「タコ野郎!」と学園のダンジョンの底に突き落とされた僕のスキルが覚醒し、《クラーケン》の力が使える様に ~突き落としてきた奴は許さない~

土偶の友

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3章

88話 時の神

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「時の……神?」

 ニヤニヤとしたまま僕たちを見下ろすレイラに入った何かに向かって問いかける。

「そうだ。我は時の神××××。貴様らが崇める9つの神の1柱である」

 名前の部分が分からない。
 注意して聞こうとしても、ノイズが走った様に聞き取れなくなる。

 いや、今はそれは後でいい。

「それが……どうしてレイラの中に?」
「何、あちらの世界ばかりでは詰まらんのでな。たまにはこちらの世界で好きかってしたいと思っただけよ」
「レイラから出て行ってもらえないでしょうか?」
「無理だな。我が久々に顕現したのだ。せっかくならこの体を使って好き勝手やってやろうではないか」

 そう言って自分の……いや、レイラの体をあちこち触っている。

「返してくれませんか? その体は僕の、僕たちにとってとても大事な体なんです」

 サナも大事だけれど、レイラも大事な存在だ。
 神が遊ぶと言った時間は一体どれくらいになるのだろうか。

 僕がそう言うと、時の神は眉を寄せる。

「何? この我が顕現けんげんしてやったと言うのに返せだと? 貴様の様な人風情が我に要求する? 身の程を知れ」
「……」

 どうしようか。
 このまま話していても険悪な雰囲気になるだけかもしれない。
 けれど、レイラをこのままにしておくことも出来ない。

 どうするべきなんだろうか。

「じゃあ……貴方の要求は?」
「要求? 決まっておる。手始めに貴様らの全てを献上せよ。【時の停止タイムストップ】」

 奴がそう言った所で、僕たちの全てが止まる。

 いや、意識は続いているから問題ないのだけれど、レイラの体以外の全てが動きを止めていた。

 壁際に揺れていた炎さえも凍り付いたかのように動きを止めている。
 奴はその様子を見て満足したかのように、ゆっくりと僕の方に降りてきた。

「まずは貴様からでよかろう。貴様の寿命。全て頂こうか」

 奴はレイラの姿でそう言って、右手をゆっくりと突き出して来る。
 そして、その手には水色の光が集まり……。

『スキルを使え。【異次元の交錯アナザーフィールド】だ』
「【異次元の交錯アナザーフィールド】!」

 僕は唐突に響いたクラーケンの声に弾かれるようにスキルを発動する。

 すると僕の体がいきなり動くようになり、目の前の右手から避けようと体を横に投げる。

 奴の手から放たれた水色の光は、そのまま真っすぐに伸びていき、そのまま地面に突き刺さった。

 水色の何かがあたった場所は、風化したように消え去って行く。
 まるで、一瞬で時が1000年も過ぎ去ってしまったかのようにだ。

「貴様……なぜこの空間で動ける?」

 奴は僕を見て首を傾げる。

「さぁね! 【闇の牢獄ダークプリズン】!」

 僕はスキルを使って奴を閉じ込めようとするけれど、奴は黒いひつぎには近付いて来ない。

 それよりも、しっかりと警戒しているようだ。

「っち……まだ馴染んでおらんか……」
「馴染んでいない?」
「貴様に言う必要はない。【時のささやきタイムウィスパー】」

 奴から放たれた波の様な物は、僕に向かってゆっくりと近付いていることが感覚として分かった。
 そして、それに触れてはならないことも。

「【墨吐きブラックアウト】!」

 僕は確認の為にすみを吐いて全力で後ろに飛ぶ。
 転がるようにして避けて、墨がどうなったかを見ると、どこにも存在しない。

「何をしたの……?」
「邪魔をするならいらぬ。消してしまおうとしただけのこと。いいから逃げるな。手間であろう」
「殺されるって分かっているのに素直に差し出せないよね」
「我に直々に殺されるのだ。光栄であろう?」
「全然」
「無礼な……人ごときの分際で……」

