「サボってるだろう?」と追い出された最強の龍脈衆~救ってくれた幼馴染と一緒に実力主義の帝国へ行き、実力が認められて龍騎士に~

土偶の友

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第2章 姫

38話 ウォータードラゴン

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「バオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
「声が近いぞ! 各員警戒!」

 私は声を飛ばして周囲に警戒を促す。

「しかしウテナ様! 姫様だけでも逃がした方がよいでは!?」
「ならん! 敵の情報も分かっていない! 他で待ち伏せされている可能性もある!」

 優秀な副官に言って返す。

「分かりました!」

 私を先頭にして、後ろには他の戦闘員が警戒に当たる。

 待つこと数十秒、それは現れた。

「バオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
「こいつは!」
「ウォータードラゴン!? なぜこんなところに!?」
「ドラゴン!? 野生にいる竜か!?」
「そうだ! 奴らは野生にいるはずだがこんな所にはほとんどいないはず!」

 目の前には全身を水を鎧のように纏っている竜がいた。2足歩行で手は小さく、その代わりに羽は大きい。全身は透き通るような蒼色で美しさすら感じさせる。

 体は大きく少なくみても5mはあるようだ。セレットが龍と戦うのを見ていたが、いざ自分が対峙すると足がすくむ。

「バオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
「っ! 回避!」

 ウォータードラゴンがブレスを吐いてくる。ブレスは物凄い量の水が飛んできて、回避出来なかった者は数十mも押し流されてしまう。

「はぁ!」

 私は奴に斬りかかるために接近をする。斬りつけるが、奴の水の鎧を傷つけるばかりで奴自身の体には傷一つつかない。

「隊長! 下がってください!」
「っく!」

 私は下がり、奴を睨みつける。しかし、他の仲間たちでも奴にダメージを与えることは……。

「バオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

 私が下がるのに合わせて奴が突進をしてくる。

「くっ!」

 私は横に飛んで躱す。しかし、仲間たちは全て躱すことが出来なかった。

「ぐぅ!」
「がはああああ!!!」
「くぅ!」
「きゃああああ!!!」
「お前達!」

 奴の突進が終わった時に、残っていたのは半数程度だろうか。他の者達はどこかに弾き飛ばれされていってしまった。

 オリーブが側に来る。そして、私に向かって叫ぶ。

「隊長! 私たちがここで食い止めます! 姫様と一緒に逃げてください!」
「ダメだ! お前達を置いていける訳ないだろう!」
「しかし、このままでは姫様まで!」
「ならん! 私は4騎士、奴程度の相手など!」
「しかし相性が!」
「バオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
「来るぞ!」

 奴は今度は体に纏わせた水流を使い、近くにいる者達を弾き飛ばしながら迫ってくる。

「避けろ!」

「私だって!」

 オリーブは自前の大槌を奴に振り下ろすが、奴には避けられた。

「オリーブ!」

 私は奴の攻撃を躱すが、オリーブは躱すことが出来なかった。

「きゃああああああああああああああああああ!!!」
「オリーブ!」

 彼女の体は空高く舞い上がり、森の中に落ちていく。彼女を助けなければ、森の中には魔物がいるかもしれない。今ので意識を失っているかも。それだと森の中にいるゴブリンのような魔物にすら襲われてしまうかもしれない。

 助けに行かなければ。そう思うが、目の前の相手がそれを許してはくれない。

「バオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

 奴は先ほどと同じ技を使い、突進してくる。だが、その水の鞭の速度は先ほどと大して変わらない。これならいける!

 私は奴の攻撃を掻い潜り、奴の顔、弱点になりそうな目に目掛けてレイピアを放つ。

「はあああああああああ!!!」
「バオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!???」

 よし! 顔は水の鎧で覆っていなかったため、串刺しにすることが出来た。これで少しはやり返せただろう。

 奴はのけぞるように体を持ち上げ、後ろに下がる。私が刺した右目からは血が流れている。

 私は追撃をかけようとするが、水の鞭が何十にも、回避できないほどの密度で降りそそぎ追撃は断念した。

「くそ、いい所だったのに」

 奴はもう片方の目を憎々し気にして、私を凝視している。そして、体に纏っている水を収束させ、顔を囲ってしまった。

「そんなことも出来るのか!?」

 奴は吠えることもなく、私に向かって突撃してくる。

 私は慌てることなく、奴の薄くなった体を攻撃した。

 ザシュ!

「効いてる!」

 私はその返ってくる手ごたえを感じて、再び奴に神経を集中させる。私のレイピアでは確かに相性は悪い。しかし、このまま持久戦に持ち込めれば、私は勝てる。そう確信出来た。

 セレットとの訓練は無駄ではなかった。

 これでも4騎士、例えドラゴンだろうが軽々と負けるわけにはいかない。私は、身体強化に回していた分の魔力をレイピアに纏わせる。

 これで少しでもリーチや武器の威力を上げる。

「バオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

 奴がまたしてもバカの一つ覚えに突進をして来る。

「愚か者が!」

 私はそれを躱しすれ違いざまに再び斬りつけようとして、何かに足を取られる。

「はっ」

 気が付いた時は私は空にいた。

「ぐぅ!」

 全身を水の鞭で強打された。頭が追いつくと、私は理解する。急いで戻らなければ、右腕が折れてしまっていて、この状態で勝てるかは分からない。

 それでも、私はロネ姫を守ると、そう誓ったのだから、私は守る! 私は奴に視線を戻すと、奴は私ではなく馬車を見ていた。

「待て! まだ勝負はついていない!」

 叫ぶが奴の耳には全く届いていない。奴は、水の鞭振り回し、馬車に向かって、突撃する。

 ここからだと良く見えた。

 馬車の中で、ロネ様が私の事を見ているのを、その後ろにいるメイド達が、彼女を庇う様にするのも、馬車の周りの使用人たちや、傷ついた人達が盾になろうとするのを。

 すべてがスローモーションの様に見え、全員が吹き飛ばされる姿を幻視した。

「え……」

 そう、それはあくまでも幻視。奴の、ウォータードラゴンの突進を正面から受け止める者がいた。

 そんなことを行なえるのは彼しかいない。

 私は、視界が歪む中で、彼の名を呼んだ。

「セレット!」
「悪い。遅れた」
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