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レイズは守る
空から見る景色
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いつものように早朝に目を覚ましたレイズ。
だが――
(……おい、なんで動けねぇんだ)
身体を起こそうとして気づく。
四肢が完全に塞がれている。
昨夜は端っこで寝たはずなのに、
いまの彼はベッドの“ど真ん中”に横たわっていた。
しかも――
胸元にはフェリルが絡みつくように腕を回し、
その反対側ではリアノが小動物のように寄り添い、
そして床ではエルイが、綺麗に丸まりながらスヤスヤ寝息を立てている。
(…………誰が真ん中に運んだ)
記憶を必死に遡るが、昨夜の混沌とした状況では答えなど出るはずもない。
レイズは息を殺し、慎重に三人の身体を崩さないよう腕を抜き――
猫のように音も立てずに布団から脱出した。
外へ出ると、冷たい空気が肌を刺す。
いつものように鍛錬を始めれば、心がすっと澄んでいく。
そのとき――
「純粋なる友よ!」「おお、純粋の象徴よ!」
ぞろぞろとダークエルフが集まり、当然のように声をかけてくる。
レイズも自然に返した。
「あぁ、純粋たちよ。おはよう」
(これは……挨拶……?)
遅れてやってきたリアノとエルイはぽかんとし、
フェリルは小さく吹き出しながら肩を揺らしていた。
準備が整った一行は、ダークエルフたちに導かれ、
いよいよドレイクのもとへと足を運ぶ。
その場所にいたのは、巨大な影――二頭のドレイクだった。
「グルルルゥ……ッ!」
一歩踏み出すたび、地面が震える。
鋭い眼光と分厚い鱗、刃物のような爪。
まさしく“生きた恐竜”。
レイズは唾を飲み込み、じっと動かず立ち尽くす。
(近い近い近い……!
ゲーム画面じゃ分からなかったが、生はヤバすぎるだろこれ!!)
一頭のドレイクがレイズへ顔を寄せ、鼻先を押し当てる。
息がかかるだけで体毛が逆立つほどの圧だ。
だがレイズは微動だにせず受ける。
隣でリアノが恐怖を飲み込みつつ、そっと手を伸ばし――
「……っ、すご……い……」
鱗の感触を確かめるように撫でた。
その瞳は恐怖よりも感動で揺れている。
一方エルイはと言えば――
既に当たり前のようにドレイクの背に乗っていた。
「何をしているんです?
早く乗ってください」
完全に慣れている声色で促してくる。
フェリルの提案により、
レイズはフェリル・リアノと同じドレイクに相乗りすることとなり、
エルイは別のドレイクへ。
そして――
ドレイクが、大きな翼を広げた。
「いきますよ」
フェリルのひと言と同時に――
地を蹴る轟音。
重力を裏切る急浮上。
空気を裂くような衝撃。
「うわぁぁぁぁっ!? ちょっ、まっ、まっ……!!」
レイズは今世最大の叫びを上げた。
視界は暴れ馬のように揺れ、
風が顔を叩き、
身体が浮くような感覚に全神経が悲鳴を上げる。
そのとき――
「レイズくん!!」
リアノが背後からがっしり抱きつく。
いや、抱きつくというか――
締め上げた。
「ぐぅっ……!? し、締まる……!!
