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レイズは守る
祖母レイ
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――ティグルでの死闘を終え、レイズが仲間たちのもとへ戻ってくる。
エルイはまだ震えが止まらず、喉を震わせて言葉を漏らした。
「ま、まさか……本当に……倒したのですか……?」
レイズは疲れを見せず、静かに首を振る。
「倒してはいない。ただ、ミスリルを取ることは許してもらった。だから必要分取ったら、すぐに退散する」
フェリルはその言葉に大きく瞳を揺らす。
「……本当に、あれほどの存在を……退けたのですね……」
驚愕と畏怖、そして信じられないという感情が一度に顔へ浮かんでいた。
ダークエルフの女は胸に手を当て、小さく安堵の息を漏らす。
リアノは涙を溜めたまま、レイズへ縋るように近づく。
「ほんとに……レイズくん……もう、こんな危険は……絶対にダメ……」
誰もが理解していた。
――あのディアブロの圧は、人が触れていい領域ではなかった。
だからこそ、今こうしてレイズが無事でいることは奇跡そのものだった。
一行はティグル洞窟へ入り、レイズが必要分のミスリルを素早く削り取っていく。
集めた鉱石をリアノの水魔法で包み、レイズが氷結で固定すると、重木に差し込まれたミスリルは巨大なハンマーのような荷になった。
フェリルは眉をひそめつつ、不安げに呟く。
「これ……本当にドレイクに積めるのでしょうか……?」
しかし、巨体のドレイクは鼻息を荒くし、「任せろ」と胸を張ってみせた。
そこで乗り合わせを再調整する。
レイズはダークエルフの祖母と一頭に乗り、リアノ、フェリル、エルイは別のドレイクへ跨がることになる。
夜の闇を切り裂き、ドレイクの翼が闇天へ舞い上がる。
影は空へ溶けるように遠ざかっていった。
――その光景を、ディアブロは奥の闇から静かに見送っていた。
「死属性……我が魔力を完全に無効化するとはな……」
その口元に、微かな笑みが浮かぶ。
「もしガイルが知れば……愉快なことになる」
その笑みには、確かな興味と狂気が混じっていた。
ドレイクの背に揺られながら、レイズと祖母であるダークエルフのレイは、長い沈黙を保っていた。
気まずさと言うにはどこか温かい、不思議な沈黙。
ドレイクの身体が揺れるたび、背中はまるで「話せ」と促すように揺れる。
不意の揺れで、レイズの手がずれてしまい、レイの胸下へ触れてしまう。
レイは気に留める様子もなく前を見つめていたが、レイズは顔が熱くなり、余計に気まずさが増す。
そっと手を戻し、レイズは取り繕うように口を開く。
「その……名前。なんて言うんですか?」
レイはちらりと横目で見やり、短く答える。
「……レイ」
「レイ……」
自分の“レイズ”という名の由来はわからない。
だがこの響きを聞いた瞬間、胸の奥が落ち着くような、血の繋がりを肯定されるような、妙な感覚があった。
「その……レイは、俺の祖母なんだよね?」
揺れるドレイクの背で、緊張まじりに尋ねる。
レイはしばし黙り、やがて短く――
「あぁ」
とだけ答えた。
冷たさすら感じる声。
だがその奥に、触れられたくないほど深い“懐かしさ”が確かに宿っていた。
若々しく、とても祖母には見えない姿。
その戸惑いと同時に、自分が確かに“この血に連なっている”と実感させられる。
セシルの母。
人間と恋をしたダークエルフ――それがレイ。
レイズは胸の奥にあたたかいものを抱えながら、次の言葉を探す。
だが、レイの方が先に口を開いた。
「……不思議。あなたの中には……あの男の面影がある」
レイズは息を呑む。
誰のことか、すぐにわかった。
――レイが愛した人間。
セシルの父であり、自分へと繋がる“祖父”。
「そうなんですか……? 俺、似てます……?」
レイズが問いかけるが、レイは答えを返さなかった。
ただ、遠い時間を見つめるように目を細める。
レイズは胸の奥で理解した。
自分の中には――
確かに“あの男”の何かが受け継がれている。
静かな空の旅路の中、
