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未来的陰謀論の章
魔法のメカニズム
しおりを挟む時は2062年。
ヘティスたちは仮想空間にて、統合AIアバター・オルペウスを召喚した。この頃、南極の氷床の下からアトランティス遺跡が発見された。そのアトランティス文書には、英雄が剣と魔法でドラゴンや悪魔と戦ったことが描かれていた。その「魔法」について、オルペウスは、現代人が言う「超能力」である、と解析した。
ヘティス
「“魔法”が存在するなんて信じれないけど、ちょっと興味あるわw」
ヒロキ
「僕も興味あります。“魔法”とは、どのような仕組みなのですか?」
フォン・リイエン
「オルペウスが、どのように解析したかを解説してやろう」
ヒロキ
「はい、お願いします!」
フォン・リイエン
「まず、この文書にある魔法とは、お前たちが思っている魔法のイメージと同じものだ」
ヘティス
「つまり、アニメやゲームの世界みたいに、手から炎を出したり、傷を治したり・・・?」
フォン・リイエン
「そうだ」
「当然、現代人が言う超能力、つまり、サイコキネシスやテレパシーは当たり前のようにできる。超能力とは、魔法の劣化版というのがオルペウスの見解だ」
「そして超能力者と名乗る者の殆どは、オルペウスの画像解析によるとトリックであり、それは超能力者ではなくマジシャンである、としている」
ヒロキ
「殆どが偽物、しかし、その中にほんのわずかな本物の超能力者がいる・・・」
「そして、その本物の超能力者が扱うサイコキネシスやテレパシーよりも更に上位レベルが魔法・・・!」
ヘティス
「そ、それは面白いわね・・・w」
「どんな仕組みなの・・・?」
フォン・リイエン
「大まかに説明する」
「まず、我々の心そのものにエネルギーがある」
「これを“心的エネルギー”と言う」
ヒロキ
「心的エネルギー・・・」
フォン・リイエン
「これが空間を形成する空間子に働きかけ、この空間子エネルギーによって様々な作用を生むのが超能力であり、魔法だ」
空間子とは、非空間を空間として支える物質でありエネルギーである。光子より微細なため、全ての粒子は通過する、しかし、非空間を支える、これが空間の仕組みである。この微細な空間子に対して、心的エネルギーも微細なため、ある条件を満たせば働きかけることができるのである。
通常は心的エネルギーは無駄に消費されるため、外部に放出するこが不可能である。しかし、この心的エネルギーを外部に放出することが可能なのが、超能力者であり魔法使いなのである。
ヒロキ
「心というのは、脳が作り出した現象でしかない、という考えもあると思うのですが・・・」
フォン・リイエン
「心は単独でも存在するエネルギーだ。身体のない心的エネルギーを“霊”と言う。その力を用いることが“霊能力”だ」
ヒロキ
「ちょっと、一気には理解できないです・・・」
「まず、なぜ、心がエネルギーだと言えるのでしょうか?」
フォン・リイエン
「“祈りの研究”というものが何十年も前にアメリカの大学や病院で、ダブルブラインドテストによる実験が行われてきた。その研究の結論から言うと、祈りには何らかの無視できないような治癒の効果があるとしている」
「それは驚くべきことに投薬以上である、ともされる」
ヘティス
「へぇ~、祈りってそんなにスゴいんだw」
フォン・リイエン
「“祈り”とは心の働きであり、それが何らかの作用をもたらす故、オルペウスはそれを“心的エネルギー”として概念化している」
ヘティス
「心はエネルギーなのね!」
フォン・リイエン
「この心的エネルギーは祈りのように治癒に用いることもできれば、逆に、破壊に用いることもできる。これが魔法の大まかな説明だ」
ヘティス
「けど、なんで古代人は魔法が使えて、なんで私たち現代人は魔法が使えないの?」
フォン・リイエン
「一つは、現代人はハイテク機器に頼ることで本能的な働きが退化している」
ヒロキ
「確かに、動物には帰巣本能がありますが、人間はナビゲーション機器がないと目的地にたどり着けませんからね。ですから、動物の能力は、人間からすると超能力とも言えますね」
フォン・リイエン
「その動物的本能と人間の精神作用が融合して魔法となる」
ヘティス
「てことは、その条件を満たせば、私たちも魔法使いになれるってわけね!」
フォン・リイエン
「その可能性はある。しかし、もう一つの条件は、ある遺伝子がONになっているかどうかだ」
「オルペウスは、これを覚醒遺伝子としている」
ヘティス
「覚醒遺伝子?」
フォン・リイエン
「心的エネルギーは、人体の中央を貫くことで覚醒する。これを“クンダリニー覚醒”と言う。このクンダリニーという心的エネルギーは、殆どの人間は仙骨に閉じ込められており、これがオフになっている」
ヘティス
「仙骨ってどこの骨かしら・・・?」
ヒロキ
「骨盤を形成する中央の骨です」
ヘティス
「ふーん。こんなところにエネルギーが眠っているのね」
ヒロキ
「しかし、どうやって、そのような覚醒遺伝子があるとわかったのですか?」
フォン・リイエン
「仏舎利だ」
ヒロキ
「仏舎利というのは、お釈迦様の骨のことですよね?」
フォン・リイエン
「そうだ」
「その仏舎利や、悟りを開いたとされるヨーガ行者の遺伝子解析を行ったところ、共通の遺伝子がオンになっていることが判明した」