 勝手な事を言って来るものだ。
 でも、これが神なのかもしれない。

「【時のささやきタイムウィスパー】」

 奴はスキルを再度僕に向けて放った。
 ただし、今度はこの空間を全て消してしまうかのように、広範囲にやっている気がする。

 これに対抗出来るのは……。

「【異次元の交錯アナザーフィールド】!」

 僕がスキルを使うと、時の波は僕のスキルと拮抗し消え去って行く。

 良かった。
 僕の力……いや、クラーケンの力でも通じる様だ。

 ただ、それは奴にとっては不愉快なこと極まりなかったらしい。

「貴様……制限されているとはいえ、我の力に何度も抗うとは……。万死に値する」
「殺されるのに黙って従う訳ないよね」
御託ごたくはいい。【時空の爪クロノス・クロウ】」
「!?」

 僕は再び横に飛ぶ。
 少し前まで僕がいた場所を水色の爪が引き裂いた。

「危ない……」

 僕がいた位置を見ると、そこはドラゴンにでも切り裂かれたのかと言うくらいに亀裂が入っていた。

 このままでは良くない。
 こうやって躱しているだけではいずれ奴の攻撃に当たってしまうかもしれないし、動きを止められているアルセラとジェレの方に向いてしまうかもしれない。
 それは避けたいけれど、今の奴は体はレイラだ。
 傷つけることなんて出来ない。

 レイラを傷つけずに、何とか奴を追い出す方法を考えないといけない。

「【時空の爪クロノス・クロウ】【時空の爪クロノス・・クロウ】【時空の爪クロノス・クロウ】」
「うわ! 【次元の城塞ディメンジョンフォートレス】!」

 ギンギンギンギンギンギンギン!!!

 僕はスキルを使って奴の攻撃を防ぐ。
 奴は僕が避けないように連打をして、圧殺するつもりだったのだ。

 このスキルの強度は桁違いに高い。
 奴は舌打ちをしながら僕をにらみつけてきた。

「貴様など……我が全力であれば……」

 奴はそうぺらぺらと自分の事情を話してくれる。
 先ほどからの話を総合すると、奴はレイラを通して現れたばかりで全力を振るえないのかも知れない。
 というか、闇の神を復活させようとしているギーシュ等は、これほどに大がかりな場所を使っているのだ。
 いくらレイラのスキルだからってそんな簡単に神が顕現けんげん出来る訳はない。
 であれば、きっと何か制限があると考えるべきだ。

 ただ、それで何をあるか考える時間はない。
 奴の攻撃は鋭く、少しでも油断したら切り裂かれてしまう。

 でも、レイラを攻撃して時間を稼ぐことも出来ない。
 どうしたら……。

「どうした? 我に攻撃しない……。この体の持ち主が相当に大事と見える」
「大事だって言ったら出て行ってくれる?」
「何を愚かな事を。我が飽きるまで使ってやるのだ。感謝する以外の意味はない」
「貴様……」
「ククク、そんな闇の感情を見せても我には効かぬよ」
「……」

 奴に言われて、やっとの事で思いだした。
 最近練習していたスキルがあることを。

「レイラを返せ!」

 僕は奴に向かって突っ込んでいく。
 正直このスキルが効くのかは分からない。
 でも、近付いた方が当てられる可能性は高いのだ。
 やるしかない。

「ほう。貴様の方から死にに来るとは、殊勝な事だ。【時空の爪クロノス・クロウ】」
「っ!」

 僕は奴の攻撃を避け、レイラまで後数ⅿという所まで来た。
 そして、スキルを発動する。

「【闇の拘束ダークバインド】!」

 レイラの足元から黒いいばらが現れ、レイラの体に絡みついて行く。

「これは!?」

 奴は、手足を振り払って振りほどこうとするけれど、逃げる事が出来ない。

 僕は、奴を捕らえることに成功した。
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