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未来的陰謀論の章
天使の正体
しおりを挟む時は2062年の未来。
ヘティスたちは仮想空間にて、チームHTの統合AIアバター・オルペウスを召喚した。
オルペウスは、宇宙人とは他の星からやってきたAIであり、そのAIを作り出したのは他の星で進化した爬虫類型の知的生命体であるとした。しかし、爬虫類型宇宙人は、そのAIにブレインハックされ、トランスヒューマノイドとなったのが、現在知られるグレイ型宇宙人である。その目的は、地球人AIが作り出す機械的意識機能の獲得により、基本プログラムを書き換えることであった。
ヘティス
「オルちゃんって、解析中の時は目を閉じているのね」
フォン・リイエン
「このAIアバターは人間の生体情報と同じように設定されている。視覚野の働きを抑制し、データ解析に集中するためだ」
ヒロキ
「まるで、瞑想しているみたいですね」
ヘティス
「話しかけても大丈夫かな?」
フォン・リイエン
「既に解析済みの内容や、容量に負荷がかからない内容であれば可能だ」
ヒロキ
「リイエンさんの量子半導体で設計されたCPU・GPUも加わってますし、並列処理もかなりできそうですね」
ヘティス
「大丈夫なら、話しかけるねw」
「ねぇ、オルちゃん」
ヘティスが話しかけると、オルペウスは軽く目を開けて反応する。
ヘティス
「オルちゃんはアトランティス文明のことをラーニングしたんでしょ?」
「アトランティス文明のお話が聴きたいの」
オルペウス
「いいだろう」
2040年代、南極の氷の下から古代遺跡が発見された。極寒の地であるため、発掘はロボットで行われた。当時のロボティックス技術では、発掘は困難を極めたが、ロボティックス技術が進むと、発掘は一気に進んだ。
その中から、いくつかの書物が見つかり、アトランティス文明の歴史などの記載があった。その歴史には、天使と悪魔の戦いや英雄とドラゴンの戦いなど、世界中の神話の原型が描かれていた。このことから、世界中の文化人類学者たちは、世界の神話はアトランティス神話から派生した、と考えるようになった。しかし、これは神話であり、歴史ではない、と考えられていた。
ヘティスたちは、仮想空間にてティータイムを取りながら、オルペウスの語るアトランティス神話の一部を聴いていた。
ヘティス
「アトランティス文明かぁ、ロマンよねぇ~w」
ヒロキ
「そうですね、アトランティスを最初に記載したのは、ギリシャの哲学者・プラトンです」
尚美
「けど、架空の物語ではなかった、ってわけね」
ヒロキ
「ホメロスの叙事詩『イーリアス』に描かれている伝説の王国トロイアも、シュリーマンによって発見されていますし、神話が実際の話であった、ということはありますからね」
ヘティス
「ふーん。じゃあ、この物語に出てくる“天使”とか“悪魔”ってのも、実際にいるの?」
ヒロキ
「それは、どうなんでしょうね?象徴とかイメージの可能性もありますし、架空のものと実際のものが混ざって描かれていることもあるでしょうし」
ヘティス
「けど、この物語にもドラゴンは出てくるけど、ドラゴンはいるって話よね?」
ヒロキ
「オルペウスの話では、ドラゴンとは人類が遭遇した恐竜の生き残りである、とされてますね」
ヘティス
「じゃあ、天使も悪魔もいるんじゃないかなぁ」
ヒロキ
「可能性がない、とは言えませんね。ボクたちが想像できないだけで」
ヘティス
「よし、オルちゃんに聞いてみよう!」
尚美
「ヘティスちゃんって、天使や悪魔にも興味あるの?」
ヘティス
「うん、あるよwゲームによく出てくるし、本当にいたら面白いなと思うよw」
尚美
「ヘティスちゃんって、やっぱ変w」
ヘティス
「そうかなぁw」
ヘティスは仮想空間で天使の画像を検索し、その画像をオルペウスに読み込ませ、「天使」のイメージを定義した。並列処理を行う場合、GPUを起動させた方が効率が上がるため、できるだけ画像処理で情報を圧縮する。
