあやの腕の中なのだが。ついでに伯爵も同じ運命だった。
「何故、この私までが~」
「あんたの馬車って、遅そうだからさ」
確かに馬車はのろい。こっちは時速百五十キロくらい出ている。まだ早朝だから休憩入れて八時間かかっても、余裕で当日中に王都へは着くはずだ。王都までは約千キロってところかな。伯爵の馬車は後からゆっくり来るようだ。
だが、前方は馬車が何台か塞いでいる。狂王達も足を止めた。
「あれ、どうして止まっちゃうの?」
「マイロード、魔物出た。どうする?」
「魔物?」
よく見たら、何やらゴツイ蜥蜴みたいな大きな魔物が一匹いて、そいつが道を塞いでいた。
「ちぇっ、あんな小物に」
俺にはわかっていた。図体はでかいが、そうたいしたことはない。
「おーい、お前ら。そんな雑魚さっさとやっつけろよ。通行の邪魔だ~」
「ばっ! この糞餓鬼ー。今、奴を刺激するな!」
だがちょっと遅かったらしい。次の瞬間には蜥蜴は瞬時に襲い掛かってきて、冒険者達から悲鳴が上がった。
「うわーー」
「サロン!」
「くそ」
だが、狂王は俺を地面に置くと瞬時に奴に飛び掛かって、そいつを思いっきり投げ飛ばし地面に仰向けに叩きつけた。そして言った。
「さあ、マイロード。止めを」
「え、俺?」
いや、そこまでやったんならさ。まあそれは言っても聞いてくれないんだろうな。俺は風の刃で首を落とした。
「うわー、ペロー!」
なんだ? だが狂王はそいつを尻尾から持ち、その腹を絞るようにした。
切断された首から、人間が出産されたようだった。そして、そいつはちと粘液の中でのたうちながらも生きていた。丸呑みされていたのかよ! もう半分くらい消化されていない?
俺はそいつを水で洗い流し、そしてグランドヒールをかけてやった。よかったぜ、落としたのが首で。変なとこで真っ二つにしていたら!
「ペロー、よかったな」
「うう、みんなありがとう。ただいま」
他の連中は駆け寄って抱き合い。おんおんと泣いていた。なんだ、そりゃあ。
「なんだかよくわからないけれど、まあその人が一緒なら大丈夫でしょう。約束通り、お土産は忘れないでね」
仕方がないので、俺が入れ知恵して、あれこれ土産で釣ったのだ。うちの母君の場合は、自分だけの土産では釣れない。
家族親戚は言うに及ばず、ご近所や教会やお世話になっている人、村長さんとか自衛団とか、隣村への物とか。いろいろ気を回す人なので。
「伯爵、すいませんね。うちの母って、こういう人なんで」
「いや、立派な母上だ。感服したよ……」
完敗の間違いなのでは? とにかく、こうして俺達は王都に行けるようになったらしい。
支度を整え、可愛らしい格好で町に戻った俺達。向こうでは大人たちが談笑していた。
「お、帰ってきた、帰ってきた。その格好は説得に成功したかな」
少し出来上がって、蟹股な感じで足を組んだ格闘家っぽい感じに露出度の高いギルマスが訊いた。その割にあまり色っぽくないなあ。
「苦労したよ、主に僕が」
「はは、それで王都に行けるんならよかったじゃないか。そうしていると可愛いぞ、お前」
そうかもしれないね。可愛いお手製のウサギの帽子を被り、ウサギのコートを羽織り、革の靴にもウサギのファーで装飾を。もふもふ幼児ですよー。見た目がもう少し幼ければ完璧だったのにー。
ミョンデ姉も限りなく俺に近いウサギ・コーデだ。もっぱら、うちの近所で手に入る豪華な装飾となると、主にこれに尽きるので。
それでも、他所の子だと、こんな余所行き持っている子はいないのだ。ズボンとスカートの違いがメインかな。
ミョンデ姉の靴は赤い奴だ。苦労して俺が調合した染料で作ってもらった皮だ。雨で滲まないよう、苦労に苦労を重ねた代物さ。姉の労いはシンプルだったけど。
