デビルナイツ・ジン

緋色優希

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第一章 孤独の果てに

1-46 出航前日

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 アリエス達が無事に戻ってきたので隠蔽に取り込んで合流する。

「ジン、明日の夜明けには目的地まで行く船が出るって。
 切符もなんとか二人分、無時に手に入れたわ」

「そうか、とりあえずはそれでこの港を無事に出られるように祈るしかないな」

  どうやら幸運な事に船も早めに出るようだし、アリエスも首尾よく切符を手に入れてきたが、果たして無事に港を出航できるだろうか。

 あと差し当たって、それよりも、もっと困った懸案事項があるのだった。

「ねえ、私達は船に乗れるとして、ジン達はどうするの」

 若干心細そうにするアリエスと、死んでも親友と別れまいとでもいうようにシルバーの首っ玉に必死で齧りついている、ふわふわ髪のメリーベル。

 シルバーも、その円らな瞳で真剣に俺を射る。

「うむ、ここまで順調に事が運ぶとは思っていなかったしな。

 もう仕方がないから泳いでついていく事にするわ。
 まあ泳ぐと言うか魔法でな。

 見つからないように、そっと目立たないように魔法は工夫しないといけないのだが。

 まあ乗り込むのが海賊船でもあるまいし、お前達にさほどの危険はあるまいよ。

 船内ではルーに護衛してもらう他はない。
 さすがに人間の護衛を雇うのは諦める他はないだろう。

 帝国の奴らが船内に紛れ込んでいると困るのだが。
 そいつらが呼んだ帝国の船がやってきて、拿捕されて終いだ。

 まあ敵は船に乗っていなくても、情報さえあれば海軍はやってきちまうのだろうが」

「そうか、よかった。
 自分達だけではとても心細くて」

「ああ、絶対にこのままじゃ済まないだろうからな」

 俺はいざとなったら腹を括って、海の上で攻めてきた帝国の敵艦を全て撃沈してやるつもりだった。

 海はまた水系の魔法を使う俺の版図のうちでもあるのだから。
 その時は俺が何故人間どもからトリプルΩだの魔神だのと呼ばれているのか奴らに教えてやる。

 これで帝国の軍艦が強力な魔法のバリヤーでも装備していやがったら笑えないところなのだが、さすがの帝国もそこまではやっていないと信じたい。

 そこまでいったらさすがに無理ゲーだろう。
 もしこれがゲーム世界だと言うのなら世界の壁を超えてでも開発者の首を締めに行きたくなるところだ。

「今夜は当分の間は陸で最後の夜だ。
 できれば宿で寝かせてやりたいところだが、何かあってもいかんしな。
 出発まで、ここで俺達と一緒に過ごそう」

「うん、ありがとう」

 そして二人には港であれこれと買い物をさせておいた。
 一応は俺達も隠蔽とかくれんぼを併用して蔭から見守っておく。

 今度は売り子の弁当や柔らかいパンもいくばくか手に入ったが、ここも港だけあって航海中に保つように、砂糖などを混ぜて固く焼いた日持ちのする堅パンが多い。

 日本でも第二次世界大戦の頃に作っていた、あのトンカチで叩かないと割れないような恐ろしいパンだ。

 せめて塩の利いたクラッカーくらいにしておけばいいものを。

 弁当も、陸を離れると平の水夫などでは、なかなか真面な飯にありつけないので、最後の晩餐用に結構売れているようだった。

 二人も大荷物を買い込んできては、俺の隠蔽に入って荷物を収納してはまた買いに行くというルーチンの繰り返しだ。

 その中でも俺は、怪しい人間がいないかサーチし続けていたのだが不思議といないようで、さすがに俺も只々首を捻るばかりなのであった。

 そうして慌ただしく時は走り去り、二人には早めの就寝を促した。

 慣れぬ港の雑踏での買い物に疲れたものか、二人ともいつものように毛皮を敷かれた床に着くなり可愛らしく寝息を立て始めた。

「やれやれ、こうも順調過ぎると気持ちが悪いな。
 襲い来る敵を倒しながら行く方がまだ気分がいいくらいだ」

「まあそう言わないのよ、ジン」

「明日は海水浴?」
 まるで家族でレクに行くかのように尻尾を振って無邪気に訊いてくるうちのワンコ。

「はは、そうだな。
 順調なら八千キロくらいの長旅になりそうだ。
 泳ぎたいだけ泳いでもいいぞ」

「わあい」
「まあ、敵に見つからんようにそっと目立たない感じにな」

 幸いにして山にいた時には何かに備える感じで、自分用の大量の食材は常時揃えてあった。

 でかい魔物なんかだと一体狩れば結構長い間持つし。
 伊達に魔物や魔獣の跋扈するあのアルブーマ山中にいたわけではないので。

 個人的には山岳山羊の肉が好みなのだが。
 あれはうちの子も大好物だしな。

 今から目指す国が隣接している西のドラグレス大山脈にも美味しい山岳山羊がいるといいのだが。

 そして、港に神々しく夜明けの女神アウラの知ろしめす朝の来光が水平線の向こうから差してきて、うっすらと夜が空ける頃に子供達を起こした。

 暖かな山羊の毛皮で敷物に上下を包まり、フェンリル枕に上半身を預け、俺のエアコン魔法で快適な夜を過ごした子供達は元気いっぱいだった。

 胸を不安と期待に満ち溢れさせながら、彼らは旅立ちの支度を整えた。

 俺は厳重にサーチしておいたが、やはり怪しい気配はないようだった。
 何人かの水夫達がもやい綱に取り付いて出航に備えていた。

 そして、子供達が船舶会社の人間らしき係員にチケットの半券を渡してから、手を振りながら板を渡り二人仲良く乗り込んでいくのを見送ってから、遠泳八千キロ以上コースへの準備体操を始めた。

 大きな腕が四本もあるから日本流にやるのはちょっと難しいな。
 まあ本当に泳ぐわけではないのだが。
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