胸が!! 圧が!!!」
――忘れていた。リアノはかわいい顔をして、
実は人並み以上の腕力の持ち主だった。
だが次第に揺れは安定し、
ドレイクの飛行は実に滑らかになっていく。
風を切る音。
眼下に広がる見渡す限りの魔族領。
黒い森、紅い霧、果ての見えない大地。
恐怖はいつしか、言葉にできない感動へ変わっていった。
こうして、
ドレイクに乗った空の旅は――
ついに始まったのだった。
ドレイクの飛行速度は――想像など軽々と置き去りにするほどの速さだった。
初めの急上昇では、気圧の急変で胃がひっくり返りそうになったうえに、
リアノに“反射的な抱きつき”という名の全力締め付けを食らい、
景色を楽しむ余裕など欠片もなかった。
だが、身体が慣れ、呼吸が整ってくると――
目の前に広がる世界が、一気に鮮明になる。
風を切り裂いて進む爽快感。
天空の澄んだ冷たい空気。
広がる雲海。
そしてその下に続く、どこまでも雄大な大地。
歩みでは絶対に見ることのない、圧倒的な視界。
アルバード領まで遠くに見渡せ、
黒と緑が交錯する魔族の大地は、想像以上に果てしない。
ティグルなど、どれほど目を凝らしても影も形もない。
「……こんなにも、この世界は広いのか」
畏怖にも似た震えと、胸の奥で弾ける高揚感。
かつてゲームで駆け回ったはずの世界が――
現実ではあまりに広い。あまりに美しい。
レイズの心に湧き上がったのは、恐れではなく――純粋な“ワクワク”だった。
前方でドレイクに乗るダークエルフが、そっとレイズに視線を向けていた。
その瞳に宿るのは、厳しさと、そしてどこか懐かしさ。
レイズはその視線に、はっと息を呑む。
(……あれは、セシルの……俺の、お婆ちゃん……?)
見た目は二十代後半ほど。
しかしその瞳の奥に揺れる「繋がり」は、否応なしに血を訴えてくる。
言葉より先に、胸が理解した。
長距離飛行の合間、何度か地上へ降りて休憩を取る。
いくら強靭なドレイクでも、魔力消費は大きい。
そのため、魔力の補給が欠かせない。
フェリルは掌から淡い魔力を流し、ドレイクへ与える。
ドレイクは慣れたように喉を鳴らし、魔力を吸い込んだ。
それを見て、レイズはふっと思いつく。
「リアノ、水球を作れるか?」
「え?は、はい!」
リアノが水球を創り出し、レイズは即座に氷結の魔法を重ねる。
透明度の高い、美しい氷の結晶が生まれる。
レイズはそれをドレイクの前へ差し出す。
巨体のドレイクはじっ……と見つめ――
次の瞬間、ぱくりと丸飲みにした。
ひんやりした魔力が全身を巡ると、
ドレイクは気持ちよさそうに体を震わせ、「キュルルル」と愛らしい声をあげた。
猛々しい魔獣の、あまりに子供っぽい仕草に、
レイズもリアノも思わず笑い合う。
「……かわいいな」
「はい、ほんとに……」
その光景を見つめていたのは、ずっとレイズへ視線を送っていたダークエルフ――セシルの母。
その表情には優しさと、深い翳りが混じる。
声をかけようと口を開きかけても、言葉が出ない。
セシルの記憶が胸を塞いでいるのだろう。
レイズは問わない。ただその想いを、静かに受け止めた。
フェリルがそっと寄り添い、囁く。
「……気付きましたか?」
レイズが視線だけで応えると、フェリルはやわらかく頷いた。
「あの方にはプライドがあります。だから声はかけられない。でも……レイズさんが感じ取ってくれたことは、確かに届いていますよ」
レイズは小さく息をつき、胸の奥で「なるほど」と呟いた。
フェリルは笑顔を浮かべ、話題を切り替えるように言う。
「先ほどの氷……レイズさんは氷属性なのですね」
「あぁ、そうだな。氷属性と……」
ふと沈黙が生まれる。
しかしレイズはすぐに笑ってごまかした。
「まぁ、詳しいことは秘密だ」
フェリルは追及せず、静かに頷く。
◆ ◆ ◆
長い空の旅は終わり――
