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黄金戦争の章
第一次黄金戦争・最高位の騎士
しおりを挟むスサノオ軍の猛攻によって、蓮也軍は前線が突破された。
後方部隊は魔法系部隊のため、守備は殆どできない。魔法による遠隔攻撃は前方にディフェンダーの壁があってこそ可能となるためだ。
スサノオ軍が魔法部隊に雪崩れ込む。
こうなると組織だった抵抗はほぼ不可能となっていた。
そこにロータジア軍・魔法部隊隊長のエルナが立ちはだかる。
魔道士エルナの個の力によって本陣を守ろうとする。
既に地面には魔法陣が描かれており、遠隔魔法の準備が出来ている。
エルナ
「よくもアルベルトをやってくれたね」
スサノオ
「女か、そこをどけ。どかぬと女と言えども容赦はせんぞ」
エルナ
「女と思ってなめてると痛い目見るよ!」
「阿吽(オーム) 天雷 凄破波(スヴァーハー)」
「魔法部隊は既に魔法を充電済みだよ!」
「敵の前線の鼻先に向かい、一斉雷電魔法攻撃を開始する!」
暗雲が立ち込め雷鳴が轟き、スサノオ軍に落雷が襲う。
兵士と馬は動揺し、落雷に打たれたものは感電し、気絶するもの、絶命するものもいる。
するとスサノオは下馬し、矛を天高く掲げる。
スサノオ
「天の全ての雷(いかずち)たちよ、我が矛に来れり」
スサノオの矛を目掛けて全てのサンダーボルトが打ち込まれる。
そして、その矛を大地に突き立てる。すると、全ての電気は大地へと流れ抜けていく。
スサノオの全身からは焼け焦げた煙や湯気が立ち込めるが、何事もなく歩き出し、馬に再び跨がる。
エルナ
「あの男は無敵なのか・・・!」
スサノオ
「雷の脅威は消えた。今だ、全軍突撃せよ!」
スサノオの号令でスサノオ騎馬軍団の一斉攻撃が再び開始される。
魔法部隊には魔法充電の時間が必要であることと、それなりの距離が必要なため、この時、部隊長エルナも魔法兵士たちも壊滅の覚悟をした。
その時、スサノオ軍の兵士が一瞬で倒されていく。
ロータジア国随一と言われる白金騎士ゼイソンと、彼が率いる少数精鋭部隊・蓮薔薇騎士団である。蓮薔薇騎士団は、先王の近衛部隊であり、それを一時的にゼイソンが引継ぎ、現在は蓮也の近衛騎士団となっていたが、老将であるゼイソンを蓮也心配し、その半数をゼイソンにつけたのである。
ゼイソン
「エルナ殿、救援、遅れて申し訳ござらぬ!」
エルナ
「ゼイソン様・・・!」
再び、襲いかかるスサノオ軍に対し、老齢を感じさせない驚異的な太刀捌きによって一瞬で数名を斬る。そして、ゼイソンの精鋭部隊・蓮薔薇騎士団がスサノオ部隊とロータジア魔法部隊の間に割って入る。
スサノオ
「そのような少数では我が軍の炎でエンチャントされた騎馬突撃は止まらぬぞ!」
スサノオの言うように、ゼイソンと蓮薔薇騎士団と言えども少数のため、突破されるのは時間の問題である。しかし、ゼイソンの狙いは、呪文を唱えるための間をつくることであった。
ゼイソン
「阿吽(オーム) 氷結壁 素破波(スヴァーハー)!」
強力な魔法であればあるほど、魔法の発動に時間がかかる。その時間をゼイソンは正確に把握し、部隊を率いている。
ゼイソンが呪文を唱えると、やがて巨大な氷の壁が出現する。
アイスウォールは、スサノオ軍の炎のエンチャントに対抗するための防御魔法である。
それにより、相手の攻撃に対して、更に時間稼ぎが可能となる。
「魔法部隊よ、前方のアイスウォールに向かい、更にアイスウォールを張れ!」
ゼイソンの指示で一斉に魔法部隊から氷の盾、アイスウォールが張られる。それによって相手の攻撃が一時的に緩和する。
ゼイソンの考えは、守備部隊の再編である。そのための時間稼ぎ戦術である。
スサノオ
「なんだ、あの老人は?剣の腕があり、魔法も使うというか」
ナムチ
「わかりません。しかし、かなりの実力者のようですね」
「かの老人のベルーフは恐らくウィザードナイト。そのベルーフに就くには、かなりの経験と鍛錬がいると聞きます」
スサノオ
「ウィザードナイトか。面白い」
ゼイソンが地面に剣を突き立て呪文を唱える。
突き立てた剣は冷気を発し、地面は氷結する。
そして、氷の魔法陣が出現する。
ゼイソン
「氷雪の精霊たちよ、我に力を与えたまえ」
