「タコ野郎!」と学園のダンジョンの底に突き落とされた僕のスキルが覚醒し、《クラーケン》の力が使える様に ~突き落としてきた奴は許さない~

土偶の友

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3章

91話 フェンリルの力

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「【イヌ化:フェンリル】」

 ギーシュの体から白銀の毛が生え、口からは牙が、手からは鋭い爪が伸びる。
 2足歩行する狼、人狼の様な姿になった。
 潰したはずの右手も元通りになってしまっている。

「それは……」
「信じられませんか? 私も貴方と同じ神獣化のスキルを持つ者。だからこそ、時の神のスキルにも干渉出来たですよ」
「干渉……?」

 僕が疑問を口にすると、彼の姿が消える。
 そして、背後から直ぐにそれは聞こえて来た。

「そうですよ」

 ザン!

「ぐぅ!」

 僕は背後から彼の爪で切り裂かれ、思い切り血が吹き出た。
 そのまま床に倒れそうになるのを堪え、何とか振り返る。

 彼は手を握ったり拡げたりして、己の状態を確認している様だった。

「神獣は3つの神からそれぞれ力を持っています。私であれば土と火と時空を。貴方であれば闇と水と次元を。それらの力しか使う事は出来なかったでしょう?」
「それは……」

 そこまで言われてはっと気付く。
 確かに、クラーケンのスキルとして使える物は、その3種類のどれかか、後はタコが持っているスキルしか無かったはずだ。

「私はそれらのスキルを使いこなしてこの組織を立ち上げた……。それも500年も前からです。それを邪魔をされて、私がどれだけ怒っているのか想像出来ますか?」

 ザン!!!

「がぁっ!?」

 彼は今度は正面から爪で切り裂いて来る。
 僕はそれに何とか反応して、触手で防ごうとしたけれど、クラーケンの触手ごと切り裂かれた。

 僕は後ろに下がるけれど、彼はゆっくりと近付いてくる。

「その程度の練度で私に勝とうなんて100年早いですね。消えなさい。【土の断崖アースピラー】」

 彼がスキルを使うと、僕を挟みこむようにして地面が盛り上がり、潰そうとして来る。

「【触手強化テンタクルフェイズ】!」

 僕はそれを回避する時間は無いと見て触手を強化して止める。

 バシィィィン!!!

 クラーケンの力で何とか止める事は出来た。
 でも、このままでは……。

「タコをすり潰すのは簡単ですね。陸に上がったタコなどエサでしかない。【大地の槍ガイアランス】」
「ぐっはぁ!」

 僕は開いている所。
 前と後ろから硬質化した土の槍に貫かれる。

 口からはおびただしい量の血を吐き、触手に込める力が弱まっていくのが分かる。
 いけない。
 このままだと土に潰されてしまう。

 そう思っていると、耳元でジェレの声が聞こえた。

「少し時間を稼ぐ、立て直して」
「ジェレ?」

 彼女からの返答は無く、ギーシュに襲い掛かる。

「【千の投擲サウザントスロー】」
「ほう」

 ヒュカカカカ!!!

 ジェレの投げた投げナイフが何百、何千となってギーシュに襲い掛かる。

 彼も感心したようにジェレの方を見た。

 ジェレが時間を稼いでくれている内に……。
 体を小さくして、槍からまずは抜け出す。
 そして、体が問題なくなった後に。

「【自己再生オートリペア】【触手強化テンタクルフェイズ】」

 スキルで一瞬で傷を回復させ、今まで4本だった触手を8本使って挟み潰そうとしてくる土の壁を破壊した。

「ありがとう! ジェレ!」

 僕は出るとジェレにお礼を言って、状況を確認した。

 ジェレは高速で下がりながらギーシュに投げナイフを何本も放っている。
 ギーシュはまずは邪魔なジェレを潰そうとしているらしい。

 僕の方をチラリと見たけれど、直ぐにジェレに視線を戻していた。
 これだけ隙があるのなら、僕だって考えがある。

「【闇の牢獄ダークプリズン】」
「っく!」

 僕がギーシュの進む先に闇の牢獄を展開する。
 そして、ジェレに決して追いつけないように邪魔をしまくるのだ。

 もしもそこに入ってくれればこちらとしても助かる。

「邪魔を……。【土の断崖アースピラー】!」

 バガァン!!!

