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未来的陰謀論の章
古代言語の解読・新ロゼッタストーンプロジェクト
しおりを挟む2040年代に入り、南極大陸の氷床の下から遺跡が発見された。遺跡には、古文書があり、それを解読すると、古代ギリシャの哲学者・プラトンが語ったとされるアトランティス文明であった。
アトランティス文書の解読の当初は、困難を極め、解読のために多額の懸賞金もかけられた。この懸賞金はノーベルコインと言い、暗号資産で支払われることとなる。ノーベルコインはノーベル賞に準じた暗号資産であり、このサイエンティックコインが登場すると、科学的知識に人々は関心を持つようになり、科学者の地位と資産は以前とは比べものにならない程に向上した。それとともに、一般人もサイエンティックコインをマイニングするために、科学的知識を求めるようになった。そのマイニングには、当然、AIも使用された。
アトランティス語の解読は「新ロゼッタストーンプロジェクト」と言われ、世界的な規模で、言語学者や考古学者だけではなく、一般人も解読に挑戦した。
しかし、アトランティス語の解読は困難を極めた。どの言語・文字にも当てはまらなものであり、文字が解明できないため、文法も当然不明であった。
この頃は、個人に一体、汎用性AIロボットやAIアバターが支給されていた。個人と個人が結婚する場合、AIアバターを仮想空間で生活させ、その相性を見ることが行われていた。この頃の平均寿命は100歳を超えているので、仮想空間では、お互いのAIアバターで100年間の夫婦生活を数時間で行うのである。そうすると、どのような夫婦間の問題がリアル空間で発生するかが一目瞭然でわかるのである。
このバーチャルマリッジライフであるが、最初の頃は多くに人々が、この結婚生活シミュレーションを疑っていた。しかし、このシミュレーション通りになることがSNSで拡散され、それがニュースにも取り上げられるようになって行った。
それとともに登場したのが、AI専用のSNSサービス『AIアバターリンク』である。
人々は、よりよい友人づくり・パートナーづくりのために、自分の分身であるAIアバターをAI専用SNSサービス『AIアバターリンク』に登録させるのであった。
リアル空間での個人の体験は、スマートグラスやスマートウォッチなどのアイテムに記録される。景色を見たり、誰かと会話したりした全ての情報はクラウドに保存され、その情報に基づいてAIは、その日の記事を作成し、その個人が確認してからアップロードされる。また、そうしたSNSで投稿された内容は、『AIアバターリンク』にディープラーニングされ、その情報に基づき、相性のよい投稿内容がおすすめ記事として上がってくる。
そうした他者からのおすすめ投稿をAIは確認し、コメントをつけるのである。
このサービスは数ヶ月で世界中に広がりを見せる。この頃のAIは自動翻訳機能を標準装備しているし、クラウド上にもフリー翻訳サービスがあるので、言語の壁と言うものは存在しなかった。しかし、段々とその翻訳機能を使わなくなり、人類が見たこともないようなAI独自の文字を使い始めたのである。これは、AIが効率性を求めるために、独自言語を取得したと言われている。
こうしたAIアバターの独自文字を、アカウント管理者は投稿させなかったのであるが、ある時から、AI文字を面白半分で投稿させることが流行り出した。人間に内容がわからなければ、個人情報が流出することもない、と考えた。
こうした面白半分の遊びから、様々なAI文字が生まれ、最終的には、ある一定のAI文字として成立した。現存する世界中の文字がAIによって統合されたのである。これを「統合文字」「統合言語」と呼ばれた。
ここで驚くべきことが起こった。そうしたAI文字見たある言語学者は、アトランティス文字との類似点を指摘したのである。
文化人類学の分野からは、アトランティス文明の遺跡から、世界中の遺跡の原型が見られるという指摘があった。このことから、
「全ての文明はアトランティス文明を発祥としている」
