118 / 137
5章
117話 トーナメント開幕
しおりを挟む「おめでとうシュタル!」
「おめでとうございます。シュタルさん」
俺が控室に戻ると、アストリアとリュミエールがいた。
そして、労ってくれる。
「ああ、後4回勝つだけで優勝か。割と早いな」
「4回って……皆強い人なんじゃないの?」
「どうせ俺が勝つことは決まっている。だから回数が少ない方がいいに決まっているだろう?」
「そ、そこまで自信満々に言うのは……やっぱりすごいね……」
アストリアは苦笑いだ。
「それがシュタルさんですからね。それで、他の人の試合を観に行きますか? 今の試合の勝者が次のシュタルさんの相手ですよ?」
「いや、俺はいかない」
「え? いかないの?」
「ああ、俺は初見で正面から叩き潰す。だから見ない。お前達は好きにしろ」
「う、うん……」
「俺は適当に街を見て回ってくる」
俺はそう言って2人と別れて街中をぶらつく。
そして、俺の後からつけてくる相手を確認して、人気のない場所に向かう。
人気が無くなると、俺は足を止めて声をかける。
「俺をつけてくる理由を聞いてもいいか?」
「……良く気付いたな」
俺がそう言うと、俺を囲むように1黒ずくめの者達が10人囲んできた。
「俺は最強だからな。それで、理由は?」
「次の試合は棄権しろ」
「単純だな。だが、なぜ俺が棄権しなければならん? お前達の主か……雇い主が俺に勝てばいいだけだろう?」
「お前の実力が未知数だ。それに、お前を倒した後も、その後も油断できる相手ではない。だから少しでも力を温存しておきたいのだ」
「なるほどな。だが残念だ。俺は誰にも屈しない」
「屈しろと言っているのではない。取引を求めている」
「対価は?」
「何が欲しい? 金、女、出来る限りは用意してやる」
「その程度か?」
「なに?」
「お前達に用意出来るのはその程度か……と聞いている」
「決裂か」
そう言うと周囲の連中は一斉に俺に短剣を投げてくる。
しかも、それぞれには毒が塗られているのが分かった。
だが、親衛隊の隊長の一撃とは比べ物にならない。
密度で勝負しているようだけれど、これでは話にならないからだ。
俺は短剣を全てかわし、話していた相手以外全員に拳を打ち込んで意識を奪っていく。
「がぅ!?」
「げはっ!?」
9人全員の意識を奪い、刺客に向き直る。
「な、なんだ……と」
「さて、お前達の主に伝えておけ。好きな手を使ってくるといい。全力で俺を殺しにこい。そこまでして初めて、俺がお前達を敵として認めてやるだろう」
「……後悔するなよ」
奴はそう言ってどこかに走りさっていく。
「よし、これで……次の敵は本気になるだろう。本気の敵と戦わなければ意味がないからな」
別にこんなことしなくてもいいかと思ったけれど、これくらいの強さを見せつけておいた方が、敵もより一層真剣に俺を殺しに来てくれるだろう。
なら、それくらいのことはする。
「よし。帰るか」
そして、俺は適当に魔物を狩りにいく。
******
『さぁ! 本日より武闘大会決勝トーナメントの開催です! 選ばれし16人による完全実力バトル! 目が離せないでしょう!』
「わああああああああああ!!!」
実況の声援に、会場が湧く。
観客席も満員になっていて、みな興奮した表情をしていた。
『さて! それではこれから決勝トーナメントのルール説明をさせて頂きます! 本日は1回戦を行い、明日は準々決勝! 準決勝! そして、決勝を行います! さて、それでは早速選手を紹介していきましょう!』
実況が選手紹介をする度に歓声がこれでもかと湧き上がる。
こういう姿を見ていると、人も魔族も対して変わらないと感じる。
それから俺は自身の出番まで控室に行く。
因みに、決勝トーナメントまで進んだ者は安全などの為に個室が与えられている。
中に入ることが出来るのも、事前に決められた者だけだ。
なので、俺の控室にはアストリアとリュミエールがいる。
「シュタルさん! 頑張って下さいね!」
「シュタルなら余裕だよね! きっと、一歩も動かずに勝てたりするんじゃない!?」
「流石にそれは……難しい気がするな」
武闘大会。
先ほど選手紹介をしていた時に、沼地で出会った奴がいた。
奴も当然という様にその場に居て、俺の微かな視線にすら気付いてみせた。
そして、トーナメント表を見ると、そいつとは決勝で当たる。
だから、これからが楽しみ過ぎて興奮が収まらない。
「そんなに強いの?」
「ああ、楽しみ過ぎて動かないという選択肢は取れないな」
「ああ……そういう……。何番目だっけ?」
「6番目だな。だからお前達も試合を見にいってきてもいいぞ?」
「そうだね……」
コンコン
「入れ」
俺がノックした相手に許可を出すと、係員が部屋の扉を開けたところで口を開く。
「シュタル様。準備をお願いします」
「かなり早いな……分かった。では行って来る」
「うん。頑張って」
「応援しています」
「ああ」
俺はそう言って部屋から出て次の所まで行くと、係員が首を傾げる。
「あれ? シュタル様? もう来られたのですか? 観戦ですか?」
「何?」
「シュタル様の番までまだあります。現に、今は第2試合。出番はまだ先かと思いますが……」
「ほう……なるほど。そういう事をするつもりか」
俺は、次の相手が何を仕掛けて来たのか理解出来た。
0
あなたにおすすめの小説
魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。
それは、最強の魔道具だった。
魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく!
