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40話
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聡は虎太郎との電話が終わると、すぐに行動を開始した。
ようやく聞けた虎太郎の助けを求める声。
今まで何度も助けたいと思っていても、虎太郎が求めなければ動けない自分がいた。
このチャンスを逃してはならない。
聡の父親は鶴木グループの社長だ。
鶴木グループとは、もともと財閥からの資本で発展した企業グループで、潤沢にある資金と人脈で発展こそすれ、衰退する事は無縁の企業グルーブだ。
グループは一族で運営され、それは様々な分野に特化している企業が含まれている。
聡には兄と姉が1人ずついるが、聡はすぐに姉に連絡を入れる。
年の離れた姉は、医療分野の会社で、すでに頭角を現している存在だ。
その姉に虎太郎の転院先の病院を紹介してもらい、すぐに虎太郎が入院している病院に連絡を入れ根回しをする。
鶴木グループの名を使って。
全ての根回しが終了し、改めて聡は虎太郎に連絡を入れる。
「もしもし、虎太郎?」
『‥うん』
「お前が入院しているって知ってる奴って、汰久以外に誰がいる?」
『‥母さんと来栖主任‥あと市原課長』
「じゃあ、まず虎太郎はお母さんに連絡を入れるんだ。朝一番で、虎太郎は病院を移ってもらうから、東総合病院じゃなくて、ちょっと遠いけどさいたま市の一宮総合病院に来てもらうように伝えて。時間は‥11時以降なら大丈夫かな。来栖さんには俺から連絡を入れる。あと市原課長って‥お前の会社の上司だっけ?」
『うん、そうだよ‥』
「大島食品の‥市原傑‥」
『うん‥なんで名前まで知ってるの?』
「いや、お前の味方なんだろ?」
『うん‥多分‥』
「じゃあ、問題ないな‥お前も凄い人が味方に付いたな‥」
聡の言葉に、どういう意味か分からす首を捻る。
「それと、これからは一宮総合病院に転院する事は誰にも言うなよ」
『うん、わかった』
「じゃあ、明日の朝、迎えに行くから準備しとけ。今日はゆっくり寝るんだぞ」
『分かった‥聡‥ありがとう』
「‥おう」
何が何だか分からないけど、自分が助けを求めた事で、こんなにもスムーズにいろんな事が進んでいく。
さっきまで、あんなに悩んでいたのに、今は心の中がスッキリとしている。
なんだか不思議な感じがして、虎太郎は聡に言われた通り、母親に連絡を入れた。
翌朝、虎太郎が目を覚ますと、目の前に聡が待ち構えていた。
「おーやっと起きたか。もう少ししたら起こそうと思ってたんだ」
「‥聡‥おはよう」
「なんだよ、お前‥ゆるいな‥クスクスッ‥じゃあ行くぞ」
聡がそう言うと、どこから来たのかワラワラとスーツ姿の男達が目の前に出てきた。
「えっ?誰‥?」
「ああ、俺の会社の人‥一応ねボディガード」
ウィンクしながら言った聡の顔が生き生きとしていて、虎太郎はクスッと笑う。
そうしている間に、虎太郎は支度を済ませ車いすに乗せられた。
そして、看護師と医師が病室に訪れると、聡に封筒を渡した。
「これがカルテです。お願いします」
医師が何故か聡に敬語で話しているのを聞いて、虎太郎はまた首を傾げる。
「はい、了解」
準備が整ったと再び虎太郎に笑顔を向けた聡の合図で、移動を始める。
まるで刑事ドラマの様に初めはスーツの男が外を確認し、合図をされたら車いすに乗った虎太郎が出て行くという感じだ。
「‥あの‥これは‥」
自分ごときに、こんな厳重に警備が必要なんだろうか‥?
