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第一章 孤独の果てに
1-52 今度は東へ逆戻り
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間抜けな帝国の連中がブシュレの港を家探ししているだろう頃、俺達は東へと街道を向かっていた。
目的地であるパルセンの港まで、およそ東へ五百キロ、なかなか走りでのある距離だな。
特に俺達の場合は必至に駆けて来た方向にまた逃げ戻っていくという若干の徒労感がある。
まあお蔭で強力な援軍を手に入れて、先の見通しも立ってきたわけなのだから。
「なあ、あんたドラゴンなんだろ。
パーっと空から行けないのかい」
「無茶を言わないで。
空は概ね帝国の縄張りだからね。
連中に見つかると、しつこくて面倒なのよ。
それにドラゴンを見ると目の色を変えて捕獲に来るから厄介なのよね。
そいつは超緊急避難の措置が必要な場合だけなの。
また敵にも強いドラゴンはいるから油断はできないわ。
あの帝国の元々の縄張りは西の平原北西方面の魔龍山脈のすぐ傍にある場所よ。
元々の帝国の盟主への反攻の始まりは、その彼らが多大な犠牲を払って手に入れた強力なドラゴンによるもので、お蔭ですっかりこっちまで悪者なのよ~。
ドラゴンの姿で出歩いていると、帝国以外の国からも全力で排撃されるわ。
それは強烈に精神にダメージが来るの。
その子達も乗せていると撃ち落とされたら危ないかもだし。
飛ぶ時は人型で飛ぶけど、それも見つかるとまたね~」
「ああそれ、俺達に一番効く奴だよな。
そうか、世の中はなかなか難しいもんだ」
「でしょう、そうなのよー。
本当に困ったものだわ。
迂闊にドラゴンが空なんか飛んでいようものなら、いきなり不意打ちで下から強力な魔法を食らって撃墜されるからね。
あれは死ななくても思いっきりへこむわよ」
「うわあ、飛行能力は羨ましいけど、それも善し悪しだなあ……」
俺と彼女が子供達を一人ずつ押さえているので、シルバーも乗せている人数が多い割には速度を上げて走れている。
子供が二人入っているとは言え、人間四人は駆け抜け続ける狼の五メートルほどの体躯にはやや乗車定員オーバー気味だ。
本日は楽しい玩具【変化の魔道具】を入手できたので、奴もそれはもう御機嫌な様子だった。
疲れ知らずの状態で実に楽しく走っている。
人間にもあるよな、こういう時って。
シルバーは大型の狼の軽く二倍はサイズがあるので、楽々と巡行速度で時速六十キロをマークして、度々人間用に僅かな休憩を挟んでも日が落ちる頃には、サンマルコス王国中央港パルセン港へと到着できた。
「もう日が暮れちまったな」
「その方がいいわ。
我々みたいな少々後ろ暗い人間が行くにはね」
「へ、後ろ暗い、か」
ショウも、なんとなく事情を察してくれてはいたが、ここへ来るまでに一通りの事情は話しておいた。
「まあ昨今、帝国に追われる人間は後ろ暗いとか言われちゃうらしいわよ。
元王女様だってね。
もう、この平原もいよいよ駄目かもねー」
「そういや、あんたらの本拠地は?」
「アルブーマ大山脈の真っただ中よ」
「ぶふっ」
なんてこった、俺の家の近所にそんな連中がいたなんて。
それに気がついていて、先に日本人会に入会しておいたのなら、あそこまで酷い逃避行にはならなかったかもな。
まあ俺もそこまで山の中の探索したいわけじゃあなかったので、今そのような事を言っても仕方がない事なのだが。
冬なんか、かまくらに引き籠っていたし、山で炭焼きして狩人暮らしをしていたのだ。
まあ炭はスキルで焼くから、遠くからでも目立つような煙は出さなかったけれども。
「ああ、あんたもそこにいたんだっけね。
どうしたって人外はそういうところへ追いやられてしまうものよ。
うちらは結構北方にいたの。
山脈の南からなら軽く千キロから二千キロくらいは離れていたんじゃない」
「俺はその南の比較的端の辺にいたよ。
もうそこまで離れていたら、ほぼ外国くらい離れているよな」
