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未来的日常の章
13.遍く通る事、光の如く
しおりを挟むしかし、ヘティスの悩みは尽きない。人間とは、一つの大きな悩みがあると、認知はその一番大きな悩みのみにフォーカスするが、それ以下の悩みは認知し難い。次の悩みは、学校の勉強ができないことである。まず、ヘティスは小学校の頃から、学校の勉強に全く興味がない。また、保育園の頃から、徒競走で、なぜ競争しなければいけないのか、と疑問に思っていた。彼女曰く、なぜ勉強しなければいけないのか、というわけである。
ただ、以前よりは悩むことはない。しかし、帰りは基本的に独りで帰ることが習慣になっていた。その独りの時間に、自分と対話している感じであったり、ゲームの戦略を考えたりとしていた。そして、決まって公園のベンチで夕日を眺めるのである。そうすると、決まって金髪の男性、野間頼人(のまらいと)がやってくる。
頼人
「ヘティス、また会ったね」
ヘティス
「あ、頼人兄ちゃん」
ヘティスは一人っ子であった。兄弟がいないし、母親もいない。基本的に明るい性格であるし、独りが好きだというところもあるが、少し寂しがり屋なところもあった。「頼人兄ちゃん」と呼ぶのは、お兄ちゃんが欲しいという彼女の願望なのかもしれない。
頼人
「で、今日は何を悩んでいるんだい?」
ヘティス
「んーとね、私、学校の勉強が興味ないの。面白くないの。宿題もやったことないし。先生にいつも怒られるけど。けど、やる気にならないの」
「セルフコンパッションを頼人兄ちゃんに教えてもらったから、自分を責めているわけじゃないんだけどね」
この時代、勉強は脳内に直接、情報をダウンロードできるため、インプットの勉強は殆ど意志力は必要ない。長期記憶は側頭葉が関係するため、耳の上あたりの側頭部から情報を無線でインプットする。しかし、脳内から情報をアウトプットするのは、長期記憶が関係する側頭葉から各部位を連合させないといけないため、そこはアウトプットの確認が必要である。また、その情報を意味ある情報に変えて応用していくには、前頭前野の働きも重要になる。つまり、この時代の勉強とは情報のアウトプットや応用である。ヘティスの場合は、この意志力がいらないインプットもしないのである。だから、超アナログ思考の天然少女である。ここも彼女の個性ではあるが、仲間外れにされて来たのは、目の色のせいではなく、本当は学校の勉強をしない、ちょっと変わった天然なところに対してなのかもしれない。
頼人
「ん~、それが普通なんじゃないかな?」
ヘティス
「けど、みんなはちゃんとさ、あんなつまんないことをやってくるんだよ?それが普通なのに、私は、その普通がどうしてもできないの」
頼人
「それは普通ではなくて、平均って言うんだ」
「みんながそうだからと言って、それは普通とは限らない」
「もちろん、個性がないことが普通ではない」
「キミは普通って言葉を勘違いして使っているのかもね」
ヘティス
「だったら普通って何?」
頼人
「ヘティス、普通って漢字は知っているかい?」
「遍(あまねく)く、通る、って書くだろう?」
「これは、普遍的って意味なんだ」
ヘティス
「ふへんてき?」
頼人
「つまり、何時の時代でも、どこでも、その考えが通用するってことさ。そして、それが本質的であるってことだ」
「人間の脳は、本質的に、興味のないことや嫌いなことはインプットしないようにできているんだ」
「キミたちの世界では扁桃体ってところが関係するって言うね」
ヘティス
「へんとーたい?」
頼人
「アーモンドの形をしているから扁桃体って言うらしいね。そんなのがボクたちの脳の中にはあって快不快を感じているんだ、好きとか嫌いとかね。そして重要だと思うものには反応するようにできているんだね」
「けど、それに逆らって、いらない情報、不必要な情報をどんどんインプットしたらどうなるんだろうね?」
ヘティス
「んー、パンクしちゃうかな?」
頼人
「しかも、キミたちのインプットは、直接、脳に情報をインプットするだろう?」
「本来は、脳が情報を選んで脳内に保存するんだけど、それをせずに情報を直接詰め込んだらどうなるんだろうね。そこで矛盾した情報を入れたとして、その矛盾に気づかないままにするとどうなるんだろうか?」
「キミたちの時代は、まだ、この扉を開けた最初にいるんだ」
ヘティス
「んー、難しくてよくわかんないわ」
頼人
「そう言えば、キミの悩みだったね。まず、キミの得意なことを伸ばせばいい」
「ゲームが得意なら、そのチカラを伸ばすんだ」
「そして、そのチカラを学校の勉強に技術転用すればいい」
ヘティス
「ぎじゅつてんよう?」
頼人
「まあ、応用するってことだね」
「一芸に通ずる者は全てに通ず、って言うだろう?」
「一つ、何か高いレベルに達したら、それを元に考えていくんだ」
「ヘティス、キミの得意なことは何かな?」
ヘティス
「ん~、ゲームくらいしかないかなぁ」
頼人
「それなら、そのゲームを軸にして学校の勉強も考えていけばいいね」
ヘティス
「そうなの?ゲームは楽しいけど、学校の勉強は楽しくないし、ぜんぜん違うと思うんだけど」
「あと、もう一つね。私の地区では、私はゲームで強い方なんだけど、活動を広げたり、全国レベルだったりすると、まだまだ力不足なのよね」
「だから、得意って言っても、その程度なの」
頼人
「自分の能力を、その程度だって、ここで判断しちゃダメだ」
「今はダメでも、将来必ずもっと強くなるって思うことだね」
「これを成長感って言うんだ」
ヘティス
「せーちょーかん?」
頼人
「人間は成長できる、と思うから、肯定感が出るんだ。だから成長感は肯定感の一つなんだ」
ヘティス
「わかったわ、私、いつかゲームで全国一位になる!」
頼人
「そうだね、いい感じだ。後はいつまでにやるか、期限を切ろう。そうすることで心は動き出す」
ヘティス
「じゃあ、20歳になるまでに20歳以下の部で優勝する!」
頼人
「よし、ボクも応援するよ」
「それじゃあ、明日は学校は休みだったね。朝、早いけど、日の出前に来たら面白いものを見せてあげるから、是非おいで」
ヘティス
「私、朝弱いのよ。起きれないかも」
頼人
「大丈夫、キミは興味がある・面白いと思うことには反応する性格だ」
「絶対に面白いと思うから期待してて」
ヘティス
「う、うん、わかったわ。なんとか起きてみるね」
夏の暑い時期だった。公園には蓮が満開になろうとしていた。この時の日の出は4:46であった。ヘティスは、家に帰って日の出時刻を調べたが、もしかしたら起きれないかも、と思ったりもした。夜はいつも夕食を食べた後、ゲームをしていたが、その日はゲームをしても明日のことが気になってしまったので、そこそこで切り上げて、早めに寝ることにした。
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