「タコ野郎!」と学園のダンジョンの底に突き落とされた僕のスキルが覚醒し、《クラーケン》の力が使える様に ~突き落としてきた奴は許さない~

土偶の友

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1章

8話 学園裁判

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 学園裁判。
 学園長や教師数人が裁判官になり、もめ事として処理しなければならない事を裁く場所。

 僕はその中の傍聴席ぼうちょうせき……聞く場所に座り、被告が入ってくるのを待つ。

 少しして、学園長が裁判官として一番奥の高い所に座り、そこから少し離れた場所に被告……裁かれる人が立つ。
 今はグレーデンが立って学園長を睨みつけている。

 僕ら聞く者達はグレーデンの両サイドで聞くのだ。

 グレーデンの後ろには警備の騎士が数人控えている。

「それでは時刻になった。裁判を始める」

 学園長が木槌きづちで叩き、開廷を宣言する。

「まずはグレーデン、貴様を中央高等院に送る。異議のある者は」
「……」

 誰も反対しない。
 グレーデンの父……公爵の手の者がいるはずだけれど、反対もしないとは。

 そのことに怒ったのは当然ながらグレーデンだった。

「ふざけんなカス共が! 主であるこの俺様が送られるんだぞ! さっさと無実を証明しろ!」
「我々の主は公爵様本人です。貴方ではありません。グレーデン様」

 僕とは反対側にいた公爵の人がグレーデンの言葉をさらりと否定する。

「てめぇ……帰ったら覚えてろよ」
「その事でヴェルズダル公爵より文が届いておる」
「あ? 親父から? 何だよ」

 グレーデンはイライラした顔を学園長に向けている。

 学園長は淡々とその文を読み上げた。

「ヴェルズダル公爵家当主としてグレーデン・ファン・ヴェルズダルに言い渡す。貴様をヴェルズダル家から追放し、以後、その家名を名乗る事を禁ずる。これは一族の総意である。もし破ればヴェルズダルの名に懸けて貴様を処分する。以上だ」
「は……お、親父が……い、いえ、父上が……そんな……。そんなことあるはずがない……ですよね?」

 グレーデンの口調は弱々しくなるが、学園長は容赦しない。

 もう一度一字一句間違わず文を読み上げる。

「そんなはずない! 父上は……父上は俺が次期公爵で相応しいと言ってくれたんだ! お前らが何かしたのだろう! この裏切者共が!」
「我々はヴェルズダル家に仕えているだけです。貴方に仕えている訳ではない……。先ほどそう言ったはずですが?」
「っ……貴様……」
「丁度いい。貴様の所で働かされていた者達の話も聞かせてもらおうかのう」
「は……働かされていた……?」

 グレーデンの顔色は青くなったり赤くなったり忙しい。

 新たに入ってきたのは、グレーデンの部屋で見た騎士だった。

「それでは聞かせてもらおう」
「はい。我々はグレーデンの指示で女性徒を誘拐するように言われ、実行していました」
「な! きさ」
「黙れ。発言を許可していない」
「……」

 グレーデンの文句を学園長が鋭い視線で抑え込んだ。
 魔力のこもった視線にグレーデンは顔を青くする。
 騎士は続けた。

「他にも、さらった女生徒をおもちゃにする。と言って拷問をしていました。止めても我らの家族でやられたいか。と言われては止めることが出来ませんでした」
「なるほど。グレーデンよ。言いたいことは?」
「それは……そいつの出まかせだ……」

 彼は顔を真っ赤にしながら言い返すけれど、学園長がそれを否定する。

「彼以外からも同じような証言が上がって来ておる。では他の者に聞いて見ようか。入れ」
「お前ら……!」

 入ってきたのはグレーデンの側にいつもいた2人だった。
 彼らはグレーデンとは目を合わせずに証言台に立った。

「さて、話してもらおうかの?」
「はい……。僕らはいつも彼の側にいました。事あるごとにあの女を犯すだの、あいつは八つ裂きにしてやるだのと言っていました」
「それは言っただけで!」
「実際にそうしている所を見せられました。平民等ゴミと変わらない……。俺のおもちゃになる分まだましだろう……と」
「な……きさ……」