答えの出ない問いと、確かな血の繋がりだけが
二人の間に残り続けた。
エルイはまだ震えが止まらず、喉を震わせて言葉を漏らした。
「ま、まさか……本当に……倒したのですか……?」
レイズは疲れを見せず、静かに首を振る。
「倒してはいない。ただ、ミスリルを取ることは許してもらった。だから必要分取ったら、すぐに退散する」
フェリルはその言葉に大きく瞳を揺らす。
「……本当に、あれほどの存在を……退けたのですね……」
驚愕と畏怖、そして信じられないという感情が一度に顔へ浮かんでいた。
ダークエルフの女は胸に手を当て、小さく安堵の息を漏らす。
リアノは涙を溜めたまま、レイズへ縋るように近づく。
「ほんとに……レイズくん……もう、こんな危険は……絶対にダメ……」
誰もが理解していた。
――あのディアブロの圧は、人が触れていい領域ではなかった。
だからこそ、今こうしてレイズが無事でいることは奇跡そのものだった。
一行はティグル洞窟へ入り、レイズが必要分のミスリルを素早く削り取っていく。
集めた鉱石をリアノの水魔法で包み、レイズが氷結で固定すると、重木に差し込まれたミスリルは巨大なハンマーのような荷になった。
フェリルは眉をひそめつつ、不安げに呟く。
「これ……本当にドレイクに積めるのでしょうか……?」
しかし、巨体のドレイクは鼻息を荒くし、「任せろ」と胸を張ってみせた。
そこで乗り合わせを再調整する。
レイズはダークエルフの祖母と一頭に乗り、リアノ、フェリル、エルイは別のドレイクへ跨がることになる。
夜の闇を切り裂き、ドレイクの翼が闇天へ舞い上がる。
影は空へ溶けるように遠ざかっていった。
――その光景を、ディアブロは奥の闇から静かに見送っていた。
「死属性……我が魔力を完全に無効化するとはな……」
その口元に、微かな笑みが浮かぶ。
「もしガイルが知れば……愉快なことになる」
その笑みには、確かな興味と狂気が混じっていた。
ドレイクの背に揺られながら、レイズと祖母であるダークエルフのレイは、長い沈黙を保っていた。
気まずさと言うにはどこか温かい、不思議な沈黙。
ドレイクの身体が揺れるたび、背中はまるで「話せ」と促すように揺れる。
不意の揺れで、レイズの手がずれてしまい、レイの胸下へ触れてしまう。
レイは気に留める様子もなく前を見つめていたが、レイズは顔が熱くなり、余計に気まずさが増す。
そっと手を戻し、レイズは取り繕うように口を開く。
「その……名前。なんて言うんですか?」
レイはちらりと横目で見やり、短く答える。
「……レイ」
「レイ……」
自分の“レイズ”という名の由来はわからない。
だがこの響きを聞いた瞬間、胸の奥が落ち着くような、血の繋がりを肯定されるような、妙な感覚があった。
「その……レイは、俺の祖母なんだよね?」
揺れるドレイクの背で、緊張まじりに尋ねる。
レイはしばし黙り、やがて短く――
「あぁ」
とだけ答えた。
冷たさすら感じる声。
だがその奥に、触れられたくないほど深い“懐かしさ”が確かに宿っていた。
若々しく、とても祖母には見えない姿。
その戸惑いと同時に、自分が確かに“この血に連なっている”と実感させられる。
セシルの母。
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レイズは胸の奥にあたたかいものを抱えながら、次の言葉を探す。
だが、レイの方が先に口を開いた。
「……不思議。あなたの中には……あの男の面影がある」
レイズは息を呑む。
誰のことか、すぐにわかった。
――レイが愛した人間。
セシルの父であり、自分へと繋がる“祖父”。
「そうなんですか……? 俺、似てます……?」
レイズが問いかけるが、レイは答えを返さなかった。
ただ、遠い時間を見つめるように目を細める。
レイズは胸の奥で理解した。
自分の中には――
確かに“あの男”の何かが受け継がれている。
静かな空の旅路の中、
答えの出ない問いと、確かな血の繋がりだけが
二人の間に残り続けた。
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