ついにティグルの近郊へ辿り着く。
地へ降り立った瞬間、空気の質が一変した。
大地から湧き上がる魔力は歪み、荒れ狂い、
まるで“ここから先は侵入者を殺す”と叫んでいるかのよう。
レイズは振り返り、真っ直ぐに告げる。
「ここから先は俺一人で行く」
「わ、私も……!」
リアノが一歩踏み出すが、レイズは即座に首を振る。
「危険なのはディアブロだけじゃない。この土地の魔物は全部が強い。……俺なら対処できる。でも、守りながらだと無理だ」
言葉の重さを理解し、リアノは悔しそうに唇を噛む。
フェリルも食い下がる。
「待ってください! 一人だなんて……!」
声が震える。
不安を隠しても隠しきれない。
祖母はじっとレイズを見つめる。
厳しく、しかしあたたかく――
孫を送り出す者の、あの強い眼差しで。
エルイが前へ出た。
「……私は見届けます。貴方が本当に“問題ない”のかを」
声は強い。
だが握った拳は震えていた。
レイズは苦笑する。
「あぁ、証明が要るんだよな。いいさ。ただし――危険を感じたら下がれ。俺を置いてでも」
エルイは沈黙のあと、深く頷いた。
フェリルは胸に手を当て、祖母は目を細める。
その眼差しは、それぞれの“心配”を確かに伝えていた。
レイズはそれを受け止め、前を向く。
「……さてと。ディアブロ。久しぶりだな」
洞窟に踏み込んだ瞬間――
全身が押し潰されそうな圧力が襲う。
それは確かな“捕食者の視線”。
「ティグルの魔物か……」
レイズは息を整え、わざと足を速めた。
暗闇が揺れる。
影が跳ねる。
次の瞬間、地が震え――魔物が現れた。
虎の顔。
異種の肉を強引に継ぎ合わせたような歪な体。
体内から濁った魔力が漏れ、臓腑が透けて見えるほどの異形。
咆哮とともに飛びかかる――
レイズは微動だにしない。
そして――
片手で、その突進を受け止めた。
「おっと、軽いな」
“死属性”が滲む。
魔物の強靭な魔力障壁が――
パキリ、と音を立てて砕けた。
「砕けろ」
レイズの身体がしなり、回転。
鋭い蹴りが顎を捕らえ、
巨体は宙に放り上げられ、
岩壁へと叩きつけられる。
轟音、砂埃、震動。
その中心に立つレイズは、
まるで準備運動が終わっただけのように――
静かに笑みを浮かべていた。
だが――
(……おい、なんで動けねぇんだ)
身体を起こそうとして気づく。
四肢が完全に塞がれている。
昨夜は端っこで寝たはずなのに、
いまの彼はベッドの“ど真ん中”に横たわっていた。
しかも――
胸元にはフェリルが絡みつくように腕を回し、
その反対側ではリアノが小動物のように寄り添い、
そして床ではエルイが、綺麗に丸まりながらスヤスヤ寝息を立てている。
(…………誰が真ん中に運んだ)
記憶を必死に遡るが、昨夜の混沌とした状況では答えなど出るはずもない。
レイズは息を殺し、慎重に三人の身体を崩さないよう腕を抜き――
猫のように音も立てずに布団から脱出した。
外へ出ると、冷たい空気が肌を刺す。
いつものように鍛錬を始めれば、心がすっと澄んでいく。
そのとき――
「純粋なる友よ!」「おお、純粋の象徴よ!」
ぞろぞろとダークエルフが集まり、当然のように声をかけてくる。
レイズも自然に返した。
「あぁ、純粋たちよ。おはよう」
(これは……挨拶……?)
遅れてやってきたリアノとエルイはぽかんとし、
フェリルは小さく吹き出しながら肩を揺らしていた。
準備が整った一行は、ダークエルフたちに導かれ、
いよいよドレイクのもとへと足を運ぶ。
その場所にいたのは、巨大な影――二頭のドレイクだった。
「グルルルゥ……ッ!」
一歩踏み出すたび、地面が震える。
鋭い眼光と分厚い鱗、刃物のような爪。
まさしく“生きた恐竜”。
レイズは唾を飲み込み、じっと動かず立ち尽くす。
(近い近い近い……!
ゲーム画面じゃ分からなかったが、生はヤバすぎるだろこれ!!)