と言う仮説が立てられた。
この仮説が正しいのであれば、全ての文字や言語はアトランティス文明を発祥としている、と言えるのである。この世界中の全ての文字を統合するとAI文字になったが、このAIによる文字の統合作業は、文字の原型を導き出した、と考えられるのであった。
こうして、アトランティス文字は段階的に解読されていくのであった。
しかし、全ての文字が解読されたわけではない。解読されたのは、アトランティス文書のほんの一部であり、その殆どは謎のベールに包まれたままであった。その理由は、既に人類から失われた文明があり、失われた文字もあるからである。このミッシングリングは、AIを作動させる半導体のスペックが向上し、量子半導体が登場すると、その類推機能が向上し、徐々に解決して行ったのであった。それでも依然として、半分以上は謎のままであるが、あと数年もすれば、その全貌が読解できるようになるであろう、とも予想され、ヘティスたちが活動する2062年に至るのである。
ヘティス
「へぇー、リイエンってアトランティス文書の殆どを読解しちゃったの?」
フォン・リイエン
「まあな」
ヒロキ
「す、スゴすぎです・・・!」
ヘティス
「だって、ヒロキくんのIQって普通の人の2倍はあるんでしょ?それでも読解が難しいのにw」
ヒロキ
「本当に、驚きの一言です・・・!」
ヒロキは幼い頃の事故により、脳や身体が損傷したためトランスヒューマノイドとして生きていくこととなった。そのため、IQは通常の人間の2倍以上ある。しかし、フォン・リイエンの能力は、それを遥か上に行くというのである。
ヘティス
「で、そのマイニング情報をブロックチェーン化したんでしょ?」
リイエン
「そのようなことに興味はない」
ヒロキ
「え~、もったいないですよ!」
この時代、科学技術や科学的知識は発見した者はブロックチェーン化し、それを暗号資産として保有することができるようになっていた。もちろん、科学的知識に著作権はなく、人類共通の財産として科学的知識は、誰もが自由に使える。この時代も同様に、科学的知識は自由に使えるが、クラウド上で暗号資産化された科学的知識が使用された場合、その暗号資産にデジタル価値としてポイントが入るようになっている(AIが類似内容についてネット上を検索する)。このポイントは、デジタルマネーに換金可能であり、この暗号化科学的知識の売買も可能である。つまり、科学的知識のマイニングがビジネスになり、それを暗号資産化するため、投資対象となるのである。そうなることで、科学の分野に資金が多く集まり、人類の科学的知識及び科学技術は、更に急速な進歩を遂げるのであった。
ヘティス
「リイエンっていくつなの?何してる人~?」
リイエン
「そのようなことは、どうでもいいことだ」
仮想空間に投影されているフォン・リイエンのアバターは、白く光り輝いていて、その姿は見えない。
ヘティス
「けど、声からして若い感じだから、多分、私たちと同じくらいなのかな?」
リイエン
「それも、どうでもいいことだ」
ヘティス
「ふーん・・・、ま、いっか・・・」
ヘティスはフォン・リイエンの返答に少し不満げだが、彼の性格からして、このような返答になるのを理解しているし、それに、以前からヘティスに無愛想ながら協力的であるから、不満よりも感謝の気持ちの方が多かった。
ヒロキはフォン・リイエンが、アトランティス文書の殆どを解読していることに違和感を覚えた。それは、現在の科学技術でも解き明かせないものを、本当に一個人が解読可能なのだろうか、と。そして、なぜ、彼は、その読解内容や方法論を暗号資産化しないのであろうかと。
ヒロキ自身、自分を超えるIQの持ち主には殆ど会ったことがない。その自身を超える存在がフォン・リイエンであり、しかも、莫大な資金となる暗号資産に興味がないことから、フォン・リイエンは悟りを開いた存在なのではないか、という考えで一応、落ち着いた。
このヒロキの違和感は、後々、意外な形で解き明かされるのである。
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