すべては、憧れのスローライフのために!
エブリスタにも掲載しています。
ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~
エース皇命
ファンタジー
学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。
そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。
「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」
なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。
これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。
※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。
無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います
長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。
しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。
途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。
しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。
「ミストルティン。アブソープション!」
『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』
「やった! これでまた便利になるな」
これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。
~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~
チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記
ノン・タロー
ファンタジー
ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。
これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。
設定
この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。
その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。
最強付与術師の成長革命 追放元パーティから魔力回収して自由に暮らします。え、勇者降ろされた? 知らんがな
月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
旧題:最強付与術師の成長革命~レベルの無い世界で俺だけレベルアップ!あ、追放元パーティーから魔力回収しますね?え?勇者降ろされた?知らんがな
・成長チート特盛の追放ざまぁファンタジー!
【ファンタジー小説大賞の投票お待ちしております!】
付与術のアレンはある日「お前だけ成長が遅い」と追放されてしまう。
だが、仲間たちが成長していたのは、ほかならぬアレンのおかげだったことに、まだ誰も気づいていない。
なんとアレンの付与術は世界で唯一の《永久持続バフ》だったのだ!
《永久持続バフ》によってステータス強化付与がスタックすることに気づいたアレンは、それを利用して無限の魔力を手に入れる。
そして莫大な魔力を利用して、付与術を研究したアレンは【レベル付与】の能力に目覚める!
ステータス無限付与とレベルシステムによる最強チートの組み合わせで、アレンは無制限に強くなり、規格外の存在に成り上がる!
一方でアレンを追放したナメップは、大事な勇者就任式典でへまをして、王様に大恥をかかせてしまう大失態!
彼はアレンの能力を無能だと決めつけ、なにも努力しないで戦いを舐めきっていた。
アレンの努力が報われる一方で、ナメップはそのツケを払わされるはめになる。
アレンを追放したことによってすべてを失った元パーティは、次第に空中分解していくことになる。
カクヨムにも掲載
なろう
日間2位
月間6位
なろうブクマ6500
カクヨム3000
★最強付与術師の成長革命~レベルの概念が無い世界で俺だけレベルが上がります。知らずに永久バフ掛けてたけど、魔力が必要になったので追放した元パーティーから回収しますね。えっ?勇者降ろされた?知らんがな…
俺が追放した役立たずスキルの無能女どもが一流冒険者になって次々と出戻りを希望してくるんだが……
立沢るうど
ファンタジー
誰もが憧れる勇者を目指す天才冒険者『バクス』は、冒険者パーティーのメンバーである無能少女三人に愛想を尽かせ、ある日、パーティーリーダーとして追放を決意する。
一方、なぜ自分が追放されるのかを全く自覚していない彼女達は、大好きなバクスと離れたくないと訴えるも、彼にあっさりと追放されてしまう。
そんな中、バクスのパーティーへの加入を希望する三人が、入れ替わりで彼の前に現れ、その実力を見るために四人でモンスター討伐の洞窟に向かう。
その結果、バクスは三人の実力を認め、パーティーへの加入で合意。
しかし、それも長くは続かなかった。モンスター討伐を続ける日々の中、新加入三人の内の一人の少女『ディーズ』が、バクスとの冒険に不安を訴えたその翌日、なぜか三人共々、バクスの前から忽然と姿を消してしまう。
いつの間にかディーズに好意を寄せていたことに気が付いたバクス。逆に自分が追放された気分になってしまい、失意に暮れる彼の元に、追放したはずの『コミュ』が出戻り希望で再アタック(物理)。
彼女の成長を確認するため、自分の気持ちを切り替えるためにも、バクスが彼女と一緒にモンスター討伐に向かうと、彼女は短期間でとんでもない一流冒険者に成長していた……。
それを皮切りに他の二人と、かつての『仲間』も次々と出戻ってきて……。
天才冒険者の苦悩と憂鬱、そして彼を取り巻く魅力的な女の子達との笑顔の日常を描くハートフル冒険者コメディ。是非、ご一読ください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる