転生幼女はお願いしたい~100万年に1人と言われた力で自由気ままな異世界ライフ~

土偶の友

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1巻

1-1




 第1話


「ん……ここは……」

 わたし――元町咲夜もとまちさくやが目を覚まし、起き上がるとそこは森だった。
 周囲には木木木木木木木木木。いたる所に木々が立ち並び、空からは優しい光が降り注いでいる。春の陽気といった感じだ。

「どこ……?」

 何が起きたのか理解できなかった。わたしは人から頼まれた仕事をこなして、それで……。
 頭がぼんやりとしていて、昨日の記憶が出てこない。
 ダメだ。真剣に思い出そう。
 わたしは目を閉じて、集中する。
 昨日は仕事をしていて、定時で帰ろうとしていた時に頼みごとをされたんだった。

『あたし用事があって帰るから、これお願い』
『……分かりました』

 それをなんとか終電間際まぎわに終わらせて、家に帰って……それで……。

「あれ……わたし……どうしゅたんだっけ……ん?」

 なんか今口が回らなかったような……。

「わたしのからだはどうなって……え……」

 わたしは自分の手を見て、幼子おさなごのように小さくかわいらしくなっていることに驚く。
 それから顔や体に手を当てると、自分の体ではないような感覚だった。手に対して頭は大きいし、あんまりなかった胸も平らになっている。でもその代わりに、素肌すはだはぷにぷにしていてとても気持ちいい。
 視線を下ろすと、服は黄色いワンピースに、茶色いローブのようなものを羽織はおっていた。おまけにちょっと無骨なポーチまで肩からさげられている。
 ワンピースは子供が着るようなかわいらしい形だし、流石さすがにこの年になって着るのは無理があるんじゃ……。

「じゃない! っていうかこの状況は……」

 とりあえず立ち上がろうと横に手を置くと、何かモフモフした物に手が当たった。

「ん?」

 そちらの方を見ると、白と黒の何か……小さな動物? が丸くなっているようだった。この小ささは、赤ちゃんかな?
 もしかして、この状況のヒントになったりするのだろうか?

「なんだろう……でも触って大丈夫かな」

 動物の赤ちゃんを触ってしまって大丈夫だろうか。この子に触っているのを、親に見つかってしまったりはしないだろうか。
 そんな不安を覚え、周囲を見回して少し迷う。
 しかし周囲には木しかなく、生き物がいるようには見えない。

「……えい」

 わたしは好奇心に勝てずに、その赤ちゃんに触ってしまった。今のこの状況から目を逸らしたかった訳では決してない。

「わ……さらさらで……モフモフで……気持ちいい……」

 白い動物――多分ネコ科――に触ると、羽毛のように軽く指が沈み込んでいく。柔らかいけれど、それは毛だけでなく、その下の体がしなやかなことも合わさっているからだろう。昔猫カフェに行ったことがあるが、その時触った猫をもっと上品にしたような感じだ。

「あ……これずっと触っていたい……」

 わたしは目の前の白い動物をゆっくりと優しくでる。

「………………この子、起きないのかな」

 わたしの手の中で白い動物はじっとうずくまったままだ。とても温かいので生きてはいると思う。

「って、違う! 現実げんじつ逃避とうひしてる場合じゃない。この状況をなんとかしないと!」
「ウギャァ!」
「え?」

 何の声……? なんだか今だみ声が聞こえた気が……それも目の前の白い動物から。

「もしかして……猫じゃない?」

 わたしの知っている猫はニャーニャーとかわいらしく鳴くイメージしかない。それがこんなだみ声なんて……。
 そんな風にショックを受けていると、その白い動物はもぞもぞしたかと思うと動き出した。
 モフモフは全身を震わせて四つ足で立ち、わたしの方を向く。
 全身真っ白で、背中には一本の黒線が走り、そこから枝分かれするように細い黒線が横に伸びていた。体中にほっそりした黒い筋が模様を描いているが、多すぎず少なすぎず、とてもきれいな割合だ。

