ワールド・リセット

影樹 ねこ丸

文字の大きさ
3 / 3

第3話 宝探し Ⅱ

しおりを挟む
 生徒たちは絶句した。
 自分の顔には温かい血が飛び、これでもかと鼻をつんざく異臭。
 教卓に隠れていても、やはりパーツは生徒を貫通した。
 龍徳は顔に飛び散った血を拭きながら考えた。
 パーツと生徒の数が、必ず倍数になるように削られてくんだ。
 今、教室にいる生徒数は28人だ。2人は死亡している。
 そして、パーツは尊流が見つけた1つのパーツを除き14個。
 またしても、パーツと生徒数は倍数の関係になっている。
 つまりは、ひとつパーツを見つけたら、一人は生存し、一人は死亡する。
 そういったとこだろう。
 
 「これは多分、パーツを1つ見つけたら、一人が死ぬって言うルールになってる。見つけた者は生きて、見つけられなかった者は死んでいく。」
 「これをクリアしたら、もうミッションは無いのかな?」
 「分からない。尊流がどこに行ったのか。そもそもこのミッションはなんのためにやっているのか。犯人は何を目的に、こんな事件を起こしたのか?謎ばっかりだが、ミッションはまだ終わらないと思う。」
 「どうして?」
 「分からないけど、さっき、“ミッション1”って言ってただろ?一回だけなら、1なんて付けないと思うんだ。だからこれをクリアしても、まだ地獄は続く。」

 龍徳が吐く言葉には重みがあり、それを一層深める瞳があった。
 まるでしかばねの上に立つ、無慈悲で冷酷な王者のような瞳だ。
 何をもさげすみ、何があっても悲しまない。
 そんな感じがした。
 だが、どこか優しそうな雰囲気が彼を包んでいた。
 冷酷なだけに、謎の優しさをかもしていた。
 少し沈黙が続いた。
 隣にいる生徒は、全員が敵なのだ。

 「お前ら。パーツを探さないと死んじまうかんな。まぁ、だからといって友達を殺したくない。だろ?」

 全員は何も答えなかった。
 つまりは、図星だった。
 生きたいけど、友達は殺したくない。
 このミッションでは考えてはならないことだ。
 だが、普通の人はそう考えるのが普通だ。
 闘争心が喪失した現在の人々には、このミッションをクリアするのは難しいだろう。
 龍徳は呆れてしまった。
 
 「チッ。どいつもこいつも、クソばっかかよ!友達のために謙虚を装ってるだけで、本当は自分のことしか考えてない。そういうやつは、いつか死ぬぜ。生半可な気持ちでミッションに取り組んだって、クリアできるわけないだろ!今の奴らは本当に猫かぶりやがって。虫酸が走る。」

 龍徳は我慢ならずに、不満を溢した。
 みんなを鼓舞するためではなく、本音だった。
 今の奴らを見ていると、イライラして堪らない。
 周りからの印象を気にして、己のことなんてどうでもいいと思っている。
 でも、そういう人ほど自己中で、最後は結局自分のために行動をする。
 なら最初っから自己中で良いじゃないか?
 人によって意見の相違はあるが、龍徳はそう思っていた。

 「お、おう。」
 「そうだな。」
 「みんな!すまん‼」

 そう言って、みんなは捜索を始めた。
 ようやく人間としての本性を現し始めた。
 これがみんなの素の姿である。
 仮面を取った、素の姿である。

 「見つけたぞ!蓋がある。」

 見つけたのは、騒がしいムードメーカーの田中洋介だ。
 明るい性格などどこかに行って、とにかく必死で喜んでいた。
 生きる渇望を感じた。

 「暗号は?」
 「缶に去る、瓶に居ぬ。何時~何時。」

 それと絵が描いてあった。
 ライオンが虎に勝ったような絵が描いてあった。
 そして、“虎より獅子を選ぶべし”と書いてある。
 すると田中がひらめいたような顔をした。

 「これはさるいぬを表しているんだ。缶に、瓶に。」
 「それは違うな。」
 「どうして?」
 「この電卓には、7桁の数字を入れるって書いてある。干支を時刻で表しても、申は8で、戌は10。7桁にはならない。」
 「えー。閃いたと思ったのに。」

 龍徳はまた考えた。
 この絵をなんとか活用するんだ。
 虎より獅子を選ぶべし。虎って干支だよな。
 じゃあ、獅子ってなんだ?
 “!”
 そういうことか!
 でもそうなると、どこに隠れてるんだ?
 缶に去る、瓶に居ぬ。
 あぁ!なるほど。それで瓶か。
 じゃあ、それが表す7桁の数字はなんだ?
 何時~何時。
 ・・・。
 もしかして、なんじ~なんじじゃなくて...!
 分かった!7桁の数字になる!

