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21話
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入り口がカランと音を立て閉まると、朝陽の中の何かが壊れた。
「‥‥うっ‥‥ううっ‥‥っ‥‥」
自分はただの穴だった‥。
そんな自分に泣く資格なんてあったんだろうか‥?
それでも涙が止まらない。
次々に込み上げてくる思いに、胸が張り裂けそうになる‥。
やっぱり、自分は一人ぼっちじゃないか‥。
寂しくて堪らない‥悲しくて‥悔しくて‥情けない‥。
どれくらい泣いていただろうか、朝陽は涙を拭いゆっくりと身体を起した。
股の間からダラリと不快なモノが垂れるが、それさえも気にすることなく、ペタペタとカウンターへと向かう。
もう、何も考えられなかった‥楽になりたい。
ああ、もっと早く、こうすれば良かった。
ひとりで生きていくなんて、自分には無理だったのだ。
もう葵は帰って来ない。
とっくに分かっていたのに‥なんで、今日まで生きてしまったんだろう‥。
朝陽は不思議に思った。
あれ?
どうして自分が苦しまなくてはいけないんだろう‥。
おかしい‥。
本当におかしい‥。
ふいに朝陽の顔に笑みが浮かぶ。
「ふふっ‥ふふふっ‥‥‥ハハッ‥ハッハッ‥」
朝陽は可笑しくて堪らない。
カフェなんて、やっても無駄だった。
だって、葵がいないじゃないか。
「クックッ‥俺‥バカだ‥こんな事しても、無駄だ‥全部‥無駄‥」
カウンターの中で、ひとしきり笑い終えると、朝陽は笑顔のままナイフを取り出した。
「ふふっ‥初めからこうしてれば良かった‥。葵‥待たせてごめんね‥クスクスッ‥すぐに逝くから‥」
朝陽はナイフをジッと見つめ、そして首を傾げる。
どこを刺せば、すぐに逝けるだろうか‥。
一番いい場所にしなくては‥。
そう考えた時、手首‥いや‥首‥やっぱり心臓かな‥?
自分がそんな事で悩むなんて、思ってもいなくて、また朝陽に笑いが込み上げる。
「クスクスッ‥葵、どこが良いと思う?首かな‥心臓‥?やっぱり‥心臓は難しいかな‥」
朝陽はそう言いながら自分の心臓の場所に触れていたが、肋骨があるから上手く刺さないと弾かれて終わりだ。
深く刺せなきゃ意味がない‥。
「‥やっぱり首かな?」
そう呟くと、再び笑顔になる。
覚悟を決めた。
「‥葵‥」
朝陽はそう言って、自分の首筋にナイフを当て、目を閉じた。
閉じた瞳から一筋の涙が零れた瞬間――。
バンッと店の入り口が大きな音を立て開いた。
ビクッとした朝陽が目を開くと、そこには凛太朗が立っていた。
すぐに朝陽を見つけると、怒りの形相で走って近づいてくる。
驚き動けなくなっている朝陽の傍に来ると、朝陽が両手で握っていたナイフを、ゆっくりと取り上げた。
ナイフを離すと、先程びっくりした時に出来た傷が、首筋に赤い線を引いてタラリと血が流れ落ちた。
「‥なにやってんですか!‥朝陽さん‥‥」
眉を下げ泣きそうな顔をして、瞳を潤ませている凛太朗が、朝陽をギュッと抱き寄せた。
呆然と立ち尽くす朝陽は、何の感情も、何の表情もなくただ空を見つめていた。
抱き寄せられた身体が温かいと、朝陽が気付いたのは、しばらく経ってからだった。
ずっと頭を撫でられ頬に触れられ、そして身体を包み込まれる。
心地が良かった。
生きていると実感できた。
その時、朝陽の瞳から、大粒の涙が零れ落ちた。
「‥うっ‥‥ああっ‥‥あああっ‥‥」
泣き叫ぶ悲痛な声が、店内に響き渡る。