 グレーデンは2人いる内の、話していない方を見る。
 その目は祈る様な目をしていた。
 そんな目が出来るとは。

「俺も……もし従わないとどうなるか。俺の領地に圧力をかけると、だから口裏を合わせるように……と」

 なるほど、貴族のこいつらを使ってこれまで裁判から逃げていたのか。

 グレーデンは父に切り捨てられ、部下に裏切られ、友人に訴えられて真っ白になっている。

「こ、これは俺のやったことじゃない! 父……そうだ、父上がやれと言ったのだ! だから俺に罪はないんだ! だから、だから許してくれ! お願いだ! 俺の持っている金もやる! だから……学園長!」
「……」

 すごい。これだけ多くの人が見ている前で賄賂宣言とは。
 でも、彼はなりふり構っていられないのかもしれない。
 ここで有罪になれば確実に中央高等院に送られる。
 そうなれば処刑しかない。

 涙で顔がぐしゃぐしゃになりながらも大声で自身の無実を訴え続ける。

「お願いだ! あそこだけは……あそこだけは!」
「ならぬ。貴様が今まで殺めて来た命。十分に罪を償うが良い。丁度命は9回あるんじゃったか?」
「だからだ! お願いだ! 俺の……俺のスキルでは!」
「良かったの。今まで奪ってきた命の分くらいは苦しめると良いな?」
「きょ……協力する! 学園長のスキル研究に協力するから! だから……!」
「今のワシの興味は貴様にはないわ」

 学園長は僕を見ていたらしいけれど、僕は気が付かなかった。

 僕は途中から話半分で聞いていたからだ。
 グレーデンがあそこまで嫌がっている事を聞いてどうしてかと考えて、1人納得していたから。

 彼のスキルは【九つの命ナインライブズ】1日の内、8回死んでも蘇る事が出来るというもの。

 であれば、処刑も9回行なわれるのだ。
 しかも、処刑方法は1つではない。
 1回で死ななかったのなら、違った方法で試されていくはずだ。
 より残虐な方法で、より苦痛を感じる方法で。

 だからあれほど嫌がっていたのかと納得する。

「おい! タコ野郎! お前も助命しろ!」

 僕は少し考えごとをしていて意識が離れていた。
 その間に、何故かグレーデンが僕の近くにいて話しかけている。

「え……? な、何?」

 驚いて普通に返してしまった。

「お前!Aランクダンジョンから帰って来られる程に強いんだろう! なら俺様を助けろ! そうしたら褒美ほうびをくれてやる!」
「はぁ? お前からもらえる褒美なんていらないよ」
「何でも言え! 何でも用意してやるから! だから助けろ!」

 あきれてものが言えない。
 これだけ周囲を敵に囲まれ、力を持っている父からも拒絶されたのだ。
 そんな奴が僕の欲しい物を用意できるはずがない。

「無理な物は無理だ」
「俺は死にたくない! 死にたくないんだ!」

 奴がそんな事を言って、僕は頭に血がのぼるのが分かった。

「お前に殺された人は皆そう思っていたよ。誰も死にたいと思っていた訳じゃない。ウィリアムも……大事なウェーレの為に死んだんだ。それが今更死にたくないだと……ふざけるな!」
「あ……う……でも……」
「でもじゃない! 死んだら蘇ることの出来るお前とは違うんだ! その事を知らなかったなんて言えるわけないだろうが!」
「………………」

 俺が怒鳴ると、彼はがっくりとうなだれて動かなくなった。

「さて、これで答えは出たようじゃな。そ奴を中央高等院へ送れ」
「畏まりました」

 後ろに控えていた騎士達がグレーデンの両脇を抱えて連れていく。

 僕はそれを冷めた目で見送った。
 これでウィリアムとウェーレの気持ちが少しでも晴れてくれればいいと思う。
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