「アルブーマも上の方は帝国領と接しているから、そっちへはあまり行きたくないから真ん中くらいの深い山中にいたんだけれど。
アーデルセン王国が落とされて軍が蹴散らされちゃったし、兄弟国も時間の問題だろうし。
今はアーデルセン王国の上に位置するカイエルン王国と、国の形が帯みたいに伸びてアルブーマに接しているオルガノとの間にいるから、ぎりぎりセーフティゾーンかなあ。
ううっ、肩身が狭いわ」
「それはまた際どいところに住んでいるな。
まあ、あの辺は確かに山が深いから、まともな神経をしていたら人間なんか冒険者だって入ってこない筈なんだが、帝国の連中はわかんないからなあ。
目的のためには命懸けというか、命すら平気で捨ててかかってくるし」
俺のお仲間は、まるで最後の秘境のような場所にピンポイントで住んでいるな。
そこが駄目となると、東の平原の上の方にある平原の蓋みたいな感じに広がっている、名もないような北の最果ての山脈しかないが、そこにある北方の国も帝国に征服されたら同じ事になるのだろうな。
そこって万年氷の支配する、俺のような魔物から見たってヤバイような領域なので。
もっとも寒がりの俺なら、いくら厚い毛皮に保護されていようと絶対に住まない酷寒の土地なのだが。
あの吹雪いている人の踏み入らないような山の中は、まだそれなりにいい場所だったのだ。
「本当よねー。
平原全部が帝国に征服されちゃったら、本当にどうしようかしら。
平原の東端を縦断する魔龍山脈はアルブーマ大山脈よりも深く危険だから、本来なら人が入りにくく我々にとってはいい住処のはずなのだけれど、帝国が頻繁に魔獣狩りをしているから却って住みにくいのよね。
もういっそ、あたしらも魔龍山脈の向こうにある西方の国へ移住したいくらいなのだけれど、新しい仲間で人化を嫌がって魔物の姿に固執する奴もいるから、そういうのがまた面倒でね」
「なんだよ、そいつら元人間のくせに人間嫌いなのか?」
「ああ、なんかいろいろ複雑みたいなのよね。
自分が人間の姿でいるのも嫌なくらいらしいわ。
うちらが人間じゃないのは知っているから、彼らも一緒にいるけれど、あまり打ち解けてはくれないのよね」
「まあ他人の事はいいんだが、それよりも本当に帝国の東の平原への進出は面倒だな」
もういよいよとなったら、俺達でさえも他の大陸に住処を移すしかないのだから。
目的地であるパルセンの港まで、およそ東へ五百キロ、なかなか走りでのある距離だな。
特に俺達の場合は必至に駆けて来た方向にまた逃げ戻っていくという若干の徒労感がある。
まあお蔭で強力な援軍を手に入れて、先の見通しも立ってきたわけなのだから。
「なあ、あんたドラゴンなんだろ。
パーっと空から行けないのかい」
「無茶を言わないで。
空は概ね帝国の縄張りだからね。
連中に見つかると、しつこくて面倒なのよ。
それにドラゴンを見ると目の色を変えて捕獲に来るから厄介なのよね。
そいつは超緊急避難の措置が必要な場合だけなの。
また敵にも強いドラゴンはいるから油断はできないわ。
あの帝国の元々の縄張りは西の平原北西方面の魔龍山脈のすぐ傍にある場所よ。
元々の帝国の盟主への反攻の始まりは、その彼らが多大な犠牲を払って手に入れた強力なドラゴンによるもので、お蔭ですっかりこっちまで悪者なのよ~。
ドラゴンの姿で出歩いていると、帝国以外の国からも全力で排撃されるわ。
それは強烈に精神にダメージが来るの。
その子達も乗せていると撃ち落とされたら危ないかもだし。
飛ぶ時は人型で飛ぶけど、それも見つかるとまたね~」
「ああそれ、俺達に一番効く奴だよな。
そうか、世の中はなかなか難しいもんだ」
「でしょう、そうなのよー。
本当に困ったものだわ。
迂闊にドラゴンが空なんか飛んでいようものなら、いきなり不意打ちで下から強力な魔法を食らって撃墜されるからね。
あれは死ななくても思いっきりへこむわよ」
「うわあ、飛行能力は羨ましいけど、それも善し悪しだなあ……」
俺と彼女が子供達を一人ずつ押さえているので、シルバーも乗せている人数が多い割には速度を上げて走れている。
子供が二人入っているとは言え、人間四人は駆け抜け続ける狼の五メートルほどの体躯にはやや乗車定員オーバー気味だ。
