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第一章 孤独の果てに
1-47 やってきた『あいつ』
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そして犬のように大人しく港に繋がれていた全長四十メートルくらいといった感じのクラスのサンパースト号は、その戒めを解かれ彼女にとって久々となるだろう自由を手にした。
地球では船を女性として表すのが通常なので、俺もこの船を彼女と表現する事にする。
地球ではやや小ぶりなクラスのメガヨットセールといった感じのサイズだが、ここではそれなりのサイズなのだろう。
いわゆる総トン数で表される船の容積は地球の同サイズのものよりも多めだろう。
大きく張った帆を風に膨らませて岸壁から解き放たれて、百隻は係留されているだろう商船に向かい別れを告げるように、海面上をなぞるような感じで優雅にその船体を滑らせていった。
このあたりが機械動力の鋼鉄船とはまったく趣が違うんだなあ。
地球でも、外国では今も多数の大型ヨットが主に富豪達の楽しみのためだけに莫大な金をかけて作られている。
子供達二人は甲板の後方に陣取っていて、陸に別れを告げていた。
初めてであろう、出航の風景に子供らしく心を躍らせていたようだった。
ここまでの道中で敵の襲撃がなかったのもよかったのだろう。
俺も帆船で港を出航するなどという素敵な経験はしてみたかったのだが、この図体ではあまりにも無理筋だ。
そもそも乗せてくれといったところで乗せてくれやしないだろうし、代わりに魔法か矢でも飛んでくるのがオチだ。
「ふうん、帝国の奴らめ、出航まで何も手を出してこないとは、一体どういう了見なのだろうな」
「こちらの出方を伺っているのではないですか。
随分と痛い目にも遭わせてやったのですし」
「どうかな。
それでも向こうは余裕たっぷりだと思うのだが」
アリエスのポケットに潜り込んで船に乗っているルーとテレパシーで会話しながら、俺はのんびりとしていた。
ここは俺が魔法で作った特別性の一種の水船で、いつものように隠蔽してある。
小さな自然な感じの波の集合体に見せかけた、水魔法で作った海水の揺れ動く波の盆に、シルバーが作ってくれた土魔法のプレートを強力に隠蔽して乗せてあるのだ。
そいつを俺の水魔法で動かしているだけである。
まあ一種の海上無限ローラーみたいなものか。
波の織りなす無限軌道のようなものだな。
もう最悪はこれに二人を乗せて連れていくしかないかとか思っていたのだが、こんなもの波間に揺れ動く救命ボートのようなので結構大変なのだ。
こいつが乗っかっている部分の波などが自然な感じになるように上手く動かさないといけないので、自然とそうなってしまう。
ちょっと大きい波でも来よう物なら素晴らしい3Dアトラクションのように派手に視界が揺れまくる。
こっそり行くのではなく普通に行くのならもっと頑丈で乗り心地もよく出来るのだが、まあ愛犬はその体験に大層喜んでいるようだから、この漂流に近いような航海も良しとしようか。
奴の尻尾が物凄い事になっている。
おまけに海の中に魚の蔭が見えると前足をちょいちょいとかいて捕らえようとするが、魚達は意にもかけずに優雅な所作で、彼らの王国である水の版図の中で身をくねらせながら泳ぎ去っていくのみだった。
「お父さん、これ面白い。うわーい」
「そうか、まあ八千キロもの航海の間、ずっとこれなんだけどな。
シルバー、はしゃぎ過ぎて落ちないようにね」
犬って本当に乗物が好きだよな。
こいつなら落ちたって、犬かきして余裕でついてこれちゃうだろうがね。
それだと目立ってしまうだろうから港から完全に出るまでは厳禁だ。
それにまだ何があるかわかったものじゃない。
俺も魔神じゃなかったら、とてもじゃないが、この不安定な乗り心地には耐えられないところだ。
まあ魔神じゃなかったのなら普通に船に乗せてくれた事だろうがね。
あの子達には、港で売っていたハーブを主体とした船酔いの薬を相応に買わせておいた。
そして、しばし揺れていた後ろの陸地が、水平線の向こうへとようやく見えなくなってきたかなという頃合いの事だった。
何故か、船の前方の景色が一瞬歪んだように見えた。
