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黄金戦争の章
アルタイルの海賊討伐
しおりを挟むロータジア三将星の独り、迅雷の神弓騎士アルタイル。
彼に射抜けぬ的(まと)はなしと言われる弓の天才騎士であり、人々から「神弓」と言われる。また、その騎馬軍団の機動力の速さは迅雷の如くとされた。
黄金戦争の前、アルタイルは海賊の反乱の鎮圧のため、王命を受け出陣していた。
そこへ、ロータジア王国にアルトドール軍とスサノオが侵攻するという急報を部下のリベルタスから知らされる。
アルタイル
「何?王都が攻撃を受けているだと?デネブ将軍が第一砦を守っているはずだが、あの神槍デネブが敵に敗れたというのか?」
リベルタス
「そのデネブ様も反乱の鎮圧のため遠征しておられ不在とのこと!」
アルタイル
「なんだと?舞也様もいらっしゃる、そして遠くの地だが蓮也様も駆けつけられるはずだが」
「取り敢えず、ここの反乱をすぐに平定する」
(それにしても最強の傭兵・スサノオがアルトドールに味方するとは。これはマズいことになった。とにかく、すぐにここを平定せねば・・・)
海賊たちは街を荒らそうとしていたが、街も自衛団によってかろうじて防衛していた。そのため、海賊集団は街の外に陣を置いていた。そして、アルタイル軍が到着すると、すぐ様襲いかかって来た。
最初の戦闘は両軍、入り乱れ、やや混乱気味に開始されたが、アルタイルの指揮によってアルタイル軍は適正距離と陣形が整い、アルタイル軍が優勢となった。
そのアルタイル軍の強さに海賊軍は陣を数里引いて防御陣を張った。
アルタイル
「全体的な力はこちらの方が上だが、防御陣を張られては、流石に時間が取られる。こうしている間にも、アルトドール軍の侵攻は早まる。どうれば・・・」
アルタイルは少し焦っていたが、気持ちを落ち着け、目を閉じた。
すると師の声が思い出される。
アルタイル
(我が師・研鸞はこうおっしゃった。敵を射るのではない、敵の心を射よ、と)
(・・・師よ、今、その教えの通り、敵の心を射抜いてみせます)
しばらくして、目を開けると、アルタイルは明鏡止水の心境となっていた。
そして、部下のリベルタスを呼び寄せる。
アルタイル
「リベルタス、海賊のリーダーを特定せよ」
リベルタス
「かしこまりました」
海賊集団のリーダーの名が特定された。
名はバンドリー、その位置と容姿が特定された。
アルタイル
「敵に文書を送れ。これは正規の戦いではない故、使者を送る必要はない。矢文で十分だ」
リベルタス
「かしこまりました」
アルタイル
「そして、今から全軍待機」
リベルタス
「待機ですと?相手を急いで壊滅させなくてよいのですか?」
アルタイル
「まあ、見ておれ」
リベルタスは怪訝な顔をしつつ、アルタイルの文書を矢文で送った。
海賊軍に手紙が届く。
バンドリー
「何?矢文だと?読み上げよ!」
その文書に書いてある内容を見てバンドリーは怒る。
バンドリー
「そのような脅しで、この海賊・バンドリー様が恐れるとでも思っているのか」
「陣は退かぬ!」
一方、アルタイル軍では待機が続いていたが、総大将・アルタイルのみが動き出す。
一瞬、兵士から響めきが起こるが、兵士たちは待機を続ける。海賊軍も防御態勢を決め込んでいるため、一切動こうとしない。アルトドール帝国による海賊軍への依頼は、ロータジア軍の数日の足止めでよかったからである。
総大将・アルタイルがアルタイル軍の右翼先頭に立つ。そして、その右翼側か左翼側へと駆け抜ける。
手に持つ弓は、師から受け継いだ雷属性の弓『迅雷鸞(じんらいらん)』である。
アルタイルは胸の中央のエネルギーポイント・中丹田に集中し、弓を強く引く。
鉄の矢には、弓から電気が充電される※。
その電気の迸りは、はたからでも見える程である。
アルタイル
「師を我に力を与えたまえ!」
「一射目、参る!」
「聖中心迅雷射!」
蓄電された雷の矢が一気に放たれる。
そして、電光を散らしながら、敵陣中央へと一直線で突き抜ける。
すると、海賊軍から呻き声が上がる。
海賊軍の大将・バンドリーの声である。
バンドリーの左肩の鎧が粉砕され、肩に矢が突き刺さる。そして、バンドリーは、その矢の雷に感電し、動くことができない。
アルタイル
「手応えあり」
「次、二射目、参る!」
今度は、アルタイルは左翼側から右翼側へと横断し、同じように雷の射撃を行う。すると、今度はバンドリーの右肩の鎧を破壊し、突き刺さる。
アルタイルがバンドリーに送った手紙には、このように書いてあった。
“敵将に次ぐ、速やかに撤退されたし。さもなければ、まず貴軍大将の左肩を射抜く。次に右肩を射抜く。其の後は数刻程、待つ。しかし、それでも撤退せぬようであるならば、最後は心臓を寸分違わず射抜くであろう。もし、撤退するのであれば、我が軍はこれ以上貴軍に手を出すことはないことをここに約束する
ロータジア軍射撃部隊長・アルタイル”
その内容をバンドリーは思い出し、恐れ慄いた。そして、自身の心臓が射抜かれることを理解した。
以前、彼は神弓・アルタイルの神業の噂は聞いていたが、それが噂ではなく現実であることを身を以て知ったのである。
バンドリー
(噂には聞いていたが、これほどまでに正確に矢を射る者がいるとは・・・)
(俺は神というものは信じぬ性分だが、これは神業としか言いようがない・・・)
バンドリーは全身、痺れて動けないため、その痺れが解けるまで、少し時間がかかったが、しばらくすると撤退することにした。そして、アルタイルは、約束通り、追撃はせず、その撤退を見届けた。
部下のリベルタスを街の防衛隊として残し、アルタイル自身はロータジア城へと向かうのであった。
師の教えを思い出し、敵の心を射たアルタイルは、大幅に時間を短縮し、アルトドール軍の戦略の一部を崩すのである。
このように、第一次黄金戦争の裏舞台には、迅雷の神弓・アルタイルの活躍があった。
※コストの関係で、矢は通常、シャフトは木製であり、矢尻のみ鉄である。アルタイルの迅雷射は迅雷をエンチャントするが、鉄は熱に強く伝導率が高い。
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