「クスクスッ‥やりすぎなくらいが丁度いいんだって‥」
明らかに面白がっている聡の言葉に、虎太郎は次の言葉を飲み込んだ。
車に乗りこむと、聡は虎太郎にシートに横になる様に言い、見るとワンボックスの内装は広く、横になれるようにシートが倒れていた。
「‥ありがとう」
虎太郎は遠慮なく横になると、隣に座っている聡の顔をジッと見つめた。
「クスクスッ‥なに?‥俺の顔に何かついてる?」
笑顔を向ける聡に、自分がぶしつけに見つめていた事に気が付いた。
「‥いや、何でもない」
こんなに頼れる奴だったんだろうか‥大学時代は、いつも汰久と一緒にいて同じ仲間だったのに、二人きりであまり話したこともなかった自分に、ここまで優しくしてくれるのは何故だろうと、疑問が頭をもたげる。
聡は、先程からチラチラと自分を見ては首を傾げている虎太郎に、笑いを堪えるのに必死だった。
こちらから問いかければ何でもないと言うくせに、次の瞬間には、チラリと盗み見る。
まるで小動物のような虎太郎に、聡は汰久の執着の理由をひとつ知ってしまったと感じた。
「‥何でも答えるから、聞きたいことがあれば何でも聞いていいよ。虎太郎‥」
そんな虎太郎の姿に、いよいよ我慢が出来ず、吹き出してしまう前に聡は声を掛けた。
モジモジとしている様子は、どう例えればいいのか分からないくらいに可愛いと思ってしまい、そんな感情を振り払うように、聡は咳ばらいをひとつした。
「あ‥あのさ、聡とこうやって二人で話すのは、あまりなかったなって思って‥」
両手を持て余しているのか、握ったり開いたりしながら、遠慮がちに言われた言葉に聡は大学時代の事を思い出して、自嘲気味に笑った。
「‥ごめん、嫌な気分にさせちゃった?」
聡の顔を見ていた虎太郎が、勘違いをしたのかオドオドと視線を逸らす。
「‥いや、ごめん‥違う。‥思い出してたんだ、大学の時の事‥」
「大学‥ああ‥あの時は、楽しかったね‥」
遠くを見つめるように話す虎太郎に、聡は眉を潜めた。
「‥‥本当に?‥本当に楽しかったの?」
真っ直ぐに虎太郎を見据える聡に瞳は鋭く、まるで自分の知らない何かをみているようで、虎太郎は返事に戸惑った。
「‥さ‥聡は、楽しくなかったの?」
「いや、まぁ楽しかったけど‥やっぱり‥お前は全く気が付いていないんだな‥‥」
聡の言葉の意図が分からず、虎太郎が不安そうな顔をした。
ようやく聞けた虎太郎の助けを求める声。
今まで何度も助けたいと思っていても、虎太郎が求めなければ動けない自分がいた。
このチャンスを逃してはならない。
聡の父親は鶴木グループの社長だ。
鶴木グループとは、もともと財閥からの資本で発展した企業グループで、潤沢にある資金と人脈で発展こそすれ、衰退する事は無縁の企業グルーブだ。
グループは一族で運営され、それは様々な分野に特化している企業が含まれている。
聡には兄と姉が1人ずついるが、聡はすぐに姉に連絡を入れる。
年の離れた姉は、医療分野の会社で、すでに頭角を現している存在だ。
その姉に虎太郎の転院先の病院を紹介してもらい、すぐに虎太郎が入院している病院に連絡を入れ根回しをする。
鶴木グループの名を使って。
全ての根回しが終了し、改めて聡は虎太郎に連絡を入れる。
「もしもし、虎太郎?」
『‥うん』
「お前が入院しているって知ってる奴って、汰久以外に誰がいる?」
『‥母さんと来栖主任‥あと市原課長』
「じゃあ、まず虎太郎はお母さんに連絡を入れるんだ。朝一番で、虎太郎は病院を移ってもらうから、東総合病院じゃなくて、ちょっと遠いけどさいたま市の一宮総合病院に来てもらうように伝えて。時間は‥11時以降なら大丈夫かな。来栖さんには俺から連絡を入れる。あと市原課長って‥お前の会社の上司だっけ?」
『うん、そうだよ‥』
「大島食品の‥市原傑‥」
『うん‥なんで名前まで知ってるの?』
「いや、お前の味方なんだろ?」
『うん‥多分‥』
「じゃあ、問題ないな‥お前も凄い人が味方に付いたな‥」
聡の言葉に、どういう意味か分からす首を捻る。
「それと、これからは一宮総合病院に転院する事は誰にも言うなよ」