「ん、なんだ? 今のは」
「お父さん、海の上になんかいるー」
うちの犬の方が、こういう時は俺よりも目がいい。
もしかして実体化する前の物とか視えたりもするのだろうか。
そして、次の瞬間にそいつらは現れた。
「何っ」
「船だー、いっぱい」
そう、それは商船には見えない。
どうやら軍艦のようだった。
船体は木製と思われるが、外板に鋼鉄の板が張り付けてあるな。
くそ、こんな現れ方をするとなると、帝国海軍の艦隊に違いない。
そいつらは全部同じ緋色の旗、そこに描かれているのは黄金の月桂冠の半円に囲まれた同じく黄金の龍の首。
「ジン、あれは帝国の旗だとアリエスが言っています。
二人とも真っ青よ。
どうやら奴らはこの船に向かって停船信号を出しているようで、逆らうと魔法攻撃で撃沈されるって」
そんな物、民間船にどうこう出来るわけがない。
くそ、大砲の代わりに魔導兵器のような物を大量に積んでいるわけか。
昔の古臭い大砲かなんかじゃないのだな。
こっちの方が威力も半端なくてヤバイわ。
攻撃魔法を使う魔道士も乗っていそうだな。
もしアリエス達が一緒にいたのでなければ、きっと山中で俺もあれで攻撃されていたことだろう。
殺るか殺られるかの戦いになっていたって寸法だ。
そして俺はある事を試してみた。
俺の持つ強力な収納で、その船達を収納してやろうと思ったのだが、収納の力を受けると魔法抵抗を増すように特殊なシールドを施されていたようで力は跳ね返された。
シルバーを捕らえていた、あの魔道具のようにはいかなかった。
「チッ、さすがに無理だったか」
そして魔導を使っているものか、『あいつ』の声が大海原の広範囲に鳴り響いた。
「やあ、どうせその辺に潜んでいるのだろう、魔神君。
どうだい、私のスキルの威力は。
陸地ではわざわざ襲撃しなかったのだよ。
何しろ、どうせなら港へやってきてもらってから、そのまま船丸事で我が国へご招待させていただきたいと思ってね。
だって、その方が手間も費用もかからなくていいじゃないか」
くそう、そういう了見だったか。
まあ言われてみれば、確かにその通りなのだが。
ロルス・コングめ、なんて嫌な野郎なのだ。
まさか、奴の能力で艦隊丸事を移動させられるとは。
これはもう大型のゲート魔法と言った方がいいくらいだな。
やはり軍勢を移動できる能力者だったのか。
地球では船を女性として表すのが通常なので、俺もこの船を彼女と表現する事にする。
地球ではやや小ぶりなクラスのメガヨットセールといった感じのサイズだが、ここではそれなりのサイズなのだろう。
いわゆる総トン数で表される船の容積は地球の同サイズのものよりも多めだろう。
大きく張った帆を風に膨らませて岸壁から解き放たれて、百隻は係留されているだろう商船に向かい別れを告げるように、海面上をなぞるような感じで優雅にその船体を滑らせていった。
このあたりが機械動力の鋼鉄船とはまったく趣が違うんだなあ。
地球でも、外国では今も多数の大型ヨットが主に富豪達の楽しみのためだけに莫大な金をかけて作られている。
子供達二人は甲板の後方に陣取っていて、陸に別れを告げていた。
初めてであろう、出航の風景に子供らしく心を躍らせていたようだった。
ここまでの道中で敵の襲撃がなかったのもよかったのだろう。
俺も帆船で港を出航するなどという素敵な経験はしてみたかったのだが、この図体ではあまりにも無理筋だ。
そもそも乗せてくれといったところで乗せてくれやしないだろうし、代わりに魔法か矢でも飛んでくるのがオチだ。
「ふうん、帝国の奴らめ、出航まで何も手を出してこないとは、一体どういう了見なのだろうな」
「こちらの出方を伺っているのではないですか。
随分と痛い目にも遭わせてやったのですし」
「どうかな。
それでも向こうは余裕たっぷりだと思うのだが」
アリエスのポケットに潜り込んで船に乗っているルーとテレパシーで会話しながら、俺はのんびりとしていた。
ここは俺が魔法で作った特別性の一種の水船で、いつものように隠蔽してある。
小さな自然な感じの波の集合体に見せかけた、水魔法で作った海水の揺れ動く波の盆に、シルバーが作ってくれた土魔法のプレートを強力に隠蔽して乗せてあるのだ。
そいつを俺の水魔法で動かしているだけである。
まあ一種の海上無限ローラーみたいなものか。
