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第一章 孤独の果てに
1-19 大山脈を越えて
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俺は皆のところへと戻り、ここでの戦いの終了を告げた。
「さて、とりあえずの脅威は排除したわけだが、これからどうするね。
帝国は諦めずに、この厳しい冬の山岳地帯であろうとも懲りずに追跡してくるだろう。
奴らがお前達を追う理由は切実であり、奴らにとっては長年の悲願の成就がかかっているといってもいい。
また帝国の皇子にしてみれば、お前達を捉え娶る事が出来ないのでは次期皇帝の座はないと思っておるやもしれんのだし。
軍勢は損耗が激し過ぎて不利として、今度はまた以前とは比べ物にならんような少数精鋭を送ってきそうだ」
アリエスは天を仰ぎ、妹は姉のその様子を一心に見つめている。
「……帝国の皇太子は、冷酷で女好きで、あの残虐無比な皇帝に瓜二つと言われているわ。
あの男が十人いる皇子達の中では一番権力を持っていて、私達にも一番執着しているのかもしれないわね。
他の皇子の中では、やはり年功順に第二皇子第三皇子の順に権勢を誇り、その他の皇子達は皆その派閥の中で対立しあっている感じらしいわ。
皇太子が私を、そして次期皇帝時代のナンバー2の座を巡って、メリーベルを第二皇子と第三皇子の勢力が争うという感じかしら。
さすがにその辺りの各派閥のトップを出し抜こうという気概を持った下っ端の皇子はいないと思うわ」
かなり嫌そうに、彼女は自分達が帝国に捕まったら一体どのように分配されるかについての所見を述べてくれた。
だが異論を唱える奴もいた。
「メリーベルは僕の大事な人なの!」
あまりにも見当はずれの唐突に出された意見に、思わず全員が爆笑してしまった。
「うん。いっそ、その方がいいかもしれないなあ」
「わーい、シルちゃんからプロポーズしてくれた」
「ああ、あの帝国の皇太子の物になるくらいなら、私もその方がいいわあ」
「可愛い、シルちゃんったら本当に可愛い」
そう言い放ち、メリーベルは再び可愛い弟君の首っ玉に齧りつき、二人の王女にもふられて本当に大満足そうなシルバー。
笑顔を取り戻した子供達を見て俺も、ほうっと白い息を吐いた。
俺は先程の覚悟を決めた大虐殺と、そしてこれからも続くだろう俺の手による数万単位にも及ぶ敵の殲滅という未来に少し陰鬱な気持ちであったのだが、その気分も綺麗に吹っ飛んでしまった。
これが人間のメンタルそのままだったら死にたいような気分だったのだろうが、この強力なパワーの魔神脳がもたらしてくれる強靭な精神はそれにも優に耐えてくれたようだった。
俺も再び愛犬の頭をぐりぐりしてやってから皆に宣言した。
「とりあえず、次の敵が来る前にここを出発しよう。
どの道、俺達は後に戻る訳にはいかぬのだからな」
「うん、行こう」
そして再び王女二人はフェンリルに乗車して、俺達の道なき道を行く逃避行は再開された。
俺は常にドーム型感知結界による上空警戒を怠らず、万が一敵が現れた時は森へ隠れられるように常に遮蔽物を確保できるようにそれに沿って安全に配慮しながら進んでいた。
まるで、エンジンが止まってしまった時のオートローテーションによる緊急着陸地点を常に確保しながらでないと航路を確保できないヘリコプターのような有様だった。
そして俺はある物の材料をかき集めながら進んでいたので、アリエスが不思議そうに訊いてくる。
「ジン、何をやっているの」
「ああ、ちょっと作りたいものがあってな。
そいつの材料を集めているのさ。
お前達、寒くはないか。
ここは、今までよりも標高が高いし、寒く息苦しいはずだ」
「うん、シルバーが温かいからそんなに寒くないけど、息は少し苦しい時があるかな」
「そうか、それは空気が薄いからそうなるのだ。
酸素ボンベがあればいいのだが、ここにはそのような物はないから困ったな。
この先もっと標高が上がったら子供達が耐えられるだろうか。
元来、ここは人が旅するような場所ではない」
むしろ地球なんかじゃ装備を整えて、アルピニストなんかが登山に来るような物凄い場所なのだから。
このような場所をほぼ無装備の子供連れで旅しているなんて、改めて考えると自分はも気でも違ったのかと思うほどだ。
ふと周りを見渡せば白銀に染まった連峰が延々と続き、そのうちの一つを単騎にて子連れで進みゆく俺は、表には出さないのだが内心で半ば途方に暮れていた。
「主、空気が濃ければいいの?」
アリエスのポケットの中で俺達のやり取りを耳にしたルーが訊いてきた。
「ああ、もしかして周囲の空気を濃くできるのか」
「やった事がないけど、風魔法の範疇だと思うからやってみましょうか」
「頼む」
そして、ルーは風魔法を使って空気の濃度を調節してくれた。
俺はターボエンジンのように自力で空気を加給できるので何も問題ないのだが、子供達は少し堪えているようだったので助かる。
シルバーは魔獣として高い身体能力があるのに加えて種族的に風魔法もこなすので、どうという事もない。
