不治の病で部屋から出たことがない僕は、回復術師を極めて自由に生きる

土偶の友

文字の大きさ
53 / 129
4章

65話 流行り病の原因は?

しおりを挟む
 僕は午前中は師匠と一緒に町へ行き、師匠に続いて患者の中を飛び回っていた。

 何か使えそうな物はないか。
 僕の体との違いは何だろうか。

 そんな事を考えながら治療を続けた。

「よし。今日はこの辺りでいいだろう」
「分かりました。ありがとうございます」

 それから僕は屋敷に帰ってレイアに体力をつけてもらう為の訓練にはげむ。

「走り込みと剣の素振りをずっとやり続けろ! 足を止めるな! 体勢が悪い! ちゃんと正しい姿勢を身につけろ! いざという時のその姿勢が命運を分けるぞ!」
「はい!」

 レイアは僕と戦いたくならないように、僕に魔法の使用を禁止していた。

 僕が禁止なんだ……と思ったけれど、僕もレイアに襲われるのは正直望まないので受け入れていた。

 夜は夜で師匠と座学の講義だ。
 正直そんなケースがあるのか? と聞きたくなるような場面がかなり多い。

「今回は魔物が病をばらまいていた時だな」
「魔物が病をバラまくなんてあるんですか?」
「当然ある。もちろん数は多くないが……ヒュドラの様に毒をばらまく物もそれに含まれる」
「ああ、なるほど」

 ヒュドラの名前を出されると確かにと納得出来る。
 毒も病の一種。
 その考えであれば分かりやすい。

「そして、魔物がばらまく場合。その魔物には耐性が出来ている事が多い。だから、ヒュドラの毒を浴びてしまった時に、回復術師がいない場合。過去に倒されたヒュドラの解毒薬を飲むしかない」
「そんな都合よくあるものなんですか?」
「ないな。だから、ヒュドラに挑む可能性があるなら、普通は持って行く。いきなり出会った場合は……ご愁傷様しゅうしょうさまとしか言いようがないが」
「そうなんですね……」

 なんて厳しいんだろうか。

「だが、民間療法で薬草をせんじて飲む。ということも行なわれている。話に聞いただけだが、ヒュドラの毒もこの方法で回復出来る事があると聞く。ただ、おれはそんな奴に出会った事がない。もしいたら教えてくれ。勧誘する」
「勧誘……ですか?」

 師匠はなぜか目の色を変え、嬉しそうに笑う。

「そうだ。そんな知識があるのなら、是非とも全て教えていただきたい」
「そ、そうですね」
「とまぁそんな事があるので、いざという時には使うように」
「それって、どこの部分が耐性をつけるのに役に立つのかという事は決まっているのですか?」
「いや、それは決まっていない。知られていない新種の場合、全身バラして試してみることになる」
「かなり厳しいんですね……」
「そうだ。それに、もしそれに耐性があったとしても、人の体に害を及ぼす可能性もある。それを試すにもかなり時間がかかるんだ」

 話を聞いているだけでもかなり大変そうだ。
 乗り越えなければならないハードルが高すぎる。

 その日もそんな風にして1日が終わっていく。

******

 次の日。

「エミリオ。話がある」

 レイアはそう言って訓練の終わりに話してくる。

「なに?」
「明日、アタシは少々森に行く必要が出来た。なので、訓練は見れない。悪いな」
「それは仕方ないよ……何かあったの?」
「話を聞くと、森の調査に行った狩人が戻って来ないらしい。それで、その狩人もかなりの腕だったらしいから、彼以下の狩人を送り出す訳にも行かない。という事でアタシが行くことになった」
「そんな……危険じゃないの?」
「それがいいんだろう? 危険じゃない場所など正直行きたくない位だ」