どうして自分が生きているんだ‥どうして自分は生きなくてはいけないんだと‥頭の中で、人生を終わらせたいと、そう願っていたのに、肌のぬくもりを感じて、ほっとする自分がいる事に、矛盾を感じる。
「どこにも行かないで下さい‥俺が傍に居ますから‥朝陽さん、お願いです‥」
何度も耳元で囁かれ、自分はどこに行こうとしていたのか、分からなくなっていた。
朝陽は、ずっと泣き続け最後には嗚咽になると、意識を失うように眠ってしまった。
グッタリとしている身体を抱き上げると、凛太朗はカウンターの奥の扉から2階へと上がって行く。
ダイニングを抜け寝室に入ると、ゆっくりと朝陽をベッドに下ろした。
そして戸棚の上にある救急箱を取ると、朝陽に近づき、首の傷の消毒をしガーゼを当てテープで止めた。
もう血は止まって、固まっていた。
「‥‥葵さん‥いつまで泣いているんですか?‥ここからの手当て‥俺がやってもいいんですか?どうします‥?」
凛太朗が小さく呟くと、グルンと身体が揺れた。
「‥悪い、それだけは嫌だ‥」
凛太朗の口から、葵の言葉が出る。
葵は凛太朗のその手で、ボタンが弾け飛びボロボロになったシャツをゆっくりと脱がすと、それを腰の下に敷いた。
そして、ゆっくりと足を持ち上げ、血が滲んでいる窄まりに触れ、優しく中を掻き出していく。
ドロリと垂れる精液は奥深くまで侵入しており、指を入れると、朝陽が呻き声を上げた。
「‥ごめん‥もうちょっと辛抱な‥」
すべてを掻き出すとキッチンへ行き、お湯で湿らしたタオルを持って来て、朝陽の身体を、まるで壊れ物に触れる様に優しく拭っていく。
全身を綺麗に拭い、クローゼットから下着とパジャマを取り出すと、それを丁寧に着せていく。
「ごめんな‥助けてあげれなくて‥ごめん‥朝陽‥全部、俺が悪い‥‥お前が、こんなに苦しんでるって‥‥気が付かなくて‥ごめんな‥」
何度も謝りながら触れていた葵は、先程、朝陽が自殺しようとして、ようやく気が付いた。
朝陽が壊れるほど、いまだ自分を強く想い続けてくれている事に‥。
「‥‥うっ‥‥ううっ‥‥っ‥‥」
自分はただの穴だった‥。
そんな自分に泣く資格なんてあったんだろうか‥?
それでも涙が止まらない。
次々に込み上げてくる思いに、胸が張り裂けそうになる‥。
やっぱり、自分は一人ぼっちじゃないか‥。
寂しくて堪らない‥悲しくて‥悔しくて‥情けない‥。
どれくらい泣いていただろうか、朝陽は涙を拭いゆっくりと身体を起した。
股の間からダラリと不快なモノが垂れるが、それさえも気にすることなく、ペタペタとカウンターへと向かう。
もう、何も考えられなかった‥楽になりたい。
ああ、もっと早く、こうすれば良かった。
ひとりで生きていくなんて、自分には無理だったのだ。
もう葵は帰って来ない。
とっくに分かっていたのに‥なんで、今日まで生きてしまったんだろう‥。
朝陽は不思議に思った。
あれ?
どうして自分が苦しまなくてはいけないんだろう‥。
おかしい‥。
本当におかしい‥。
ふいに朝陽の顔に笑みが浮かぶ。
「ふふっ‥ふふふっ‥‥‥ハハッ‥ハッハッ‥」
朝陽は可笑しくて堪らない。
カフェなんて、やっても無駄だった。
だって、葵がいないじゃないか。
「クックッ‥俺‥バカだ‥こんな事しても、無駄だ‥全部‥無駄‥」
カウンターの中で、ひとしきり笑い終えると、朝陽は笑顔のままナイフを取り出した。
「ふふっ‥初めからこうしてれば良かった‥。葵‥待たせてごめんね‥クスクスッ‥すぐに逝くから‥」
朝陽はナイフをジッと見つめ、そして首を傾げる。
どこを刺せば、すぐに逝けるだろうか‥。
一番いい場所にしなくては‥。
そう考えた時、手首‥いや‥首‥やっぱり心臓かな‥?