「凄いな、急に息が楽になったよ」
「本当~」
うちの家政婦さんは本当に有能だな。ただ今ガルーダ・エアコンプレッサー稼働中。
「さて、とりあえずの脅威は排除したわけだが、これからどうするね。
帝国は諦めずに、この厳しい冬の山岳地帯であろうとも懲りずに追跡してくるだろう。
奴らがお前達を追う理由は切実であり、奴らにとっては長年の悲願の成就がかかっているといってもいい。
また帝国の皇子にしてみれば、お前達を捉え娶る事が出来ないのでは次期皇帝の座はないと思っておるやもしれんのだし。
軍勢は損耗が激し過ぎて不利として、今度はまた以前とは比べ物にならんような少数精鋭を送ってきそうだ」
アリエスは天を仰ぎ、妹は姉のその様子を一心に見つめている。
「……帝国の皇太子は、冷酷で女好きで、あの残虐無比な皇帝に瓜二つと言われているわ。
あの男が十人いる皇子達の中では一番権力を持っていて、私達にも一番執着しているのかもしれないわね。
他の皇子の中では、やはり年功順に第二皇子第三皇子の順に権勢を誇り、その他の皇子達は皆その派閥の中で対立しあっている感じらしいわ。
皇太子が私を、そして次期皇帝時代のナンバー2の座を巡って、メリーベルを第二皇子と第三皇子の勢力が争うという感じかしら。
さすがにその辺りの各派閥のトップを出し抜こうという気概を持った下っ端の皇子はいないと思うわ」
かなり嫌そうに、彼女は自分達が帝国に捕まったら一体どのように分配されるかについての所見を述べてくれた。
だが異論を唱える奴もいた。
「メリーベルは僕の大事な人なの!」
あまりにも見当はずれの唐突に出された意見に、思わず全員が爆笑してしまった。
「うん。いっそ、その方がいいかもしれないなあ」
「わーい、シルちゃんからプロポーズしてくれた」
「ああ、あの帝国の皇太子の物になるくらいなら、私もその方がいいわあ」
「可愛い、シルちゃんったら本当に可愛い」
そう言い放ち、メリーベルは再び可愛い弟君の首っ玉に齧りつき、二人の王女にもふられて本当に大満足そうなシルバー。
笑顔を取り戻した子供達を見て俺も、ほうっと白い息を吐いた。
俺は先程の覚悟を決めた大虐殺と、そしてこれからも続くだろう俺の手による数万単位にも及ぶ敵の殲滅という未来に少し陰鬱な気持ちであったのだが、その気分も綺麗に吹っ飛んでしまった。
これが人間のメンタルそのままだったら死にたいような気分だったのだろうが、この強力なパワーの魔神脳がもたらしてくれる強靭な精神はそれにも優に耐えてくれたようだった。
俺も再び愛犬の頭をぐりぐりしてやってから皆に宣言した。
「とりあえず、次の敵が来る前にここを出発しよう。
どの道、俺達は後に戻る訳にはいかぬのだからな」
「うん、行こう」
そして再び王女二人はフェンリルに乗車して、俺達の道なき道を行く逃避行は再開された。
俺は常にドーム型感知結界による上空警戒を怠らず、万が一敵が現れた時は森へ隠れられるように常に遮蔽物を確保できるようにそれに沿って安全に配慮しながら進んでいた。
まるで、エンジンが止まってしまった時のオートローテーションによる緊急着陸地点を常に確保しながらでないと航路を確保できないヘリコプターのような有様だった。
そして俺はある物の材料をかき集めながら進んでいたので、アリエスが不思議そうに訊いてくる。
「ジン、何をやっているの」
「ああ、ちょっと作りたいものがあってな。
そいつの材料を集めているのさ。
お前達、寒くはないか。
ここは、今までよりも標高が高いし、寒く息苦しいはずだ」
「うん、シルバーが温かいからそんなに寒くないけど、息は少し苦しい時があるかな」
「そうか、それは空気が薄いからそうなるのだ。
酸素ボンベがあればいいのだが、ここにはそのような物はないから困ったな。
この先もっと標高が上がったら子供達が耐えられるだろうか。
元来、ここは人が旅するような場所ではない」
むしろ地球なんかじゃ装備を整えて、アルピニストなんかが登山に来るような物凄い場所なのだから。
このような場所をほぼ無装備の子供連れで旅しているなんて、改めて考えると自分はも気でも違ったのかと思うほどだ。
ふと周りを見渡せば白銀に染まった連峰が延々と続き、そのうちの一つを単騎にて子連れで進みゆく俺は、表には出さないのだが内心で半ば途方に暮れていた。
「主、空気が濃ければいいの?」
アリエスのポケットの中で俺達のやり取りを耳にしたルーが訊いてきた。
「ああ、もしかして周囲の空気を濃くできるのか」
「やった事がないけど、風魔法の範疇だと思うからやってみましょうか」
「頼む」
そして、ルーは風魔法を使って空気の濃度を調節してくれた。
俺はターボエンジンのように自力で空気を加給できるので何も問題ないのだが、子供達は少し堪えているようだったので助かる。
シルバーは魔獣として高い身体能力があるのに加えて種族的に風魔法もこなすので、どうという事もない。
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