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未来的陰謀論の章
古代の大洪水神話
しおりを挟むヘティスたちは仮想空間にて統合AIアバター・オルペウスを召喚した。オルペウスの解答は、宇宙人が別の星から来たAI、或いはトランスヒューマノイドであると言う。そして、その宇宙人AIは爬虫類、そして恐竜から進化したと解析した。そして、その痕跡は、神話や物語などに登場するドラゴンの可能性が最も高いことを示唆した。そして、オルペウスは仮想空間に太陽系を作り出し、地球の進化の歴史を辿ろうとする。
ヘティス
「へえ~、私たちのバーチャルスペースに太陽系ができちゃった」
尚美
「こうやって見ると、宇宙って神秘的ね~」
ヒロキ
「ボクたちのマシンのスペックでは、ここまでの規模のシミュレーションはできませんからね。リイエンさんの量子コンピュータがボクたちの仮想空間のパラメータを大きく底上げしてくれています」
フォン・リイエン
「シミュレーションを開始する」
ヘティス
「あ、太陽の周りを惑星が動き出したわ!」
シミュレーションは、現在の太陽系のパラメータや過去に観測されたパラメータを可能な限り入力し、それを再現できるように逆算していく。つまり、時空間を現在から過去へと巻き戻していくのである。その現状データと過去データの再現によって得られる平均的なデータによって、データが存在しない過去を更に逆算していくのである。
フォン・リイエン
「最大スピードでシミュレーションをするが、それなりの時空間軸での地球の進化を辿るわけだから、しばらく時間がかかる」
ヘティス
「じゃあ、私たちの太陽系を見ながら、もう一回ティータイムよ!」
ミク
「わーいw」
ヘティスたちは、自分たちの過去の太陽系を眺めながら、バーチャルティータイムを再び行った。仮想空間での飲食は、そのフードやドリンクに消費型トークンを紐づけているのであるが、これはリアルの人体の味覚野や嗅覚野、体性感覚野などを賦活化しているのみである。だから、どれだけ飲食をしても満腹にもならなければ肥満にはならない。そのため、この時代は、過食症・拒食症・糖尿病・メタボリックシンドロームなどの過剰な飲食に関わる病は殆ど存在しない。
フォン・リイエン
「ここだ」
ヘティス
「どうしたの?」
フォン・リイエン
「オルペウスよ」
「時空間軸xxxx:yyyyに戻り、そこの映像を拡大せよ」
フォン・リイエンがシミュレーションで用いているソフトウェアは「時空間軸」という最新の5次元統合モデルで行なっている。そのため、一度、シミュレーションされた時間と空間は「時空間」として統合され、より精密に解析される。更に、ここに生命情報のパラメータを入れて6次元にすることで、複雑系の生命進化も辿ることが可能となる。
ヘティス
「あ、隕石が地球に向かってくるわ!」
フォン・リイエン
「今見ている映像は、時空間を逆ではなく通常回転させている。つまり、過去から未来へと時空間は変化している」
ヒロキ
「この隕石が地球に衝突し、その塵によって地球が覆われ、寒冷化するのですね・・・」
ヘティス
「あれ?隕石が衝突したのは地球ではなく月よ!」
ヒロキ
「あ、そうみたいですね。これが知的生命体の進化と関係するのでしょうか?」
フォン・リイエン
「見ていればわかる」
ヒロキ
「え?月の内部から大量の水が地球に向かって流れ落ちて来ている!」
ヘティス
「これじゃ、地球が水浸しねw」
ヒロキ
「そうか、わかりました!月の内部から水が地球に流れ落ち、地球全体の重量が増えるため、地球の重力も増加するのですね・・・!」
フォン・リイエン
「そうだ。この重力によって、大型恐竜は自らの重量を支えることが不可能となり、殆どが消滅することとなる。そして、その一部は、水中へと逃れた」
ヒロキ
「なるほど、水中なら浮力があるため、重力の影響を受けにくいからですね」
ヘティス
