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5章
102話 ミュセル
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俺達の前には、魔族の少女を襲う5人の人間の兵士がいた。
「おい。お前達。何をしている」
「あぁ? そういうてめぇこそ誰だ。魔族が……人の様にしゃべるんじゃねぇ。おっと、でも後ろにいる奴らはいい面じゃねぇか。いい声で鳴くことは許してやるよ。男はいらないがな」
隊長らしき男はそう言って腰の剣を抜き、残りの4人も同じことをする。
そんな彼らを見て、アストリアとリュミエールは絶句していた。
「そんな……そんなことって……あるの?」
「私が……私が守りたかった人達は……こんな人達なんでしょうか……」
「お前達。下がっていろ。ここは俺が始末する」
「ああん!? 俺達の事を知らねぇのか?」
「知らん」
彼らはそこそこ強そうな甲冑をつけているけれど、名のある人物には見えない。
油断はしないが、不必要に警戒することもないのだ。
しかし、そんな俺の態度に奴らは怒りに顔を真っ赤にする。
「知らねぇってんなら教えてやるよ! 俺達は国境第4警備部隊! どうだ? 恐ろしいか?」
「は? 知らん。おい。知っているか?」
俺はアストリアに顔を向ける。
彼女は記憶を確かめるように話す。
「確か……魔族の侵攻を抑えているすっごく強くて優秀な部隊……って聞いていた気がするけど……。でも……こんな奴らだったなんて……」
アストリアは幻滅したという表情を隠しもしない。
「ひぃ! 第4警備部隊……」
近くにいた魔族の少女はガタガタと歯を鳴らしているし、魔族にとっては恐ろしい相手なのかもしれない。
だが……。
「そんなことは関係ない。ここは下がれ」
「はぁ? てめぇら魔族に命はない。俺達に殺されるか。遊ばれて殺されるかの2択だ」
「……お前達。後悔はしないな?」
「は? てめぇこそ。命の心配をくぺ」
「え? 隊長?」
俺はそれから残りの者も首を切り落とす。
「は……え……嘘……」
魔族の少女は驚きで目を見開き、アストリアも同様に俺をみていた。
「アストリア。お前はどうしたい? こんな奴らでも、助けたいと望むか?」
「ボク……は……ボクは……」
彼女はそう言ってうなだれる。
俺はその様子を見て、魔族の少女を助けることを優先した。
「大丈夫か?」
「あ、は、はい。ありがとうございます。でも、これでは……」
「何か問題が?」
「はい。助けて頂いて言ってはいけないのですが。彼らを殺してしまったとなれば……復讐にこの近辺の村々を襲って回ります。なので、あたしはここに残ります。助けて頂いたのに。申し訳ありません」
そういう少女の申し出に、俺は驚く。
「どういう事だ?」
「こいつらは……さっき名乗ったように人間の国境第4警備部隊。こいつらは仲間が殺されると、その異様なまでの復讐心を持って攻めて来るんです。そして、子供や老人関係なく遊び半分で殺して行き……」
「今は魔族が攻めていると聞いたが、違うのか?」
「その話はここよりも離れている場所です。むしろ、そこに攻めているせいで、こちら側の兵が足りず……」
「被害にあっているという訳か」
「はい……助けて頂いてありがとうございます。最後に、お願いをしてもいいでしょうか?」
「なんだ?」
「これを……あたしの村に、ダルツの村に届けていただけませんか? これだけ取れたのは中々無くって……」
そう言って少女が差し出してきた籠の中には、モリクラゲが一杯に入っていた。
「食料……か?」
「はい。村は今……食料難なのです。不作と……人族の襲撃で村は今大変で……。なので、助けて頂いて勝手かと思います。モリクラゲを食べて頂いても問題ありません。少しでも……少しでもそれを村に届けて下さい。お願いします」
彼女はそう言って深々と俺に頭を下げる。
彼女は色々と……覚悟しているのだろう。
ここに残り、警備部隊に捕らえられ、どんな事をされるか想像もつかない酷いことをされるだろう。
でも、大切な村を守るために、その身を犠牲にしようとしている。
これは……今一度考えを改める必要があるかもしれない。
「お前、名前は?」
「え? あ、あたし……ですか?」
「そうだ」
「あたしは……ミュセルと言います」
「そうか。ミュセル、ダルツの村に案内しろ」
「え? 話を聞いていなかったんですか? それをしたら村が……」
「守ってやる」
「な、何を……」
「俺がお前の村を守ってやる」
「そんな……でも……彼らは……強くって……」
「さっきの俺の強さを見ただろう? 俺は最強だ。だからあの程度の奴らには決して負けない。だから信じろ……」
「あの……本当に……本当に信じてもいいんですか? あたし……あたし……死にたくないです」
今にも泣き出しそうなミュセルはそう言って見つめてくる。
「ああ、任せろ。俺が……何とかしてやる」
「はい!」
俺はそう言って頷くミュセルを見て、後ろを振り向く。
「アストリア。リュミエール。お前達はどうする」
「どうする……って?」
「俺はダルツの村に行く。そして、そこにこいつらが来るようなら……分かるだろう?」
「!?」
「それは……」
「お前達は好きにしろ。こういう事をしたくないのなら、事が終わるまで『結界魔法』で守ってやっても……」
「行きます」
「行くよ」
2人して同時に言い、俺の言葉が遮られた。
「ボクは……ボクは……しっかりと見ないといけない。理想論を掲げることも大切だけど、守ろうとした人達が何をしようとしたのか。それを……知る必要があると思う」
「私も……逃げません。どんなに辛い事があっても、シュタルさんの側にいる。そう決めたのですから」
「そうか……お前達の覚悟。分かった。ミュセル。案内してくれ」
