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プロローグ

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仕事場からスキップしながら上機嫌で家に帰る。
今日は大好きなアニメが放送される日だ、上機嫌にもなる。
「ただいまー!」
帰宅してすぐにカバンを放り投げ、ソファーへ座る。
「今日という日をどれ程待ったことかっ!」
放送時間ギリギリに帰ってこれた、これならリアルタイムでアニメを視れるぞ!
勿論録画はしてるけど!
そんなことを考えて、ワクワクしながらテレビの電源をつけた。
それと同時に、僕の意識は暗転した…


目を覚ましなさい


頭の中に声が響く、目を覚ませ…?
「一体何がどうなって……おん…?」
目を覚ますと、見覚えの無い家にいた。
「おはようございます、江戸宮さん」
どなた様?何故僕の名前を?
「私は万物の創造主、所謂…神様というものです」
色々な事が起きすぎて頭が追い付かない、創造主?神様?この女の人が?
確かに不思議な雰囲気を感じる。
「実は…私の手違いで貴方を…その、死なせてしまいました…申し訳ありません…」
手違いで……死……?つまり……
「僕はもう『魔法少女☆アミアミ』のアニメを視ることができないということですかっ!?」
「まほ…?アミ…?何ですって…?」
嘘だ…こんなことって…毎週楽しみにしていたアニメが…もう視れないだなんて…
悲しすぎて死にそうだ…死んだらしいけど。
「あの…絶望しているところ悪いのですが、私の話を聞いていただけますか…?」
「………はい」
力なく返事をした。
もうダメだ、生きる希望を失った…もう死んだらしいけど。
「貴方の魂を異世界へ転移させました、更に新しい肉体も用意させていただきました」
……異世界?転移?
よくライトノベルや漫画やアニメで出てくるあの異世界?
「しかし、それでは割りに合いません、ですので、貴方にスキルを差し上げようと思います」
スキル…まさか、魔法的な!?能力的な!?
「貴方が望めば、どんなスキルも得ることができます、強力な使い魔を召喚したりドラゴンさえ一撃で葬る程の魔法だって手に入りますよ」
「あっ、そういうのは要らないです」
「えっ!?」
フィクションの戦闘描写は大好きだけど、自分でやるとなると話は別だったりする。
そしてなにより…
「野蛮なことは良くないってお母さんが言ってましたからね!」
「そ…そうですか…お母さん…では、どのようなスキルが欲しいんですか?」
そう聞かれると困る、能力的なものに憧れはあるものの、いざそれが手に入るとなると悩む。
「できるだけ平和的な…でも身を守れたり日常的に使えるやつがいいですね、あります?」
「…では、千里眼などいかがですか?全てを見通す眼です、スキルというか…魔力などを消費することの無い体質のようなものですが」
全てを見通す…つまり未来とか見て逃げることができたりする!日常的にも役に立ちそうだ。
「ではそれで!千里眼ください!」
そう言うと、神様?は僕へ手のひらを向けて呪文のような言葉を唱えた。
「貴方がこの世界で生きるのに困らないよう、少しだけサービスさせていただきました」
至れり尽くせりだなぁ、いや、手違いで死んだ上に楽しみにしていたアニメが視られなくなったんだ、これぐらい当然かもしれない。
「貴方がこれから歩む人生に、幸福がありますように」

こうして、僕の異世界生活が幕を開けた。
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