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成長の章
ゼイソンの魔法教室・偏差と治療
しおりを挟む孤児から王子となった蓮也は、ロータジア城でウィザードナイトの老将ゼイソンから魔法の教練を受けていたが、ある日のこと。
蓮也
「爺、身体のあちらこちらが痛いんだが」
ゼイソン
「それは偏差(へんさ)というものです」
蓮也
「偏差?」
ゼイソン
「魔法はエネルギーを身体に巡らせます。その時に、エネルギーの少ないところ、多いところができてしまいます。そのエネルギーの偏りが偏差ですじゃ」
蓮也
「じゃあ、それを治してくれ」
この偏差を防ぐために、収功、意守、十二経絡にエネルギーを巡らすことや任脈・督脈に巡らす小周天を行うのであるが、以前、ゼイソンは蓮也にこれを指導した。しかし、蓮也は興味がないのか居眠りをしだした。そこでゼイソンは魔法の体系的な指導は、この子には向かないと思い、興味を引くような教育法に方針転換したのである。
ゼイソン
「最初に言った意守(いしゅ)を行ってくだされ」
蓮也
「そんなこと言ったか?覚えてないぞ」
ゼイソン
「若は頭部にエネルギーが上がりやすいので、それを常に下げておいた方がよいですじゃ」
「臍から指四本分くらいの場所に丹田と言う場所がありまする。そこに意識を持っていくのですじゃ」
蓮也
「お、下っ腹がなんとなく熱くなったぞ」
ゼイソン
「それが陽気ですじゃ。それを温養していなさればよい」
蓮也
「わかった」
通常の場合、偏差が起こらないように、最初にこうしたことを教えるのであるが、それを教えても蓮也は全く興味を示さなかった。そこで、何か問題が起こったら、それを教えるという実践的な指導に切り替えた。痛い目を見て困ってみなければわからない、ということである。
後年、蓮也は弟子のプロキオンなどを指導ことがあったが、蓮也の指導法も、このゼイソンの実践体験型の教え方であったと言う。
そして、しばらく日にちが経つと、また別の問題が起こる。
蓮也
「魔法を使う時に身体が痛いぞ。爺、どうにかしてくれ」
ゼイソン
「経絡のどこかに詰まりがありまする」
蓮也
「どうすればよい?」
ゼイソンはアジュナーチャクラで蓮也の身体をエネルギースキャンした。
ゼイソン
「肺経や心包経の途中でエネルギーが阻害されているポイントがあります。そこを特に意識して、エネルギーを流す必要がありまする」
蓮也
「わかった、やってみる」
ゼイソンは、最初、十二経絡の全てを説明したが、蓮也は全く覚える気がなかった。そのため、このように必要な時に必要なだけの知識を与えるようにした。
蓮也
「爺から教えてもらった時は身体が楽になるが、また、すぐに調子が悪くなる。どうしたらいい?」
ゼイソン
「それは、若の魔法能力が強くなっているからです。魔力が強くなったり、高級魔法を行っていくと、身体への負担も大きくなりまする。ですから、更に偏差に気をつけなければなりませぬ」
蓮也
「今度はどうすればいいか早く診てくれ。とても痛いぞ」
ゼイソン
「そうですな、任脈・督脈に問題があります。小周天を行いましょう。呼吸と共に、丹田の陽気を会陰、仙骨、背骨、頭頂部の百会に上げます。そして、呼吸と共に、元の丹田の位置へと納めて、もう一度、陽気を温養します」
蓮也
「今度のは難しそうだな。まあ、やってみる」
と言って、その日は終わった。
今度は、蓮也は身体を引きずって来た。
蓮也
「昨日教えてもらったエンチャントから放つ魔法は凄かったが、あれから練習しまくって、朝起きたら身体が動かないぞ。爺、なんとかしてくれ」
ゼイソン
「あれからまた練習なさったのですか?この技は大人でも習得が難しく、負担のかかるものなので、回数を制限するように言いましたですじゃ」
蓮也
「そんなこと覚えてないぞ」
ゼイソン
「困ったものですな、それでは若の身体が持ちませぬ。あと、夜の睡眠時間は大切です。一つは魔力と身体の回復です。もう一つは、魔力は潜在意識が関係しますので、昼間に魔法の練習をしたら、寝るのも練習だと思ってくだされ」
蓮也
「わかった、覚えておくぞ」
ゼイソン
「それにしても偏差が大きくなりすぎておる。ワシもヒーリングは多少はできるが、専門ではないので、王国のヒーラーに診てもらうようにしましょう」
蓮也は王立治療院のヒーラー課を訪ねた。
ゼイソン
「第二王子の治療である。しかるべきヒーラーをすぐにつけよ」
蓮也
(なんか爺、やたら偉そうだな)
元元帥が第二王子を連れてきたため、ヒーラー課では最高の治療を提供しなければいけなかった。そこで担当になったのがマリアンヌ・バルゴーである。バルゴーは自分の名を名乗り、一礼した。この時、バルゴーは15歳であった。髪は長く、色白で、容姿は美しかった。
ゼイソン
(あれま、こんな若い娘さんだが大丈夫じゃろか)
蓮也
(このねーちゃん、すげー綺麗だなぁ)
バルゴー
「王子様、どうされました?」
蓮也
「身体全体が痛いし動きにくいぞ」
バルゴー
「それではあちらに寝てください」
蓮也はベッドに寝ると早速、治療が始まる。エネルギースキャンし、チャクラや経絡の異常を一瞬で整える。
バルゴー
「もう起き上がっても大丈夫です」
蓮也
「あれ、痛くないぞ」
バルゴー
「ここでは決まりとしてエーテルレベルの治療※しかできませんが、また偏差が起こればいつでもいらっしゃってください」
ゼイソン
(若いのに素晴らしい才能の持ち主じゃ・・・)
こうしたことから、数ヶ月後、ゼイソンの推挙でバルゴーはヒーラー部隊へと配属されることとなる。そしてバルゴーはヒーラー部隊長、神聖将軍にまで登っていくのであるが、これは別の話である。ちなみに、ヒーラーは貴族階級がヒーラー学校に入り、ヒーラー部隊や王立治療院に入るというのが一般的である。平民は先天的に才能あるものが王立治療院に入り、そこから優秀な者がヒーラー部隊へと選抜されるという仕組みである。バルゴーは先天的にヒーラーの才能を持っており、平民から王立治療院へと入っている。
バルゴー
「王子様、今日はどうされました?」
蓮也
「ヒーリングをしてくれ」
バルゴー
「見たところ、どこも悪くありませんよ」
蓮也
「そうか?」
偏差が起こった時に蓮也は王立治療院でバルゴーのヒーリングを受けたが、偏差がない時でも行くことがあった。まだ幼い蓮也には、孤児院のセシルや義理の母との別れが寂しかったのかもしれない。感情を表に出さないが、そうしたことが行動となって現れたのだろう。
※物質レベルの治療は医者が担当する。エーテルレベル以上はヒーラーが担当する。戦争で傷を負った場合、これらのレベルが多いため、王立治療院では、戦争のための治療が行われている。アストラルレベルの治療は、呪いなど上位魔法の状態変化になるが、そのような場合は殆どないので、効率性を求めた場合、物質体・エーテル体のみの治療となる。
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