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次の日

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 次の日も同様、早朝に目が覚める。最初の頃は毎日目覚ましで重い体を起こしていたが、今では自然に目が覚めるようになっていた。

 体も大して重くはないが、昨日は少し寝るのが遅かったので、ちょっと頭が寝ぼけているようだ。いつもならスパっと起きられるはずなんだがな。

 それでも起きないことには始まらないので、起き上がって着替えたり、朝食を軽く取ったりして準備を始める。

「はぁーいっちょやりますか!」

 一言気合を入れて俺は農作業を始める。

 それから何時間か経ってから今日は祝日の為か、彼女が呼びに来てくれる。

「おーい! そろそろ9時のおやつだよー!」
「分かったー! 今行く!ー!」

 俺がそう彼女に叫び返すと彼女は手を振って返してくれる。そして彼女は家に祖母を連れに行ったようだ。

 俺は昨日と同じように準備をする。いつものように菓子を持って参加した。

「そう言えば誰か好きなキャラはいるのか?」
「ん? 何の話?」
「昨日のアニメの話しだよ」

 俺は彼女に昨日のアニメについて話しかける。いつもの様に言っていると自然と席が決まってきて、そしてよくしゃべるのは大体彼女だ。

「えー好きなキャラかー。まだ見始めたばっかりだからそこまではないかな」
「そうか、大丈夫だと思うが早く見てくれよ。その内映画もやるらしいからな」
「え? そうなの?」
「ああ、それもテレビの続編だからな。それには間に合わせないと」
「そうなんだ、早めに見ておかないと!」
「ああ、それで映画で思い出したんだが、今、前一緒に見たアニメの映画もやってるらしくてさ。今度行くんだけど行くか?」
「え? いいの?」
「ああ、この前好きって言ってたしさ。俺も丁度見たいなーって思ってたから」
「やったー。あれ楽しみにしてたんだよね。そろそろ夏休みだから、それに入ってからでもいい?」
「ああ、勿論だ。でも俺も毎日の手入れがあるから昼からになるけどいいか?」
「それは仕方ないよ。約束だからね?」
「分かってるって」

 その日、俺は心の中でガッツポーズを50回くらいしていた。

(しゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃ)

 それから軽く菓子とかお茶を飲んで別れる。

 また農作業に取り掛かるのだが、正直に言ってそこまで手につかなかった。

 いつもならクワを握れば鬼神の一撃が毎回振り下ろされ、トラクターに乗ればプロドライバーも真っ青なドライブテクを披露するはずなのだが。今日は一般人が振るったクワと一般人が握ったハンドル並みだった。

 いつもより時間をかけて帰ると家は普通に真っ暗だった。これがいつもの日常、いつもの生活だ。それでも体に感じる疲労感は得も言えぬものがあって嫌いではない。それどころか素晴らしいとすら感じていた。

 俺はいつものようにまずは風呂の準備だ。風呂を丁寧に洗い湯を張る準備をする。

 そして夕飯の準備だ。といっても炊いてあった米はあるので、適当に一品作って終わりだ。流石に毎日自炊するほどの体力は残っていないし、仮に作っても一人分だとそこまでの量を食べきれない。だから最近は冷凍食品をチンしたり、お浸し等を作っておいてそれを食べる事にしている。それであれば日持ちがするから大分いい。

 そしてそれを食べながら今期のアニメを見る。最近は定額で色んなアニメが見放題のサービスがかなり出来つつある。それ一つに入っていればアニメに困ることはほとんどないといっていい。

 アニメを見つつ飯を食い始めたころに風呂も湧きあがったようだ。よし、食事はこのままにして先に風呂に入るか。

 俺は大の風呂好きだ。朝の準備に風呂に入ることすらある。流石に朝の仕事量が多い時は毎日入れないが、時々は頑張って時間を作って入っていた。

 という訳で風呂に入る。

「はぁ~もういっそのこと、着ているだけで風呂に入っていられる気分になる服とかあればいいのにな」

 誰か作ってくれないものだろうか。

 俺は風呂に入って全身で湯を味わう。そしてさっきテンションの高いアニメを見ていたこともあり、ちょっと気分が乗ってくる。

 俺は湯から上がってスマホを、風呂場にある防水のスピーカーと連動させた。

「♪~~♪♪~♪」

 俺は鼻歌を歌いながら風呂を満喫する。最高だ。毎日のこれがあるから俺は汗を流す仕事が止められない、といっても過言じゃないかもしれない。

 昔の狭いアパートの一室で風呂に入っているのかも分からないような狭い浴槽。1畳もないような浴槽に等入っていられるわけがあるか? いや、ない。そんな風呂に入れなかった。

 だからかもしれない。その頃はかなり元気が無くなっていて、周囲の人や、大学時代の友達にもかなり心配されていた。それでも仕事だから、辞めるのは会社に悪いからと続けていたが、そんな身を犠牲にした行動は続かなかった。

 今にして思えばそれもまた良かったような気もする。そのおかげでこうやって毎日最高の風呂に入りながら生活が出来るのだから。

「何時まで風呂に入ってるのー!?」

 一人思いにふけっていたら脱衣所の外からだろうか。彼女の声が聞こえる。

「うお!? ど、どどど、どうした!?」
「どうした? じゃないよ! 何時まで入ってるの? 心配になって来ちゃったじゃない!」
「ええ? そんなに長いこと入ってたか!?」
「そうだよ! 30分は超えてるよ!」
「それくらい普通だよ!」
「そんな……家じゃ一人20分までって決まってるのに!」
「なんだよ、そのルールは!」
「そう言うのがないと、皆長風呂になっちゃうんだって!」
「確かにその通りかもな!」
「ていうことだからサッサと出てきて!」
「よくわからんが分かった!」

 俺も彼女の家のルールに従わなければならないのは何でだろうと思うが、それでも彼女が待っているなら出ていくべきだろう。わざわざ来てくれたのに、家主が風呂に入っているってのはな。

 ザバァ。

 俺は風呂から出て体を拭く。そして急いで今に戻ると見ていたアニメは昨日の物に変えられていた。
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