本日は楽しい玩具【変化の魔道具】を入手できたので、奴もそれはもう御機嫌な様子だった。
疲れ知らずの状態で実に楽しく走っている。
人間にもあるよな、こういう時って。
シルバーは大型の狼の軽く二倍はサイズがあるので、楽々と巡行速度で時速六十キロをマークして、度々人間用に僅かな休憩を挟んでも日が落ちる頃には、サンマルコス王国中央港パルセン港へと到着できた。
「もう日が暮れちまったな」
「その方がいいわ。
我々みたいな少々後ろ暗い人間が行くにはね」
「へ、後ろ暗い、か」
ショウも、なんとなく事情を察してくれてはいたが、ここへ来るまでに一通りの事情は話しておいた。
「まあ昨今、帝国に追われる人間は後ろ暗いとか言われちゃうらしいわよ。
元王女様だってね。
もう、この平原もいよいよ駄目かもねー」
「そういや、あんたらの本拠地は?」
「アルブーマ大山脈の真っただ中よ」
「ぶふっ」
なんてこった、俺の家の近所にそんな連中がいたなんて。
それに気がついていて、先に日本人会に入会しておいたのなら、あそこまで酷い逃避行にはならなかったかもな。
まあ俺もそこまで山の中の探索したいわけじゃあなかったので、今そのような事を言っても仕方がない事なのだが。
冬なんか、かまくらに引き籠っていたし、山で炭焼きして狩人暮らしをしていたのだ。
まあ炭はスキルで焼くから、遠くからでも目立つような煙は出さなかったけれども。
「ああ、あんたもそこにいたんだっけね。
どうしたって人外はそういうところへ追いやられてしまうものよ。
うちらは結構北方にいたの。
山脈の南からなら軽く千キロから二千キロくらいは離れていたんじゃない」
「俺はその南の比較的端の辺にいたよ。
もうそこまで離れていたら、ほぼ外国くらい離れているよな」
「アルブーマも上の方は帝国領と接しているから、そっちへはあまり行きたくないから真ん中くらいの深い山中にいたんだけれど。
アーデルセン王国が落とされて軍が蹴散らされちゃったし、兄弟国も時間の問題だろうし。
今はアーデルセン王国の上に位置するカイエルン王国と、国の形が帯みたいに伸びてアルブーマに接しているオルガノとの間にいるから、ぎりぎりセーフティゾーンかなあ。
ううっ、肩身が狭いわ」
「それはまた際どいところに住んでいるな。
まあ、あの辺は確かに山が深いから、まともな神経をしていたら人間なんか冒険者だって入ってこない筈なんだが、帝国の連中はわかんないからなあ。
目的のためには命懸けというか、命すら平気で捨ててかかってくるし」
俺のお仲間は、まるで最後の秘境のような場所にピンポイントで住んでいるな。
そこが駄目となると、東の平原の上の方にある平原の蓋みたいな感じに広がっている、名もないような北の最果ての山脈しかないが、そこにある北方の国も帝国に征服されたら同じ事になるのだろうな。
そこって万年氷の支配する、俺のような魔物から見たってヤバイような領域なので。
もっとも寒がりの俺なら、いくら厚い毛皮に保護されていようと絶対に住まない酷寒の土地なのだが。
あの吹雪いている人の踏み入らないような山の中は、まだそれなりにいい場所だったのだ。
「本当よねー。
平原全部が帝国に征服されちゃったら、本当にどうしようかしら。
平原の東端を縦断する魔龍山脈はアルブーマ大山脈よりも深く危険だから、本来なら人が入りにくく我々にとってはいい住処のはずなのだけれど、帝国が頻繁に魔獣狩りをしているから却って住みにくいのよね。
もういっそ、あたしらも魔龍山脈の向こうにある西方の国へ移住したいくらいなのだけれど、新しい仲間で人化を嫌がって魔物の姿に固執する奴もいるから、そういうのがまた面倒でね」
「なんだよ、そいつら元人間のくせに人間嫌いなのか?」
「ああ、なんかいろいろ複雑みたいなのよね。
自分が人間の姿でいるのも嫌なくらいらしいわ。
うちらが人間じゃないのは知っているから、彼らも一緒にいるけれど、あまり打ち解けてはくれないのよね」
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