幻想神統記ロータジア(パラレルストーリーズ)

静風

文字の大きさ
14 / 38
成長の章

ゼイソンの魔法教室・偏差と治療

しおりを挟む


孤児から王子となった蓮也は、ロータジア城でウィザードナイトの老将ゼイソンから魔法の教練を受けていたが、ある日のこと。



蓮也
「爺、身体のあちらこちらが痛いんだが」
ゼイソン
「それは偏差(へんさ)というものです」
蓮也
「偏差?」
ゼイソン
「魔法はエネルギーを身体に巡らせます。その時に、エネルギーの少ないところ、多いところができてしまいます。そのエネルギーの偏りが偏差ですじゃ」
蓮也
「じゃあ、それを治してくれ」

この偏差を防ぐために、収功、意守、十二経絡にエネルギーを巡らすことや任脈・督脈に巡らす小周天を行うのであるが、以前、ゼイソンは蓮也にこれを指導した。しかし、蓮也は興味がないのか居眠りをしだした。そこでゼイソンは魔法の体系的な指導は、この子には向かないと思い、興味を引くような教育法に方針転換したのである。

ゼイソン
「最初に言った意守(いしゅ)を行ってくだされ」
蓮也
「そんなこと言ったか?覚えてないぞ」
ゼイソン
「若は頭部にエネルギーが上がりやすいので、それを常に下げておいた方がよいですじゃ」
「臍から指四本分くらいの場所に丹田と言う場所がありまする。そこに意識を持っていくのですじゃ」
蓮也
「お、下っ腹がなんとなく熱くなったぞ」
ゼイソン
「それが陽気ですじゃ。それを温養していなさればよい」
蓮也
「わかった」

通常の場合、偏差が起こらないように、最初にこうしたことを教えるのであるが、それを教えても蓮也は全く興味を示さなかった。そこで、何か問題が起こったら、それを教えるという実践的な指導に切り替えた。痛い目を見て困ってみなければわからない、ということである。

後年、蓮也は弟子のプロキオンなどを指導ことがあったが、蓮也の指導法も、このゼイソンの実践体験型の教え方であったと言う。


そして、しばらく日にちが経つと、また別の問題が起こる。

蓮也
「魔法を使う時に身体が痛いぞ。爺、どうにかしてくれ」
ゼイソン
「経絡のどこかに詰まりがありまする」
蓮也
「どうすればよい?」

ゼイソンはアジュナーチャクラで蓮也の身体をエネルギースキャンした。

ゼイソン
「肺経や心包経の途中でエネルギーが阻害されているポイントがあります。そこを特に意識して、エネルギーを流す必要がありまする」
蓮也
「わかった、やってみる」

ゼイソンは、最初、十二経絡の全てを説明したが、蓮也は全く覚える気がなかった。そのため、このように必要な時に必要なだけの知識を与えるようにした。

蓮也
「爺から教えてもらった時は身体が楽になるが、また、すぐに調子が悪くなる。どうしたらいい?」
ゼイソン
「それは、若の魔法能力が強くなっているからです。魔力が強くなったり、高級魔法を行っていくと、身体への負担も大きくなりまする。ですから、更に偏差に気をつけなければなりませぬ」
蓮也
「今度はどうすればいいか早く診てくれ。とても痛いぞ」
ゼイソン
「そうですな、任脈・督脈に問題があります。小周天を行いましょう。呼吸と共に、丹田の陽気を会陰、仙骨、背骨、頭頂部の百会に上げます。そして、呼吸と共に、元の丹田の位置へと納めて、もう一度、陽気を温養します」
蓮也
「今度のは難しそうだな。まあ、やってみる」

と言って、その日は終わった。
今度は、蓮也は身体を引きずって来た。

蓮也
「昨日教えてもらったエンチャントから放つ魔法は凄かったが、あれから練習しまくって、朝起きたら身体が動かないぞ。爺、なんとかしてくれ」
ゼイソン
「あれからまた練習なさったのですか?この技は大人でも習得が難しく、負担のかかるものなので、回数を制限するように言いましたですじゃ」
蓮也
「そんなこと覚えてないぞ」
ゼイソン
「困ったものですな、それでは若の身体が持ちませぬ。あと、夜の睡眠時間は大切です。一つは魔力と身体の回復です。もう一つは、魔力は潜在意識が関係しますので、昼間に魔法の練習をしたら、寝るのも練習だと思ってくだされ」
蓮也
「わかった、覚えておくぞ」
ゼイソン
「それにしても偏差が大きくなりすぎておる。ワシもヒーリングは多少はできるが、専門ではないので、王国のヒーラーに診てもらうようにしましょう」

蓮也は王立治療院のヒーラー課を訪ねた。

ゼイソン
「第二王子の治療である。しかるべきヒーラーをすぐにつけよ」
蓮也
(なんか爺、やたら偉そうだな)

元元帥が第二王子を連れてきたため、ヒーラー課では最高の治療を提供しなければいけなかった。そこで担当になったのがマリアンヌ・バルゴーである。バルゴーは自分の名を名乗り、一礼した。この時、バルゴーは15歳であった。髪は長く、色白で、容姿は美しかった。

ゼイソン
(あれま、こんな若い娘さんだが大丈夫じゃろか)
蓮也
(このねーちゃん、すげー綺麗だなぁ)
バルゴー
「王子様、どうされました?」
蓮也
「身体全体が痛いし動きにくいぞ」
バルゴー
「それではあちらに寝てください」

蓮也はベッドに寝ると早速、治療が始まる。エネルギースキャンし、チャクラや経絡の異常を一瞬で整える。

バルゴー
「もう起き上がっても大丈夫です」
蓮也
「あれ、痛くないぞ」
バルゴー
「ここでは決まりとしてエーテルレベルの治療※しかできませんが、また偏差が起こればいつでもいらっしゃってください」
ゼイソン
(若いのに素晴らしい才能の持ち主じゃ・・・)

こうしたことから、数ヶ月後、ゼイソンの推挙でバルゴーはヒーラー部隊へと配属されることとなる。そしてバルゴーはヒーラー部隊長、神聖将軍にまで登っていくのであるが、これは別の話である。ちなみに、ヒーラーは貴族階級がヒーラー学校に入り、ヒーラー部隊や王立治療院に入るというのが一般的である。平民は先天的に才能あるものが王立治療院に入り、そこから優秀な者がヒーラー部隊へと選抜されるという仕組みである。バルゴーは先天的にヒーラーの才能を持っており、平民から王立治療院へと入っている。

バルゴー
「王子様、今日はどうされました?」
蓮也
「ヒーリングをしてくれ」
バルゴー
「見たところ、どこも悪くありませんよ」
蓮也
「そうか?」

偏差が起こった時に蓮也は王立治療院でバルゴーのヒーリングを受けたが、偏差がない時でも行くことがあった。まだ幼い蓮也には、孤児院のセシルや義理の母との別れが寂しかったのかもしれない。感情を表に出さないが、そうしたことが行動となって現れたのだろう。

※物質レベルの治療は医者が担当する。エーテルレベル以上はヒーラーが担当する。戦争で傷を負った場合、これらのレベルが多いため、王立治療院では、戦争のための治療が行われている。アストラルレベルの治療は、呪いなど上位魔法の状態変化になるが、そのような場合は殆どないので、効率性を求めた場合、物質体・エーテル体のみの治療となる。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

処理中です...