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2章

47話 vs国王?

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 国王は驚愕きょうがくの色をさせて俺を見つめている。

「き、貴様……余が誰か知らんのか?」
「知らん」
「! 余は国王であるぞ! 余の言葉に従い、服従するのが貴様らの行動であるはずなのに、それなのに貴様は何なのだ! まずそこにひざまずけ!」
「断る」

 俺は国王とやらが言っているのを即座に叩き切った。

「な! 貴様……どういうつもりだ?」

 国王が凄むと、その回りにいる近衛兵も同様に怒りを浮かべて口々に叫ぶ。

「貴様! 陛下のお言葉の意味が分からんとは言わせんぞ!」
「そうだ! 陛下はこの国でもっとも偉いのだ!」
「陛下こそこの国の宝ということを知れ!」

 そう口々にはやし立てる。
 さぞ凄い国王らしい。

「それだけの凄い国王とやらがいるのに、こんな惨状になったのはなぜなんだ?」
「貴様! それは愚かな貴族がいたからで」
「ではその愚かな貴族をなぜ処罰しない? リュミエールが忠告しに来たはずだな? それなのに一体何をしていた? 有能な味方が殺されそうになっているのに何をしていた? ただそのイスに座って愚かにも震えていただけだろう。そんな貴様がこの国の宝? さぞや価値のない物しかおいていないのあろうな」
「貴様……言わせておけば……」

 近衛兵達がそう言って怒気をまとわせ、剣に手をかける。

 俺はそれを制する。

「お前達……少し前まで何が起こっていたのか理解していないのか? お前達は誰に殺されそうになっていた? それを救ったのは誰だ? その程度の事も理解しておらん貴様らが国王を守っている等お笑い草だな」
「貴様……」

 奴らはそう言って来るだけで、実際に剣を抜くことはない。
 それだけ実力差に差があるという事ではあるのは理解しているようだ。

 そして、そこに国王が出てくる。

「では貴様、余が愚かだった……そう言いたいのか?」
「それ以外のどのような意味に聞こえた?」
「余が国王であると知ってその言い方をするとは……後悔しても知らんぞ?」
「俺を害する事が出来るのは俺だけだ。第一、俺の前にいて、俺が貴様を殺そうとすれば簡単にそれが出来る。その事を理解しているのか? 口でしか文句を言えぬ権力を振りかざす事しか出来ぬ。いいか? しっかりと教えてやる。俺は最強だ。誰にもひざはつかぬし、負けることもしない。それがたとえ国家が相手であろうが、俺が負けたり、ひざをつくことは無い。理解しろ」
「……」

 俺がそう言うと、国王も近衛兵も無言になった。
 更に続けて言う。

「貴様らに他の者がひざをつくのは、貴様が偉いからではない。貴様が座っているイスが偉いからだ」
「イス……?」

 国王と近衛兵は揃って後ろに置いてあるイスを振り向く。

「そうだ。あのイスは何十年、何百年かけて積み上げられて来た重みがある。そこに、貴様がたまたまチャンスがあり、座ったに過ぎない。分かるか? 先人たちがこの国の為に積み上げたことが偉いのであって、貴様が偉くなるのか、それとも落ちぶれていくのか。それはこれからの貴様の行動にかかっているのだ」
「……」
「国王になったと権力を振りかざすだけの愚か者になるな。貴様が行動しなければこの国は落ちていくぞ」

 俺はそこまで言うと、国王はよろよろと俺の方に近付いて来た。

「貴様……それは……本気で言っているのか?」
「当然だ。俺は最強の魔剣士シュタル。嘘は言わん」
「シュタル……」

 彼は俺の側に来ると、ひざをつく。

「シュタル様! 余に……いやワシにもっと色々と教えて下され!」
「はっ!?」

 俺は彼の行動の意味が分からず、一瞬頭が真っ白になる。

「な、何が狙いだ?」
「狙いはありませぬ! ワシは……ワシは常に1人だった! 誰もワシに忠告せず、ただただ不安の中指示を下すことしか出来なかった! でも、シュタル様はそんなワシに指導してくれる! ワシはそんな人を待っていたのだ!」
「……いや。他にもそういう事を言って来る奴は居たのではないのか?」
「……確かに、居たことはいた。けれど、彼らは所詮ワシを王と頂き、下から伺うように言って来るだけだったのだ。しかし、シュタル様を違う。ワシの事を真正面から否定し、それでいて道筋を示して下さった! ワシにもっとも必要な方なのだ!」
「いや……それは違うと思うが……」

 俺は思っている事をハッキリと言っただけなのだけれど、まさかここまでの事が起きるとは思って居なかった。
 最悪……指名手配されるかもしれない。
 そう思っていたけれど、俺がそうされる事でこの国がちゃんと危機に気付いてくれるのであればそれはそれで良かった。

 他の国に行ってもいいし、別にダンジョン制覇をやってもいい。
 それが……。

「シュタル様……」

 俺に縋りつく国王なんてのが出来るとは思っていなかった。

「離れろ。近衛兵が目を丸くしているぞ」
「気にしないでくだされ! ワシに必要なのは貴方です!」
「はぁ……俺はそんな事をしている暇はないしそんな役職無いだろう? 他にも後ろにいる奴らが納得するとは思えないしな」

 俺がそう言うと、国王は顔に喜びの顔を浮かべて叫んだ。

「ではその為の地位を作りましょう! 国王専属のアドバイザー! ということで、ワシと同等の地位を授けます!」
「はぁ?」

 俺は思い切り顔をしかめてしまった。
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