没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友

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1章

第17話 ロックゴリラの肉

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 ざわざわざわざわ。

「なんでしょう……街に入ってからやたら視線を感じますが……」
「みんながクレアの素晴らしさに気づいたのだろう。やっと気づくとはしょうがない奴らだ」
「そうでしょうか……?」

 わたくしたちは、狩ったロックゴリラの肉をどうするかルーシーさんに相談するために街に来ていた。

 わたくし一人でも持つことはできたけれど、ティエラが身体から生やした串に刺して持ってくれている。
 持っているとは言えないかもしれないけど……。

「ごめん下さいですわ~」

 わたくしたちが手工業ギルドに入ると、ざわわ、と建物の中がざわつく。

 わたくしはそういうことには気にせず、ルーシーさんを見つけた。
 幸いなことに、誰も並んでいなかったのですぐにお話ができた。

「クレアさん……? その……大きな肉の塊は……?」
「これはロックゴリラのお肉ですわ。建物を作るのに必要だったので、少々狩ったのです」
「す、すごいですね……Dランクはある魔物なんですが……」
「ティエラがすごいのですわ」

 わたくしはティエラの頭をよしよし撫でると、ティエラは嬉しそうに手にもっと撫でろと返してくる。

「な、なるほど、それで、そのお肉をどうしてこちらへ?」
「いえ、魔物のお肉は流石に建材にはできないので、どうしようかなとわからず相談に乗って欲しかったのです」
「なるほど……それに関しては、3種類……いえ、4種類ほど選択肢がございます」
「教えてくださいますか?」
「もちろんです」

 ルーシーさんは笑顔で続きを話してくれた。

「まずは冒険者ギルドにその素材を売る。ということになります」
「この素材を?」
「ええ、ロックゴリラの肉はそれなりの肉として売られています。見たところ汚れやどうにもならない傷もないようですので、一番高く買い取ってくれるでしょう」
「なるほど」
「それに、冒険者ギルドで依頼を受けてもっと狩るようにしたら、ランクも上がっていきます」

 それは正直勘弁していただきたい所です。
 冒険者ランクがあがるようなことはしたくないので。
 王都に連れ戻されるのは困る。

「2つ目を伺っても?」
「はい。その場合は、この手工業ギルドに売って頂く、という選択肢です」
「ここでも買い取って下さるんですか?」
「もちろんです。ただ、冒険者ギルドほどお支払いできませんし、ランクが上がるようなことも正直できないです。何かあった際に相談に乗る等できる限りのことはいたしますが、国家を跨ぐ大組織である冒険者ギルドほど手工業ギルドは大きくないので、その点はご理解いただきたいです」
「なるほどですわ」

 ちゃんとこうやってメリットデメリットを話して下さるのはとても嬉しい。

「では3つ目ですが、クレア様ご自身で他のギルドや店に売りに行く選択肢です」
「自分で……ですの?」
「はい。その際はクレア様ご自身で販売の値段交渉を行っていただくほかなく、高く売れるかはクレア様も力量次第になってきます」
「それで4つ目は?」

 わたくしの言葉に、ルーシーさんはニコリと笑って答えてくれる。

「それはクレア様ご自身で食べることです」
「自分で……」
「はい。ロックゴリラの肉は結構美味しいので、適当に焼いて塩を振るだけでも満足できますよ。いっそのこと、店に売ったり持ち込んだりして、調理してもらうということもできます」
「なるほど!」
「私が考えられるのは以上になります」

 ルーシーさんがそう言って下さるので、少しだけ考えてから答える。

「では、1つを残してそれ以外はこちらで売りたいと思いますわ」
「よろしいのですか? 私としては冒険者ギルドがやはりおススメですが……」
「構いませんわ! ルーシーさんにはとてもお世話になっていますから」

 と言いつつ、冒険者ギルドのランクをあげたくない。
 それが本音ではあるけれど、ルーシーさんにお世話になったので、そのお返しもしたい気持ちも当然ある。

「かしこまりました。では、裏へお越しください」
「わかりましたわ」

 わたくしはティエラと共に、ルーシーさんについていく。

 ついて行った先は倉庫で、中には解体するための小中大特大といったサイズの台が置かれていた。

「ここで確認をしてからになります。それでもよろしいですか?」
「問題ありません」
「明日には終わります」
「かしこまりましたわ」

 ティエラが串を操作してロックゴリラの肉を中くらいの机の上に置いていく。

「それでは確かに受け取りました。では、こちらをお持ちください」

 ルーシーさんに渡された木札には数字が書いてあった。

「それは中に魔力が込められていて、照会を行います。お忘れしないようにお願いします」
「はいですわ」
「クレアさん、できるか分かりませんが、出来る限りは値段をあげたいと思いますので、お待ちください」
「ありがとうございます」
「それと、難しいかもしれないのですが、一つ、よろしいですか?」
「なんですの?」
「マジックバックを持つことをおススメします」

 そう言われて、わたくしは首をかしげる。

「なんですの? それは?」
「中の空間が拡張されているカバンです。ロックゴリラのような素材を持ってくる場合、そういったものに入れておいた方が余計なことに巻き込まれずに済みますから」
「なるほど、確かに虫がついたりしたらお肉としてまずいですわね……」
「そういうことではないのですが……」
「そうなんですの? でも、ご丁寧にありがとうございますわ」
「いえ、それでは、ありがとうございます」
「こちらこそ、それでは、ごきげんよう」
「ええ」

 ということで、わたくしは手工業ギルドを後にした。
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