異世界にいた少年旅をする

新月

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異世界で目を覚ました少年

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目を開けた瞬間、まばゆい光が視界に差し込んできた。
「……ここは、どこだ?」
見上げた空は、どこまでも青く澄んでいる。
吹き抜ける風は穏やかで、不思議と嫌な感じはしなかった。
遠くを見渡すと、川や森が広がっている。
さらに目を凝らせば、ゲームでしか見たことのない動物や、見慣れない種族の姿まであった。
――ここは、もしかして。
僕がいた世界じゃないのかもしれない。
確か、さっきまで教室にいたはずだ。
それなのに、そこから先の記憶がどうしても思い出せない。
夢だろうか。
そう思って、自分の頬を思いきりつねる。
「いっ……!」
はっきりとした痛みが走った。
「……夢じゃない、か」
どうするべきか迷いながらも、遠くに見える村を目指して歩き出す。
そのときだった。
「……助けて……」
かすれた声が、森の奥から聞こえてきた。
思わず足を止める。
心配になり、声のする方へ向かうと――
そこには、耳の尖った少女が三人の男に囲まれていた。
「こんなところに、幼いエルフのガキとはな」 「ここで少し楽しんでから、売り物にするか」
耳を疑うような言葉が聞こえた。
考えるより先に、体が動いていた。
「何をしてる!」
叫ぶと、男たちがこちらを睨みつける。
「なんだ、ガキか」 「さっさと失せろ」
足元に落ちていた剣を拾う。
部活で少しだけ習った感覚を思い出し、必死に構えた。
二人の男に向かって突っ込む。
その隙に――
残りの一人が、少女へと手を伸ばした。
「――っ!」
反射的に彼女をかばい、腕を伸ばす。
次の瞬間、激しい痛みが走った。
視界が揺れ、力が抜ける。
腕が、思うように動かない。
それでも歯を食いしばり、必死に剣を振るった。
「……来るな!」
盗賊たちは舌打ちを残し、森の奥へと逃げていった。
静寂が戻った頃、遅れて痛みが押し寄せてくる。
――さっきまで、興奮していて気づかなかっただけか。
そんな考えが浮かんだところで、僕の意識は途切れた。
目を覚ますと、見慣れない天井があった。
「……ここは?」
体を起こそうとして、違和感に気づく。
腕が痛くない。
それに、包帯が巻かれている。
「……誰が」
そう思ったとき、近くに人の気配を感じた。
「起きましたか?」
声の方を見ると、あのときのエルフの少女が立っていた。
年は、僕と同じくらいに見える。
「君は……あのときの」
「はい。あのとき助けていただいたエルフです」
彼女は少し緊張した様子で、続けた。
「ここは精霊の森です。安全な場所ですので、安心してください」
「……そうなんだ」
状況がまだ整理できず、短く答える。
「名乗るのが遅れてしまいました。  私の名前は、ルシアです」
「僕は、凪成」
そう名乗ると、ルシアは視線を落とした。
「……あのとき、私をかばってくださったせいで、  その腕が……」
包帯の巻かれた腕を見る。
「大丈夫だよ」
軽く首を振る。
「助けられてよかった。後悔はしてない」
それは、素直な気持ちだった。
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