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神器の章

キズとキズナ

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ヘティスが去る前に、ヘティスはローズにヒーリングを教えた。



ヘティス
「うん、そんな感じよ。なかなかうまくできるようになったわw」
ローズ
「ヘティスさん、すごいんですねw」
ヘティス
「私の先生がすごいのよ、うふふw」
「で、このヒーリングを桃也、じゃない、蓮也にやってあげて」

此花桃也はヘティスの提案で「此花蓮也」と言う名前となった。



ローズ
「そんな、私なんかが陛下にヒーリングするなんて、恐れ多い・・・」
ヘティス
「ほら、はじまった、ロズたんの“私なんかが”ってのがw」
ローズ
「だってw」
ヘティス
「いいわ、離れていてもやれる遠隔ヒーリングの方法を教えてあげる」

ヘティスは、直接手をかざさなくてもできるヒーリングをローズに教えた。

ヘティス
「そうそう、そうやって目を閉じて、ハートは開くの。そして、彼のハートにエネルギーを送るイメージで」
ローズ
「わかりました、これが陛下のためになるのでしたら、私、毎日行います」

そして、ヘティスは去って行った。
それからというもの、ローズは毎日欠かさずに蓮也1世にヒーリングを行った。



蓮也1世は今まで怠っていた政務を毎日のように行っていた。時には、夜遅くまで蓮也1世は仕事をすることもあったが、ローズは彼の身の回りの世話を献身に行った。そして、彼の疲れや過去の傷などを、ローズはよくヒーリングで治癒した。

政務中は多忙で気づかなかったが、政務が落ち着いたある夜、蓮也1世は、何者かが自分に暖かいエネルギーを送っていたことに気づく。

蓮也1世
「ローズよ」
ローズ
「はい、陛下」
蓮也1世
「其方は余に何かしておるだろう」
ローズ
「・・・」
蓮也1世
「余の目は誤魔化されぬ。正直に言え」

ローズはヒーリングをしていることを正直に話した。
そして、そのヒーリングをヘティスから教わったことも伝えた。

蓮也1世
「もっと余の側に寄ってやってくれ」
ローズ
「そんな、恐れ多い」
蓮也1世
「かまわぬ」
ローズ
「・・・かしこまりました」

しばらく時間が過ぎた。夜の静けさと、ローズのハートから手を伝い流れ出るエネルギーの暖かさを蓮也1世は感じていた。

蓮也1世
「ローズよ」
ローズ
「・・・はい、陛下」
蓮也1世
「あの時、なぜ余を助けようとした」

先日、クーデターがあり、構える兵士の弓矢に対し、ローズは蓮也1世の前に立ち、それを阻もう遮った。

ローズ
「私があのようにせずとも陛下はお強いので必要ございませんでしたね・・・」
蓮也1世
「余は、なぜかと聞いている」
ローズ
「その・・・、私にもなぜだかわかりません。気づいたら、そのような行動を取っておりました」

蓮也1世はしばらく沈黙した。それでは質問の答えになっていない、と蓮也1世は感じている、そのようにローズは感じた。
再びローズは口を開く。

ローズ
「人間として、かくあるべきだと思い・・・」

その答えに蓮也1世は軽くうなずいた。
そして、再び蓮也1世は呼びかける。

蓮也1世
「ローズよ」
ローズ
「はい、陛下」
蓮也1世
「余は、以前のように女性の自由は奪わぬ」
ローズ
「はい・・・」
蓮也1世
「今夜は其方の部屋に帰ってもよいし、帰らなくてもよい。其方の自由である」
ローズ
「・・・」
蓮也1世
「その前提で言うが・・・」
「・・・今日は余の側にいてくれ」

ローズは心臓と息が同時に止まりそうになるほど驚いた。
そして、驚きのあまり、すぐには声が出なかった。
恐れ多いと思いつつも、ローズは蓮也1世の表情を伺った。あの「超新星皇帝」と言われ、常に威厳に満ちている蓮也1世の表情が、少し弱々しさを感じさせた。また、それは純粋な子供のような表情でもあった。
しばらくして、ローズの返答がないため、蓮也1世は彼女の気持ちを察し、続けて言った。

蓮也1世
「ご苦労であった、其方も遅くまで疲れたであろう。もうよい、部屋へ帰って休め」
ローズ
「・・・いえ、陛下」
「・・・私でよろしければ、陛下のお側にいさせてください」

部屋の明かりが消え、月の光が二人を照らし祝福した。
こうして、この夜、二人は結ばれたのである。





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