一頭のドレイクがレイズへ顔を寄せ、鼻先を押し当てる。
息がかかるだけで体毛が逆立つほどの圧だ。
だがレイズは微動だにせず受ける。
隣でリアノが恐怖を飲み込みつつ、そっと手を伸ばし――
「……っ、すご……い……」
鱗の感触を確かめるように撫でた。
その瞳は恐怖よりも感動で揺れている。
一方エルイはと言えば――
既に当たり前のようにドレイクの背に乗っていた。
「何をしているんです?
早く乗ってください」
完全に慣れている声色で促してくる。
フェリルの提案により、
レイズはフェリル・リアノと同じドレイクに相乗りすることとなり、
エルイは別のドレイクへ。
そして――
ドレイクが、大きな翼を広げた。
「いきますよ」
フェリルのひと言と同時に――
地を蹴る轟音。
重力を裏切る急浮上。
空気を裂くような衝撃。
「うわぁぁぁぁっ!? ちょっ、まっ、まっ……!!」
レイズは今世最大の叫びを上げた。
視界は暴れ馬のように揺れ、
風が顔を叩き、
身体が浮くような感覚に全神経が悲鳴を上げる。
そのとき――
「レイズくん!!」
リアノが背後からがっしり抱きつく。
いや、抱きつくというか――
締め上げた。
「ぐぅっ……!? し、締まる……!!
胸が!! 圧が!!!」
――忘れていた。リアノはかわいい顔をして、
実は人並み以上の腕力の持ち主だった。
だが次第に揺れは安定し、
ドレイクの飛行は実に滑らかになっていく。
風を切る音。
眼下に広がる見渡す限りの魔族領。
黒い森、紅い霧、果ての見えない大地。
恐怖はいつしか、言葉にできない感動へ変わっていった。
こうして、
ドレイクに乗った空の旅は――
ついに始まったのだった。
ドレイクの飛行速度は――想像など軽々と置き去りにするほどの速さだった。
初めの急上昇では、気圧の急変で胃がひっくり返りそうになったうえに、
リアノに“反射的な抱きつき”という名の全力締め付けを食らい、
景色を楽しむ余裕など欠片もなかった。
だが、身体が慣れ、呼吸が整ってくると――
目の前に広がる世界が、一気に鮮明になる。
風を切り裂いて進む爽快感。
天空の澄んだ冷たい空気。
広がる雲海。
そしてその下に続く、どこまでも雄大な大地。
歩みでは絶対に見ることのない、圧倒的な視界。
アルバード領まで遠くに見渡せ、
黒と緑が交錯する魔族の大地は、想像以上に果てしない。
ティグルなど、どれほど目を凝らしても影も形もない。
「……こんなにも、この世界は広いのか」
畏怖にも似た震えと、胸の奥で弾ける高揚感。
かつてゲームで駆け回ったはずの世界が――
現実ではあまりに広い。あまりに美しい。
レイズの心に湧き上がったのは、恐れではなく――純粋な“ワクワク”だった。
前方でドレイクに乗るダークエルフが、そっとレイズに視線を向けていた。
その瞳に宿るのは、厳しさと、そしてどこか懐かしさ。
レイズはその視線に、はっと息を呑む。
(……あれは、セシルの……俺の、お婆ちゃん……?)
