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第3章_いざ!モンバルト星群へ

第11話_夜に起きた惨事

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 その日も五人はぐっすり眠っていた。船艦も余力で走っているため、明け方は少し遅くなる。この船艦は、星に当たらないために避ける機能はあるが、その星からの攻撃に対処はできない。それがこの夜に起きてしまった。午前4時。「...ボガーーッンッ!」という音と共に、大きな揺れが生じた。吃驚して、皆は目を覚ます。「なんだ?」零は状況を読めず、寝起きの脳に鞭を打ち動こうとした。「零くん。何が起きたの?」虚ろな目をこちらに向け、聞いてきた。「分からないが、ヤバイ状況だと思う。」急いでフロアに移動する。するとロガンが、「知らねぇ星に攻撃されて、船艦に穴が!」すると、戦艦にアナウンスが流れる。【船艦内の酸素レベルが低下しています】何度も繰り返された。よし、復元魔法だ。フアーッっと船が戻った。だが、「ボガーーッンッ!」とまた攻撃された。また復元魔法をして、急いで腕輪をはめた。そして逃げた。戦いたいのは山々だが、この状況は逃げるのが最優先だ。一旦落ち着いた。もう例の星からは、超離れてる。[ウィーン!ウィーン!]急に警告音が鳴った。復元したはずなんだが。【船艦に不特定多数のウイルスが付着しています】復元魔...《ウイルスに復元魔法は効かないの!効かないどころか、ウイルスは魔法ではどうにもならなくて、風化するのを待つしかないわ。》風化するのをって、いつまで《大体この量だったら、丸一日はかかるわね。》マジか。人間にウイルスが感染しないように、ガスマスク付けなきゃ。ロガンだけだけど。「ロガン!ガスマスク付けなきゃ!この船にある?」すると、「ガスマスクはあるが、ウイルスって皮膚から感染したりもすんだ。ガススーツも装着しないと!」ウイルスを怖がるように、必死に言ってきた。ウイルスに何か、悪い思い出でもあるのか。と思ったが、あまり深入りはしなかった。そしてロガンは、完全防備をして席に座った。「さっきは見苦しい姿を見せてすまなかった。オーディンが、ウイルスの使い手だったんだ。それを思い出すと...つい焦ってしまった。」オーディンが、ウイルスの使い手?ヤバくないか?ウイルスは魔法ではどうにもならない。つまり、魔法に唯一対抗できるものである。確かに俺にウイルスは効かない。だが、ロガンがウイルスに感染したら、俺は何もできない。レベルが上がったら、そういう魔法も覚えられないのか?コア。《覚えられない。ただ、ウイルスが完全に体を蝕むまでに、ウイルスの大本を倒せば大丈夫。》蝕むまでに、どれくらいかかる?《三時間なの》くっ、意外と早いな。オーディンに触れることができない。幽体離脱...ってことは、そのまた大本がどっかにいるんじゃ?「ロガン!そのオーディンの、本体ってどこにあるか知ってるか?」全身対ウイルススーツのロガンが、こっちを向いた。だが、顔が見えないため、表情で答えを感じとることはできなかった。「残念なことに、オーディンとその右腕しか知らないんだ。」零は良い考えを思い付いた。幽体離脱していると、心読見透かし魔法を使えないが、その右腕の心を読めば、本体の居場所がわかるはずだ。「ロガン。その右腕は、幽体離脱してねぇよな?」「あぁ。」よし。やむを得ないときは触ればいい。コアは俺の心を読めるため、こっちを見て頷いていた。名案だと認めてくれたのだろう。そういえば全知全能なコアは、オーディンの本体の居場所知ってる?《いや、そんなに全知全能ではないよ、ごめんね》いや、良いんだけど、試しに聞いてみただけ。よし、結構プランは出来上がったな。ところで、目的地まで後どれくらいかな?《あと、一週間とちょっと》OK。順調だぜ。その日は、全身スーツ男と一日を過ごした。全身スーツだから、触っても大丈夫なんだよねぇ。そして、いつものように過ごしたあと。コアと一緒に風呂に入ったら、布団にくるまって寝た。その夜は何も起こらなかった。翌朝。いつものように目を開けると、珍しくコアが先に起きていた。「零くん!なんか胸騒ぎがする。絶対よくない場所に向かってる!」そう叫んできた。「おいおい、どうしたコア?最近なんかおかしいぞ。」最近のコアは、落ち着きがなかった。そのせいか、零までもが落ち着けなくなり、胸騒ぎがした。でも、おかしなコアは一時だけで、その後はバカップル劇場を開く。だが、本当に嫌な予感がする。この場所でも、オーディンの暗黒が迫り来るような感覚に捕らわれた。でも、船内の生活にさほど変わりはなく、近づいていくにつれて皆の緊張感が高まるだけだった。ようやく船内にアナウンスが流れた。【ウイルスの効果が切れました。ですが、船体にウイルスによる劣化が見られます】復元魔法作動。フアーッ。ウイルスが無けりゃあ、お茶の子さいさいだ。【正常化しました。異変は見られません】ウイルスによってできた傷は、魔法が効くぜ。ウイルスが潜伏していたら無理だけど。また、騒がしい一日が始まった。慌ただしく皆が動き、せっせと働いている。そこまですることはないが、零だけに負担はかけさせない、と少しでも働こうとしている。別に ゴツい腕輪が邪魔だ ということ意外に不満も負担もない。逆に皆に感謝している。こんなに幸福な時間を過ごせて、本当に言葉に表せないくらい嬉しい。だが、運命の日は刻一刻と迫っている。モンバルト星群まで、あと一週間。何もなく到着できるだろうか。一抹の不安を抱えながらも、船を全速力で走らせた。もう少しで、戦闘するような集団とは思えないほど、生活が緩いからだ。急に戦闘モードで行けるかな?この人たち。まぁ、やるときはやってくれるだろう。不安と期待を持って、緩い空間にただ居座るだけの零であった。
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