 



 「分かったぞ、田中。」
 「マジか!」
 
 田中はかなり喜んでいた。
 
 「まず虎より獅子を選ぶべしって言うのは、干支より星座を選べってことだ。で、この文に隠されている星座は、“ 、瓶”で天秤座が隠れていた。で、何時~何時って言うのは、なんじ~なんじって読むんじゃ無くて、いつ~いつとも読めるんだ。つまり天秤座は、9月23日~10月23日だ。つまり暗号は、9231023だ。」

 田中は、目が輝いていた。
 生きることができる喜びが、顔から分かった。

 「お前マジで天才かよ。」

 面白可笑しくではなく、純粋にそう思った。
 ある意味命の恩人でもある。尊敬に値する。
 田中はすぐに番号を打ち始めた。合図も無しに。
 みんなは身構えるのが少し遅れた。

 「ボッ!!!」

 もはやそれは音とは言えないような、汚ならしいものだった。
 龍徳の顔には血が飛び散った。
 自分の腹は無くなってはいなかった。
 いろはも無事だった。
 龍徳の隣に居た、岸本という女だ。
 目からは涙が流れ、口からも血反吐ちへどを吐き、魂が抜けた表情だった。
 これが人の死。
 3回目ではあるが、まだ見慣れない。
 いや、見慣れてはいけない。
 まぁ龍徳にとっては、4回目だった。
 
 「まったく、合図無しかよ。あの野郎、みにくいな。」

 やはり悲しむ人も居たが、絶望的な目をしてはいなかった。
 人の命ははかない。
 いつもを一生懸命に生きている命も、毎日危険と隣り合わせだ。
 そうして大きな危険を迎えたら、人の命はいとも簡単にポキッと折れる。
 シャーペンの芯のように、一瞬で折れてしまう。
 機械でも成し得ないことをしている人の体も、武力では機械に勝てない。
 人類が生んだ機械によって、人は死んでいくのかもしれない。
 事故死は一番嫌な死に方だ。
 だが、今の状況は、もっと嫌な死に方である。
 訳が分からないまま、無念を残したまま、この世を去っていく。
 これほど悲しいことはない。
 そんなことを考えていたら、いろはは異変に気づいた。
 さっきあった花瓶が無くなっている。
 まぁ大した事ではない。
 いろはは気にせず、捜索を再開した。

 「これも、蓋なのか?」

 いろはの隣に居た小林という男が、独り言をこぼした。
 小林は蓋を開けようと頑張っていた。
 かなり小さな蓋だった。
 鉛筆の太さ並みで、全く目立たない。
 そして不意に蓋が開いた。
 すると紙の小さな巻物と、小さなサイコロが出てきた。
 
 「よ、よし。見つけた。」

 またも独り言のように、ボソボソっと言った。
 誰にも言わないのだろうか?
 そして小林は紙の巻物を開き始めた。

 “日本から見た、太平洋と日本海、樺太。地図とサイコロで、すごろくしよう。”

 それと図も描いてあった。
 日本の形が書いてあったが、すごろくができるようにはなっていない。
 小林は答えが分からなくても、一切龍徳の手を借りなかった。
 かなりじっと悩んで、急に顔を上げた。
 急にサイコロを転がして、出てきた数字を入れ始めたのだ。
 それが暗号のはずがないのに。
 そして3桁の数字を入れ終えたとき。

 「グジュアァッッッ!!」
 
 肉が消えていく音がした。
 いろはの顔には、血だけでなく肉片も飛んできた。
 吐きそうなほどの異臭がした。
 サイコロからビームが飛び、小林の腹やら胸やらを貫いた。
 近距離で食らったために、もはや人間とは思えない形になっていた。
 
 「ブブー!不正解!」

 龍徳は小林を見ていた。
 哀れな人間だな。
 そう思った。
 自分だけで行動して、自分で解決しようとする。
 一匹狼の典型的なタイプだ。
 
 「バカが。一人でやろうとして死ぬなんて、哀れだな。」

 龍徳は飛び散った肉片を蹴飛ばし、暗号を見た。
 血だらけで何が書いてあるか、全く見えなかった。

 「ったく、迷惑な奴だな。」

 するとパーツが出てきた。
 しかし誰もクリアしていない。

 「じゃんけん大会、開幕ー!」

 みんなは声のした方を向いた。
 黒板には対戦表のようなものが、書かれていた。
 チョークが浮いて、一人で書いていた。

 「黒板に書かれている対戦表通りに、じゃんけんをしてね!
 優勝者は、ミッションクリアとなりまーす!」
 「じゃ、じゃんけん大会...!」

 まさか、じゃんけんで勝敗を決めるのか?
 そんなバカなことが。

 「運も実力の内だよーー!ハッハッハッハッ!」

 薄気味悪い笑い声をあげて、その声は消えていった。
 じゃんけんをするしかないのか...。

 
 

 
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

熟女教師に何度も迫られて…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
二度と味わえない体験をした実話中心のショート・ショート集です

処理中です...