波の織りなす無限軌道のようなものだな。
もう最悪はこれに二人を乗せて連れていくしかないかとか思っていたのだが、こんなもの波間に揺れ動く救命ボートのようなので結構大変なのだ。
こいつが乗っかっている部分の波などが自然な感じになるように上手く動かさないといけないので、自然とそうなってしまう。
ちょっと大きい波でも来よう物なら素晴らしい3Dアトラクションのように派手に視界が揺れまくる。
こっそり行くのではなく普通に行くのならもっと頑丈で乗り心地もよく出来るのだが、まあ愛犬はその体験に大層喜んでいるようだから、この漂流に近いような航海も良しとしようか。
奴の尻尾が物凄い事になっている。
おまけに海の中に魚の蔭が見えると前足をちょいちょいとかいて捕らえようとするが、魚達は意にもかけずに優雅な所作で、彼らの王国である水の版図の中で身をくねらせながら泳ぎ去っていくのみだった。
「お父さん、これ面白い。うわーい」
「そうか、まあ八千キロもの航海の間、ずっとこれなんだけどな。
シルバー、はしゃぎ過ぎて落ちないようにね」
犬って本当に乗物が好きだよな。
こいつなら落ちたって、犬かきして余裕でついてこれちゃうだろうがね。
それだと目立ってしまうだろうから港から完全に出るまでは厳禁だ。
それにまだ何があるかわかったものじゃない。
俺も魔神じゃなかったら、とてもじゃないが、この不安定な乗り心地には耐えられないところだ。
まあ魔神じゃなかったのなら普通に船に乗せてくれた事だろうがね。
あの子達には、港で売っていたハーブを主体とした船酔いの薬を相応に買わせておいた。
そして、しばし揺れていた後ろの陸地が、水平線の向こうへとようやく見えなくなってきたかなという頃合いの事だった。
何故か、船の前方の景色が一瞬歪んだように見えた。
「ん、なんだ? 今のは」
「お父さん、海の上になんかいるー」
うちの犬の方が、こういう時は俺よりも目がいい。
もしかして実体化する前の物とか視えたりもするのだろうか。
そして、次の瞬間にそいつらは現れた。
「何っ」
「船だー、いっぱい」
そう、それは商船には見えない。
どうやら軍艦のようだった。
船体は木製と思われるが、外板に鋼鉄の板が張り付けてあるな。
くそ、こんな現れ方をするとなると、帝国海軍の艦隊に違いない。
そいつらは全部同じ緋色の旗、そこに描かれているのは黄金の月桂冠の半円に囲まれた同じく黄金の龍の首。
「ジン、あれは帝国の旗だとアリエスが言っています。
二人とも真っ青よ。
どうやら奴らはこの船に向かって停船信号を出しているようで、逆らうと魔法攻撃で撃沈されるって」
そんな物、民間船にどうこう出来るわけがない。
くそ、大砲の代わりに魔導兵器のような物を大量に積んでいるわけか。
昔の古臭い大砲かなんかじゃないのだな。
こっちの方が威力も半端なくてヤバイわ。
攻撃魔法を使う魔道士も乗っていそうだな。
もしアリエス達が一緒にいたのでなければ、きっと山中で俺もあれで攻撃されていたことだろう。
殺るか殺られるかの戦いになっていたって寸法だ。
そして俺はある事を試してみた。
俺の持つ強力な収納で、その船達を収納してやろうと思ったのだが、収納の力を受けると魔法抵抗を増すように特殊なシールドを施されていたようで力は跳ね返された。
シルバーを捕らえていた、あの魔道具のようにはいかなかった。
「チッ、さすがに無理だったか」
そして魔導を使っているものか、『あいつ』の声が大海原の広範囲に鳴り響いた。
「やあ、どうせその辺に潜んでいるのだろう、魔神君。
どうだい、私のスキルの威力は。
陸地ではわざわざ襲撃しなかったのだよ。
何しろ、どうせなら港へやってきてもらってから、そのまま船丸事で我が国へご招待させていただきたいと思ってね。
だって、その方が手間も費用もかからなくていいじゃないか」
くそう、そういう了見だったか。
まあ言われてみれば、確かにその通りなのだが。
ロルス・コングめ、なんて嫌な野郎なのだ。
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やはり軍勢を移動できる能力者だったのか。
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