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2章
22話 ダークカーニバルトレント
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***リュミエール視点***
「Sランクの魔物……ダークカーニバルトレント……」
それは昔、エルフの里の近くで姿を現し、甚大な被害を与えたと言う魔物。
過去の時には、勇者が現れてくれなかったら里が滅んでいたかもしれないという程の魔物だ。
「シュタルさん! 気を付けてください!」
「耳元で言わなくてもいい。それと、降りていろ、自衛は出来るか?」
「あれほどの魔物の攻撃を防げるかと言うと……」
自信がない。
というか、 私はまだ旅に出たばかりでほとんど戦闘することは出来ない。
そんな私に、シュタルさんが魔法を使ってくれる。
「『結界魔法』」
「わ」
私は四角い透明な箱の中に入れられた。
「この中ならどんな場所よりも安全だ。見ているといい」
シュタルさんはそう言ってSランクの魔物に向かっていく。
「シュタルさん! 気を付けてください! そいつは桁違いに強い状態異常を使って来ます!」
私が声をあげたけれど、彼は片手を軽くあげるだけで進みを止める事はしなかった。
そして、次の瞬間、驚く事が起きる。
「ぐっぐっぐ。貴様ら……よくもここまで来れたな?」
なんと、ダークカーニバルトレントが人の言葉を話したのだ。
シュタルさんはそれに返す。
「ほう。喋れるのか。では一つ聞きたい」
「なんだ?」
「なぜ町の者達を操っている? 何が目的だ?」
「目的? 決まっている。ミリアム様の壮大な計画の一つだからだ」
「ミリアムか……」
「なんだ知っているのか? もしそうであるならば、大人しく今すぐに逃げた方が身のためだと思うが? 『策謀』のミリアム様。魔族四天王の中でもっとも頭の良いお方なのだから。逆らうのは無駄だと分かるだろう?」
「なるほど、やっぱりミリアムとやらがこの国で何かやっているのだな」
「そこまでは言えんな!」
トレントがそう言うと、シュタルさんの周囲に無数の粉が舞い始める。
「シュタルさん! 避けて! それは一息でも吸ったら動けなくなる危険な物です!」
「ぐっぐっぐ! もう遅いわ! 戦場で敵と話をするなど愚かでしかない!」
「そんな!」
トレントは高笑いをしながらシュタルさんを見ている。
しかし、シュタルさんは首を傾げながら周囲の様子を確認していた。
「それで、動けなくなるというのはまだなのか?」
「な……なに……? あれを浴びればどんな強靭な者でもすぐ動けなくなるはず……。ウリル様もすぐに動けなくなっていたはず……」
「ウリル? あの筋肉ダルマか?」
「貴様! 知っているのか!?」
「ああ、殺したよ」
「バカな! 幾ら四天王ではないとはいえ、候補に上がるほどには強いあのお方を倒した?」
「はぁ……死んだ奴の事等どうでもいい。次はこっちの番だな?」
シュタルさんはそう言って、トレントに近付いて行く。
トレントは慌てて行動を開始する。
「目覚めよ! 我が分身達よ!」
トレントが叫ぶと、周囲からは彼と同じような見た目の木々が急速に成長していく。
「これはなんだ?」
「それは……それはダークカーニバルトレントの持つもっとも厄介な能力です! それが1つでも残っていると、奴らは残ったそれから新しい本体を作り出すんです!」
伝承で聞いていた行動と同じことをして来るとは……。
シュタルさんは頷いて、何か『収納』の中をごそごそとしている。
そして、目当ての物が見つかったのか、引っ張り出す。
「よし」
そう言って彼が引きずり出したのは、銀色に輝く斧だった。
「それは……?」
私の疑問にシュタルさんはちゃんと答えてくれる。
「これはどこかの泉の精霊にもらったものだ。確か……伐採がやりやすくなる。という能力だったはずだな」