 またしても僕を挟みこもうとして来るけれど、それは既に見たという所か、破ったのだ。
 触手を使って土の壁を簡単に破壊する。

 どんなスキルか分かっていれば防ぐことなど問題ない。

「ちっ! 厄介な。後回しにするしかないか」

 彼はそう言ったかと思うと、再び僕の方に向かってくる。

「貴方から先に倒させて頂きましょう」

 彼は腕を大きく振り上げ、僕に向かって叩きつけてくる。

「【爪撃ネイルスラッシュ】」

 彼の爪が巨大になったかのように感じる。
 1本1本の爪が3m程にも巨大化した様に見えるのだ。

 これを受けたら不味い。
 僕はハッキリと感じた。

「【水流防盾アクアシールド】【氷の装甲アイスアーマー】!」

 奴との間に水の盾を出し、自身の触手を凍り付かせて防御力をあげる。
 そうして、彼の爪を待った。

 バギバギバギバギィィィン!!!

「ぐぅ!」

 盾は一瞬にして破壊された。
 ただ、その時に多少の衝撃は吸収してくれたお陰か、【氷の装甲アイスアーマー】は上の方が割れるだけで何とかなった。

 そして、運のいいことに奴の爪は僕の触手と隣り合っている。

 彼が爪を引っ込める前に触手を巻きつけ、そのまま爪をへし折った。

 バギン!

「何という事を!」

 彼は後ろに飛び退り、折れてしまった自分の爪を見る。

「これで20年分くらいは縮まったかな?」
「そうですね……。流石に爪が折られるのなんて……200年ぶり位でしょうか?」
「200年……」
「まぁ、たまにはこれくらいの事があってもいいでしょう。【細胞活性セルパワー】」

 彼がスキルを使うと、折れた爪は直ぐに元通りになってしまう。

「フム。久しぶりに使いましたが悪くありませんね」
「そんな……」

 気合を入れた1撃で、何とかしたと思ったのに回復まで出来るなんて。

「おや。そこまでおかしい事でしょうか? 第一、貴方も回復スキルを使う事は出来るでしょう?」
「そうだけれど……」

 経験値の差もあり、スキルでの差もある。
 僕が彼に勝てる所を探すのは難しいかもしれない。

 そんな僕の苦悩を彼は理解したのか、狼の顔であるのに、笑いかけて来たと思うほどの表情を浮かべる。

「やっと分かって頂けましたか? わかって頂けたのなら直ぐにでも帰ってください。今回だけは見逃してあげましょう」
「……それは出来ないんだよねぇ」

 僕はそう彼に返す。
 絶望的な状況だろう。

 僕と同格のスキル。
 しかし、相手は僕よりもスキルに精通し、こうして対峙している今ですら余裕すら感じる。

 でも、サナの事を諦める事など決して出来ない。
 僕は、サナの為に戦うと決めたのだから。

「次はこっちから行くよ? ギーシュ」
「ええ、どうぞ」

 余裕があるからか笑い、僕にスキルを使わせるとは。

「【始まりの海ビギニング・シー】」

 僕は奴の方が速いというのを覆すべくスキルを使う。

「それは! 待ちなさい!」
「【次元の城塞ディメンジョンフォートレス】」

 ギャリィィィン!!!

 僕は、目の前に次元の砦を築き彼の爪を弾く。
 そして、周囲を海の底に沈める。

「ジェレ。アルセラとレイラをお願い」
「分かった」

 ジェレは僕の言葉の意味を理解すると、アルセラとレイラを連れて来た道を戻って行く。

「さぁ、僕からももっと反撃をさせてもらおうか」

 今まではずっと彼の機動力が問題だったのだ。
 なら、それを奪ってしまえばいい。

 後は……こちらの番だ。
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