【悪役転生 レイズの過去をしる。】

くりょ

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レイズの過去を知る

繰り返すNEWSTAR☆T

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彼は、またコントローラーを握っていた。

いったい何週目になるのか、もう覚えていない。数を数えることすらやめてしまった。

ただ習慣のように――いや、執念のように――今日もゲームを始める。

画面に映るのは見慣れたタイトルロゴとスタート画面。

「CONTINUE」ではなく、いつも決まって「NEW GAME」。

そして始まるチュートリアル。

攻撃ボタンの説明、移動操作、スキル発動……そんなものは、とうの昔に覚えきっている。

彼にとっての目的は別にあった。

チュートリアルの終盤に必ず現れる小太りの中年男――レイズ。

ゲーム内主人公「カイル」が最初に倒す、いわば噛ませ犬。

ストーリーに大きく関わることもなく、序盤で姿を消す運命の敵キャラ。

――だが、おかしいのはキャラクター紹介だった。

名前:レイズ

属性:氷、そして……死属性。

“死属性”。

それはこのゲームで最も無価値とされる烙印だ。

誰もが「無駄な属性」と呼び、略して“無属性”。

つかいどころなど一切ない。だからこそ公式の説明文にはこう記されている。

――死属性。

彼は、コントローラーを握る手に自然と力を込めた。

無駄と切り捨てられた男、レイズ。

だが、周回を繰り返すうちに確信めいた思いが芽生えていた。

――この男には、何かがある。

そして、今日もまたゲームが始まる。

そして――俺は知っている。

“死属性”が、どれだけ頭のおかしい性能を秘めているのかを。

氷属性だけでも十分に希少だ。

だが、死属性――そう表記されたそれは、比べ物にならない。

なにせゲームの終盤でようやく明かされる。

もし、この真実をもっと早く理解できていたなら――

歴史は、何重にも塗り替えられていたはずなのだ。

にもかかわらず、死属性は「無駄」と切り捨てられ、

チュートリアルの小太りの男――レイズに与えられた。

……笑えるだろ?

誰も気に留めないザコ敵に、世界を変える鍵が隠されているなんて。

だから俺は繰り返す。

何度も、何度でも――チュートリアルから。

しかし――おかしい。

死属性の扱い方が分からないのは仕方ないとしても、レイズは氷属性の片鱗すら見せない。

ただ小太りの体を揺らし、鈍い動きで剣を振り回すだけ。

その攻撃は遅く、隙だらけで、ゲームを始めたばかりのプレイヤーにですら容易く見切られる。

そして、あっけなく倒される。

まるで「俺はチュートリアルの雑魚敵です」と言わんばかりに。

――氷属性?死属性?

そんなもの、影すら見えない。

だが俺は知っている。

この男が本当は、ゲームの歴史すら覆す性能を秘めているということを。

ならば、なぜ――?

なぜレイズは、何もせずに斬り捨てられるだけの存在として固定されているのか。

そこに、答えがある。

俺はそう信じている。

そうして、何度も何度も繰り返しているうちに――

俺は、この男の表情に妙な違和感を覚えるようになった。

なんとなくだが……死ぬことを望んでいるように見えるのだ。

斬り伏せられる瞬間、ほっとしたように笑っている気さえする。

もちろん、ただのグラフィックの表現ミスかもしれない。

古いゲームだからドットやポリゴンの崩れなんて珍しくない。

……だが、それだけじゃ説明できない何かがある。

だから俺は、レイズの言葉に耳を澄まし、少しずつ台詞を整理するようになった。

――「ただではやられない」

――「昔だったら、おまえみたいなの簡単に倒せるぞ」

違和感だ。どう考えてもチュートリアルの雑魚キャラが言う台詞じゃない。

“昔だったら”?

“簡単に倒せる”?

まるで、かつては属性を使いこなせていたかのような言い草だ。

……どういう意味だ。

気になる。気になりすぎる。

やがて俺は、ゲームそのものよりもこのキャラ――レイズの存在に囚われていった。

夜ベッドに潜って目を閉じると、気味が悪いほど鮮明にあの小太りの男の顔が浮かぶ。

夢にまで出てくるほどに。

そうして俺は、レイズを倒してはやり直し、また倒してはやり直した。

気がつけば、それが当たり前になっていた。

無限に繰り返すチュートリアル。

無限に繰り返す敗北するレイズ。

そして俺だけが、その違和感に囚われ続けていた。

いつのまにか、まぶたが重くなっていく。

コントローラーを握ったまま、俺は眠りに落ちていた。

――そして、目を覚ましたとき。

俺の視界には、見慣れた天井も机もなく、

モニターに映るはずの画面さえ存在しなかった。

そこにあったのは――

“いつもと違う景色”。

緑の草原。冷たい風。どこかで鳥の声が響いている。

だがそれはテレビの中の映像ではない。

肌を刺す空気の冷たさも、風の匂いも、まるで現実そのものだった。

俺は立ち尽くしていた。

夢なのか、現実なのか。

ただ一つ、はっきりしていることがある。

――ここは、俺がいた世界ではない
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