デビルナイツ・ジン

緋色優希

文字の大きさ
50 / 59
第一章 孤独の果てに

1-50 大木仁

しおりを挟む
「じゃあ、さっそくだけれど、こいつを使ってちょうだいな」

 そう言って彼女は俺に何かのアイテムを手渡してくれた。

 それは長さが三十センチくらいある長細くて銀色をした何かの金属質な不思議な形状の、まるで何かのゲームに出てきそうな細長いカプセル状のアイテムだった。

 俺の図体からすると人間比で六センチほどに感じるが、俺達の需要に合わせてそういう縮尺比も考えて大きめに作って、なおかつ操作も簡単にしてくれてあるように感じる。

「これはもしかして君達の仲間が作ったものなのかい」

「当たり。
 やっぱり同郷人が見れば、デザインを見ただけでなんとんなくわかるよね。

 使い方はこう。
 先っぽを回して、ひっぱると伸びるから。

 ええ、それで起動状態になったわ。
 それをこう手の平あたりから体の中に入れる。
 そう、そんな感じね」

 そして、そいつは軽いハム音と共に俺の体の中に吸い込まれていった。
 なんだかわからないが、これでいいのだろうか。

 そして次の瞬間、俺は四本の腕で自分を抱き締めながら激しく身悶えする羽目になった。

 熱い、いや眩暈と悪寒が止まらない!
 足が震えて腰が砕けそうだ。

 いや砕けたなんて物じゃなくて、俺は膝から崩れ落ちて四つん這い、いや六つん這いになってしまった。

 なんというのか、苦痛であるとか体が引き裂かれそうとかいうのではなくて、なんとも言い難い感覚に二本の足で立っていられないのだ。

 体全体が縮んでいくような、そのような不思議な感覚だ。

「うおおお、なんじゃこれは~」
「ジン!」

 アリエスが慌てて近づこうとしたが、その女が前に立ち、警備所のゲートバーのように真っ直ぐに腕を伸ばして制した。

「慌てないで、それは初めて使う時だけの感覚ですぐに収まるわ。
 そして」

 そう言って彼女は、俺の目の前に立ち笑顔で腕組みしていた。

 そして、その姿がだんだんと近づいてきて、ついには追い越して俺は彼女を這いつくばった格好で見上げる事となった。

 そして、へたばってしゃがみこんでいる俺に彼女は膝を折って、底抜けな笑顔をトッピングに片手を差し出した。

「いやあ、初めての人化体験は何時見てもいいなあ。
 はい、立てるかな?」

「人化だと」

 俺は驚いたが、その女の子は俺の立ち上がった目線に、自分の顔を上向きに上げてよく拝ませてくれた。

 改めて見直してみても、アイドル並みの美少女だった。

「あたしの事はショウって呼んでちょうだい。
 水晶のショウ。

 本当はアキラって読むのだけれど、アキラだとこっちの世界に馴染まない呼び方なので、あなたと一緒で音読みにしているの。

 あなたの事はジンって呼ぶわ。

 よろしくね、あなたの姿も私の姿も、これが生前の姿よ。
 正しくは死んだ時の年齢の姿。

 私達のような人外転生者は何故か人化すると、その時の姿になるの。
 死の瞬間に、魂に形が深く刻み込まれているのかしらね」

 気がつくと、アリエスが近寄って俺を見上げていた。
 どうやら、俺は生前かなりの長身だったらしい。
 アリエスの頭が結構下にある。

「ジン、それがあなたの本当の顔なの」

 不思議そうな顔で、俺の顔をエメラルド系のグリーン調の翡翠のような瞳が覗き込んでいる。

 目を合わせた時もいつもと勝手が違うので、つい面食らってしまうな。

「いや、いつもの奴が今の本当の俺の姿だ。
 これは俺が日本という場所で生きていた頃の人間としての姿なのだ。

 鏡を見た感じでは死んだ時は多分二十代半ばくらいかな。
 あまりそういう記憶がないんだ。

 そっちのお姉ちゃんも若くして亡くなったようだな」

 彼女はドレッサーのような大きな鏡を収納から取り出して見せてくれた。

 真っ黒な目と、日に透かすとやや焦げ茶がかかった髪。
 ややガッチリとした体形で、足は長めの、そこそこいい男といった感じだろうか。

 身長百八十センチほどの身長、それほど目立ち過ぎるほどではなく、少なくともこの世界においても、ひ弱と舐められるような体ではない。

 はっきりとは覚えてはいないのだが、何か武道のような物で体を鍛えていたような記憶がある。

 何故か裸ではなく、冒険者から巻き上げた服を身に着けていた。

「ふふ、あたしは病気でね。
 もっと丈夫な体で長生きしたいと願いながら死んだから、不憫に思った神様がその願いを叶えてくださったのかしら。

 お蔭で天下無敵で長寿な最上級ドラゴンボディよ。