「ご苦労」だってさ~。
ねえ、何様? あんた何様? きっと、お姉様なんだよね。俺は今からもう決意しているのさ。生まれてくる下の子のために、ミハエル兄様のように優しいお兄様になろうと。
一応出かけ前に、母上のお腹は撫でてきたぜー。まあ、すぐに帰ってくるんだけどさ。なるべく居座ってこようと思って。
別に俺はミョンデ姉ほど草むしりが嫌な訳じゃあないんだが。王都でなるべくあれこれ見たいなと。あと、魔法やスキルもたくさん欲しいなと。次回は王都にいつ行けるのか、わかったもんじゃあないのだから。
翌朝、ご領主様の館に泊まっていた俺達は、ギルドにて王都へ向かって出発した。
「いってきまーす」
俺は叔父さんに手を振った。今回は、一応は父兄のミョンデ姉がいるし。というのは真っ赤な嘘だ。一番面倒をかけそうなのがミョンデ姉なのだから。
その辺については、叔父さんは「ばあや」を当て込んでいる。伯爵が引率だしな。そもそも俺だけなら何の心配も必要ないのだから。叔父さんは仕事があるし、アリエスと離れたくないのだ。
「アリエス、お母さんを宜しくね」
「任せてちょうだい」
お腹が大きい間は、アリエスがうちの面倒を見てくれるようだ。叔父さんも一緒だから賑やかだろう。
こっちはこっちで楽しくやらせてもらいまっせ~。俺とミョンデ姉はもう、生まれて初めての真の都会を目指して浮き浮きで踊り加減だった。踊ろうがどうしようが、狂王やばあやの腕の中なのだが。ついでに伯爵も同じ運命だった。
「何故、この私までが~」
「あんたの馬車って、遅そうだからさ」
確かに馬車はのろい。こっちは時速百五十キロくらい出ている。まだ早朝だから休憩入れて八時間かかっても、余裕で当日中に王都へは着くはずだ。王都までは約千キロってところかな。伯爵の馬車は後からゆっくり来るようだ。
だが、前方は馬車が何台か塞いでいる。狂王達も足を止めた。
「あれ、どうして止まっちゃうの?」
「マイロード、魔物出た。どうする?」
「魔物?」
よく見たら、何やらゴツイ蜥蜴みたいな大きな魔物が一匹いて、そいつが道を塞いでいた。
「ちぇっ、あんな小物に」
俺にはわかっていた。図体はでかいが、そうたいしたことはない。
「おーい、お前ら。そんな雑魚さっさとやっつけろよ。通行の邪魔だ~」
「ばっ! この糞餓鬼ー。今、奴を刺激するな!」
だがちょっと遅かったらしい。次の瞬間には蜥蜴は瞬時に襲い掛かってきて、冒険者達から悲鳴が上がった。
「うわーー」
「サロン!」
「くそ」
だが、狂王は俺を地面に置くと瞬時に奴に飛び掛かって、そいつを思いっきり投げ飛ばし地面に仰向けに叩きつけた。そして言った。
「さあ、マイロード。止めを」
「え、俺?」
いや、そこまでやったんならさ。まあそれは言っても聞いてくれないんだろうな。俺は風の刃で首を落とした。
「うわー、ペロー!」
なんだ? だが狂王はそいつを尻尾から持ち、その腹を絞るようにした。
切断された首から、人間が出産されたようだった。そして、そいつはちと粘液の中でのたうちながらも生きていた。丸呑みされていたのかよ! もう半分くらい消化されていない?
俺はそいつを水で洗い流し、そしてグランドヒールをかけてやった。よかったぜ、落としたのが首で。変なとこで真っ二つにしていたら!
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他の連中は駆け寄って抱き合い。おんおんと泣いていた。なんだ、そりゃあ。
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