「この子は……」
「ウギャァ」

 その姿は体長二十センチメートルほどの、真っ白い虎の赤ちゃんだった。

「虎……?」

 わたしはつぶらなひとみでじっと見つめてくる虎を見つめ返す。
 小首をかしげていて、とても敵意があるようには見えない。
 じっと見つめながらなんだろうと考えていると、わたしとこの子の間に半透明はんとうめいの板が浮かび上がった。


《名前》  未設定
《種族》  白虎びゃっこ(幼体) ???
《年齢》  0
《レベル》 1
《状態》  健康
《体力》  200   《魔力》  200
《力》   200   《器用さ》 50    《素早さ》 300
《スキル》 きん魔法 金運アップ 
《称号》  ??? 


「何これ!?」

 ゲームなどで見たことがあるようなステータスが表示された。
 種族が白虎……ってやっぱり虎なんだ。
 白虎といえば、四神しじんとかにいたっけ。普通の虎ならホワイトタイガーってなるだろうから、やっぱり普通ではないんだろうけど……。
 でもでも、四神の白虎になるには、五百年も生きないといけないみたいな設定があったはずだから流石に違うのかな。
 生前? 小説やらアニメやらマンガが好きで、よくたしなんでいたから、その時の知識が正しければだけど……。

「ウギャァ?」

 白虎が不思議そうな目でわたしを見つめ、何を思ったのかわたしの手を優しくめてくれる。心配してくれているのは伝わってくるけれど、意外と舌がざらざらしていた。

「ありがとう。君の名前は?」
「ウギャァ?」

 ないよ? とでも言いたげな返事をして、なんなら名前をつけてくれてもいいんだよ? むしろつけて? と言っているような目で見上げてくる。

「わたしが名前をつけてもいいの?」
「ウギャァ」

 白虎はうなずくと、両足をそろえるように座りわたしをじっと見る。本当に名前をつけてほしいようだった。

「うーん、虎ってどんなのがいいんだろう……。ネコ科だからタマ……はダメっぽい」

 タマという名を出した瞬間しゅんかん、白虎の表情が絶望したようになった。やめておこう。
 でも、その前に確認することがある。

「君はおす?」
「ウギャァ」
「雄か……なら……」

 なんかかっこいい名前にしてあげたい。
 虎は英語でタイガー? タイ、タイは……魚。イガ、イガ……忍者。

「英語だからってかっこいい訳じゃないか。なら他の言語……」

 ドイツ語とか……だと……ティーガー? かっこいいな。これにするかな? ……ただ、ティーガーという戦車があったはず。別に特別な思いがある訳ではないけれど、戦車の名前をつけるのは違う気がした。じゃあティガー……これもよくある名前かもしれないけど、あまりしっくりこない。
 ならどうしようかな……。
 わたしは悩んで虎の体を見る。
 真っ白な体……英語だとホワイトだけど、ドイツ語だと……ヴァイス! これかっこよくない?

「ねぇ、ヴァイスって名前はどう?」
「ウギャァ!」

 虎はかわいい顔で頷いてくれている。よし、これでいいかな。

「じゃあ君は今日からヴァイスだ!」
「ウギャゥ!」

 わたしがそう宣言をして、虎……ヴァイスが頷くと、わたしとヴァイスの両方を白い光が包み込んだ。

「な、何これ?」

 わたしは驚いて周囲を見回すけれど、光った以外異常が起こっている様子はない。

「なんだったんだろう……まぁ、いいか。とりあえず名前がちゃんとついたか確認しておこう」

 わたしがヴァイスをじっと見つめると、先ほどと同じようにステータスが表示されたので見てみる。


《名前》  ヴァイス
《種族》  白虎(幼体) ???
《年齢》  0
《レベル》 1
《状態》  健康 従魔(主:サクヤ)
《体力》  200   《魔力》  210
《力》   200   《器用さ》 50    《素早さ》 300
《スキル》 金魔法 金運アップ 
《称号》  ???