仏舎利とは、釈迦の骨であるとされ、それは釈迦入滅後に分割され、各地に埋葬された。しかし、その骨の量は2トンになるとされ、あまりにも多すぎた。しかし、20xx年、仏舎利の遺伝子解析プロジェクトが行われた。そして、放射性炭素年代測定により、最も古い仏舎利のいくつかが判明し、そこに共通した遺伝子配列が確認されたため、それが釈迦の仏舎利であると特定されたのである。
このプロジェクトは、当初、釈迦の骨の特定と、釈迦の遺伝子を解析することであった。しかし、調査していくと、ある共通した遺伝子がONになっていることが判明したのである。これは悟りを開いたヨーガ行者の遺伝子とも共通していたので、「覚醒遺伝子」と名付けられた。
ヨーガでは、仙骨に「クンダリニー」という性的エネルギーがあるとされ、それを中央のスシュムナー管に通し、覚醒するとされる。その過程で、チャクラという7つのエネルギーポイントが開く。そのエネルギーポイントから発せられる心的エネルギーが魔法である、このようにオルペウスは解析するのであった。
ヘティス
「ふーん、難しくってよくわかんないわw」
ヒロキ
「しかし、仏教にはクンダリニーという技法はないはずですが」
フォン・リイエン
「釈迦牟尼は元々、ヨーガ行者であった。彼は、その素養がありながらも、涅槃・ニルヴァーナという独自の技法を用いて悟りを開き、覚醒した。これはヨーガのクンダリニーに相当する」
通常の人間は、性的エネルギーが外に漏れ出す。しかし、その性的エネルギーを漏らさずに内側に向け、それを心的エネルギーとして昇華させるのである。涅槃・ニルヴァーナとは、欲望の火を吹き消した状態である。その状態になると、自然とエネルギーは外部に漏れずに内部へと流れ出す。技法は違えど、クンダリニーとニルヴァーナは、覚醒の構造としては同じなのである。これが人体に潜在する覚醒遺伝子を賦活化させるのである。
ヒロキ
「確かに、釈迦やイエスは奇跡を起こした逸話が多くありますが、これは本当だったのですね」
フォン・リイエン
「彼らの目的は人類の救済や苦悩からの解放だが、超常的な力の発揮ではない。しかし、一定のレベルの力を使うことができた、ということは覚醒遺伝子から十分予測できる」
ヘティス
「欲望を抑えるんだよね?けど、本能の力は必要?これって矛盾してない?」
フォン・リイエン
「その欲望を、より高次なものを求める欲求に変えていくのだ」
「彼らが求めたのは、神や仏という完全な状態やイメージだ」
報酬系であるドーパミン神経はA10神経と言い、大脳新皮質の前頭前野まで達している。そして、これを抑制しバランスをとるのがセロトニン神経系である。高次の目標・目的を設定することで、これらの神経系が賦活化するのである。その副産物として、超能力や魔法は存在する、そのようにオルペウスは解析した。
ヘティス
「いろんなことを我慢しなきゃいけないのぉ?なんか、それ、つまんなさそ~」
「私は、美味しいものを食べたいし、素敵な彼をつくってデートしたいし~」
「魔法も楽しそうだけど、私には無理だな~」
フォン・リイエン
「まあ、そのうち、覚醒遺伝子をONにできる技術が発明されるだろう。その時に、人類はどのような価値観を持つか、だな」
「神や仏も幻想なら、恋愛なども幻想だ。どの幻想を追い求めるかは、人、それぞれだ」
ヘティスは魔法に目を輝かせていたが、その他の楽しいこととシーソーの関係にある、とも考えた。そして、今の自分には、他の楽しみの方が人間らしいし、自分らしいとも思った。しかし、神様がいたとしたら、なぜ神様は、このようなシーソーを作ったのだろう、とも思うのであった。
ヘティスは後々、この魔法について深く関わることとなる。しかし、この時点では、全く予想もできなかった。
【解説】
米国では祈りの研究が行われている。元カリフォルニア大学の心臓学教授ランドルフ・ビルド氏は、祈るグループと祈らないグループに分け、祈っている事を患者や医師に知らせない二重盲検査によって行った結果、「実験テーマが祈りではなく、新薬だとか外科手術の術式だとしたら、治療に「突破口」が開かれたなどとさぞ喧伝されたことだろう。だが、そうでなかったとしても、この研究の衝撃的な意味は誰でもわかるはずだ。」と言う有意差が出たとしている。その有意差の結果から、ウィリアム・ノーランは「この研究は精査に耐えうるものだ。恐らくわれわれ医師は『一日三回祈ること』と処方箋に書くべきなのだろう。祈りは効くのである」と述べている(『魂の再発見』ラリードッシー著 上野圭一・井上哲彰訳 春秋社p49)。
また、同書によると「ビルドは、病院のすぐそばに祈る人がいたグループが何百マイル離れたところから祈られたグループより効果的であるという証拠をついに見出すことができなかったのである。これは、祈りが現代科学で理解されているような「エネルギー」ではないことを端的に示している(p50)」としている。
本作品では、空間子という概念を用いたが、空間子は非局所的な作用をする、という設定である。この非局所性によって、時間と空間に関係なく作用すると考えるのである。もう一つは、心的エネルギー自体が別次元にあり、それが非局所的に作用すると考える。
時間・空間が関係なく作用するという現象を「シンクロニシティ(共時性)」と言う。この概念は、集合的無意識を想定する上で成立する。つまり、心的エネルギーそのものが、この物理空間より高次元の空間で一つである、ということである。この作用は、本作品では上位魔法として位置付けている。詳細については、また機会があれば述べたいと思う。
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