見た目は二十代後半ほど。
しかしその瞳の奥に揺れる「繋がり」は、否応なしに血を訴えてくる。
言葉より先に、胸が理解した。
長距離飛行の合間、何度か地上へ降りて休憩を取る。
いくら強靭なドレイクでも、魔力消費は大きい。
そのため、魔力の補給が欠かせない。
フェリルは掌から淡い魔力を流し、ドレイクへ与える。
ドレイクは慣れたように喉を鳴らし、魔力を吸い込んだ。
それを見て、レイズはふっと思いつく。
「リアノ、水球を作れるか?」
「え?は、はい!」
リアノが水球を創り出し、レイズは即座に氷結の魔法を重ねる。
透明度の高い、美しい氷の結晶が生まれる。
レイズはそれをドレイクの前へ差し出す。
巨体のドレイクはじっ……と見つめ――
次の瞬間、ぱくりと丸飲みにした。
ひんやりした魔力が全身を巡ると、
ドレイクは気持ちよさそうに体を震わせ、「キュルルル」と愛らしい声をあげた。
猛々しい魔獣の、あまりに子供っぽい仕草に、
レイズもリアノも思わず笑い合う。
「……かわいいな」
「はい、ほんとに……」
その光景を見つめていたのは、ずっとレイズへ視線を送っていたダークエルフ――セシルの母。
その表情には優しさと、深い翳りが混じる。
声をかけようと口を開きかけても、言葉が出ない。
セシルの記憶が胸を塞いでいるのだろう。
レイズは問わない。ただその想いを、静かに受け止めた。
フェリルがそっと寄り添い、囁く。
「……気付きましたか?」
レイズが視線だけで応えると、フェリルはやわらかく頷いた。
「あの方にはプライドがあります。だから声はかけられない。でも……レイズさんが感じ取ってくれたことは、確かに届いていますよ」
レイズは小さく息をつき、胸の奥で「なるほど」と呟いた。
フェリルは笑顔を浮かべ、話題を切り替えるように言う。
「先ほどの氷……レイズさんは氷属性なのですね」
「あぁ、そうだな。氷属性と……」
ふと沈黙が生まれる。
しかしレイズはすぐに笑ってごまかした。
「まぁ、詳しいことは秘密だ」
フェリルは追及せず、静かに頷く。
◆ ◆ ◆
長い空の旅は終わり――
ついにティグルの近郊へ辿り着く。
地へ降り立った瞬間、空気の質が一変した。
大地から湧き上がる魔力は歪み、荒れ狂い、
まるで“ここから先は侵入者を殺す”と叫んでいるかのよう。
レイズは振り返り、真っ直ぐに告げる。
「ここから先は俺一人で行く」
「わ、私も……!」
リアノが一歩踏み出すが、レイズは即座に首を振る。
「危険なのはディアブロだけじゃない。この土地の魔物は全部が強い。……俺なら対処できる。でも、守りながらだと無理だ」
言葉の重さを理解し、リアノは悔しそうに唇を噛む。
フェリルも食い下がる。
「待ってください! 一人だなんて……!」
声が震える。
不安を隠しても隠しきれない。
祖母はじっとレイズを見つめる。
厳しく、しかしあたたかく――
孫を送り出す者の、あの強い眼差しで。
エルイが前へ出た。
「……私は見届けます。貴方が本当に“問題ない”のかを」
声は強い。
だが握った拳は震えていた。
レイズは苦笑する。
「あぁ、証明が要るんだよな。いいさ。ただし――危険を感じたら下がれ。俺を置いてでも」
エルイは沈黙のあと、深く頷いた。
フェリルは胸に手を当て、祖母は目を細める。
その眼差しは、それぞれの“心配”を確かに伝えていた。
レイズはそれを受け止め、前を向く。
「……さてと。ディアブロ。久しぶりだな」
洞窟に踏み込んだ瞬間――
全身が押し潰されそうな圧力が襲う。
それは確かな“捕食者の視線”。
「ティグルの魔物か……」
レイズは息を整え、わざと足を速めた。
暗闇が揺れる。
影が跳ねる。
次の瞬間、地が震え――魔物が現れた。
虎の顔。
異種の肉を強引に継ぎ合わせたような歪な体。
体内から濁った魔力が漏れ、臓腑が透けて見えるほどの異形。
咆哮とともに飛びかかる――
レイズは微動だにしない。
そして――
片手で、その突進を受け止めた。
「おっと、軽いな」
“死属性”が滲む。
魔物の強靭な魔力障壁が――
パキリ、と音を立てて砕けた。
「砕けろ」
レイズの身体がしなり、回転。
鋭い蹴りが顎を捕らえ、
巨体は宙に放り上げられ、
岩壁へと叩きつけられる。
轟音、砂埃、震動。
その中心に立つレイズは、
まるで準備運動が終わっただけのように――
静かに笑みを浮かべていた。
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