「ん?」

 ステータスは先ほどと三つほど違っている部分があった。
 一つは名前、これはいい。わたしが名前をつけてあげたのだから。
 次に、魔力が上がっているのは……名前をつけたことで成長したから? 早すぎる気がしないでもない。
 でも、大事なのは最後の一つの、状態らんの従魔。これ……わたしの従魔になっているんだけど……。

「従魔って何?」

 よく分からない。
 相手に名前をつけたら知らない契約書にでもサインをさせられた……みたいな気持ちになってしまった。
 わたしが不安な気持ちになっていると、ヴァイスが思い切り飛びかかってくる。

「ウギャゥ!」
「きゃ! ちょ、ちょっと?」

 ヴァイスはわたしに飛びかかり、とてもうれしそうに、顔を余すところなく舐めてくる。
 最初はざらざらしていてちょっと……と思っていたけれど、これはこれでなんだか嬉しい。とても好かれているという感情が伝わってきて、もっとやってもいいよ? と思ってしまう。
 わたしはなすがままにされながら、これからのことを考えることにした。
 さっきのステータスって、わたしのも見られたりするのだろうか?
 わたしは自分の手をヴァイスに当たらないようにゆっくりと持ち上げて、じっと見つめる。
 すると、今度はわたしのステータスが見えた。


《名前》  サクヤ
《種族》  人間
《年齢》  5
《レベル》 1
《状態》  健康
《体力》  20  《魔力》  ????????????????
《力》   5   《器用さ》 15   《素早さ》 10
《スキル》 創造そうぞう魔法 神聖しんせい魔法 鑑定かんてい 隠蔽いんぺい 言語理解 アイテムボックス ???? ???
《称号》  神のいとし子 ?????


「魔力を『?』にする意味ある!?」

 わたしは今までで一番大きな声を出してしまった。
 それほどまでに、目に映った表示がおかしかったのだ。
 きっとステータスを見られているのは、鑑定というスキルのおかげなんだろう。小説には詳しいからわたしには分かるんだ。
 でも、この魔力量はなんだろう? この桁数けたすうって、一十百千万……兆とかいってない? 他のステータスは一桁とか二桁なのにバグってるでしょ。

「てか五歳? なんで!?」

 どうしてこうなった……と思いながら見ていると、突如とつじょとしてヴァイスがわたしの上から飛び降り、右の方を向いてうなり声をあげた。

「グルルルルルル」
「あ、そういう時は普通の虎っぽい鳴き声なんだ」

 一人のんきにそんなことをつぶやいていると、ヴァイスが唸っている方角の茂みから、何かが飛び出してきた。

「あれは!?」

 茂みから飛び出してきたのは、ゲームで何度も見たことのあるスライムだった。
 水色の半透明はんとうめいの液状の体を持ち、その液体の中には真っ赤なかくみたいな物が浮かんでいる。

「モンスター……戦わないと!」

 でもどうやって? 魔力はあるけれど、わたしは魔力の使い方なんて知らない。
 どうしようかとキョロキョロしていると、ヴァイスが勢いよくスライムに飛びかかった。

「ガルルルル!!!」

 シュパ!
 ヴァイスのつめひらめくと、スライムの核は一瞬のうちに真っ二つに割れて地面に転がった。
 液体の体は地面に吸い込まれていき、うすい皮と核だけが残る。

「すごい……わたし何もしてないや」

 ヴァイスがその真っ赤な核をくわえる。そしてわたしの方に走ってきた。

「ウギャァ!」
「え? わっ!」

 速いなーとぼんやりと見ていたわたしに、ヴァイスが飛びかかってくる。
 わたしを押し倒し、先ほどよりも嬉しそうに目を輝かせて、スライムの核をわたしに見せつけてきた。まるでめてと言わんばかりである。

「ふふ、ありがとう。ヴァイス」

 わたしはヴァイスから受け取った核を適当にポーチに入れる。
 ヴァイスへのお礼の意味半分、モフモフしたい気持ち半分で思いきり撫でまわす。
 ああ……この触り心地最高。一生触っていてもいいかもしれない。

