デビルナイツ・ジン

緋色優希

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第一章 孤独の果てに

1-24 学習タイム

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「さて、帝国隠密部隊の諸君。
 俺の質問に大人しく答えてもらいたいのだが」

 俺はいろんな国の人間達、捕虜にした冒険者からテレパシーの補佐を受けながら言葉を習ったので、かなりの国の言葉を話せる。

 この魔神脳はそういう能力にも大変に秀でている。

 比較的あちこちで地球の英語のような共通語として使われているのは、二人の王女達が話している言葉なのだが、それも事情を知った今では納得の内容だった。

 あの冒険者どもはそういった事はまったく話してくれなかったからな。

 もちろん、目の前にいる奴らは返事を返さないのだが。
 当り前だ、こいつらは精鋭であり、こうなる事も覚悟の上の突撃なのだ。

 こっちにシルバーがいたのでなければ、俺も今回は大いに困っただろう。
 今奴らは縛られて自決する事さえできない。
 奥歯に毒薬や爆薬のスイッチは仕掛けていないようだった。

「来たのは、お前達二人だけか?」

 厳寒期のこのアルブーマ大山脈の真夜中に吹き荒れる、身を切るような寒風は人の身ではさぞかし辛かろう。

 俺だってもし自分が人間なのだったら、暖かな火鉢が燃え盛るかまくらの中から一歩も出たくもないね。

「お前達の隠密の能力はスキルによるものだな。

 持ち物を調べたのだが、それらしき魔導製品もないし、お前らの衣服にもそういう仕掛けはなかった。

 うちのワンコもスキルによるものだと言っている。
 それはどういうスキルで、どうやって習得する」

 一方が沈黙する問答ばかりでは埒が明かないので、少し事態を動かす事にした。
 奴らがスキルを使わざるを得なくしてやろうというのだ。

 俺はシルバーにテレパシーで指示して、スキルを使えるように片方の奴の一部の戒めを解き若干の自由を与えながら、痛めつけるために全体を締め上げさせた。

 そいつは声にならない悲鳴を上げながらもスキルで隠密を発揮していった。

 思った通りだ、こいつらは強力な攻撃のスキルを持っている訳ではない、人攫いに特化された能力の持ち主で隠密に紛れてなんとか逃げ出そうという腹なのだ。

 上手くすると逃げたと思われて、拘束が解かれるかもしれないので。
 その心理を逆手に取って、俺はそいつにわざと隠密を使わせた。

 そして俺はその発動の具合を精細に感知して、俺自身も電磁波・音波・振動・匂いの分子や魔力の流れやその行使の具合の具合までも学び、そして操作して、疑似的な超隠密スキルを創り上げていった。

 シルバーに上手に誘導させて何度も何度も隠密をやり直させて、完璧に近いような隠密スキルを創り上げた。

 以前からこういう物が欲しかったのだが、なかなか独学では作れなかったのだ。
 だが、目の前に教師というか生きた参考書があると全然違う。

 このスキル習得法は昔捕まえた冒険者達からなんとかスキルを入手できないかと思って試していた方法なのだ。

 これで習得するのに向いたものと向かないものがあるのだが、この隠密こそはこのスタディ法がもっとも生きるタイプのスキルであろう。

 生憎な事にここまで凄い隠密を持っている奴はいなかったのだが。

 この前に覚えた電磁波操作のやり方で、地球の軍事用透明化技術を真似る事は出来たが、視えなくしたくらいでは敵の察知は誤魔化せない。

 今日創り上げたスキルはその比ではなく、やろうと思えば俺が街にさえ入れるような力を与えてくれた。そしてそれを用いて気合のみをその場に残し、それ以外の全ての気配を消し切った俺を見て、奴は自分の愚かさに気がついた。

 敵に対して自分の武器を見事に与えてしまったのだ。俺はシルバーに命じて、そいつの拘束を解かせた。

 その意味を知った奴はその場で毒の小瓶を呷って自決した。
 俺はもう一人の敵に向かってこう言った。

「お前さんはいいスキルを持っているのかい」

 男は低い声でこう言った。
「殺せ、俺のスキルは奴の持っている物と同じだ」

「あの鳥を呼んでくれないか。
 上手くすると、お前がそいつに乗って帰れるかもしれんぞ」

「そう謀って、あの貴重な隠密魔獣を始末しようというのだろう。
 お前が隠密を覚えようが、これからも隠密の兵士は多数やってくるぞ。
 いつかはお前達も終わる」

 あくまで抵抗の構えを見せる男。
 だが、俺は嘲笑った。

「そうか、あの魔獣は逃げなければならない時には、あの尾根に潜むよう指示されていたか。
 貴重な情報をありがとうよ」

 こいつらは心を隠す術にも長けている。上手に誘導しないと情報を引き出せないようだったので謀ってやったのだ。

「貴様、人の心を読むか。
 おのれっ、邪悪なる魔神の申し子め。
 貴様に我らが神アルクスの永遠の呪いあれ。
 帝国万歳!」

 そう言い残し、用無しになったので拘束を解かれたそいつもまた薬を呷って自害した。
 そして俺はシルバーに言った。

「あの鳥は異様に敏感な奴だった。
 新しく手に入れた隠密も試したいので、そいつは俺がやろう。

 お前はここを護りつつ、そいつらの骸を埋めておいてくれ」

「あーい、それは残念」
 俺は奴の頭をぐりぐりしてやって、雪原上を走った。

 シルバーの奴め、口では少し残念がってはいたのだが、大好きな穴掘りができるので尻尾の方は非常に正直だったな。

 そして、俺は奴らから情報を仕入れた尾根へと向かい、覚えたばかりのスキルを発揮し、そのピクリとも動かずに主人から呼ばれるのを待って風を避けるための窪みで待機している巨鳥に向かっていった。

 十メートル、八メートル、俺は殺気を消して少しずつそいつに向かってにじり寄っていったのだが、そこはやはり魔物だ。

 あと少しで手が届くといったところで感づかれてしまい、奴の真っ赤な目が開いた。

 そいつは翼を広げると、今度は本格的な威嚇のための鋭い大きな鳴き声を俺に向かって発したが、もう遅い。

 俺は瞬歩にて懐に飛び込み、その四本の極太な剛腕に物を言わせ、飛行魔獣にしてはやや小柄なその全長五メートルほどの鳥の喉を締め上げ、下の腕で翼を掴んだ。

 四本腕というのもなかなかに便利なものだ。

 さすがにそれが千手観音のようであったなら、元が人の身では扱いというか制御に困るところなのだが。

 そして俺はそいつの両羽根を力任せに根元から引き千切り、次の瞬間に上下の腕をスイッチして下の腕で奴の体を押さえ、その苦痛に聞くに耐えないような悪魔の如くの絶叫を上げていた首を、上の両腕で力任せにねじ切って真っ赤な噴水を作り上げた。

 俺はその浴びた返り血で自らを彩った派手な化粧を水魔法で吹き散らし、ほっとしたように息を吐いた。

「ふう、段々と襲撃の手が込んできやがるな。
 だが、お蔭でいい隠密のスキルが手に入った。
 この先の事を考えると、いい襲撃だったものだ」
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