愛情と欲情が比例している説

白樫 猫

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5話

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静佳が重い瞼を持ち上げると、カーテンの隙間から日差しが見え、ギョッとして飛び上がった。一瞬、遅刻するかと思ったが、今日は休んでいいと言われていた事を思い出し、再びベッドにごろんと横になる。
身体は昨日より楽になっていた。額にカピカピの冷たいシートが張り付いており、ペロリと剥がすと、ごみ箱に捨てた。
時計を見ると12時を過ぎており、自分でもよく寝たと思うほど、顔面が浮腫んでいるように感じた。
大きく背伸びをし立ち上がると、そのまま浴室へ向かいシャワーを浴びる。
新しいパジャマを着ると、いくらか頭もすっきりとした様に感じ、昨夜、食べ終えそのままにしてあった、おかゆの鍋を水につけると冷蔵庫を開いた。
昨夜も感じたが、色んなモノが入っており、その中にあるゼリーを手に取ると、スプーンを持ち椅子に腰かけた。
「ゼリーって‥小学生か?クスクスッ‥」
源志が買って来たモノだと分かっていたが、その選択が微笑ましくて思わず笑みを浮かべた。ミカンの入ったゼリーは思いのほか美味しくて、ペロリと平らげると、昨夜も飲んだ薬を飲む。
リビングにある棚の引き出しから体温計を取り出し、熱を測ってみると36.7度‥熱はない。喉も昨日より痛くないし、少しイガイガする程度だった。
今日は金曜だし、土日でのんびりすれば完全に治るだろうと、静佳は安心してソファに腰掛ける。
「‥はぁ~源志に感謝だな‥」
いつも同期の源志の事を、ライバル視していたのは、他でもない静佳の方だった。あの愛嬌のある男は、すぐに誰とでも打ち解け簡単に信頼される。それが羨ましかったのかもしれない。そんな静佳にも、普通に接してくれる源志が疎ましく思っていた事も、今は本当に悪かったと思っていた。
昨夜、自分が泣いている事に気が付いていただろう源志の優しさに、救われたのだ。そのおかげで、スッキリとした気持ちになれている事にも感謝していた。
ソファに座って、色んなことを考えていると、いつの間にかウトウトし始め、再び静佳は眠りに付いていた。


カチャリと玄関の鍵が開いた音がすると、源志が音を立てないように静かに部屋に入ってきた。靴を脱ぎ、リビングに入ると、ソファで眠っている静佳を見つけ、驚いた顔をした。
「‥なんで、こんな所で寝てんの?」
源志はそう言うと、傍にあったブランケットを静佳に掛けた。
部屋は暖房が効いており、寒くはないが、風邪を引いているのに、こんな場所で眠っている静佳の事を呆れていた。静佳の額に手を当てると、熱は下がっているようで、熱さは感じなかった。
はぁ~と溜息を付いて、源志は買い物袋を持ちキッチンへと入って行く


静佳が目を覚ますと、部屋の中にいい匂いが漂っていた。
身体を起し周りを見渡すと、ダイニングテーブルの方に源志が座っていた。
「あっ‥源志?」
静佳が声を掛けると、源志がこちらに振り向いた。
「おう、おはよう‥風邪引いてんのに、ソファで寝ちゃダメだぞ‥」
起きてすぐに渋い顔をされ、静佳は思わず言い返しそうになるのを、グッと堪えた。
「ああ、そうだな‥悪い」
「ん。しず‥ご飯、食べれそう?」
そう言って立ち上がった源志は、キッチンへ向かう。静佳も一緒に立ち上がると、源志の後ろを追うようにキッチンに歩いて行った。
「なに?この匂い‥」
「ああ、煮込みうどん作ろうと思って、野菜は先に煮たんだ‥後は、うどんを入れるだけ‥食べる?」
食欲をそそる匂いに、静佳は素直に頷いた。

「調子はどう‥?顔色は、昨日より全然ましに見えるけど‥」
うどんをよそいながら源志が声を掛けた。
「ああ、さっき熱も測ったけど平熱だし、喉も全く普通‥完全に治ったな‥これは‥」
「そうか、良かった‥」
安心したような顔をした源志に、静佳ははにかんだような笑顔を向けた。
「‥あっ‥ありがとな‥源志‥」
少し照れながら話した静佳は、少しだけ頬が赤くなっていた。
「えっ?‥うん。大した事はしてないよ‥」
照れた静佳が珍しく、礼を言われたことが嬉しくて、源志はニカッと笑う。
目の前に出されたうどんが美味しそうで、静佳はすぐに食べ始めると、自分の分まで用意したのか、目の前に源志が座り一緒に食べ始める。
「‥んっ、旨い!」
だしの効いた汁に野菜が染みて、あったまる。
「ふふっ‥良かった‥」
「ビール飲みたい!」
静佳はそう言うと、立ち上がり冷蔵庫からビールを取り出す。
「オイ、病み上がりだぞ?‥お前‥」
「大丈夫‥もう治ったから‥お前も飲む?」
そう言われては断る理由もなく、飲むと言った源志の分もビールを出し、一緒に飲み始める事になる。

うどんも完食し、ビールも3本空けたところで、いつの間にか二人はソファに座り語り出していた。
「それで、あのサキュバスの彼女はどうしたんだよ?」
「あっ?‥まぁ、まだ続いてるけど‥」
「クックッ‥そっか‥大事にしろよ‥」
嬉しそうに笑う静佳に、胸が痛くなる。
「‥しず‥お前は大丈夫なのか?」
キョトンとした顔を一瞬したが、すぐにいつのも美男子の顔に戻ると、ふっと笑う。
「うん、もう大丈夫。悪かったな‥心配かけて‥」
「いや、大丈夫なら‥いいんだ‥」
いつもの様に優しく接する源志に、今までどうして自分は反抗的な態度をしていたのか、まったく分からず、静佳は笑うしかなかった。
「‥お前、本当にいい奴だったんだな‥」
笑った静佳が源志の肩をポンポンと叩く。
「そっ、そうでもないけど‥」
「いや、良い奴だ!‥最高だ!お前の彼女は幸せ者だなぁ~」
そんな事を大声で言い出した時、源志は静佳が完全に酔っているのだと分かった。
そして5本目のビールをグビグビと喉を鳴らして飲んでいる静佳を見ながら、自分も何本目か分からないビールを口にしていた。

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