シュタルさんは何でもないかのようにいっているけれど、トレントは全身を震わせていた。
そして、遂には激昂する。
「貴様! 俺様をただの木と同じように扱うなど……決して許さん! 死ね!」
奴はそう叫んで、紫色の粉をばらまく。
シュタルさんはそんな粉を見て、のんきに鑑賞していた。
「ふむ、中々に綺麗だな」
「ぐっぐっぐ! そう言って居られるのも今の内だ! それは触れただけで死に至る! あの世で後悔しろ!」
「……」
「……」
「……あれ?」
シュタルさんはじっとトレントの攻撃を待ち、何なら紫の粉を食べている。
少しそうしていたけれど、何も変かは起きないからか、シュタルさんはトレントに向かって問いただす。
「おい。何が触れたら……だ。食ったが何ともないぞ。というか味もない。折角ならつけておけ」
「いや……死ぬんだしいらないだろ……」
トレントの言葉はもっともだ。
しかし、シュタルさんにはそれが大事な事だったらしい。
「死ぬ間際くらい……いい思いをしたいと願う者がいてもいいだろう」
「それは……そうかもしれないが」
「まぁいい。これ以上お前の攻撃はないんだろう? 防御を固めて、状態異常でじっくりと倒す」
「知られたからなんだ! それに、貴様もいつまで耐えられる? 俺様の防御を突破出来ずに、何時か死に晒すのだ!」
スコン
トレントが叫んだ次の瞬間に、奴は地面で丸太になっていた。
その前には横にスイングをした後のシュタルさん。
彼がそれをやったのだろう。
彼は転がった丸太を見下ろして言う。
「この程度の固さで防御力? 藁かと思ったよ」
「は……え……そん……そん」スコン
トレントが最後まで言葉を言い終わらない内に、シュタルさんは周囲のトレントを全て伐採していく。
そして、1分もしない間に、周囲にあったトレントは1つを除き、全て丸太に変わってしまう。
「う……うそだ……俺様は……鋼鉄よりも固く……そ、そうだ。ミリアム様にもらったあれを使う!」
トレントはそう言って、地面から何かを取り出した。
「Sランクの魔物……ダークカーニバルトレント……」
それは昔、エルフの里の近くで姿を現し、甚大な被害を与えたと言う魔物。
過去の時には、勇者が現れてくれなかったら里が滅んでいたかもしれないという程の魔物だ。
「シュタルさん! 気を付けてください!」
「耳元で言わなくてもいい。それと、降りていろ、自衛は出来るか?」
「あれほどの魔物の攻撃を防げるかと言うと……」
自信がない。
というか、 私はまだ旅に出たばかりでほとんど戦闘することは出来ない。
そんな私に、シュタルさんが魔法を使ってくれる。
「『結界魔法』」
「わ」
私は四角い透明な箱の中に入れられた。
「この中ならどんな場所よりも安全だ。見ているといい」
シュタルさんはそう言ってSランクの魔物に向かっていく。
「シュタルさん! 気を付けてください! そいつは桁違いに強い状態異常を使って来ます!」
私が声をあげたけれど、彼は片手を軽くあげるだけで進みを止める事はしなかった。
そして、次の瞬間、驚く事が起きる。
「ぐっぐっぐ。貴様ら……よくもここまで来れたな?」
なんと、ダークカーニバルトレントが人の言葉を話したのだ。
シュタルさんはそれに返す。
「ほう。喋れるのか。では一つ聞きたい」
「なんだ?」
「なぜ町の者達を操っている? 何が目的だ?」
「目的? 決まっている。ミリアム様の壮大な計画の一つだからだ」
「ミリアムか……」
「なんだ知っているのか? もしそうであるならば、大人しく今すぐに逃げた方が身のためだと思うが? 『策謀』のミリアム様。魔族四天王の中でもっとも頭の良いお方なのだから。逆らうのは無駄だと分かるだろう?」
「なるほど、やっぱりミリアムとやらがこの国で何かやっているのだな」
「そこまでは言えんな!」
トレントがそう言うと、シュタルさんの周囲に無数の粉が舞い始める。
