都会を抜け出して地方で始めた農業~頻繁に呼びに来てくれる可愛い子はもしかして脈ありなんですか?~

土偶の友

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エッチ

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 俺は風呂から出て体を拭く。そして急いで居間に戻ると、見ていたアニメは昨日の物に変えられていた。

「出たぞー。それでどうしたんだ?」
「どうしたんだじゃないよ。何のアニメ見てたの?」
「あれは女の子達が学校の廃校になるのを、何とかするために頑張る話だよ」
「かわいい女の子ばっかりだったけど、ああいうのが好きなの?」
「……」

 なんと答えてよいものか。心の中のセリフは100対0でハイに決まっている。満場一致だし反対意見など存在しない。存在したとしても潰している。

 しかし、しかしだ。それを彼女に話してもいいのだろうか? 彼女は昨日と同じようなラフな格好をしている。その彼女に『でゅふふふふ。そ、某、可愛い女の子が出てくるアニメが大好きでござるぅ~』と言った場合はどうか? アウトいや、顔面セーフという可能性も出てくるか?

 流石にアウトな気がしてきた。ならばどうするのか。キリッとした表情で『まぁ、時々見る程度かな?』みたいな感じでやるのはどうだろうか? それでならいいような気がする。よし、それでいこう。

「まぁ、時々見る程度かな」
「ふーん。こういうのが好きなんだ」
「……」

 どっちなんだ。セーフなのか? アウトなのか? 分からん。彼女の反応はもうアニメに向いていて、今の感情がどうなっているのか全く分からん。

「そういうのはあんまり見ないのか?」
「私、アニメは小学校で一回卒業したからねー。最近だよ? また見始めたのは」
「そ、そうなんだ。そう言うアニメでも結構話はしっかりしてるし、キャラの設定とかもあって中々面白いぞ」
「ふーん」

 いかん。年下の少女に女の子しか出てこないアニメを進める男、流石に通報案件では? ちょっと落ち着こう。

 俺は冷蔵庫まで行って、ビールを取り開ける。そして、一気に煽る。

 「ぷはぁ~」

 風呂に入った後のビールを飲むのは最高だな。

「また飲んでる~。いいなー、一口くらい頂戴よ~」

 彼女はいつものうつ伏せから、上半身を起こし首だけでこちらを見ている。

「だーめ。もうちょっと大人になってからな」
「けちー」

 流石に彼女飲ませるのはダメだろう。……。ダメだ。俺は今何を考えた? これを彼女に飲ませて酔った所を……。阿保か。この考え方はダメだ。というか普通にいかんだろ。犯罪だ。でも彼女は飲みたがっているし……。

 俺は頭を振ってその思考を追い出す。そして机の上に置きっぱなしの夕飯が目に入った。

「そうだった。俺まだ飯食ってないんだった」
「だからこれ置きっぱなしだったんだ」

 彼女はそう言って起き上がり、俺の夕飯を眺めている。

「ああ、飯は……冷めちゃってるな。ちょっと温めないと」
「いってらー。っとこのお浸し美味しそう。食べていい?」
「いいぞ」
「それじゃあ頂きまーす」

 彼女はそう言って食べていたが俺はそれどころじゃなかった。

 彼女の胸元がかなり拡がっていて、見えそうで見えないというぎりぎラインをついてきていたのだ。

 そう、見えそうで見えない。このラインが大変重要なのだ。なぜか? 見えたなら流石に目を逸らす。ああ、逸らすさ。流石に彼女の同意なく見ているのは悪いからな。でも見えない。そう見えないのなら問題はないじゃないか。

 見えそうという理由だけで目を逸らすほど子供ではない。ならばその先を探求しに行こうじゃないか。見えるのか、見えないのか。その先に答えがあると信じて。

 その考えは肌色の何かが出てきて遮られる。

 俺はその肌色を追っていくと、彼女の腕に、首に、顔に行きつく。

 彼女は少しだけ眉を寄せて困惑した表情だ。その表情はこちらを睨んでいるような困っているようなそんな表情をうか出ている。彼女の手は胸元や体を隠すようにして置かれていて、物凄く気まずい。

「エッチ」
「すまん」

 俺はそこから逃げ出した。

「あ! 待って!」
「すまーん!」

 俺は走り出し、部屋の外へ飛び出そうとする。

 その時、俺は自分の足で足を引っ掛けて盛大にスッ転ぶ。受け身を取ることも出来ずに顔面から床にぶつかった。

「へぶっ!」
「だ、大丈夫?」
「あ、ああ」

 俺はのそりと何とか起き上がる。鼻が、鼻が潰れた気がするが大丈夫ということを見せようと後ろを向くと、そこには心配そうに俺を見つめる彼女がいた。

「いててて」
「もう、ちゃんと前を見て走らないとダメでしょう?」
「そうだったな。悪かった」
「別にいいんだけど! さ、ご飯食べながら一緒にアニメ見よ?」
「お、おう」

 彼女に手を引かれて居間へと戻る。

「温めるのはこれとこれでいい?」
「あ、ああ、大丈夫だ」

 俺は彼女から目線を逸らしながら何かも分からずに頷く。

「それじゃあちょっとアニメ止めてて」
「わ、わかった」

 彼女がパタパタと走り去っていくのを俺はただ聞いていた。

 俺はボーっとどうしていいか分からずに立ち尽くす。逃げたいような、でももう逃げてしまうのはいけないような、そんなよくわからない気持ち。

 台所の方からは、レンジで温めるジーっという音が響いてくる。その音が響いている間中に、俺は何もすることが出来ずにただ突っ立っていた。

 そしてチンと音がしてパタパタと足音が聞こえる。

「ちょっと何まだ立ってるのよ。早く……ってアニメ止めてないじゃん! もー止めてって言ったのに」

 彼女はそう言ってミトンで持った皿をちゃぶ台の上に置く。

「ほら、ご飯の続きしないと明日持たないよ?」
「うん」
「うんって……もう、しっかりしなさい!」

 バン!

「いて!」

 俺は彼女に背中を思い切り叩かれてつんのめる。危うく転びそうになるが何とか耐えた。

「これで元に戻った?」
「あ、ああ」
「そ、じゃあご飯食べて一緒にアニメ見よ?」
「おう」

 俺は少しだけ正気に戻って、ちゃぶ台の前に座る。そして彼女はいつもの位置に、うつ伏せになってアニメを見始めた。

 俺は無心で箸を動かしてちゃぶ台の上にある物を全て食べてしまう。そして彼女を見ないようにアニメを見続けるが、内容が一切頭に入ってこない。

 そんな状態がずっと続き、アニメの再生ボタンが止まる。

「ん?」
「そろそろ帰るね。明日学校だし、今週の日曜日には映画に行けると思うからよろしくね」
「あ、ああ」
「それじゃあお休み!」
「お休み」

 彼女はそのままパタパタと走り去ってしまった。

 俺はその晩悶々とし続けた。
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