自分がそんな事で悩むなんて、思ってもいなくて、また朝陽に笑いが込み上げる。
「クスクスッ‥葵、どこが良いと思う?首かな‥心臓‥?やっぱり‥心臓は難しいかな‥」
朝陽はそう言いながら自分の心臓の場所に触れていたが、肋骨があるから上手く刺さないと弾かれて終わりだ。
深く刺せなきゃ意味がない‥。
「‥やっぱり首かな?」
そう呟くと、再び笑顔になる。
覚悟を決めた。
「‥葵‥」
朝陽はそう言って、自分の首筋にナイフを当て、目を閉じた。
閉じた瞳から一筋の涙が零れた瞬間――。
バンッと店の入り口が大きな音を立て開いた。
ビクッとした朝陽が目を開くと、そこには凛太朗が立っていた。
すぐに朝陽を見つけると、怒りの形相で走って近づいてくる。
驚き動けなくなっている朝陽の傍に来ると、朝陽が両手で握っていたナイフを、ゆっくりと取り上げた。
ナイフを離すと、先程びっくりした時に出来た傷が、首筋に赤い線を引いてタラリと血が流れ落ちた。
「‥なにやってんですか!‥朝陽さん‥‥」
眉を下げ泣きそうな顔をして、瞳を潤ませている凛太朗が、朝陽をギュッと抱き寄せた。
呆然と立ち尽くす朝陽は、何の感情も、何の表情もなくただ空を見つめていた。
抱き寄せられた身体が温かいと、朝陽が気付いたのは、しばらく経ってからだった。
ずっと頭を撫でられ頬に触れられ、そして身体を包み込まれる。
心地が良かった。
生きていると実感できた。
その時、朝陽の瞳から、大粒の涙が零れ落ちた。
「‥うっ‥‥ああっ‥‥あああっ‥‥」
泣き叫ぶ悲痛な声が、店内に響き渡る。
どうして自分が生きているんだ‥どうして自分は生きなくてはいけないんだと‥頭の中で、人生を終わらせたいと、そう願っていたのに、肌のぬくもりを感じて、ほっとする自分がいる事に、矛盾を感じる。
「どこにも行かないで下さい‥俺が傍に居ますから‥朝陽さん、お願いです‥」
何度も耳元で囁かれ、自分はどこに行こうとしていたのか、分からなくなっていた。
朝陽は、ずっと泣き続け最後には嗚咽になると、意識を失うように眠ってしまった。
グッタリとしている身体を抱き上げると、凛太朗はカウンターの奥の扉から2階へと上がって行く。
ダイニングを抜け寝室に入ると、ゆっくりと朝陽をベッドに下ろした。
そして戸棚の上にある救急箱を取ると、朝陽に近づき、首の傷の消毒をしガーゼを当てテープで止めた。
もう血は止まって、固まっていた。
「‥‥葵さん‥いつまで泣いているんですか?‥ここからの手当て‥俺がやってもいいんですか?どうします‥?」
凛太朗が小さく呟くと、グルンと身体が揺れた。
「‥悪い、それだけは嫌だ‥」
凛太朗の口から、葵の言葉が出る。
葵は凛太朗のその手で、ボタンが弾け飛びボロボロになったシャツをゆっくりと脱がすと、それを腰の下に敷いた。
そして、ゆっくりと足を持ち上げ、血が滲んでいる窄まりに触れ、優しく中を掻き出していく。
ドロリと垂れる精液は奥深くまで侵入しており、指を入れると、朝陽が呻き声を上げた。
「‥ごめん‥もうちょっと辛抱な‥」
すべてを掻き出すとキッチンへ行き、お湯で湿らしたタオルを持って来て、朝陽の身体を、まるで壊れ物に触れる様に優しく拭っていく。
全身を綺麗に拭い、クローゼットから下着とパジャマを取り出すと、それを丁寧に着せていく。
「ごめんな‥助けてあげれなくて‥ごめん‥朝陽‥全部、俺が悪い‥‥お前が、こんなに苦しんでるって‥‥気が付かなくて‥ごめんな‥」
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