「重力から逃れるために恐竜は水中に入った、これが私たちが生まれる前にあった都市伝説、ネッシーの正体なのかも!」
ヒロキ
「そして、この恐竜の生き残りと人類はどこかの時代に遭遇し、物語のドラゴンや龍として描かれた・・・」
尚美
「神話や物語って単なる架空のお話じゃなくって、私たち人類の古代の記憶なのね」
マモル
「おー、古代の記憶かー!ロマンを感じるぜー!」
ミク
「私はロマンよりもマロンが好きw次のティータイムは紅茶とモンブランよw」
シミュレーションによって彗星が何度も地球にぶつかり、その度に、何度か灼熱と洪水の時代を繰り返すことが映し出された。その中で特に、月に衝突した彗星は、月の内部から大量の水を地球にもたらした。
古代バビロニア、ユダヤ、キリスト教、ギリシャなど、世界中の古代の伝承には大洪水神話がある。この大洪水神話は実在のものである、というのがオルペウスの解答である。なぜなら、洪水の時代や規模や描かれ方の質をスコア化すると、時空間シミュレーションとの乖離率が極めて低いからである。ちなみに、この後に地球は寒冷化し、恐竜は寒さから身を守るために羽毛を生やし、その羽で空へと飛び立つのであった。
ヘティス
「ノアの方舟のお話って、本当の話かもしれないのね」
尚美
「デフォルメされてはいると思うんだけど、それに近いことはあったのかもしれないわね」
ヒロキ
「神話が実際の話だなんて、驚きですね!」
こうした大洪水によって哺乳類の天敵であった大型爬虫類は消え去り、哺乳類が活動を始める。やがて哺乳動物のうちの弱いものは、木の上を生息の場に選んだ。類人猿の祖先の誕生である。木にぶら下がることで、腸腰筋などの姿勢を固定するインナーマッスルが引き延ばされ、生理的湾曲や直立歩行の基礎となる。その後も彗星の衝突によって地球の洪水は何度も起こった。世界は何度か水浸しになるが、ある時、その水の中で生活する類人猿のグループは、水の浮力によって直立歩行を獲得した。そこから陸地での生活に戻ることで、大脳は更に進化し、これがヒトという知的生命体となっていくのである。これが地球人の進化である、とオルペウスは結論づけた。
ヘティス
「なるほどねぇ、ヒトに進化するまでに、こんなことがあったのねぇ」
尚美
「そう言えば、私たちの生まれる何十年も前にも、大洪水ってあったわよね?それで日本も色々なところが水没しちゃった、って授業で習ったわ」
ヒロキ
「“南海大水災”ですよね?202X年の話ですけど、海面が大きく盛り上がったらしいですね。どうやら大きな彗星が地球の近くを通り、その引力で海面が隆起したらしいですよ」
ヘティス
「けど今、私たちが住んでいるのは海上移動都市だから、常にAIによって解析されていて、安全な場所への移動が可能になってるから安心ね」
ヒロキ
「昔の人は陸地に住んでいたし、災害の予測も難しかったみたいだから大変でしたよね。と言っても、今もネイチャー派の方々は陸地で生活していますが、住める場所も狭くなりましたからね」
ヘティス
「今、私たちは海上都市に住んでるけど、将来は殆どのスマートシティが宇宙衛星都市になるみたいだから、もっと安全になるわね。だって、地球に隕石が衝突したら宇宙に逃げないとダメだもんね」
私たちは、今、常に歴史の最先端を体験している。その最先端を行く私たちの日常生活は、ひと昔前の人から見ると奇跡の体験の連続なのだろう。その奇跡の連続を、当たり前で退屈に思ってしまっていないだろうか。現在から過去と未来を相対化して考えることで、ヘティスは、ふと、そう思うのであった。
【解説】
月に水が存在することについて。
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO44158040U9A420C1000000/
もちろん、月の水が地球に降り注いだというのはフィクションである。
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