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第一章 巻き込まれたその日は『一粒万倍日』
1-49 幼女のお願い
「さーて、爆弾造りも一段落だ。これ以上は上級のポーション抜きでは怖くてやれない。よく今まで無事に済んだもんだな。
できればこの先は、今ショウの奴に調べさせている手足が千切れてもくっつくという高価なポーションを手に入れてからにしたいものだ。あと錬金術の設備も欲しいしな。次は何をしようか、もう少し経ったら靴を取りにいかないとな」
だが、そこへアリシャがやってきた。何かお願い事があるらしくて、超ぶりぶりモードだ。懐かしいなあ、両手を後ろ手に汲んで、上目遣いに体を揺すって。
うちの姪っ子がよくやってたポーズだ。大体幼女様にこれが出る時は碌なお願いが出ないものなのだが。たとえばの話だがな、こんなケースがあったよ。
「一穂おじちゃん、美咲ね、美咲ね、来月にね。マダガスカルに行きたいの!」
「ほお? マダガスカルとな。そいつはマニアックないい提案だな。それで美咲お姫様は何をしにマダガスカルまで行くの?」
「もちろん、キツネザルとダンスをしによ~」
「えー……それで俺にどうしろと? お前は何をしたいんだ」
いくら多くのDNAを共有しようとも、幼女様の発想にはたまについていけなくなる時がある。そもそもXYとXXとかの遺伝子関係の違いの段階でなあ。
男と女は完全に別の生き物なのだ。一緒くたにしてホモサピエンスの括りで考えるから悲劇が絶えないのだ。
「えーと、キツネザルと一緒のダンスを動画サイトにアップしまーす」
「何故?」
「話せば長い事ながら、今日裕君が大好きなキツネザルの絵を描いていて、一緒にお話が盛り上がったの。
でも意地悪な麗華が言ったのよ。『ふん、しょせんは外国の猿風情じゃないの。あんたがどうできるっていうのよ』って。
あの女、裕君に色目使いたいだけの理由で話に割り込んで話題を振ったくせに、もうムカつくーっ」
何か、幼稚園児も女の戦いで大変そうだな……。ここに出てきた裕君というのは大変可愛らしい男の子で、一回姉貴のうちに遊びにきた事があったよ。そして、あの女は言った。言い切りやがった。
「じゃあ、カズホ。後の子守りは頼んだわね。今日は友達と会う日だから!」
「あの……ちょいと、お姉様?」
「ママー! 御土産宜しく~」
「任せてー!」
そして高笑いを共に出て行った姉を見送って沈黙する男二人。やがて彼は達観したような笑顔でこう切り出した。
「美咲ちゃんのおじさん、いやお兄さん。世の中は大変ですね」
「裕君、世の女なんてこういうものだって理解できていれば、そう困りはしないから」
「うん。勉強になります。うちの女親も似たようなものですから」
裕君は、人間がよくできた幼児だったなあ。
結局、マダガスカル島には連れていかせられたよ、何故か裕君も一緒に預かって。母親二人は仲良くハワイだとよ。
本来ならばありえない話だし、俺も連れていくのが裕君じゃなかったら預かるなんて無理だった。
それはもう貴重な夏休みと、夏のボーナスを全額はたいてね。会社じゃ爆笑されまくったな。
何故か得意先まで話が広まっていて、それはもう子煩悩な男としてしばらく弄られまくった上、何故か得意先の女の子達から好意的な視線が集まっていた。
でもありがとうよ、子供達。今この世界で思えば、本当にいい思い出になったぜ。キツネザルもありがとう。
本当は狂暴な連中なのに御飯と引き換えとはいえ、子供達とあんなに頑張って踊ってくれた事は異世界で思い起こしても心がほんわりするのさ。
あの子達も小学生になったよな、可愛いキツネザル達も元気にしているだろうか。いつかキツネザル似の魔物や動物と会ったら、俺はきっと彼らに優しくできる。
それで、問題はそこの眼をキラキラさせてこっちを見ている幼女様なのだが。絶対に碌なお願いはしてこないのだと理解できる。
「ねー、カズホー。アリシャ、お願いがあるんだけどなあ」
うーん、ぶりぶりだね。内に秘めた下心が透けて見え過ぎなんだけど。ああ、ブリ食いたくなってきちゃった。ショウが帰ってきたら、魚の仕入れについて聞いてみたい!
