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2話
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電車を降り、アパートまでの道のりを歩く。
駅前の賑やかな街並みを抜けると、シンと静まり返っている住宅街へ入り、その一角に二人が住んでいるアパートがあった。
朝陽が102号室で、葵が103号室。
朝陽の部屋の前で、じゃあな‥と手を上げ自分の部屋の鍵を開け玄関に入ると、返事をしたはずの葵が朝陽と一緒に玄関に入ってくる。
「‥えっ?‥なに?」
グイっと押し込まれ玄関で靴を脱ぎ電気を付けると、1Kの小さなアパートは、この陽気のせいでモアッと空気が籠っていた。
葵が部屋に来るのは日常で、何か用事があるのかと気にせずに奥の部屋へ入りエアコンを付ける。
6畳程の部屋はベッドと小さな座卓がある質素な部屋だ。
「どうした?‥葵?‥なんかあった?」
いつもなら遠慮なんかしないで、ズカズカと入ってくる葵が、今日に限って玄関先で立ち尽くしている。
仕方なく朝陽は玄関まで行き、俯いている葵の顔を覗き込んだ。
「‥ん?‥どうした?‥具合悪いのか?」
眉を寄せ何かを堪えているような顔をした葵の様子が心配で、朝陽はその手を取り部屋の中へと引っ張っていく。
何も話さない葵をベッドに座らせると、冷蔵庫から水を出しグラスに注ぎ、それを葵に渡す。
「‥ほら、飲んで」
いつもと様子がおかしいのは分かるが、葵が何を考えているのかは分からない。
それ以上、声を掛ける事が出来ず、朝陽は座卓の横に座ると、自分の分と注いでいた水を飲みながら、ジッと葵が話し出すのを待った。
長い間、親友である葵が何か辛い思いをしているのなら、自分が話だけでも聞いてあげたかったし、それ以上に葵の態度が気になるのは、朝陽が葵に密かに片想いをしているからだった。
朝陽は自分が女性を恋愛対象として見れないと感じたのは、中学の時だった。
周りの友人が女子を見て、誰それの胸がでかいだの、尻がどうだの、そんな話に夢中になっているのに、自分はどこか冷めた目をしていた。
逆に体育の授業の時、友人の着替える様子や、首筋に流れる汗などを見て、下半身がズンと重くなるのだから、自分の性癖が普通とは違うと、その時に気が付いた。
認めると簡単な事のように思えるが、それからは、ひたすらそれを隠すことに専念する。
中学・高校と周りに話を合わせ、誰も朝陽の性癖に気が付く者はいなかった。
何故なら、朝陽の見た目が悪人面で、そんな朝陽に近づいてくる女子もいなかったから、モテないとその一言で片付いたのだ。
そんな朝陽の傍にずっと一緒にいた葵は、実際はモテモテだったが、告白されても断るばかりで、何故か彼女を作らない。
幼い頃からずっと一緒だった葵が、朝陽の恋愛対象になるのはごく自然の事で、朝陽の中でグングンとその想いが強くなっている。
だけど朝陽はそろそろ潮時だとも思っていて、報われない想いは膨らみ続け、どこかで線を引かないと自分の心が潰れてしまいそうになり、それなら距離を取った方が、自分にも葵にも良いのではないかと、最近思っていた。
そしてジャズ研究会に入った時、先程の佑二がやたらと自分に構い、周りの先輩が『気を付けろ‥あいつバイだから‥』と、そう忠告してくれた事で、こんな自分の事を気に入ってくれているのなら、もうこのまま佑二と流されても良いのかな‥と、自分らしからぬ気持ちが生まれていたのも事実だった。
「お前さ‥俺が止めなかったら、あのまま佑二先輩の家に行ってたのか?」
ようやく口を開いたかと思えば、心を見透かされているような感じがして、朝陽は落ちづかずソワソワしてしまう。
「佑二先輩が‥好きなのか?」
返事をしない朝陽に葵が投げつけるように問いかけてくるが、その問いにはNOとハッキリ言えるはずなのに、否定の言葉も朝陽の口から出る事はなかった。
自分の性癖さえも、親友に明かしていないと言うのに、どんな返事をすればいいのだろうか、流されてしまえばいいと、本気で思っていたのは事実なのだから。
返事が無い事が、肯定だと思った葵は、ギュッと拳を握り締めた。
「‥嫌だ」
次に出てきた葵の言葉に、朝陽の頭の中がますます混乱してくる。
「‥えっ‥と、えっ?」
覗き込むように葵の顔を見上げても、その表情からは何も読み取れない。
「‥嫌だって言ったんだ‥お前が、誰かとそういう関係になるのは‥嫌なんだ」
「‥いっ‥や、ちょっと待って‥んーと、それって‥どういう意味?」
一瞬『俺の事、好きなの?』と都合の良い事が頭の中に浮かび、あまりにも自己中心的で朝陽は挙動不審になる。
ヘラヘラと笑うしかない朝陽の顔をジッと見つめる葵の瞳に、恋情がチラリを見えた気がした。
「本当に‥分からないの?」
答えがまるで朝陽の中にあるように、葵が問いかける。
「いっ‥いやっ‥でも‥その‥」
しどろもどろになりながら、葵の視線を受け止める事が出来ず、朝陽はその場から立ち上がろうと腰を浮かすが、葵にガシッと両肩を掴まれた。
振り払い逃げる事は簡単そうだが、そんな事をしたくない朝陽は、視線だけを左右に揺らす。