「ウギャゥゥゥ……」

 ヴァイスもわたしが撫でると、とても気持ちよさそうに目を細めている。
 ずっとこんな時間が続けばいいのに、そう思って撫でていたけれど、わたしはふと我に返る。
 少し日が低くなっていたのに気付いたからだ。
 このままだと夜になってしまう。

「こんなことしてる場合じゃないよ! 急いでここから動かないと!」
「ウギャ?」
「なんで? って顔しないで。って、もしかしてここがどこか分かるの?」
「ウギャ」

 ヴァイスは知らないとでも言うように首を横に振った。
 なら、わたしはこれからやるべきことを考えないと。

「まず……ここはどこ。っていうことは置いておく。考えても答えは出てきそうにないし……第一、わたしが五歳になっている理由も分からないし、そもそも日本にスライムとかいないし……」
「ウギャ?」

 そうなの? と首を傾げたので、わたしは自分の考えを整理するためにヴァイスに話す。

「うん。多分……こういう場合……ありえないと思うけど……もしかしたら、小説でよくあった異世界転生……かもしれない。多分だけどね。だけど、本当にそうか分かんないから、まずは人里を目指そうと思うんだけど、いい?」
「ウギャ」

 いいよと言うように頷く。

「ありがとう。それなら急いで行こう。夜になったら動けなくなるから、今のうちに動いておくのがいいと思うんだよね」

 本当はここにいたらだれかが来るとか、誰かが説明してくれるのを待とうかと思っていたけれど、その気配もないし。それにスライムがおそってきたことを考えると、すぐにでも移動した方が安全だろう。
 ここで待っていても、敵が襲ってきた時に、自分は何もできないからだ。
 というか、わたしの他に人っているよね? という不安もあるけれど、とにかくここにいる訳にはいかないのだ。

「でも、こういう時はどっちに行くのがいいんだろう」

 森の中なんて、小学校の遠足で行った時以外行くことなんてなかった。
 川を下っていくといい……という話を聞いたことはあっても、近くに川の音は聞こえない。
 詰んだ。

「……でもこうしていられないよね。とりあえずでもいいから行こう」

 わたしは立ち上がり、目の前の方向に進む。
 ヴァイスもとことこと、わたしの隣を歩いてくれる。
 一匹と一人で歩きながら、周囲を観察していく。
 森の中は見たこともない草花がほこっていた。気温は暖かい春の陽気で、この服でも問題ないくらいだ。
 ただ、子供の歩幅は短いので少し歩きにくい。体力がないから余計にそう感じてしまうのかも。

「魔力を使えたらなんとかできるのかな……というか、そうか。そっちも使えるようにならないと」

 わたしは歩きながら、なんとか魔法を使えるようにならないかと思考をめぐらせる。
 さっきはヴァイスがスライムを倒してくれたけれど、もしかしたらあれ以上に強いモンスターが出てくるかもしれない。そんな時のためになんとか魔法を使えるようにならなければ……。

「でも……創造魔法って何……? めちゃくちゃすごそうではあるけど、スケート初心者にいきなりトリプルアクセル決めろって言っているようなものじゃない?」

 もっと分かりやすい魔法だったらいいのに……とも思わなくもない。
 火魔法だったらファイアーボール、水魔法だったらウォーターボール。そんな一般的っぽそうな魔法だったらやってみないこともないけれど……。

「創造魔法と神聖魔法……。レベル高すぎて、どうやって使ったらいいのか分かんないや」
「ウギャ?」

 どうかしたの? とヴァイスが振り向いてくる。
 そこでわたしは、ヴァイスも魔法を持っていることを思い出した。

「ねぇヴァイス。魔法……ってどうやって使うか分かる?」
「ウギャァ」
「分かんないか……」

 流石に0歳じゃダメだったか。
 でも、このまま行くとまた他の魔物と出会う、いや、襲われてしまうかもしれない。
 出会わないことを祈りつつ、慎重しんちょうに進まないと。


