デビルナイツ・ジン

緋色優希

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第一章 孤独の果てに

1-27 街へ

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 街まで行く道中に、俺は頑張って火魔法を使った不器用な鍛冶を行ない、苦労して見てくれは少し悪いのだが犬笛なる物を作ってみた。

  ルーが一緒についているからアリエス達に何かあった時にはテレパシーで俺に知らせてくれると思うのだが、何か不測の事態に備えてだ。

 何しろ、いくら他の人間から視えないからって俺のような者がノシノシと街中へ入ってしまっていいものなのか、今のところはまったく見当もつかないので。

 万が一、不法侵入が見つかろうものなら、どえらい騒ぎになる事は請け合いだ。

 これを吹き鳴らせば、シルバーはもちろんの事、俺にもよく聞こえる代物なのだ。

 冗談でも悪戯で吹かないようにメリーベルには言い含めておいた。

 その時は俺とシルバーが血相を変えて街中に暴れ込む羽目になるのだからな。

 でも笛を吹いたら大好きな可愛いワンコが走ってくるのなら、まだ子供なら吹いてみたくて全身がうずうずするよな。

「メリーベル、それ勝手に吹いちゃ駄目だからね?
 本当に駄目だよ」

「わ、わかっているよ、お姉ちゃん」
 
 彼女も、そのような様子だったので姉からも厳重に注意されて目を泳がせていた。

 でもよかった事だ、このような逃避行の中でも子供らしさを失うことなく来れたのだから。

 それに関しては、うちのワンコも大きく貢献しているのではないのだろうか。

 俺は視覚だけでなく、聴覚の方も非常に帯域が広く、それらの雑多な情報をすべて分析する事が可能だ。

 例の感知や視覚情報などと比べても、聴覚情報の処理は俺にとっては非常に『軽い』ため、そういう意味ではある意味で使い勝手が良い。

 まあ情報を媒介するのが音波であるので、大気中での減衰が激しいのとあまり距離が届かないのが難点なのだが、まあレーダーの応用でソナーのような働きをさせてやれば、かなりの情報は手に入るだろう。

 子供達だけで船に乗せ、俺は海を泳がないといけなくなった場合でも水中で警戒用のソナーとしても使えるし、地中へ振動を放って返って来た情報を魔神脳で解析する事も可能だ。

 見通しの悪い場所でも、うまく使えば潜んでいる軍勢の探査や、遠くにいる者達の足音探知に使えるかもしれない。

 いつか、帝国の船に潜水艦みたいにソナーのピンを当てて遊んでみようか。

 まあ、何の意味があるのか首を傾げられるかもしれないが、その後で木造の帆船らしいこの世界の船なら一発で粉々になりそうな、魚雷並みの威力を持ったソナー誘導式の氷魔法をぶち込んでやったら、あの世で理解するだろう。

 そして、俺達はついに目的の街へと辿り着いた。

 大きな街は山頂からいくつも見えたが、他はまだまだ遠い。

 ずっと厳寒の山中にいた子供達をなんとかして暖かい普通のベッドで寝かせてやらねばならない。

 この街の周りは塀というか、高めの丈夫そうな木製の柵に囲まれていた。

 おそらく野獣除けといった感じの、いかにも山村に近いような田舎街といった風情だ。

 まあかなり材料は必要なのだが、木なら古くなったら薪などへ再利用も可能だし、山へ行けば植林さえ怠らなければ、またいくらでも生えてくるのだからな。

 そして、俺達はあまり通る者のいなそうな寂れた山脈の麓の街道を街の前までやってきていた。

 しかし、俺はどうにも居心地が悪い。

 一応、姿は視えなくなっているのだし、俺の近代的なセンサーを越える性能を持つほどの感知能力でも察知できないほどの隠密を展開しているのだが、何かの折に見つかってしまわないとも限らない。

 人間の中にも異常に勘の鋭い人間もいるし、特別なオーラ視の能力を持つ人間から見えないとも限らない。

 そのような人間は地球にも大勢いたのだから。

 何しろ、うっかりしていて誰かに触られてしまうと一瞬にして存在が露見してしまう。

 不可視で感知不能の状態といえども、存在そのものが消えてなくなっているわけではないので触る事はできる。

 魔力で弾くフィールドを展開する事も可能なのだが、それは見つかればもっと怪しいマズイものだ。

 この異形があまり多数の人間の前に堂々と出没するのは、余計な危機を招く原因でもある。

 本来ならば、俺はここで二人と別れた方がいいのだが、あの子達だけで送り出すにはあまりにも状況が絶望的で、あっという間に詰んでしまいそうだ。

 追手の魔の手が完全に止まったわけではない。

 いざとなったら、この国を今すぐ落としてでも二人の確保に走るのに違いない。

 この国が落ちるのも時間の問題なのだから、それもただのきっかけに過ぎずタイミングが少し早まるだけなのだ。

 とにかく、この図体なので一旦その姿が視えちまったとなると、どうしようもないのが困り物だ。

 向こうには、この手の隠密を見破る魔導の機械があるとかじゃないんだろうな。

 元々向こうの連中が使っていた技術の応用なんで、それも大いにあり得る事なのだが。

 だが、それでもなんとか人間の街まではやってこれたのだから、よしとしておくほかはない。

 この街に来る道中では、人間と出会った時などには愛犬ともども、じっと息を潜めて冷や汗をかいていたりしたものだ。

「いいか、子供達。
 俺が指示したようにやってみせろ。

 だが、それはあくまで大人としての一般的な指示に過ぎない。

 なにしろ、俺はこの世界の街になど入った事すらないのだからな。
 お前達のアドリブで頑張るしかない。

 ルーもいてくれるが、あいつは人間ですらないから現場にいても俺よりも指示がおかしい事はあり得るので、ルーの言う事はあまり過信しないように」

「うん、わかったよ。
 もう頑張るしかないよね」

「僕がついてるよー、塀の外にいるんだけど」

「ありがとう、シルバー。頑張るわ」
「頑張るの!」

 そう言って二人は、御守り代わりに胸にぶらさげて服の下に隠した犬笛を握り締めた。
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