最強すぎて追放された【最強】スキル持ちの最強魔剣士、〈最強〉を目指して最強に険しい道を進み真の最強に至る

土偶の友

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3章

55話 サラス

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「遠くに見えるあれがサラスだな」
「すごいですねぇ……大きいです……」

 俺とリュミエールが村を出発して数日。
 ついにサラスに到着した。

 日はまだ高く、暖かくなり始めてきた所だ。

 視線の奥にはまるで城と間違える程大きな建物が目に飛び込んで来る。

「ああ、最初はただの中州の街だったが、発展するにつれて水賊すいぞくが出るようになり、それから身を守るために城壁まで築かれたらしい」
「それなら水賊を討伐してしまえばよかったのでは?」
「何度もやったらしいが、魔族領も近いからそこまで完璧に出来ない。それに、もしも魔族に攻められるのなら、いざという時の為に立ててしまおう。という事らしい」
「そんな理由があったんですね」
「あそこの橋を渡り切ったらサラスの中に入れるぞ」
「橋もかかっているんですか……」
「当然だ。あれほどの規模を船だけでは維持できん。そら、行くぞ」

 俺達は橋の前に立っている門番の所に向かう。

 彼らは騎士の鎧をまとっているけれど、肩が下がりどことなくやる気を感じられない。
 というか、彼らの前に並んでいる人も少なく、検査もかなり適当だ。

「よし。次……お前は?」
「あ、商売で……」
「そうか。次」
「え? あ、はい」

 そんな感じで検査と思われないような程に適当なのだ。

 俺達の番もすぐに訪れる。

「お前達の目的は?」
「通り抜けるだけだ。この先のダンジョンに興味がある」

 俺がそう言うと、騎士は俺にせまってきてガシっと両肩をつかんだ。

「なんだいきなり」
「お前……あそこに挑むほどの実力者なのか?」
「当然だ。俺は最強だぞ」
「最強……?」
「そうだ」
「頼みがあるんだ!」

 騎士はそう言って俺に頭を下げる。

「何があった」
「それが……と、ここでする話ではないな。案内するついでに街の中に入ろう」

 そう言って彼は他の騎士に仕事を代わってもらうと、俺達の案内をしてくれる。

 なんだか乗せられている気がしないでもないけれど、街を救うためであれば少しくらいはいいだろう。

「綺麗……」

 俺達は10人が並んで歩ける程の大きな橋を徒歩で渡る。
 中州にあるサラスに到着するまでは10分以上歩かなければ到着しない。
 それほどにアルガル川というのは大きな川なのだ。
 そして、その上流にあるミネスト湖もまた同様に大きい。

 彼女がのんびりとそんな光景を眺めている間、俺は騎士と話をする。

「それで、他に誰もいなくなったが……これで話してくれるんだろうな?」
「ああ、数か月前に、ここの兵士達や男衆がいなくなったのは知っているか?」
「……操られていて、少し経ってから王都に向かったという事か?」
「……そうだ。知っているのなら話は早い。その時にここの兵士達がいなくなり、兵士が減ってしまったせいで水賊がかなり暴れまわっているんだ」
「王都でも問題は解決した。その兵士達が帰ってくれば問題ないんじゃないのか?」

 その為に先日の村に食料をそれなりの量を置いて来た。
 サラスもセントロの様に大きな街だ。
 ミリアムに狙われていた可能性は高い。

 そして、今の話を聞く限り、ミリアムに操られていた者達はいたはずだ。
 なら、その者達が帰って来たらそれで問題はないと思うのだが……。

「それが簡単な問題でもない。今の水賊は一味違うんだ」
めるようにいう必要はないと思うが……」
「褒めてなどいない! ……失敬しっけいした。ただ、奴らは何を思ったか守り神の巣を自由に行き来出来るらしい」
「何だと!?」

 ちなみに、ここでいう守り神とはミネスト湖の中心部に住む巨大な水亀だ。
 この街で暮す巫女の一族が語りかけることにより交流をしていると聞いていたけれど……。

 なので、普通だったら水賊の仲間をするような事なんてないと思うのだが。

「巫女は何と言っている?」
「……いなくなった」
「何? いなくなった?」
「ああ……多くの者が操られ、どこかに消えて行く時に、その一族も何者かの襲撃を受けて多くが殺され、数名が行方不明の状態だ」
「では……守り神は……」
「誰も会話できる者がいない。それに……水賊の中に、行方不明になった巫女の一族がいたとの話も聞いている」
「それは……不味いだろう」
「……ああ。だから……これを解決してはくれないだろうか」
「なぜわざわざ俺に?」
「……正直誰でも良かった。強そうな者であれば誰にでも声をかけている。それほどに危機的な状況なのだ」
「お前達騎士は何をしている?」
「それは……。これから分かる」
「?」

 騎士はそれから無言になり、彼の後をついて行く。

 そして、サラスが近付いて来るとなんとなく分かる。

「おっきいですね~」

 リュミエールはのんきに見上げているが、俺には嫌な雰囲気がひしひしと伝わってきた。

 サラスは純白の城壁に守られた都市だ。
 中央には小さな城の様な物があり、戦時下ではそこが司令塔になる。
 先ほど見えていたのもこれだ。

 そして、その都市の中は普通に栄えた場所であるはずだ。
 以前きた時は魚を買わせようとにぎわっていたものだ。

 しかし今は……。

「逃げるなクソ共!」
「殺せ! 人の獲物取ったカスは殺して魚のエサにしろ!」
「びえええええええ!!!」
「よしよし。静かに、静かにしてね」
「うっせーぞクソガキ! 殺されてーか!」
「すいません。すいません」
「これは……」

 俺達が街の中に入った途端とたん怒号どごうが響き渡り、赤子は泣き、母は静めようと頭を下げる。
 中には手に武器を持ち、攻撃できる相手がいないかと周囲に喧嘩けんかを売るものもいた。

 そんな状況を見せて、騎士は話す。

「これが……今のこの街、サラスの状況です。我々は……この街の治安維持で精一杯なのです」

 そう話す騎士の目は諦めに満ちていた。
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