「――なんて思っていた時があったんだけど……この森、何もいないの?」

 またいつ襲われるかとビクビクしながら歩いていたのだけれど、二時間くらい歩いても、一切他の生き物と出会うことはなかった。
 危険がなかったことはいいことだけど、それ以上にまずいかもしれない問題が起きたのだ。

「お腹が……減った!」
「ウギャァ……」

 そう、魔物よりも、人里を目指すよりも、空腹でわたしとヴァイスはピンチになったのである。

「何か食べられる物……。果物もってないし……。空も暗くなってきた……」

 わたしはこれからのことに不安を感じながらヴァイスと一緒に歩く。
 空は赤く、遠くからは夕闇ゆうやみが迫ってきている。おそらくすぐに夜になると思う。
 食べ物を見つけられていない状態で、夜を過ごす場所のことも考えないといけなくなってくる。気温も大分寒くなってきて、この服装ののままではこごえてしまうかもしれない。
 そんな時に、わたし達の前に洞窟どうくつが現れた。高さ三メートル、よこはば三メートルくらいのかなり大きなものだ。
 森の中で寝るか、洞窟の中で寝るか。どっちもどっちな気がしているけれど、洞窟の方がまだ安心ではなかろうか。
 洞窟にはモンスターがいるかいないかの二択だけれど、森の中にいたら多分凍えてしまいそうな気がする。

「ヴァイス。一緒に中に入ろう?」
「ウギャゥ」

 わたしはヴァイスを連れて、洞窟の中に慎重に入る。
 モンスターがいませんように……というわたしの祈りが届いたのか、入り口には何もいなかった。
 洞窟に入ると、入り口辺りには見たこともない黒い文字で何かがびっしりと書かれていた。ちょっと怖いので、急いで奥に入っていく。

「よかった……奥もそこまで深く……って何あれ!?」

 洞窟の中は暖かく、のんびりとできると思っていた。
 しかし、洞窟の奥には真っ黒な格子こうしがあり、その向こうで白銀はくぎんの毛並みをしたおおかみが地面に伏せていた。

「寝てる……のかな」

 わたしは叫んだ後だけれど、狼を起こさないように静かに行動する。

「ヴァイス。来て」

 今すぐにここから逃げなければ。
 白銀の狼の毛並みは素晴らしく、さぞモフモフしていることだろう。是非ぜひとも触ってみたい。
 そんな気持ちもあるけれど、ここは逃げの一手だ。
 狼の大きさは遠巻きに見ると馬ほどのサイズを誇っていて、話で聞いたことのある狼とは一線を画していた。
 もしあのモフモ……狼が危ない存在だったら、どうなってしまうか分からない。ろうのような物も壊されるかもしれないからだ。
 わたしは近付いてきたヴァイスを抱え、洞窟を出ようとする。
 そこに、狼から声をかけられた。

「ほう……かわいい小娘ではないか。どうやってここに入ってきた?」
「ここには誰もいませんよー」
「ふざけているのか? 人がいるかどうかも分からないほどに弱っていると思ったのか?」

 わたしがゆっくりと振り返ると、きれいなエメラルドグリーンの双眸そうぼうと目が合う。
 ダメだ。完璧かんぺきにバレている。
 わたしはこちらを見つめていた狼の方に向き直って口を開く。

「いえ、そういう訳じゃないんですけど……」
「だとしたらなんだ? 俺がフェンリルと知っていてここに来たんじゃないのか?」
「フェンリル!?」
「……なんだ。本当に知らなかったのか?」
「うん……」

 フェンリル。それは北欧ほくおう神話に登場する存在だ。少なくとも、わたしが生きていた前世にはいなかった。
 ここはやっぱり地球じゃないのだろうか。せっかくだから聞いてみよう。

「あの……ここって地球……じゃないの?」
「地球? なんだそれは」
「そっか……」

 やっぱりわたしは異世界転生をしてしまったのだろうか。それじゃあやっぱり、元の世界のわたしは……。
 暗い考えにおちいりそうになったところで、いつの間にか肩に乗っていたヴァイスがわたしのほおを舐めてくる。


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