「はい。こちらです」
俺は2人の覚悟を聞き、ダルツの村を目指す。
「おい。お前達。何をしている」
「あぁ? そういうてめぇこそ誰だ。魔族が……人の様にしゃべるんじゃねぇ。おっと、でも後ろにいる奴らはいい面じゃねぇか。いい声で鳴くことは許してやるよ。男はいらないがな」
隊長らしき男はそう言って腰の剣を抜き、残りの4人も同じことをする。
そんな彼らを見て、アストリアとリュミエールは絶句していた。
「そんな……そんなことって……あるの?」
「私が……私が守りたかった人達は……こんな人達なんでしょうか……」
「お前達。下がっていろ。ここは俺が始末する」
「ああん!? 俺達の事を知らねぇのか?」
「知らん」
彼らはそこそこ強そうな甲冑をつけているけれど、名のある人物には見えない。
油断はしないが、不必要に警戒することもないのだ。
しかし、そんな俺の態度に奴らは怒りに顔を真っ赤にする。
「知らねぇってんなら教えてやるよ! 俺達は国境第4警備部隊! どうだ? 恐ろしいか?」
「は? 知らん。おい。知っているか?」
俺はアストリアに顔を向ける。
彼女は記憶を確かめるように話す。
「確か……魔族の侵攻を抑えているすっごく強くて優秀な部隊……って聞いていた気がするけど……。でも……こんな奴らだったなんて……」
アストリアは幻滅したという表情を隠しもしない。
「ひぃ! 第4警備部隊……」
近くにいた魔族の少女はガタガタと歯を鳴らしているし、魔族にとっては恐ろしい相手なのかもしれない。
だが……。
「そんなことは関係ない。ここは下がれ」
「はぁ? てめぇら魔族に命はない。俺達に殺されるか。遊ばれて殺されるかの2択だ」
「……お前達。後悔はしないな?」
「は? てめぇこそ。命の心配をくぺ」
「え? 隊長?」
俺はそれから残りの者も首を切り落とす。
「は……え……嘘……」
魔族の少女は驚きで目を見開き、アストリアも同様に俺をみていた。
「アストリア。お前はどうしたい? こんな奴らでも、助けたいと望むか?」
「ボク……は……ボクは……」
彼女はそう言ってうなだれる。
俺はその様子を見て、魔族の少女を助けることを優先した。
「大丈夫か?」
「あ、は、はい。ありがとうございます。でも、これでは……」
「何か問題が?」
「はい。助けて頂いて言ってはいけないのですが。彼らを殺してしまったとなれば……復讐にこの近辺の村々を襲って回ります。なので、あたしはここに残ります。助けて頂いたのに。申し訳ありません」
そういう少女の申し出に、俺は驚く。
「どういう事だ?」
「こいつらは……さっき名乗ったように人間の国境第4警備部隊。こいつらは仲間が殺されると、その異様なまでの復讐心を持って攻めて来るんです。そして、子供や老人関係なく遊び半分で殺して行き……」
「今は魔族が攻めていると聞いたが、違うのか?」
「その話はここよりも離れている場所です。むしろ、そこに攻めているせいで、こちら側の兵が足りず……」
「被害にあっているという訳か」
「はい……助けて頂いてありがとうございます。最後に、お願いをしてもいいでしょうか?」
「なんだ?」
「これを……あたしの村に、ダルツの村に届けていただけませんか? これだけ取れたのは中々無くって……」
そう言って少女が差し出してきた籠の中には、モリクラゲが一杯に入っていた。
「食料……か?」
「はい。村は今……食料難なのです。不作と……人族の襲撃で村は今大変で……。なので、助けて頂いて勝手かと思います。モリクラゲを食べて頂いても問題ありません。少しでも……少しでもそれを村に届けて下さい。お願いします」
彼女はそう言って深々と俺に頭を下げる。
彼女は色々と……覚悟しているのだろう。
ここに残り、警備部隊に捕らえられ、どんな事をされるか想像もつかない酷いことをされるだろう。
でも、大切な村を守るために、その身を犠牲にしようとしている。
これは……今一度考えを改める必要があるかもしれない。
「お前、名前は?」
「え? あ、あたし……ですか?」
「そうだ」
「あたしは……ミュセルと言います」
「そうか。ミュセル、ダルツの村に案内しろ」
「え? 話を聞いていなかったんですか? それをしたら村が……」
「守ってやる」
「な、何を……」
「俺がお前の村を守ってやる」
「そんな……でも……彼らは……強くって……」
「さっきの俺の強さを見ただろう? 俺は最強だ。だからあの程度の奴らには決して負けない。だから信じろ……」
「あの……本当に……本当に信じてもいいんですか? あたし……あたし……死にたくないです」
今にも泣き出しそうなミュセルはそう言って見つめてくる。
「ああ、任せろ。俺が……何とかしてやる」
「はい!」
俺はそう言って頷くミュセルを見て、後ろを振り向く。
「アストリア。リュミエール。お前達はどうする」
「どうする……って?」
「俺はダルツの村に行く。そして、そこにこいつらが来るようなら……分かるだろう?」
「!?」
「それは……」
「お前達は好きにしろ。こういう事をしたくないのなら、事が終わるまで『結界魔法』で守ってやっても……」
「行きます」
「行くよ」
2人して同時に言い、俺の言葉が遮られた。
「ボクは……ボクは……しっかりと見ないといけない。理想論を掲げることも大切だけど、守ろうとした人達が何をしようとしたのか。それを……知る必要があると思う」
「私も……逃げません。どんなに辛い事があっても、シュタルさんの側にいる。そう決めたのですから」
「そうか……お前達の覚悟。分かった。ミュセル。案内してくれ」
「はい。こちらです」
俺は2人の覚悟を聞き、ダルツの村を目指す。
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