【悪役転生 レイズの過去をしる。】

くりょ

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レイズの過去を知る

誰か…タオルを…もってまいれ。

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湯気が立ちこめる浴場に足を踏み入れた瞬間、
熱と光が絡み合い、石造りの壁がぼんやりと金色に滲んでいた。
空気は湿り気を帯び、肌を撫でるようにまとわりつく。

(……なんだか、色気を感じるな……)

湯船の奥、もやの向こうに人影がひとつ。
肩まで湯に沈み、こちらに手招きしているように見えた。

(ま、まさか……これ、ご都合展開!?)

頬が一気に熱くなる。
心臓が跳ね、思わず息を呑んだ。
慎重に一歩、また一歩と湯へ近づく。

が――

「……おじいさんじゃねぇか」

そこにいたのは、ヴィルだった。

(……がっかりなんてしてない。してない、はずだ)

必死に平静を装いながら、桶で湯を汲み、黙々と頭を洗う。
石壁に響く湯の音が、妙に寂しい。

(……あぁ、なんか日本の銭湯を思い出すな……)

そんな感傷に浸っていると、低い声が響いた。

「さっさと来いと言っているだろう」

「ひゃっ!? ちょっ、ま――!」

ヴィルの手が伸びる。
次の瞬間、ずるりと湯船の中に引きずり込まれた。

隣にどっしりと座るヴィル。

(なんなんだよこの状況……誰得だよ……!)

心の底で叫びながらも、レイズは観念して姿勢を正す。

「……はい。ヴィルさん、なんですか?」

「当主である自覚を持て。それと――服は脱がせてもらうものだぞ」

(……なんだこのじいさん。ただのエロじじいじゃねぇか……!)

もちろん口には出さない。
ただ心の中で、猛烈にツッコミを入れた。

だが次の瞬間、ヴィルの声音がふっと穏やかになる。

「……だが、夕方まで鍛錬を欠かさなかったおまえを、私は誇りに思う」

静かな湯気の中で、その言葉だけがやけに温かかった。
胸の奥に沁みて、知らぬ間に目頭が熱くなる。

(……ごめん、エロじじいなんて思って……)

湯に沈み、ぼんやりと天井を見上げる。
心も体も、じんわりと温まっていった。



やがてヴィルは何事もなかったかのように湯を出て、
音も立てずに去っていった。

湯船にはレイズひとり。

「……あぁ、極楽だ」

肩まで湯に浸かり、全身を伸ばす。
まるで心の汚れまで洗い流されるような幸福感。

――だが、その安らぎも長くは続かない。

湯の中で手を握ろうとした瞬間、指が動かないことに気づく。

「……はぁ……力が入らねぇな……」

それは一日中の鍛錬の代償。
木刀を振り続けた腕は、感覚が麻痺し、ほとんど痺れていた。

仕方なくゆっくりと立ち上がる。
湯を滴らせながら脱衣所へ向かうと――

入り口に、リアナとリアノ。

「…………」

視線が交錯した。
完全に、最悪のタイミング。

時が止まり、
沈黙が、世界を支配する。

そして――

「キャーーーーーーーーーー!!!」

反射的に叫んだのは俺だった。


「キャーーーーーッ!!!」

屋敷中に響く叫び声。
ほどなくして、騒ぎを聞きつけた使用人たちがなだれ込んでくる。

「な、何事ですか!?」
「お、お当主様が……!!」

注がれる数十の視線。
全裸の俺。

羞恥で頭が真っ白になる。

「……だ、だれか……タオルを……もって…まいれ。」

かろうじて絞り出した声。
リアナとリアノが慌てて駆け寄り、左右から体を拭いてくれる。

「レイズ様、失礼いたします……!」
「すぐにお召し物をご用意します……!」

その優しさが、逆に痛い。
優しい手つきが、むしろ羞恥を倍増させる。

ずらりと並ぶ使用人たちが、息を潜めて見守る中――
俺の心は、音を立てて崩れていった。

(……なんだよこれ。なんで俺だけこんな公開処刑みたいな……)

涙目でうなだれる俺の横で、
ひときわ落ち着いた声が静かに響いた。

「……当主様、少し……痩せられましたか。」

セバスだった。

(……そこじゃねぇぇぇぇぇぇ!!)

レイズの絶叫が、湯気の残る脱衣所に木霊した。
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