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第1章 謎の病
第2話
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「今日から皆さんは、この誇り高き、聖ルメリア学院の生徒です。己を誇りに思い、ルメリアの名を汚すような真似は決してしないと、胸に誓ってください。私はA組の担任、ワイズだ。」
その日は、ワイズ先生の話から始まり、その後入学式が始まった。
かったるい時間だったが、リーフにとっては至福の一時だった。
誰にも馬鹿にされず、人と接しなくて良い時間。
リーフにとって人間と話すのは、虫酸が走って仕方がない。
だが、あの少年は違っていた。
リーフと同じ様な烙印が刻まれており、仲間意識が強くなっている。
今、リーフはこの世の人間を、あの少年かそれ以外と見ていた。
あの少年は己のことを理解してくれ、それ以外は理解してくれない。
この世の人間は、その二種類に分かれている。
「ねぇ、君は何て名前?」
「ガイアだけど...。君は?」
「俺はリーフ。これからよろしくな!」
「リーフ、よろしく!」
世の除け者にされる二人だからこそ、こうして仲良くなれるのだ。
人は、誰しもが敵と感じる存在がいる。
誰かが同じ存在を敵と思っている場合、その二人に絆が生まれる。
人間関係というのは、実に難しいのである。
そうして、1日目が終わろうとしていた。
家に帰っても、どうせ親にあーだこーだ言われるだけである。
気分が落ち込む。
「ただいま。」
「.....」
息子の帰宅の合図に耳も傾けず、父親は集中して新聞を読んでいる。
少しでも邪魔をすれば、父親の気分を害するだけだ。
今日も静かに自分の部屋に戻るとしよう。
「ちょっと待て、リーフ。」
自分の名前を呼んでくれたのは久しぶりだった。
というか、覚えててくれていたこと自体が、既に感動できるレベルだ。
「なんでしょう、父上。」
「今日はどうだった?」
「今日は、実に良い日になりました。私と同じような烙印のある子を...」
「俺の前で烙印の話をするなっ!!」
リーフは、言葉を失った。
烙印のことを話しただけで、これほど怒られると思わなかった。
というより、ガイアの存在が嬉しすぎて、注意を怠ってしまった。
「申し訳ありません。」
「友達ができたのだな?」
「はい。」
「良いことだ。友は大事にしろよ。」
父親の口調が今日は少し優しかった。
その後、母親にも会ったが、「今日の夕飯はご馳走よ」と嬉しそうに笑って見せた。
いつもと違う家族を、気味悪がると共に、少し気分が高揚した。
「ただいま。」
「おかえり!」
フィングが帰ったと分かると、母親は即座に玄関に向かった。
父親も集中して読んでいた新聞から、視線を外した。
「国立マーガレット学院に受かったのね?」
「まぁね。」
「凄いじゃない!誇りに思うわ!」
母親のテンションの上がり様は、リーフと会ったときよりも爆ぜていた。
兄はやはり凄いと思う。
国家が公式創立をした超名門にして超難関の国立学院の入試に受かったのだという。
勉強も剣術も天才的となると、非の打ち所が無い。
「よくやった、フィング。流石俺の子だ。」
「お兄ちゃん、おめでとうございます。」
リーフもささやかに祝ったのだが、兄の耳に届いたとしても、頭は受け付けていないだろう。
リーフに目も向けずに、ただ両親に感謝の言葉を放つだけだった。
両親があれだけ優しかったのも、兄が大手柄を立てたからだろう。
まさにエストワール家の嫡男に相応しい、大出世って訳だ。
ただ、この事を喜べない者もいる。
言わずとも分かるだろうが、リーフのことだ。
もはや、自分の居場所がどんどん削られていく様な感じがする。
崖っぷちだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「行ってきます。」
家を出発したリーフは、早く学院に行きたい気分で気が急いた。