『うん、わかった』
「じゃあ、明日の朝、迎えに行くから準備しとけ。今日はゆっくり寝るんだぞ」
『分かった‥聡‥ありがとう』
「‥おう」
何が何だか分からないけど、自分が助けを求めた事で、こんなにもスムーズにいろんな事が進んでいく。
さっきまで、あんなに悩んでいたのに、今は心の中がスッキリとしている。
なんだか不思議な感じがして、虎太郎は聡に言われた通り、母親に連絡を入れた。
翌朝、虎太郎が目を覚ますと、目の前に聡が待ち構えていた。
「おーやっと起きたか。もう少ししたら起こそうと思ってたんだ」
「‥聡‥おはよう」
「なんだよ、お前‥ゆるいな‥クスクスッ‥じゃあ行くぞ」
聡がそう言うと、どこから来たのかワラワラとスーツ姿の男達が目の前に出てきた。
「えっ?誰‥?」
「ああ、俺の会社の人‥一応ねボディガード」
ウィンクしながら言った聡の顔が生き生きとしていて、虎太郎はクスッと笑う。
そうしている間に、虎太郎は支度を済ませ車いすに乗せられた。
そして、看護師と医師が病室に訪れると、聡に封筒を渡した。
「これがカルテです。お願いします」
医師が何故か聡に敬語で話しているのを聞いて、虎太郎はまた首を傾げる。
「はい、了解」
準備が整ったと再び虎太郎に笑顔を向けた聡の合図で、移動を始める。
まるで刑事ドラマの様に初めはスーツの男が外を確認し、合図をされたら車いすに乗った虎太郎が出て行くという感じだ。
「‥あの‥これは‥」
自分ごときに、こんな厳重に警備が必要なんだろうか‥?
「クスクスッ‥やりすぎなくらいが丁度いいんだって‥」
明らかに面白がっている聡の言葉に、虎太郎は次の言葉を飲み込んだ。
車に乗りこむと、聡は虎太郎にシートに横になる様に言い、見るとワンボックスの内装は広く、横になれるようにシートが倒れていた。
「‥ありがとう」
虎太郎は遠慮なく横になると、隣に座っている聡の顔をジッと見つめた。
「クスクスッ‥なに?‥俺の顔に何かついてる?」
笑顔を向ける聡に、自分がぶしつけに見つめていた事に気が付いた。
「‥いや、何でもない」
こんなに頼れる奴だったんだろうか‥大学時代は、いつも汰久と一緒にいて同じ仲間だったのに、二人きりであまり話したこともなかった自分に、ここまで優しくしてくれるのは何故だろうと、疑問が頭をもたげる。
聡は、先程からチラチラと自分を見ては首を傾げている虎太郎に、笑いを堪えるのに必死だった。
こちらから問いかければ何でもないと言うくせに、次の瞬間には、チラリと盗み見る。
まるで小動物のような虎太郎に、聡は汰久の執着の理由をひとつ知ってしまったと感じた。
「‥何でも答えるから、聞きたいことがあれば何でも聞いていいよ。虎太郎‥」
そんな虎太郎の姿に、いよいよ我慢が出来ず、吹き出してしまう前に聡は声を掛けた。
モジモジとしている様子は、どう例えればいいのか分からないくらいに可愛いと思ってしまい、そんな感情を振り払うように、聡は咳ばらいをひとつした。
「あ‥あのさ、聡とこうやって二人で話すのは、あまりなかったなって思って‥」
両手を持て余しているのか、握ったり開いたりしながら、遠慮がちに言われた言葉に聡は大学時代の事を思い出して、自嘲気味に笑った。
「‥ごめん、嫌な気分にさせちゃった?」
聡の顔を見ていた虎太郎が、勘違いをしたのかオドオドと視線を逸らす。
「‥いや、ごめん‥違う。‥思い出してたんだ、大学の時の事‥」
「大学‥ああ‥あの時は、楽しかったね‥」
遠くを見つめるように話す虎太郎に、聡は眉を潜めた。
「‥‥本当に?‥本当に楽しかったの?」
真っ直ぐに虎太郎を見据える聡に瞳は鋭く、まるで自分の知らない何かをみているようで、虎太郎は返事に戸惑った。
「‥さ‥聡は、楽しくなかったの?」
「いや、まぁ楽しかったけど‥やっぱり‥お前は全く気が付いていないんだな‥‥」
聡の言葉の意図が分からず、虎太郎が不安そうな顔をした。
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