もう、この際だから淡水魚でもよくてよ。この辺は井戸しかないじゃないか、さすがは最果ての辺境だよなあ。
川はどこだ、湖は。背に腹は代えられん。池や沼でも手を打とうじゃないか、用水路はないのかな。ナマズやフナだって今なら美味しくいただけましてよ。
あるいは釣り堀でも悪くないさ、こう見えて釣りは苦手なんでねえ。くそう、釣りくらい嗜んでおくんだったぜ。釣り堀を始めてみてもいいよな、主に自分用に。
「アリシャ、隣村まで行ってみたいなあ。だけど、お父さんが駄目だって。歩いていくのならカズホと一緒でも無理だからって。でもカズホならなんとかならないかなあ。だって、カズホはあたしの勇者なんだもの」
う、うーむ。ちょっとだけ心がほわっとしたぜ。思わず姪っ子や姉貴夫妻なんかと楽しくやっていた事を思い出してしまった。
もう、あの大切な人達とは一緒に遊びにいけないけど、この子達とならまだ。
「そうだなあ。何か考えてみるか。あれこれと一段落したところだしよ」
「本当~」
「だけど、お父さんが駄目って言ったら駄目だぜ?」
「はーい」
返事だけはいいんだけどね。うちの姪っ子のお姫様は本当に聞き分けがなかったよなあ、あっはっは。さて、何か考えるとするかな。
できればこの先は、今ショウの奴に調べさせている手足が千切れてもくっつくという高価なポーションを手に入れてからにしたいものだ。あと錬金術の設備も欲しいしな。次は何をしようか、もう少し経ったら靴を取りにいかないとな」
だが、そこへアリシャがやってきた。何かお願い事があるらしくて、超ぶりぶりモードだ。懐かしいなあ、両手を後ろ手に汲んで、上目遣いに体を揺すって。
うちの姪っ子がよくやってたポーズだ。大体幼女様にこれが出る時は碌なお願いが出ないものなのだが。たとえばの話だがな、こんなケースがあったよ。
「一穂おじちゃん、美咲ね、美咲ね、来月にね。マダガスカルに行きたいの!」
「ほお? マダガスカルとな。そいつはマニアックないい提案だな。それで美咲お姫様は何をしにマダガスカルまで行くの?」
「もちろん、キツネザルとダンスをしによ~」
「えー……それで俺にどうしろと? お前は何をしたいんだ」
いくら多くのDNAを共有しようとも、幼女様の発想にはたまについていけなくなる時がある。そもそもXYとXXとかの遺伝子関係の違いの段階でなあ。
男と女は完全に別の生き物なのだ。一緒くたにしてホモサピエンスの括りで考えるから悲劇が絶えないのだ。
「えーと、キツネザルと一緒のダンスを動画サイトにアップしまーす」
「何故?」
「話せば長い事ながら、今日裕君が大好きなキツネザルの絵を描いていて、一緒にお話が盛り上がったの。
でも意地悪な麗華が言ったのよ。『ふん、しょせんは外国の猿風情じゃないの。あんたがどうできるっていうのよ』って。
あの女、裕君に色目使いたいだけの理由で話に割り込んで話題を振ったくせに、もうムカつくーっ」
何か、幼稚園児も女の戦いで大変そうだな……。ここに出てきた裕君というのは大変可愛らしい男の子で、一回姉貴のうちに遊びにきた事があったよ。そして、あの女は言った。言い切りやがった。
「じゃあ、カズホ。後の子守りは頼んだわね。今日は友達と会う日だから!」
「あの……ちょいと、お姉様?」
「ママー! 御土産宜しく~」
「任せてー!」
そして高笑いを共に出て行った姉を見送って沈黙する男二人。やがて彼は達観したような笑顔でこう切り出した。
「美咲ちゃんのおじさん、いやお兄さん。世の中は大変ですね」
「裕君、世の女なんてこういうものだって理解できていれば、そう困りはしないから」
「うん。勉強になります。うちの女親も似たようなものですから」
裕君は、人間がよくできた幼児だったなあ。
結局、マダガスカル島には連れていかせられたよ、何故か裕君も一緒に預かって。母親二人は仲良くハワイだとよ。
本来ならばありえない話だし、俺も連れていくのが裕君じゃなかったら預かるなんて無理だった。
それはもう貴重な夏休みと、夏のボーナスを全額はたいてね。会社じゃ爆笑されまくったな。
何故か得意先まで話が広まっていて、それはもう子煩悩な男としてしばらく弄られまくった上、何故か得意先の女の子達から好意的な視線が集まっていた。
でもありがとうよ、子供達。今この世界で思えば、本当にいい思い出になったぜ。キツネザルもありがとう。
本当は狂暴な連中なのに御飯と引き換えとはいえ、子供達とあんなに頑張って踊ってくれた事は異世界で思い起こしても心がほんわりするのさ。
あの子達も小学生になったよな、可愛いキツネザル達も元気にしているだろうか。いつかキツネザル似の魔物や動物と会ったら、俺はきっと彼らに優しくできる。
それで、問題はそこの眼をキラキラさせてこっちを見ている幼女様なのだが。絶対に碌なお願いはしてこないのだと理解できる。
「ねー、カズホー。アリシャ、お願いがあるんだけどなあ」
うーん、ぶりぶりだね。内に秘めた下心が透けて見え過ぎなんだけど。ああ、ブリ食いたくなってきちゃった。ショウが帰ってきたら、魚の仕入れについて聞いてみたい!
もう、この際だから淡水魚でもよくてよ。この辺は井戸しかないじゃないか、さすがは最果ての辺境だよなあ。
川はどこだ、湖は。背に腹は代えられん。池や沼でも手を打とうじゃないか、用水路はないのかな。ナマズやフナだって今なら美味しくいただけましてよ。
あるいは釣り堀でも悪くないさ、こう見えて釣りは苦手なんでねえ。くそう、釣りくらい嗜んでおくんだったぜ。釣り堀を始めてみてもいいよな、主に自分用に。
「アリシャ、隣村まで行ってみたいなあ。だけど、お父さんが駄目だって。歩いていくのならカズホと一緒でも無理だからって。でもカズホならなんとかならないかなあ。だって、カズホはあたしの勇者なんだもの」
う、うーむ。ちょっとだけ心がほわっとしたぜ。思わず姪っ子や姉貴夫妻なんかと楽しくやっていた事を思い出してしまった。
もう、あの大切な人達とは一緒に遊びにいけないけど、この子達とならまだ。
「そうだなあ。何か考えてみるか。あれこれと一段落したところだしよ」
「本当~」
「だけど、お父さんが駄目って言ったら駄目だぜ?」
「はーい」
返事だけはいいんだけどね。うちの姪っ子のお姫様は本当に聞き分けがなかったよなあ、あっはっは。さて、何か考えるとするかな。
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