「シュタルさん! 避けて! それは一息でも吸ったら動けなくなる危険な物です!」
「ぐっぐっぐ! もう遅いわ! 戦場で敵と話をするなど愚かでしかない!」
「そんな!」
トレントは高笑いをしながらシュタルさんを見ている。
しかし、シュタルさんは首を傾げながら周囲の様子を確認していた。
「それで、動けなくなるというのはまだなのか?」
「な……なに……? あれを浴びればどんな強靭な者でもすぐ動けなくなるはず……。ウリル様もすぐに動けなくなっていたはず……」
「ウリル? あの筋肉ダルマか?」
「貴様! 知っているのか!?」
「ああ、殺したよ」
「バカな! 幾ら四天王ではないとはいえ、候補に上がるほどには強いあのお方を倒した?」
「はぁ……死んだ奴の事等どうでもいい。次はこっちの番だな?」
シュタルさんはそう言って、トレントに近付いて行く。
トレントは慌てて行動を開始する。
「目覚めよ! 我が分身達よ!」
トレントが叫ぶと、周囲からは彼と同じような見た目の木々が急速に成長していく。
「これはなんだ?」
「それは……それはダークカーニバルトレントの持つもっとも厄介な能力です! それが1つでも残っていると、奴らは残ったそれから新しい本体を作り出すんです!」
伝承で聞いていた行動と同じことをして来るとは……。
シュタルさんは頷いて、何か『収納』の中をごそごそとしている。
そして、目当ての物が見つかったのか、引っ張り出す。
「よし」
そう言って彼が引きずり出したのは、銀色に輝く斧だった。
「それは……?」
私の疑問にシュタルさんはちゃんと答えてくれる。
「これはどこかの泉の精霊にもらったものだ。確か……伐採がやりやすくなる。という能力だったはずだな」
シュタルさんは何でもないかのようにいっているけれど、トレントは全身を震わせていた。
そして、遂には激昂する。
「貴様! 俺様をただの木と同じように扱うなど……決して許さん! 死ね!」
奴はそう叫んで、紫色の粉をばらまく。
シュタルさんはそんな粉を見て、のんきに鑑賞していた。
「ふむ、中々に綺麗だな」
「ぐっぐっぐ! そう言って居られるのも今の内だ! それは触れただけで死に至る! あの世で後悔しろ!」
「……」
「……」
「……あれ?」
シュタルさんはじっとトレントの攻撃を待ち、何なら紫の粉を食べている。
少しそうしていたけれど、何も変かは起きないからか、シュタルさんはトレントに向かって問いただす。
「おい。何が触れたら……だ。食ったが何ともないぞ。というか味もない。折角ならつけておけ」
「いや……死ぬんだしいらないだろ……」
トレントの言葉はもっともだ。
しかし、シュタルさんにはそれが大事な事だったらしい。
「死ぬ間際くらい……いい思いをしたいと願う者がいてもいいだろう」
「それは……そうかもしれないが」
「まぁいい。これ以上お前の攻撃はないんだろう? 防御を固めて、状態異常でじっくりと倒す」
「知られたからなんだ! それに、貴様もいつまで耐えられる? 俺様の防御を突破出来ずに、何時か死に晒すのだ!」
スコン
トレントが叫んだ次の瞬間に、奴は地面で丸太になっていた。
その前には横にスイングをした後のシュタルさん。
彼がそれをやったのだろう。
彼は転がった丸太を見下ろして言う。
「この程度の固さで防御力? 藁かと思ったよ」
「は……え……そん……そん」スコン
トレントが最後まで言葉を言い終わらない内に、シュタルさんは周囲のトレントを全て伐採していく。
そして、1分もしない間に、周囲にあったトレントは1つを除き、全て丸太に変わってしまう。
「う……うそだ……俺様は……鋼鉄よりも固く……そ、そうだ。ミリアム様にもらったあれを使う!」
トレントはそう言って、地面から何かを取り出した。
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