学院にはガイアが待っている。名前を聞くだけでも、気分が高揚するのが分かる。
そうして学院に着くや否や、ガイアの姿を発見した。
一人で机に座って読書をしている。
やはりそれしかやることがないよな、と心の中で共感しつつ、近づいていった。
「ガイア!」
「おぉ、リーフ!待ってたぜ。」
朝の時間は全てガイアと過ごした。
残念ながら席は遠かったため、講義中は会話はできなかった。
その日、適正判断テストがあった。
ステータスや身体能力から見て、その人の性に合っているのは何か判断するのである。
リーフはステータスも目立つ項目がなく、身体能力も軒並み。
貴族の子、いや、一般人よりも下回るかもしれない。
だが、その日、とある事実に直面する。
かなりの速度で走り、重い鉄の塊も軽々持ち上げる、ガイアの姿がそこにあった。
ステータスもどうやら常人より上らしい。
「ガイア、凄いな。俺なんて才能が無くてさ、誰からも望まれない存在なんだ。」
「そんな落ち込むなって。遅咲きの奴だって、うん万といる。」
「だよな、ごめん、ありがとう。」
「励ますのは当たり前だろ?俺らはもう友達だ。」
やはりガイアは温かい。他の屑どもとは全く違う。
だが、ガイアは才能に恵まれていた。俺が弱者なのは、この烙印のせいじゃ無いってことだ。
というより、ガイアは病ではないのか?ただの烙印者なのか。
いち早く、俺の病の正体が知りたかった。
今回の適正判断テストの結果は、“E判定”の“適正なし”。
感じから察するだろうが、最低の結果だ。
こんな救いようの無い結果は、見ていて逆に清々しい。
親に見せる顔がない。
この紙は親には見せれない。
俺は、さすがに才能に恵まれなさすぎている。
血筋を完全に無視して産まれてきたに違いない。
そして、彼に追い打ちを掛けるかのような出来事が起こった。
―五感の衰え―
五感とは、視覚、嗅覚、聴覚、味覚、触角の5つだ。
体が体以外の情報を脳に伝えるために、外の情報の伝達係のような能力だ。
視る、嗅ぐ、聴く、味わう、触る。
人になければならないもの。
リーフの体は、その五感さえも喪う道を辿っているのである。
その日は、ワイズ先生の話から始まり、その後入学式が始まった。
かったるい時間だったが、リーフにとっては至福の一時だった。
誰にも馬鹿にされず、人と接しなくて良い時間。
リーフにとって人間と話すのは、虫酸が走って仕方がない。
だが、あの少年は違っていた。
リーフと同じ様な烙印が刻まれており、仲間意識が強くなっている。
今、リーフはこの世の人間を、あの少年かそれ以外と見ていた。
あの少年は己のことを理解してくれ、それ以外は理解してくれない。
この世の人間は、その二種類に分かれている。
「ねぇ、君は何て名前?」
「ガイアだけど...。君は?」
「俺はリーフ。これからよろしくな!」
「リーフ、よろしく!」
世の除け者にされる二人だからこそ、こうして仲良くなれるのだ。
人は、誰しもが敵と感じる存在がいる。
誰かが同じ存在を敵と思っている場合、その二人に絆が生まれる。
人間関係というのは、実に難しいのである。
そうして、1日目が終わろうとしていた。
家に帰っても、どうせ親にあーだこーだ言われるだけである。
気分が落ち込む。
「ただいま。」
「.....」
息子の帰宅の合図に耳も傾けず、父親は集中して新聞を読んでいる。
少しでも邪魔をすれば、父親の気分を害するだけだ。
今日も静かに自分の部屋に戻るとしよう。
「ちょっと待て、リーフ。」
自分の名前を呼んでくれたのは久しぶりだった。
というか、覚えててくれていたこと自体が、既に感動できるレベルだ。
「なんでしょう、父上。」
「今日はどうだった?」
「今日は、実に良い日になりました。私と同じような烙印のある子を...」
「俺の前で烙印の話をするなっ!!」
リーフは、言葉を失った。
烙印のことを話しただけで、これほど怒られると思わなかった。
