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5章

117話 トーナメント開幕

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「おめでとうシュタル!」
「おめでとうございます。シュタルさん」

 俺が控室に戻ると、アストリアとリュミエールがいた。
 そして、ねぎらってくれる。

「ああ、後4回勝つだけで優勝か。割と早いな」
「4回って……皆強い人なんじゃないの?」
「どうせ俺が勝つことは決まっている。だから回数が少ない方がいいに決まっているだろう?」
「そ、そこまで自信満々に言うのは……やっぱりすごいね……」

 アストリアは苦笑いだ。

「それがシュタルさんですからね。それで、他の人の試合を観に行きますか? 今の試合の勝者が次のシュタルさんの相手ですよ?」
「いや、俺はいかない」
「え? いかないの?」
「ああ、俺は初見で正面から叩き潰す。だから見ない。お前達は好きにしろ」
「う、うん……」
「俺は適当に街を見て回ってくる」

 俺はそう言って2人と別れて街中をぶらつく。

 そして、俺の後からつけてくる相手を確認して、人気のない場所に向かう。
 人気が無くなると、俺は足を止めて声をかける。

「俺をつけてくる理由を聞いてもいいか?」
「……良く気付いたな」

 俺がそう言うと、俺を囲むように1黒ずくめの者達が10人囲んできた。

「俺は最強だからな。それで、理由は?」
「次の試合は棄権きけんしろ」
「単純だな。だが、なぜ俺が棄権しなければならん? お前達の主か……雇い主が俺に勝てばいいだけだろう?」
「お前の実力が未知数だ。それに、お前を倒した後も、その後も油断できる相手ではない。だから少しでも力を温存しておきたいのだ」
「なるほどな。だが残念だ。俺は誰にも屈しない」
「屈しろと言っているのではない。取引を求めている」
「対価は?」
「何が欲しい? 金、女、出来る限りは用意してやる」
「その程度か?」
「なに?」
「お前達に用意出来るのはその程度か……と聞いている」
「決裂か」

 そう言うと周囲の連中は一斉に俺に短剣を投げてくる。
 しかも、それぞれには毒が塗られているのが分かった。

 だが、親衛隊の隊長の一撃とは比べ物にならない。
 密度で勝負しているようだけれど、これでは話にならないからだ。

 俺は短剣を全てかわし、話していた相手以外全員に拳を打ち込んで意識を奪っていく。

「がぅ!?」
「げはっ!?」

 9人全員の意識を奪い、刺客に向き直る。

「な、なんだ……と」
「さて、お前達の主に伝えておけ。好きな手を使ってくるといい。全力で俺を殺しにこい。そこまでして初めて、俺がお前達を敵として認めてやるだろう」
「……後悔するなよ」

 奴はそう言ってどこかに走りさっていく。

「よし、これで……次の敵は本気になるだろう。本気の敵と戦わなければ意味がないからな」

 別にこんなことしなくてもいいかと思ったけれど、これくらいの強さを見せつけておいた方が、敵もより一層真剣に俺を殺しに来てくれるだろう。
 なら、それくらいのことはする。

「よし。帰るか」

 そして、俺は適当に魔物を狩りにいく。

******

『さぁ! 本日より武闘大会決勝トーナメントの開催かいさいです! 選ばれし16人による完全実力バトル! 目が離せないでしょう!』
「わああああああああああ!!!」

 実況の声援に、会場がく。
 観客席も満員になっていて、みな興奮した表情をしていた。

『さて! それではこれから決勝トーナメントのルール説明をさせて頂きます! 本日は1回戦を行い、明日は準々決勝! 準決勝! そして、決勝を行います! さて、それでは早速選手を紹介していきましょう!』

 実況が選手紹介をする度に歓声がこれでもかと湧き上がる。
 こういう姿を見ていると、人も魔族も対して変わらないと感じる。

 それから俺は自身の出番まで控室に行く。

 因みに、決勝トーナメントまで進んだ者は安全などの為に個室が与えられている。
 中に入ることが出来るのも、事前に決められた者だけだ。

 なので、俺の控室にはアストリアとリュミエールがいる。

「シュタルさん! 頑張って下さいね!」
「シュタルなら余裕だよね! きっと、一歩も動かずに勝てたりするんじゃない!?」
「流石にそれは……難しい気がするな」

 武闘大会。
 先ほど選手紹介をしていた時に、沼地で出会った奴がいた。
 奴も当然という様にその場に居て、俺の微かな視線にすら気付いてみせた。

 そして、トーナメント表を見ると、そいつとは決勝で当たる。
 だから、これからが楽しみ過ぎて興奮が収まらない。

「そんなに強いの?」
「ああ、楽しみ過ぎて動かないという選択肢は取れないな」
「ああ……そういう……。何番目だっけ?」
「6番目だな。だからお前達も試合を見にいってきてもいいぞ?」
「そうだね……」

 コンコン

「入れ」

 俺がノックした相手に許可を出すと、係員が部屋の扉を開けたところで口を開く。

「シュタル様。準備をお願いします」
「かなり早いな……分かった。では行って来る」
「うん。頑張って」
「応援しています」
「ああ」

 俺はそう言って部屋から出て次の所まで行くと、係員が首を傾げる。

「あれ? シュタル様? もう来られたのですか? 観戦ですか?」
「何?」
「シュタル様の番までまだあります。現に、今は第2試合。出番はまだ先かと思いますが……」
「ほう……なるほど。そういう事をするつもりか」

 俺は、次の相手が何を仕掛けて来たのか理解出来た。
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