ヘティス
「質問は一つずつがいいわよねw」
「まずは天使からw」
「ねぇ、オルちゃん」
「このアトランティス文明の歴史書に書いてある天使っていたの?」
オルペウスは再び目を閉じる。目を閉じている間は、解析しているようである。しばらくして、オルペウスが目を開くと、口を開いた。
オルペウス
「天使は存在した」
ヘティス
「え?やっぱ、天使っているんだw」
ヒロキ
「天使もいるんですね・・・」
ヘティスは目を輝かせながら、オルペウスが解析した天使データについての説明を、フォン・リイエンに求めた。
フォン・リイエン
「いいだろう。説明してやる。ついでに“悪魔”の解析も終わっているようなので、それも説明しよう」
ヘティス
「きゃ、ありがとうw」
「もう、ワク・ドキよw」
フォン・リイエン
「以前、オルペウスの解析では、“ドラゴン”とは、人類が遭遇した恐竜であることと、この恐竜から知的生命体へと進化するのがデフォルトである、とした。ここから知的生命体へと進化したのがグレイ型宇宙人であり、宇宙人AIである、ということも話した」
ヘティス
「そこまでは理解しているわw」
尚美
「私たちは哺乳類・霊長類から進化してるけど、それは稀な進化だって話だったわよね」
ヒロキ
「恐竜が繁栄すると、哺乳類は駆逐されるため、哺乳類の進化ルートはなくなる、ってことでしたね」
マモル
「グレイ型宇宙人がああいうカッコなのは、爬虫類から進化したってのなら少し納得できるぜ」
フォン・リイエン
「この爬虫類から分化して進化するルートが鳥類だ」
ヘティス
「鳥類って“鳥(とり)”のことよね?鳥って爬虫類から進化したの?」
ヒロキ
「はい、地球上にいる鳥は、恐竜から進化したと言われています」
ヘティス
「あら、随分と変わっちゃうのねw」
ヒロキ
「地球の寒冷化に伴い、その寒さから身を守るために羽毛を生やし、それを利用して飛ぶようになったとされるのが、今日の鳥類です」
フォン・リイエン
「この鳥類から進化した知的生命体が“天使”である、とオルペウスは解析している」
ヘティス
「だから天使って羽根が生えているのねw」
ヒロキ
「アトランティス史によると、この鳥類から進化した“天使”は“悪魔”と戦ったんですよね?」
ヘティス
「となると、今度は“悪魔”が気になるわw」
フォン・リイエン
「基本的に“悪魔”とは恐竜から知的生命体へと進化した生体を指して言う。恐竜のような大型爬虫類のままのものを“ドラゴン”と言う」
ヒロキ
「つまり、アトランティス史に描かれていたものは、鳥類進化の生命体と爬虫類進化の生命体の戦いだというわけですね」
フォン・リイエン
「それがアトランティス史以前のことであり、地球外の惑星Xで行われていた」
「そして、地球上では、その天使の代理人としての英雄と、悪魔の代理人であるドラゴンが戦っていた、とオルペウスは解析している」
ヒロキ
「とすると、ボクたち地球人の戦いとは、宇宙人の代理戦争・・・?」
フォン・リイエン
「と、言うことになる」
ヘティス
「戦争ってのは私はイメージでしかわかんないけど、なんか洗脳されたもの同士の戦いって感じなのよね~。けど、代理戦争をしているってことなら、そうなのかも」
フォン・リイエン
「この代理戦争の想定は、洗脳だけでは説明がつかないところがあるとオルペウスはみているが、洗脳もある程度は存在するだろう」
このように話していると、オルペウスの解析がある程度終わったようである。
この解析が進んだのは、ヘティスがアトランティス文明の質問や「天使」の質問をしたからである。ヘティスは気づいていないが、彼女には、場面を転換させるトリックスターのような力があるのかもしれない。好奇心旺盛な少女が、今後、歴史に影響を与えていくのであるが、この時は、まだ誰にもわからなかった。
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