あたり一面に雪が舞い降りた。
ゼイソン
「・・・エンチャント解除!」
「超氷雪魔法・雪月花!」
白銀の雪が穏やかな光を放ちながら天から舞い降りる。
そして、スサノオ軍のエンチャントされた炎が消えて行く。スサノオ軍からは響めきが起こる。そして、スサノオ軍は、その冷気によって身動きが取りにくくなる。その刹那、ゼイソンは一瞬で数名を斬る。
その太刀筋は熟練を極め、相手を苦しませずに瞬殺する。
それを見てスサノオが前に出る。
スサノオ
「老人よ、何者だ。剣も魔法もなかなかの腕前だ。只者ではないはずだ」
ゼイソン
「ほっほっほ」
「ただのジジイでございます」
「それより、この暑い夏に雪とは風流ですじゃろ?」
「お気に召しましたかのぅ?」
スサノオ
「ただのジジイとは興醒めだ。そして炎と風を好む我に雪見などと言う趣味はない」
スサノオの八岐の蛇矛がうねりをあげて繰り出される。その連続攻撃をゼイソンは全てよける。
ゼイソン
「これこれ、年寄りは労わるもんですぞぃ」
(これはたまげたわい。このような者がいるとは。このような危険な男と若君とは戦わせられぬ)
「魔法部隊よ、敵の騎馬隊の足下を狙い氷結せよ」
スサノオの馬の足を氷結する。
スサノオ
「おのれ!老人よ、我と一騎討ちせよ!」
ゼイソン
「半隠居老人の身故、丁重にお断り致す」
「氷雪魔法・永久氷結!!」
機動力を奪われたスサノオはゼイソンの氷結魔法をかわすことができない。
スサノオの身体を氷結し、スサノオは氷の柱と化す。
ゼイソン
「魔法部隊よ、前方の氷柱に向い氷結魔法を集中せよ」
魔法部隊が氷柱になったスサノオに、更に氷結魔法を集中させる。すると、その氷柱は更に巨大なものとなる。
スセリ
「魔法部隊よ、すぐに火炎魔法にてスサノオ様をお救いするのです!」
その氷柱をスセリ部隊が火炎魔法で溶かそうとするが、それが全く効かない。
ゼイソン
「そう簡単にこの永久氷結は溶けぬぞぃ」
「諦めて軍をお退きなされ。そうすれば、魔法は解いてやろう」
その時、氷の中で真っ赤にうごめく光が確認される。
氷柱は真っ二つに割れ、炎の闘気に満ちたスサノオが現れる。
ゼイソン
「お主は純粋な戦士型ではないのか?」
スサノオ
「我は生まれついての戦士型だ。よって魔法などというこざかしいものは使わぬ。これは魔法ではない。これは我が一族から伝わる炎の闘気だ」
ゼイソン
「通常、魔法は精神エネルギーを変換するのであるが、身体エネルギーによるものと言うのか」
「先天的に身体能力に恵まれた者が更に鍛錬を重ねると、類似的な魔法現象が起こると聞いたことがある」
「これが物理魔法・・・!!」
「このわしが生きている間に目にすることがあるとは」
スサノオの筋肉は盛り上がり、血管は浮き出て、鬼の形相となり、闘気が立ち昇る。
一時的に増血が骨髄増血から腸増血となり、増血機能が解放される。血管は最大に拡張され、筋肉に大量のエネルギーが供給される。身体は真っ赤に燃え上がり、肉眼でも見えるような炎の闘気となるのである。
スサノオ
「老人よ、冥土の土産にいいものを見せてやろう」
スサノオが草薙の剣を水平に薙ぎ払う。
凄まじい勢いで高速のカマイタチが飛んでくる。そして、空気の摩擦熱で、烈火の如く燃えている。
ゼイソン
「まずい!」
「二重アイスウォール!」
氷の壁が二重に出現し、烈火のカマイタチを防ごうとする。
しかし、その二枚の氷の盾を烈火風は貫通し、貫通した烈火風をゼイソンはギリギリでかわす。
ゼイソン
「これは風と火の類似魔法現象。これも物理魔法というのか・・・」
このようにしている間に蓮也・モローは防御陣を立て直す。ヒーリングによってディフェンダー部隊長アルベルトの傷も半分は回復し、なんとか戦線に復帰した。この脅威の回復力もアルベルトの人間離れした強さである。
ゼイソン
「これにて御免!」
防御陣の立て直しを確認するとゼイソンは本陣へと退いたのであった。
ナムチ
「スサノオ様を本気にさせるとは、彼方にも強い将がいらっしゃいますね」
スサノオ
「ああ、久しぶりに血が騒ぐ」
ロータジア軍の防御陣が再び整い機能することで、戦線は再び膠着状態となるのであった。
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