というより、ガイアの存在が嬉しすぎて、注意を怠ってしまった。
「申し訳ありません。」
「友達ができたのだな?」
「はい。」
「良いことだ。友は大事にしろよ。」
父親の口調が今日は少し優しかった。
その後、母親にも会ったが、「今日の夕飯はご馳走よ」と嬉しそうに笑って見せた。
いつもと違う家族を、気味悪がると共に、少し気分が高揚した。
「ただいま。」
「おかえり!」
フィングが帰ったと分かると、母親は即座に玄関に向かった。
父親も集中して読んでいた新聞から、視線を外した。
「国立マーガレット学院に受かったのね?」
「まぁね。」
「凄いじゃない!誇りに思うわ!」
母親のテンションの上がり様は、リーフと会ったときよりも爆ぜていた。
兄はやはり凄いと思う。
国家が公式創立をした超名門にして超難関の国立学院の入試に受かったのだという。
勉強も剣術も天才的となると、非の打ち所が無い。
「よくやった、フィング。流石俺の子だ。」
「お兄ちゃん、おめでとうございます。」
リーフもささやかに祝ったのだが、兄の耳に届いたとしても、頭は受け付けていないだろう。
リーフに目も向けずに、ただ両親に感謝の言葉を放つだけだった。
両親があれだけ優しかったのも、兄が大手柄を立てたからだろう。
まさにエストワール家の嫡男に相応しい、大出世って訳だ。
ただ、この事を喜べない者もいる。
言わずとも分かるだろうが、リーフのことだ。
もはや、自分の居場所がどんどん削られていく様な感じがする。
崖っぷちだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「行ってきます。」
家を出発したリーフは、早く学院に行きたい気分で気が急いた。
学院にはガイアが待っている。名前を聞くだけでも、気分が高揚するのが分かる。
そうして学院に着くや否や、ガイアの姿を発見した。
一人で机に座って読書をしている。
やはりそれしかやることがないよな、と心の中で共感しつつ、近づいていった。
「ガイア!」
「おぉ、リーフ!待ってたぜ。」
朝の時間は全てガイアと過ごした。
残念ながら席は遠かったため、講義中は会話はできなかった。
その日、適正判断テストがあった。
ステータスや身体能力から見て、その人の性に合っているのは何か判断するのである。
リーフはステータスも目立つ項目がなく、身体能力も軒並み。
貴族の子、いや、一般人よりも下回るかもしれない。
だが、その日、とある事実に直面する。
かなりの速度で走り、重い鉄の塊も軽々持ち上げる、ガイアの姿がそこにあった。
ステータスもどうやら常人より上らしい。
「ガイア、凄いな。俺なんて才能が無くてさ、誰からも望まれない存在なんだ。」
「そんな落ち込むなって。遅咲きの奴だって、うん万といる。」
「だよな、ごめん、ありがとう。」
「励ますのは当たり前だろ?俺らはもう友達だ。」
やはりガイアは温かい。他の屑どもとは全く違う。
だが、ガイアは才能に恵まれていた。俺が弱者なのは、この烙印のせいじゃ無いってことだ。
というより、ガイアは病ではないのか?ただの烙印者なのか。
いち早く、俺の病の正体が知りたかった。
今回の適正判断テストの結果は、“E判定”の“適正なし”。
感じから察するだろうが、最低の結果だ。
こんな救いようの無い結果は、見ていて逆に清々しい。
親に見せる顔がない。
この紙は親には見せれない。
俺は、さすがに才能に恵まれなさすぎている。
血筋を完全に無視して産まれてきたに違いない。
そして、彼に追い打ちを掛けるかのような出来事が起こった。
―五感の衰え―
五感とは、視覚、嗅覚、聴覚、味覚、触角の5つだ。
体が体以外の情報を脳に伝えるために、外の情報の伝達係のような能力だ。
視る、嗅ぐ、聴く、味わう、触る。
人になければならないもの。
リーフの体は、その五感さえも喪う道を辿っているのである。
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