「‥朝陽、逃げないで‥俺を見て」
いつになく真剣な声色に、朝陽は視線を葵に戻した。
駅前の賑やかな街並みを抜けると、シンと静まり返っている住宅街へ入り、その一角に二人が住んでいるアパートがあった。
朝陽が102号室で、葵が103号室。
朝陽の部屋の前で、じゃあな‥と手を上げ自分の部屋の鍵を開け玄関に入ると、返事をしたはずの葵が朝陽と一緒に玄関に入ってくる。
「‥えっ?‥なに?」
グイっと押し込まれ玄関で靴を脱ぎ電気を付けると、1Kの小さなアパートは、この陽気のせいでモアッと空気が籠っていた。
葵が部屋に来るのは日常で、何か用事があるのかと気にせずに奥の部屋へ入りエアコンを付ける。
6畳程の部屋はベッドと小さな座卓がある質素な部屋だ。
「どうした?‥葵?‥なんかあった?」
いつもなら遠慮なんかしないで、ズカズカと入ってくる葵が、今日に限って玄関先で立ち尽くしている。
仕方なく朝陽は玄関まで行き、俯いている葵の顔を覗き込んだ。
「‥ん?‥どうした?‥具合悪いのか?」
眉を寄せ何かを堪えているような顔をした葵の様子が心配で、朝陽はその手を取り部屋の中へと引っ張っていく。
何も話さない葵をベッドに座らせると、冷蔵庫から水を出しグラスに注ぎ、それを葵に渡す。
「‥ほら、飲んで」
いつもと様子がおかしいのは分かるが、葵が何を考えているのかは分からない。
それ以上、声を掛ける事が出来ず、朝陽は座卓の横に座ると、自分の分と注いでいた水を飲みながら、ジッと葵が話し出すのを待った。
長い間、親友である葵が何か辛い思いをしているのなら、自分が話だけでも聞いてあげたかったし、それ以上に葵の態度が気になるのは、朝陽が葵に密かに片想いをしているからだった。
朝陽は自分が女性を恋愛対象として見れないと感じたのは、中学の時だった。
周りの友人が女子を見て、誰それの胸がでかいだの、尻がどうだの、そんな話に夢中になっているのに、自分はどこか冷めた目をしていた。
逆に体育の授業の時、友人の着替える様子や、首筋に流れる汗などを見て、下半身がズンと重くなるのだから、自分の性癖が普通とは違うと、その時に気が付いた。
認めると簡単な事のように思えるが、それからは、ひたすらそれを隠すことに専念する。
中学・高校と周りに話を合わせ、誰も朝陽の性癖に気が付く者はいなかった。
何故なら、朝陽の見た目が悪人面で、そんな朝陽に近づいてくる女子もいなかったから、モテないとその一言で片付いたのだ。
そんな朝陽の傍にずっと一緒にいた葵は、実際はモテモテだったが、告白されても断るばかりで、何故か彼女を作らない。
幼い頃からずっと一緒だった葵が、朝陽の恋愛対象になるのはごく自然の事で、朝陽の中でグングンとその想いが強くなっている。
だけど朝陽はそろそろ潮時だとも思っていて、報われない想いは膨らみ続け、どこかで線を引かないと自分の心が潰れてしまいそうになり、それなら距離を取った方が、自分にも葵にも良いのではないかと、最近思っていた。
そしてジャズ研究会に入った時、先程の佑二がやたらと自分に構い、周りの先輩が『気を付けろ‥あいつバイだから‥』と、そう忠告してくれた事で、こんな自分の事を気に入ってくれているのなら、もうこのまま佑二と流されても良いのかな‥と、自分らしからぬ気持ちが生まれていたのも事実だった。
「お前さ‥俺が止めなかったら、あのまま佑二先輩の家に行ってたのか?」
ようやく口を開いたかと思えば、心を見透かされているような感じがして、朝陽は落ちづかずソワソワしてしまう。
「佑二先輩が‥好きなのか?」
返事をしない朝陽に葵が投げつけるように問いかけてくるが、その問いにはNOとハッキリ言えるはずなのに、否定の言葉も朝陽の口から出る事はなかった。
自分の性癖さえも、親友に明かしていないと言うのに、どんな返事をすればいいのだろうか、流されてしまえばいいと、本気で思っていたのは事実なのだから。
返事が無い事が、肯定だと思った葵は、ギュッと拳を握り締めた。
「‥嫌だ」
次に出てきた葵の言葉に、朝陽の頭の中がますます混乱してくる。
「‥えっ‥と、えっ?」
覗き込むように葵の顔を見上げても、その表情からは何も読み取れない。
「‥嫌だって言ったんだ‥お前が、誰かとそういう関係になるのは‥嫌なんだ」
「‥いっ‥や、ちょっと待って‥んーと、それって‥どういう意味?」
一瞬『俺の事、好きなの?』と都合の良い事が頭の中に浮かび、あまりにも自己中心的で朝陽は挙動不審になる。
ヘラヘラと笑うしかない朝陽の顔をジッと見つめる葵の瞳に、恋情がチラリを見えた気がした。
「本当に‥分からないの?」
答えがまるで朝陽の中にあるように、葵が問いかける。
「いっ‥いやっ‥でも‥その‥」
しどろもどろになりながら、葵の視線を受け止める事が出来ず、朝陽はその場から立ち上がろうと腰を浮かすが、葵にガシッと両肩を掴まれた。
振り払い逃げる事は簡単そうだが、そんな事をしたくない朝陽は、視線だけを左右に揺らす。
「‥朝陽、逃げないで‥俺を見て」
いつになく真剣な声色に、朝陽は視線を葵に戻した。
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