「タコ野郎!」と学園のダンジョンの底に突き落とされた僕のスキルが覚醒し、《クラーケン》の力が使える様に ~突き落としてきた奴は許さない~

土偶の友

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1章

27話 ローバー先生

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「ローバー先生……」

 僕と仲の良かったローバー先生が月明かりに照らされて微笑んでいた。

「クトー君。こんな時間に外出してはいけませんよ?」
「え……? あ、はい。すいません」

 いきなり当たり前の事を言われて困惑する。
 もしかしてローバー先生は敵じゃない?
 でもさっきグレーデンに対して……。

「クトー君。私から少しお願いあるんですが聞いて頂けないですか?」
「な、なんの話ですか?」
「大したことではないんですが、私の実験のお手伝いをして欲しいのですよ」
「お手伝い……?」
「そうです。私の研究は知っているでしょう?」
「はい。糸で傷口を縫合して、治すという……」
「そうです。それもあるんですが、実は今……グレーデン君の様に新しい事も始めているんですよ。彼も快く協力してくれていて、助かっているんです。しかも命が9個もある。毎日限界まで手伝って頂いて本当に感謝しています。クトー君も手伝って頂けませんか?」
「……その限界までって」
「はい。毎日8回ほど死んでいます」
「………………」

 ローバー先生はそれがどうしたことなんだ?
 とでも言うように優し気な表情を変えない。

 確かに僕はグレーデンが死んでもいいと思ったけれど、だからって、こうやって実験台にされ続けるのは……。

「クトー君はサナ嬢を助けたいんですよね? でしたら丁度いいかもしれません。私の研究は悪い部分を全て取り除きます。そして、それ以外の部分は君の治癒力等ですね。触手を頂いて実験しましたから確実です。それらを使って回復出来れば、この世の病全てが無くなるでしょう? どうです? 素晴らしいと思いませんか? 貴方には、そのいしずえになって頂きたいのです」
「何を……言って……」
「この世界から怪我を根絶したい。そう考えているんですよ。それに、そこに転がっているグレーデン君。彼の体を体感しましたか?」
「恐ろしい……強さでした」
「そうでしょう? 昔のままだったらEランク冒険者の実力もないゴミでしたが、先ほどの様に強化したらCランクくらいの実力はあるんですよ。君に少し分けて頂いた触手も彼に移植して……すごいと思いませんか?」
「僕の……触手?」
「ええ、ええ、穴の中にネズミがいると言って助けてくれたでしょう? あの時に頂いた物を培養ばいようしてくっつけてみたんです。中々でしょう?」
「それで……」

 グレーデンはあんなに言っていたのか……。

「たった少しの時間であんなに強くなれる。そうしたら、人が魔物を駆逐くちくするのも時間の問題かもしれません。神をも殺すという神獣。そんな奴らも殺せるかもしれません」
「貴方の目的は……それですか。それとも、怪我を無くす事ですか」
「んー。両方……というのが正しいですかね。私の目的は怪我を無くすこと。そして、我が組織の目的は、神獣を殺すこと。ですかね?」
「組織……?」
「ああ、これはまだ紹介していませんでしたね。私は〈選ばれし者ギフターズ〉第5席次全てを繋ぐ者コネクターのローバーと申します」
「〈選ばれし者ギフターズ〉……? 全てを繋ぐ者コネクター?」

 聞いたこともない言葉がこれでもかと出てくる。
 何だその組織は。

「簡単ですよ。〈選ばれし者ギフターズ〉は神に選ばれた素晴らしいスキルを持つ人間だけが世界を支配するべき。そして神に頂いた恩寵おんちょうであるスキルによってその者の地位が決められる世界を作ろうとしている素晴らしい組織です」
「素晴らしい……?」

 スキルの素晴らしさなんて一体どうやって判断するのだろうか。
 いや、そもそもの話、グレーデンを実験にしている奴らがまともな訳はない。

「素晴らしいでしょう? 私の研究をあり得ないと否定してきた奴らはどうです? 私の研究が認められれば手のひらを返したようにすり寄ってくる。そんな奴らが上に立つ資格などないとは思いませんか?」
「それは……」
「私は〈選ばれし者ギフターズ〉に入り、その力を使って研究を認めさせた。多くの人が困っているのを救ってきた。それもこれも、スキルがあったから出来た事です。このスキルがあったからこそ。私は人を助けることが出来る! もっと前にやっていれば、あの人も助ける事が出来たのに……!」
「だからってグレーデンや僕を実験の道具にしようと言うのですか? そして……サナもそんな実験に使おうとしているのですか?」
「使うだなんて言いませんよ。協力してもらうだけです。でも、君が望んで協力してくれるのであれば、彼女には手を出さないと約束しましょう」

 僕はローバー先生を認めることはできない。
 確かに人々を救いたい。
 怪我のない世界にしたい。

 その理想は立派だけれど、サナを犠牲にしようとした時点で僕は敵に回る。

 サナには手を出さない……約束する……。
 ふざけているのだろうか。

 既にローバー先生は……彼はサナに手を出しているのだ。
 これから手を出さないと言った所でもう遅い。

 ローバー先生は……敵だ。

 僕の態度を先生も理解したのか、嘆息たんそくした。

「はぁ……君なら分かってくれると思っていたんですがね?」
「崇高な理想を掲げる前に目の前に転がる犠牲者を見た方がいいのでは?」
「理想の為に必要な犠牲ですよ。犠牲がなければ……達せられない。あの犠牲は必要だったのだと……思わなければならないのですよ」

 ローバー先生の圧力が増していく。
 何か昔にあったのだろうか。

「ゲギャギャギャ」
「っ!」

 僕は声が聞こえてローバー先生から目を離し、周囲を見回すと、以前戦った真っ白の装備をつけたゴブリン共がいた。
 しかも手や足が僕の触手と同じになっているのも数体存在する。

「ただ話しているだけだと思いましたか? 用意した特殊なゴブリンナイトは30体。これらは私のスキルで作った特別製の装備です。さぁ、貴方の力を見せてください。そして、大人しく私に協力してくれませんか?」

 彼は……授業中の時と全く同じ様に話かけてくる。
 でも、彼の言うことを聞けるわけはない。

 問題はこの数をどうやって突破するのか……。
 迷っていると、思わぬ事が起きた。

「はあああああああああああ!!!」
「ゲギャギャ!!??」

 ローバー先生の後ろの方……森の方のゴブリンが吹き飛んだのだ。

「クトー! 無事!?」
「レイラ様! あまり前に出ないで下さい!」
「レイラ!? アルセラ!?」

 何と、そこにはレイラとアルセラが来てくれていたのだ。

 しかも、戦闘体勢はバッチリで、フル装備だ。

「貴様が行くからどうしてかと思っていたが……。まさかこんなことになっているとはな」
「ローバー先生……どうしてこんなことを……」

 レイラが問うと、ローバー先生は露骨に眉をひそめて吐き捨てる。

「貴様ら教会が回復スキル持ちを囲いまくり、金を取り続けるから以外に何がある。この愚か者共が……。ああ、聖女はスキルが欲しい。殺すなよ」

 ローバー先生はそれだけ言うと、ゴブリン達に任せるようにして、下がる。

「ゲギャギャ!」

 ゴブリン達が全方位から襲いかかってきた。
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