 さしずめ、あなたは『仕事が忙しいから手がもう二本くらい欲しい』とか言いながら過労死した口なのかしらね」

「お前、可愛い顔をして酷い事を言うなあ。

 俺は少しというか、かなり記憶が曖昧だな。
 嫌だな、あまり思い出したくない記憶だって事なのかよ。

 でも、俺はいいんだがシルバーとルーはどうしようか。
 俺は仲間を置いてなんかいけないぞ」

「大丈夫よー。
 そんな、あなたにはこちらの素晴らしい商品がー」

 何かテレビショッピングか何かみたいな口調で楽しく解説してくれるショウ。

 そして渡してくれたのは、不思議な金属でできている細い輪っかのような物だった。

「これは偽装リングという物よ。
 元々は人間用の物なのだけど魔物にも使えるわ。

 そして、そこの結界もちゃんと通り抜けられる優れ物なの。

 結構、魔物の仲間を連れている人も多くてね、それで開発されたものなのよ。
 皆、人外転生して苦労しているし、結構寂しいらしいわ」

同胞はらからの苦労は、いずこも一緒か」

「ええ、じゃあフェンリルとガルーダね。
 まあ普通に使えるんじゃない。

 これは伸縮自在よ。
 ガルーダさんは一度大きくなってくれないかしら」

 アリエスのポケットの中から飛び出したルーは、それを受取り、一旦大きくしてから腕に通しサイズを合わせた。

「ルー、器用だなあ」
「これはそういうアイテムですもの。それ」

 そして、次の瞬間に彼女は小さな小鳥になった。

「ありゃあ、こいつは凄いな」

「ふふ、これらのアイテムを使っていても、魔物としての探知には引っかからないけど元の力は使えるという優れものよ。

 ただし、姿による制限は受けるわ。

 ジンならば、手は二本だけだし、大きさを生かして足で踏み潰すような真似はできないし、身長やリーチも人間のものに過ぎないわけだから。

 でも魔法は使えるし、力や耐久性もギガンテスの物だし、また人間のように振る舞えるように力を制限する事はできるの。

 細かいところは自分で練習してちょうだい。元の姿には随時戻れるけれど、当分はそのままがいいんじゃないの」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!

【完結】不遇スキル『動物親和EX』で手に入れたのは、最強もふもふ聖霊獣とのほっこり異世界スローライフでした

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺が異世界エルドラで授かったのは『動物親和EX』という一見地味なスキルだった。 日銭を稼ぐので精一杯の不遇な日々を送っていたある日、森で傷ついた謎の白い生き物「フェン」と出会う。 フェンは言葉を話し、実は強力な力を持つ聖霊獣だったのだ! フェンの驚異的な素材発見能力や戦闘補助のおかげで、俺の生活は一変。 美味しいものを食べ、新しい家に住み、絆を深めていく二人。 しかし、フェンの力を悪用しようとする者たちも現れる。フェンを守り、より深い絆を結ぶため、二人は聖霊獣との正式な『契約の儀式』を行うことができるという「守り人の一族」を探す旅に出る。 最強もふもふとの心温まる異世界冒険譚、ここに開幕!

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~

あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。 それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。 彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。 シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。 それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。 すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。 〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟 そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。 同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。 ※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。

処理中です...