 そっか……この人はそういう人だった。

「分かった。気を付けて行って来て。僕は町で患者を見ているよ」
「何? ジェラルド殿も一緒に向かうぞ」
「どうして!?」

 僕は信じられなかった。

 誰よりも自身が病にかからないという事を話していた師匠がそんなことをいうとは思わなかったからだ。
 何があったのだろうか。

「詳しいことはアタシも知らん。だが、もしかしたら……という事を言っていた。そして、それを彼の目で確かめたい……とも」
「何があるんでしょうか……」

 心配になってきてしまう。
 一体何があるんだろうか。

 夜になってその事を聞くと、あっさりと答えてくれた。

「この流行り病が不自然だからだ」
「不自然……ですか?」
「そうだ。おれはこれまで回復術師としてそれなりの流行り病の対処に駆り出されてきた」
「はい」
「だが、今回の病はどうもおかしい。簡単に言うと感染経路が分からないんだ」
「感染経路が分からない?」
「そうだ。一応エミリオを呼んだ時点で飛沫感染や空気感染はないことは確かだった。同じ家に住んでいる住人でも感染するしていないという事も分かった」
「では……年齢や性別等ですか?」
「関連性は一切見られなかった。一応、子供や老人は感染率が低い様だったが、それでも決して感染しない訳じゃない」
「それで、その原因が森にあると?」
「あくまで勘だ。というか、そこ以外に変化した所がない」
「変化……ですか?」
「ああ、最近魔物の動きが活発という事を知らないか?」
「そういえば……」

 ロベルト兄さんと湖に行った時も、普段はいないって言われていたはずなのに、あんな場所にいた。
 サシャが最近魔物が多いとも言ってた。
 【宿命の鐘フェイトベル】の人たちも、最近は周囲の間引きで忙しいと言っていた気がする。

「この流行り病は……魔物が関わっている……ということですか?」
「あくまで想像でしかないがな。それに、レイア嬢もそうだ。彼女はアップトペルの町に入っていないそうだ」
「え……でも……」
「そう。彼女は流行り病に感染していた。ということは、森の魔物に原因がある。そう考えても間違いはないだろう」
「なるほど……」
「納得いったか?」
「はい! ありがとうございます! それでは、僕も一緒に行ってもいいでしょうか?」
「なぜそうなる?」

 なぜってそりゃ……。

「僕も力になりたいからです。それに、体力をつける為に森を歩くのも師匠がずっと考えていてくださったことでしょう? 丁度いいではないですか」
「それは……そうだが……」

 勘だったけれど、当たっていたようだ。
 師匠は結構突拍子とっぴょうしもないことをいうけれど、その行動にはきちんと理由があるような気がしている。

「という訳でお願いします! 僕も……皆の役に立ちたいんです!」
「……仕方ない。許可しよう」

 そこまで話した所で、町の人たちの心配が頭をよぎる。

「そう言えば師匠。町の人たちは大丈夫なんでしょうか?」
「一応、明日まで危なそうな者は今日の内に治療しておいた。明日1日くらいであれば問題ないだろう。それよりも、これ以上時間が経って患者が今よりも増えて行くと手に負えなくなる。そうなったら時間は一切作れないからな。今の内に少しでも原因等を掴んでおかなければならない」
「なるほど」
「それに、後から来る他の回復術士達も事前に何が原因か分かっておいてくれた方が助かるからな」
「勉強になります」

 流石師匠だ。
 僕がどうしたらいいのか困っている所にずばずばと答えを出して来てくれる。

 これがマスラン先生が化け物と呼ぶほどの人。

「よし。理解した所で明日は早朝に出る。分かったか?」
「はい!」

******

 翌日。

 僕達3人は森の奥に入って来ていた。

 師匠が懸念した通り、魔物の数は確かに多い。
 ただ、襲ってくる魔物の中には元気のない魔物もそれなりにいて、倒すこと自体は簡単だった。

「ふん。歯ごたえのない。せめて肉は食いがいがあるといいんだがな」

 レイアはそう言いながら、剣についたファングボアの血を振り払う。

「師匠。何か分かりそうですか?」

 師匠はレイアが倒したファングボアの体を調べ始める。
 真剣な顔つきで調べているので、僕にも何か出来る事はないかな。

「ふむ……。ハッキリと分かる事はない。だが、恐らくこの森の奥に……何かある。そんな気がしている」
「森の奥……ですか?」
「ああ、この奥に……」

 師匠が不意に森の奥に目を向ける。

 僕もそれに釣られて目を向けた。
 そこにいたのは……。

「シュロロロロロロロロロロ」

 気味の悪い緑色をした、2ⅿ程のトカゲの形をした魔物だった。
しおりを挟む
感想 73

あなたにおすすめの小説

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。